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配慮を「お願い」ではなく「提案」に|障害を開示する戦略的コミュニケーション術

この記事の内容
はじめに|コミュニケーションは「自己肯定感」を高める交渉
障害者雇用での面接や入社後のコミュニケーションは、「配慮をお願いする」という心理的な壁を感じがちです。しかし、この壁を乗り越えなければ、長期的な安定就労とキャリアアップは望めません。
この記事の結論は、配慮を求めることは、あなたの能力を最大限に発揮し、会社に貢献するための「戦略的な提案」であるという意識改革です。
本記事では、自分の障害特性を「できない理由」として伝えるのではなく、「より高い成果を出すための条件」として企業に伝える具体的なノウハウを徹底解説します。
「お願い」から「提案」へ|意識改革のステップ

なぜ「お願い」だとキャリアが停滞するのか
「〇〇が苦手なので、配慮してください」という伝え方は、企業側にあなたの能力よりも「欠点」を強く印象づけてしまい、結果として責任の軽い定型業務しか任されないというキャリアの停滞を招きます。これは、あなたの自己肯定感を下げる原因にもなります。
コミュニケーションの目的を「貢献」にシフトする
障害者雇用でのコミュニケーションは、単に「助けを求める」行為ではありません。それは、あなたの能力を最大限に発揮し、会社に貢献するための「自己肯定感を高める交渉」であるという意識改革が不可欠です。
あなたのコミュニケーションの目的を、「助けを求める」ことから「貢献を約束する」ことにシフトしましょう。
- 企業が知りたいのは、「何ができないか」ではなく、「どうすれば最大のパフォーマンスを出せるか」です。 企業は、あなたの配慮を「コスト」ではなく、「この社員の能力を引き出すための必要な投資」として捉えたいのです。
- 「電話対応は苦手です」と伝える代わりに、「電話対応は難しいですが、その時間をデータ分析に充てさせていただければ、部署全体の業務効率を10%改善できます」と提案することで、配慮を求めることが、あなたの能力と貢献の証明に変わります。
この意識を持つだけで、あなたは面接や職場での対話において、自信を持って対等な立場で話せるようになります。
戦略的開示の技術|伝えるべき「3つのC」
配慮を「お願い」ではなく「提案」に変えるには、以下の「3つのC」をセットで伝えることが鍵となります。この伝え方こそが、あなたの自己肯定感を高め、配慮を「コスト」ではなく「投資」として認識させるための戦略です。
C1:Condition(障害の現状と課題)
企業が最も知りたいのは、あなたの「障害名」ではなく、「仕事にどう影響するか」という具体的な事実です。
- NG: 「精神障害なので、疲れやすいです」
- OK: 「精神障害の特性上、午前中は集中力が低下しますが、午後からの方がパフォーマンスが安定します」
- ポイント: 抽象的な「障害名」だけでなく、「いつ、どこで、何が起きるか」という具体的な状況と、あなたの体内リズムをセットで伝えます。これにより、企業はあなたの不調を「怠け」ではなく「医学的な特性」として理解できます。
C2:Cure(解決策としての配慮)
あなたの課題を解決するために、企業が具体的に「何をすべきか」を明確に提示します。
- NG: 「残業はできません」
- OK: 「残業は難しいですが、フレックスタイム制を利用できれば、体調を安定させ、定時内に業務を完了させることができます」
- ポイント: 企業が具体的に何をするべきか(フレックスタイム制の利用、静かな席の提供など)を明確に伝えます。この「Cure」は、あなたの課題を解決する最も重要な手段です。
C3:Contribution(配慮による貢献)
配慮を「コスト」ではなく「投資」として認識してもらうために、必ず「リターン」を約束します。
- NG: (何も言わない)
- OK: 「静かな環境をいただければ、集中力が3倍になり、データ処理の正確性が上がります」
- ポイント: 配慮があれば、そのリターンとして会社に何を提供できるかを約束し、配慮を「コスト」ではなく「投資」として認識してもらいます。あなたの特性が、「高い集中力」や「ミスゼロの正確性」といった強みにつながることを強調しましょう。
実践ガイド|自己肯定感を高める面接・職場での会話術

