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「朝起きられない」は手帳の対象?|起立性調節障害(OD)と障害者雇用のリアル

この記事の内容
はじめに|ODは「障害者手帳の対象外」なのか?

朝の強烈な倦怠感や立ちくらみで、学校や仕事に行きたくても行けない。そんな深刻な状況に直面しているあなたは、「これだけつらいのに、障害者手帳は取れないのか?」「障害者雇用で働けないのか?」という疑問を抱えているかもしれません。
起立性調節障害(OD)の診断だけでは、原則として障害者手帳を取得することはできません。しかし、ODと働くことの現実を知り、適切なステップを踏めば、キャリアを諦める必要はありません。
この記事では、ODと手帳の法的関連性、「二次障害」のメカニズム、そして手帳の有無にかかわらず企業から合理的配慮を得て働くための具体的な方法を徹底解説します。
ODと障害者手帳の法的・医学的関連性
原則:OD単独では手帳の対象外
ODは、主に思春期に多く見られる自律神経の機能不全による病気であり、その診断だけでは障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳)の交付対象とはなりません。
- 身体障害者手帳: ODは心臓や腎臓などの臓器の「構造上の問題」ではないため、身体障害者福祉法の認定基準を満たしません。
- 精神障害者保健福祉手帳: ODは自律神経系の病気であり、統合失調症やうつ病といった「精神疾患」ではないため、精神障害者保健福祉法の認定基準を満たしません。
「二次障害」として認定される可能性
起立性調節障害(OD)の診断だけでは原則手帳は取得できませんが、ODによる長期的な苦痛が原因で二次的に精神疾患を発症した場合に限り、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となる可能性があります。
二次障害のメカニズム
ODによる「二次障害」とは、病気そのものではなく、病気が引き起こす社会的な困難やストレスが原因で、精神のバランスを崩してしまう状態を指します。
- 長期的な困難: ODによる「朝起きられない」「体がだるい」といった症状が続くことで、学校や仕事に行けず、不登校や引きこもりの状態に陥ります。
- 精神疾患の併発: この社会的孤立と自己否定感が、強い抑うつ症状や不安症状を引き起こし、うつ病や適応障害などの精神疾患を併発するケースです。手帳は、この二次的に発症した精神疾患に対して交付されます。
手帳取得の条件:必要なのは「診断名」ではなく「生活の制限」
手帳の交付を受けるには、単なる診断名があるだけでは不十分です。
- 認定の基準: その精神疾患の症状の重さが、国が定める「社会生活に相当な制限があるか」という基準を満たす必要があります。
- 具体例: 「体調の波が激しく、週に3日以上は外出できない」「症状が重く、仕事に就くことが著しく困難」といった、日常生活や社会生活にどれだけ支障が出ているかが重要な判断基準となります。
したがって、ODで苦しんでいる方は、二次的な精神症状が出ている場合、必ず専門医に相談し、生活への影響を正確に診断書に記載してもらうことが重要です。
ODと働く上での現実的な影響と合理的配慮

