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【専門家解説】中高生に多い起立性調節障害|症状の理解から社会生活との両立まで

この記事の内容
はじめに|「朝起きられない」は病気のSOS

「朝起きられないのは、ただの怠けではないか?」「頑張りが足りないだけだろうか?」。
もしあなたやあなたのお子さんが、毎朝の強烈な倦怠感や立ちくらみに悩まされているなら、それは起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)という、自律神経の不調による医学的な病気かもしれません。
ODは、中高生の約10人に1人が経験すると言われるほど、決して珍しくない病気です。
この記事では、ODの症状と原因を正しく理解し、日常生活でできる具体的な対処法、そして学校や仕事への復帰に向けた進路の考え方までを徹底解説します。
ODと診断されたご本人、またそのご家族や企業関係者の方々へ、この病気への正しい理解と、前向きな一歩を踏み出すためのヒントをお届けします。
起立性調節障害(OD)の正体|症状と原因
ODの主な症状:生活と仕事に及ぼす影響
ODの症状は、単に「朝が弱い」というレベルではなく、日常生活や学習、仕事に深刻な影響を与えます。症状は午前中に強く現れるのが特徴です。
- 午前中の不調:
- 朝起きられない・強い倦怠感:
起床時に強いめまいや疲労感があり、起き上がれない、または動けなくなるため、登校や出勤が難しくなります。
- 立ちくらみ・めまい:
立ち上がった際に血圧が急低下し、めまいやひどい場合は失神(またはそれに近い状態)を起こします。これは、立ち仕事や通勤時の満員電車が困難になる主要な原因です。
- 頭痛・腹痛:
慢性的な頭痛や腹痛を訴えることが多く、特に午前中に症状が強く現れます。
- 集中力低下:
脳への血流が安定しないため、授業や会議で集中力が持続せず、学習や業務の効率が大きく低下します。
ODの症状が午前中に強く現れるのは、自律神経の働きと重力が深く関係しているからです。
この現象を理解する鍵は、「起立性」という名前が示す通り、血圧と脳への血流にあります。
ODの原因:自律神経の乱れ
ODは、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れることで発症します。
- メカニズム:
健康な人であれば、立ち上がった瞬間に交感神経が働き、血管を収縮させて血圧を維持し、脳に十分な血液を送ります。しかし、ODの方はこの交感神経の働きが鈍くなり、血圧を上げられなくなってしまいます。
- 背 景:
思春期の体の急成長に、自律神経の働きが追いつかないことや、ストレス、生活習慣の乱れなどが関係していると考えられています。
ODの症状が午前中に強い理由

1. 自律神経の覚醒が遅れている(朝の立ち上がりが苦手)
人間の体は、夜間寝ている間に副交感神経が優位になり、血圧が低く保たれています。朝、覚醒して立ち上がるときには、交感神経が活発になり、血圧を急激に上げて脳に血流を送る必要があります。
- ODの場合:
自律神経のバランスが崩れているため、特に起床直後の交感神経の立ち上がりが非常に遅れます。
- 結 果:
脳への血流が十分に確保できず、めまい、頭痛、強い倦怠感といった症状が午前中に最も強く出現します。体が本格的に活動モードに切り替わるのが、昼近くになってしまうのです。
2. 夜間に溜まった血液の処理が追いつかない
長時間寝ている間、血液は重力に従って下半身に溜まっています。
- 立ち上がった瞬間:
溜まった血液を心臓に戻すために、ODではない人は血管を素早く収縮させます。
- ODの場合:
血管の収縮が不十分なため、血液が下半身に溜まったままになり、心臓に戻る血液が減ってしまいます。
- 結 果:
脳が酸欠状態になり、午前中は強い倦怠感や集中力の低下に悩まされます。昼頃になると、体の順応機能が働き始め、症状が緩和していく傾向があります。
したがって、ODの症状は「怠け」ではなく、体が物理的に活動できる状態にないことが原因で、特に午前中の活動に支障をきたしてしまうのです。
日常生活でできる具体的な対処法とセルフケア
ODは治療と並行して、ご自宅での日々のセルフケアが非常に重要です。
生活リズムの調整と起床時の工夫
ODの症状を和らげるためには、自律神経に急激な負担をかけないことが鍵となります。
- 起床時の工夫:
急に起き上がると血圧が下がりやすいため、目覚めた後もすぐに起き上がらず、ゆっくりと時間をかけて体を起こす工夫が必要です。具体的には、起床前に布団の中で足首を動かす、コップ一杯の水分(水や経口補水液)を飲む、頭を少し上げて過ごす時間を設けるなどです。
- 夜間の過ごし方:
自律神経を整えるため、睡眠の質を高めることが重要です。寝る前のスマートフォンやPCの使用(ブルーライト)を控え、軽いストレッチでリラックスするなど、夜間の工夫を取り入れましょう。
食事・運動の工夫
- 食 事:
ODの方は血圧が下がりやすいため、水分や塩分をしっかりと摂ることが重要です。特に朝は、水分補給を心がけましょう。また、血糖値の急激な変動を避けるため、バランスの取れた食事を規則正しく摂ることも大切です。
- 運 動:
無理のない範囲で、筋力低下を防ぐための運動を取り入れましょう。横になった状態や座った状態でできる、軽い筋力トレーニングやストレッチなど、体への負担が少ない運動から始めるのがおすすめです。
学校・仕事復帰と進路の壁

ODを持つ方にとって、学校や仕事への復帰、そして進路の決定は大きな壁となります。しかし、適切な配慮があれば、自分らしく社会参加することは可能です。
学校・職場への理解を求める具体的な配慮
ODは外見からは分かりにくいため、保護者やご本人が学校の先生や職場の担当者に、病気の症状や必要な配慮を具体的に伝えることが重要です。
- 登校・出勤時間: 症状が重い午前中を避け、午後からの登校・出勤を認めてもらう。
- 休憩の確保: 授業中や業務中に、体調が優れないと感じた際に、すぐに休憩時間を確保してもらう。
- 学校生活: 体育の授業など、体力を消耗する活動への配慮。
進路・キャリアの考え方
- 焦らないことの重要性:
「同級生と同じペース」にこだわらず、病気の回復を最優先に考えましょう。進学や就職の時期をずらすことも、長期的なキャリアを考えれば決して遠回りではありません。
- 柔軟な働き方という選択肢:
将来的に体調の波が残った場合でも、リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方ができる職種(IT、Webデザインなど)を選ぶという選択肢もあります。
まとめ|病気と向き合うことが、次の成長につながる
起立性調節障害(OD)は、決して「怠け」や「気の緩み」ではありません。それは、自律神経の不調による、れっきとした病気のSOSです。
この病気と真摯に向き合い、適切な対処法と周囲の理解を得ることで、ODは必ず乗り越えられます。病気と向き合う経験は、自分自身の体調を管理する能力や、困難を乗り越える知恵となり、将来のキャリア形成の大きな土台となるでしょう。ご本人へ: 決して自分を責めないでください。あなたの苦しみは必ず報われます。 保護者・関係者の皆様へ: 適切な理解とサポートで、子どもたちの成長を支えていきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