面接での「強み」に変える言い換え術
配慮を求めることは、「弱点の開示」ではなく、「あなたの能力を引き出すための条件提示」です。以下の具体例を参考に、ネガティブな特性をポジティブな貢献に言い換えましょう。
ケース1:集中力・作業特性に関する言い換え(発達障害・精神障害)
| 課題(NGな伝え方) | 解決策(OKな伝え方) | 企業への貢献度 |
| 「マルチタスクが苦手です」 | 「一つのタスクに集中する方が得意です。業務を一つずつ明確に指示いただければ、誰よりも正確に、迅速に業務を完了させられます」 | 正確性の保証(ミス削減) |
| 「騒音が苦手で集中できません」 | 「静かな環境をいただければ、集中力が高まり、データ処理などの緻密な作業で高いパフォーマンスを出せます」 | 高い生産性と品質 |
ケース2:体力・時間に関する言い換え(身体障害・難病)
| 課題(NGな伝え方) | 解決策(OKな伝え方) | 企業への貢献度 |
| 「長時間の立ち仕事は難しいです」 | 「デスクワークであれば、PCスキルを活かして営業事務の効率を大幅に改善できます。体力的な制約がない分、作業に集中できます」 | 効率化と安定的な業務遂行 |
| 「体調の波があり、急な残業は難しい」 | 「体調管理を徹底するため残業は難しいですが、その分、時間内に業務を完遂する高い時間管理能力で貢献します」 | コスト削減と高い時間管理能力 |
ケース3:コミュニケーションに関する言い換え(精神障害・難病)
| 課題(NGな伝え方) | 解決策(OKな伝え方) | 企業への貢献度 |
| 「電話対応は不安なのでできません」 | 「電話は難しいですが、メールやチャットでの対応は非常に得意です。テキストでの正確な情報共有でチームのミスを防ぎます」 | ミスの予防と情報共有の徹底 |
入社後の「困りごと」の伝え方
入社後、配慮を求めることは、「助けを求める行為」ではなく、「プロとして安定して成果を出すための報告」であるという意識が重要です。
事前準備: 「困りごとリスト」を作成し、客観的なデータで伝える
「困りごとリスト」を作成することは、合理的配慮を求める上で最も重要な「客観的なデータ」を企業に提示するための行動です。感情論ではなく、事実に基づいたデータで話すことで、交渉力が格段に上がります。
1. 「困りごとリスト」の具体的な作り方
これは、あなたの不調が「いつ、どこで」起こるかを記録するシンプルな作業です。特別なツールは不要で、スマートフォンのメモ帳やExcelで十分です。
| 項目 | 記録する内容 | 目的 |
| 日付・時間 | 月曜日の午前中(例:10:00〜11:00) | 症状に波がある時間帯を特定する。 |
| 場所・環境 | 騒がしいオープンスペース、または窓際で日光が強い | 環境要因が不調の原因であることを証明する。 |
| トリガー(引き金) | 上司から口頭で3つの指示を同時に受けた | 症状を引き起こす具体的な原因(マルチタスク、口頭指示など)を特定する。 |
| 症状・結果 | 思考がフリーズし、その日の午後までミスが続いた | 不調が業務の成果にどう悪影響を与えたかを客観的に示す。 |
2. なぜこのデータが必要なのか?
このリストは、企業に対してあなたの苦しみを「甘え」ではなく「具体的な課題」として位置づけ、「配慮=業務改善」であると説明するための根拠となります。
- 企業への提示:
「騒音下では集中力が50%以下になります。静かな席に移ることで、午前中のデータ入力の正確性を95%以上にできます」と、配慮の結果、企業が得られる利益を数値で示せます。
- 専門家との対話:
医師や産業医にこのリストを見せることで、「この環境では医学的に不調が出るのは当然だ」という専門的な裏付けを得るための重要な資料となります。
このように、リストを作成することは、あなたの自己理解を深め、配慮交渉を成功させるための戦略的な行動なのです。
相談のタイミング: 「小さな違和感」の段階で報告する
配慮を求めるのは、症状が悪化してからでは遅すぎます。
- 理想的なタイミング:
症状が悪化する前、「小さな違和感」の段階で上司に報告し、業務調整を依頼することが重要です。
- 具体的な行動:
「最近、午前中の集中力が少し落ちてきたので、来週から午前のタスクを一つ減らしていただけませんか?」といったように、予防的な提案をすることで、信頼関係を築けます。これにより、企業も大きな問題になる前に、最小限の調整で済みます。
まとめ|あなたの苦しみは「努力不足」でも「甘え」でもない

あなたの苦しみは「努力不足」や「甘え」ではありません。それは、あなたが「頑張りすぎている」という心身からのSOSであり、環境と特性の摩擦が生み出した結果です。診断名がない「グレーゾーン」だからといって、支援を諦める必要は一切ありません。
まず行動してください。
- 「困りごとリスト」を作成する:
あなたの苦しみを感情論ではなく、「いつ、どこで、何に困るか」という客観的なデータに変えましょう。このデータこそが、支援を求める際の最も強力な武器となります。
- 専門家を味方につける:
その「困りごとリスト」を持って、精神科医や産業医に多角的に相談してください。診断名がなくても、専門家の「意見書」は、あなたの苦しみを医学的な根拠に変え、会社との配慮交渉を成功に導きます。
支援は診断名ではなく、「困りごと」の解決から始まります。勇気を出して一歩踏み出し、あなたの特性に合った「職場の環境調整」を実現し、自分らしく働く未来を創りましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