ODの症状が仕事に与える影響
ODは、働く上で以下のような現実的な課題を引き起こします。これらの影響を企業が正しく理解し、配慮を行うことが長期就労の鍵となります。
- 朝の出勤困難: 症状が強く出る午前中は、体が物理的に活動できない状態にあるため、定時出勤が難しく、結果的に遅刻・欠勤が増加します。午前中は脳への血流が不足しているため、仮に出勤できたとしても、午前中の生産性が著しく低下します。
- 強い倦怠感: 慢性的なだるさや疲労感があるため、長時間の連続した作業や集中力の維持が難しいです。また、体温調節がうまくいかないことも多く、体調の波が業務効率に直結します。
- 立ち仕事や移動の困難: 立ちくらみやめまいといった症状があるため、立ち仕事や頻繁な移動を伴う業務、満員電車での通勤は、症状を悪化させる大きなリスクとなります。
手帳の有無にかかわらず企業が提供する配慮
OD患者の長期就労を支えるためには、障害者手帳の有無にかかわらず、医学的な根拠に基づいた合理的配慮が不可欠です。
- 勤務時間の柔軟な調整: ODの特性である「午後に症状が緩和する」という点に着目した配慮です。フレックスタイム制や午後からの出勤を容認することで、自律神経の覚醒が遅いOD患者の特性に合わせ、最も体調の良い時間帯に最大限のパフォーマンスを発揮できるようにします。
- 作業環境の調整: 休憩時間の増加や、業務量の調整が重要です。
- 休憩: 集中力が持続しない特性に合わせて、こまめに休憩が取れることを許可します。
- 業務: 負担の大きい立ち仕事や頻繁な移動を伴う業務から外し、座ってできる業務の割り当てをメインにします。
- 軽作業・事務: データの入力やチェック業務など、定型的で座ってできる業務がこれに該当します。
- 在宅勤務の活用: 通勤の負担をゼロにする在宅勤務は、体調の波が大きいOD患者にとって最も有効な選択肢の一つです。自宅で安静にしながら働ける環境は、体調の悪化を防ぎ、長期的な安定就労を可能にします。
ODと向き合い、キャリアを継続するためのヒント
ODと向き合いながら長期的にキャリアを継続するには、医学的根拠に基づいた支援と、貢献度をセットにしたコミュニケーションが鍵となります。
専門家への相談と支援制度の活用
ODと向き合いながらキャリアを継続するには、多角的な支援体制の活用が重要です。
- 医師(診断・治療): 診断名と治療だけでなく、「職場での困りごと」を具体的に伝え、勤務時間や業務量に関する医学的な意見書を作成してもらいましょう。ODは自律神経の病気であるため、「午前中の体調不良は医学的な根拠がある」ことを会社に伝えるための強力な武器となります。
- 就労移行支援事業所: 職業訓練やリハビリを通じて、集団生活や業務に慣れるための準備ができます。ここでは、体調の波がある中での安定した働き方を模擬的に練習したり、自己分析を通じて無理なく働ける業務のペースを見つけたりすることが可能です。
企業への「伝え方」の重要性
企業に配慮を求める際は、病名だけでなく、「配慮があれば、どれだけ貢献できるか」を明確に伝えましょう。
- 「配慮」を「貢献」に変えるロジック: 「朝が弱いため、定時出社は難しい」と伝えるだけでなく、「フレックスタイムを利用できれば、午後から最大限の集中力を発揮し、定時内に成果を上げることができます」といったように、配慮と貢献度をセットで強調することが重要です。これにより、企業は配慮を「コスト」ではなく「投資」として捉えることができます。
- 具体的かつ前向きな提案: 配慮を求める際は、「〜ができません」というネガティブな言葉ではなく、「〜という方法で、より正確に業務を遂行できます」という具体的な解決策を提案することが成功の鍵となります。
まとめ|ODと向き合う経験が、あなたを強くする

起立性調節障害(OD)は、決して「怠け」ではありません。それは、自律神経の不調による医学的な病気であり、その症状はあなたのキャリアを大きく左右する現実的な課題です。
OD自体は障害者手帳の対象外ですが、だからといって支援を諦める必要は一切ありません。
この困難を乗り越える鍵は、「体調の波とどう向き合うか」という戦略的な行動にあります。
- コミュニケーションの武器を持つ: あなたの「朝が弱い」という訴えを、「午後から最大限の集中力を発揮し、定時内に成果を上げるための条件」として企業に提案しましょう。配慮を「コスト」ではなく「投資」と捉えてもらうための、前向きな伝え方が重要です。
- 専門家を味方につける: ODによる長期の不調が二次的な精神症状を引き起こす前に、専門家に相談しましょう。医師の「医学的な意見書」や、就労移行支援事業所といった多角的な支援体制が、あなたのキャリアを継続するための強力な土台となります。
ODと真摯に向き合い、適切な支援や配慮を求める経験は、あなたの自己管理能力と困難を乗り越える知恵を育みます。その経験こそが、将来、あなたのキャリア形成の大きな強みとなるでしょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







