- お役立ち情報
- 働き方・職場での工夫
障害者雇用を成功させる鍵|事務・経理部門の「マニュアル化」と意識改革

この記事の内容
はじめに|「こだわり」を「強み」に変える意識改革

経理・事務部門で、「数字のミス」や「報連相の不足」といった課題に直面していませんか?これらの課題は、実は無意識の偏見と業務の仕組みの甘さが原因かもしれません。
この記事の結論は、発達障害(ASD)の「強いこだわり」こそが、正確性が最優先される経理・事務部門にとって、「ミスゼロ」を実現するための強力な武器となるということです。制度やマニュアルだけでなく、採用側の「意識の変革」が、障害者雇用を成功させる鍵を握ります。
本記事を通じて、ASDの特性の理解、特性を活かした業務の割り振り方、そして部署全体の生産性を向上させるための具体的なコミュニケーション術を学んでいきましょう。
ASDの特性理解|「こだわり」が「正確性」を生むメカニズム
ASDの特性:「強いこだわり」と「反復作業の正確性」
ASD(自閉スペクトラム症)を持つ社員には、業務の安定性と正確性に直結する、非常に強力な特性があります。
- 内容: ASDを持つ方が持つ、定型業務や反復作業に対する極めて高い集中力と正確性は、事務・経理部門にとって大きな強みです。特に、ルールやパターンが明確な作業では、健常者以上のパフォーマンスを発揮することがあります。彼らは、「ルール通りに、間違いなく」業務を完遂することに強いこだわりを持つため、ミスが許されない部署でこそ、その能力が光ります。
- 活かせる業務例: データ入力、帳簿の照合、マニュアル作成、経費チェックなど、緻密さが求められる業務は、ASDの特性を最大限に活かせます。
- 具体的な成果: 毎日のルーティンワーク(例:日報の集計、顧客データの入力)において、ミス率を限りなくゼロに近づける安定した実行力を発揮します。
- マニュアル作成: 曖昧な点を許容しない論理的な思考は、分かりやすく、抜け漏れのない完璧なマニュアル作成という形で、部署全体のノウハウ蓄積に貢献します。
コミュニケーションとマルチタスクの課題
ASDの特性は、環境が合わないと裏目に出て、業務に支障をきたす課題となります。しかし、これらは「できない」のではなく、「伝わり方や環境が合っていない」ことが原因です。
- 抽象的な指示の理解が難しい: 「適当にやっておいて」「常識で考えて」といった抽象的な指示は、ASDを持つ社員にとって大きな混乱を招きます。具体的なルールや手順がないと、何から手をつけて良いか分からず、作業がストップしてしまいます。
- マルチタスクでミスが発生しやすい: 電話対応をしながらデータ入力を行うなど、複数のタスクを同時にこなすマルチタスクは、脳に大きな負荷がかかり、ミスが発生しやすくなります。これは、情報を順序立てて処理する特性が原因であり、努力や意欲の問題ではありません。
- 特性が課題となる側面: この課題は、業務のミスだけでなく、「報連相(報告・連絡・相談)」の遅れにもつながります。混乱している状況を言葉で説明するのが難しく、結果的に問題を一人で抱え込んでしまうことになりがちです。
「ミスゼロ」を実現する現場のコミュニケーション術

術1:指示の「5W1H」とチャットでの言語化
正確性が最優先される事務・経理部門では、口頭指示はミスの温床です。指示を「言語化」し、全員で共有することが不可欠です。
- 内容: 「あれ、やっておいて」といった曖昧で抽象的な指示は避け、具体的な5W1H(いつ、誰が、何を、どこで、なぜ、どうやって)で明確に指示を出すことが極めて重要です。口頭指示は厳禁とし、チャットやメールで「文字」として残すことを徹底します。
- 効果: このルールは、ASD社員の特性である「抽象的な指示の理解が苦手」という課題を解消するだけでなく、健常者も含めたチーム全体の聞き間違いや指示忘れを防ぎ、情報伝達の正確性を劇的に高めます。
術2:「報告の型」を決める
報連相のタイミングやフォーマットを明確にルール化することで、コミュニケーションの不安を解消し、業務効率を向上させます。
- 内容: 報告のタイミング(例:タスク完了時、問題発生時)やフォーマット(例:「結論から先に」)を明確にルール化します。
- 実践例とメリット: 「体調の波がある社員は、業務に入る前に『今日のコンディション』をチャットで報告する」「進捗報告は必ず【結論】→【理由】→【次にやること】の順で伝える」といったルールは、障害を持つ社員だけでなく、全社員の報連相の質が向上します。曖昧な報告や無駄なやり取りが減るため、業務の抜け漏れが減り、部署全体の波及効果として迅速な意思決定につながります。
特性を活かした「仕組み化」が部署全体を強くする
業務のマニュアル化と細分化
障害者のために行った「業務の細分化」や「マニュアル化」は、特定の社員への配慮に留まらず、全社の生産性向上という形でリターンをもたらします。
- 内容: 業務をマニュアル化し、一つの作業に集中できる環境を作ることの重要性。このプロセスで、曖昧だった業務手順が「誰でも、いつでも、同じ品質で」作業できるレベルまで分解・可視化されます。
- 波及効果: 誰でも作業できる仕組みを作ることで、業務の属人化を防ぎ、新入社員の教育時間を劇的に短縮します。マニュアルの精度が上がったことで、チーム全体のムダな問い合わせや手戻りが減り、企業の持続的な成長につながります。
「チェック体制」への組み込み戦略
ASD社員の特性である「強いこだわり」や「間違いを見つける力」は、経理・事務部門のミスゼロを実現するための強力な武器です。
- 内容: ASD社員の特性を活かし、最終的なデータ照合やチェック業務に配置することで、部署全体のミス率を劇的に低下させます。
- 戦略的な配置: これは単なる作業割り振りではなく、特性を活かした戦略的な配置です。細かい数字の違いや、手順の抜けを見つけることに高い能力を発揮するため、最終チェックの「要(かなめ)」として機能してもらいます。これにより、人の目では見落としがちなエラーがゼロに近づき、部署全体の信頼性が飛躍的に向上します。
まとめ|「強み」を活かし、「共生と成長」を実現する

このコラムで見てきたように、ASD社員の「強いこだわり」や「極めて高い正確性」は、経理・事務部門の「ミスゼロ」を実現するための強力な武器です。
人事・管理職の皆様へ
- 意識改革は「投資」である: 障害者雇用は、決してコストではありません。それは、企業の成長に直結する「戦略的投資」です。
- 仕組みが全員を強くする: 障害を持つ社員のために行った「業務のマニュアル化」「指示の言語化」は、新入社員の教育時間を短縮し、全社員のミスを減らすという形で、企業全体にリターンをもたらします。
- 戦略的な配置で生産性向上: 「誰でもできる仕事」に留めず、彼らの「強いこだわり」を活かし、最終的なデータ照合やチェック業務といった重要な役割に配置してください。その緻密な作業こそが、部署全体の信頼性を飛躍的に向上させます。
「強み」を活かし、「共生と成長」を実現することが、現代の企業に求められるダイバーシティ推進の真の姿です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







