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側弯症とキャリア:見えない疲労をマネジメントし、長期就労を叶える戦略

この記事の内容
はじめに:側弯症は「見た目だけではない」慢性疲労との闘い

「側弯症(そくわんしょう)」と聞くと、背骨が曲がっている状態をイメージされる方が多いでしょう。しかし、この疾患と共に働く人々が日々直面している課題は、単なる「外見の変形」にとどまりません。特に就労環境においては、「見えない疲労」や「慢性的な疼痛(とうつう)」との絶え間ない闘いが、キャリア形成の大きな障壁となっています。
側弯症を持つ当事者も、雇用する企業側も、この疾患の本質的な困難を正しく理解し、適切な対策を講じなければ、能力を十分に発揮できないまま、早期離職につながるリスクを抱えることになります。
問題提起:外見の変形に隠された、姿勢維持による強い疼痛と疲労の現実
側弯症の多くは、外見からはその重症度が分かりにくいものです。しかし、背骨が曲がっている状態は、身体の重心が常にずれていることを意味します。このズレを補正し、重力に逆らって正しい姿勢を保とうとするために、無意識のうちに特定の筋肉が過度に緊張し続けます。
この持続的な筋緊張こそが、側弯症を持つ社員が抱える「見えない苦労」の正体です。
- 慢性疼痛: 常に片側に負荷がかかることで、腰や背中、首筋に慢性的な痛みが発生します。
- 集中力の低下: 痛みを我慢し、姿勢を維持しようとする無意識の努力が、脳と体力を消耗させ、業務中の集中力と持続力を奪います。
- 誤解の発生: 外見上元気に見えるため、「姿勢が悪い」「サボっている」「体力がない」と周囲に誤解されやすく、これが精神的なストレスとなり、症状をさらに悪化させる悪循環を生みます。
記事の結論:適切な環境整備と合理的配慮で、能力を最大限に発揮した安定就労は可能
側弯症がキャリアの障壁となり得ることは事実ですが、絶望する必要はありません。多くの成功事例が示すように、この疾患を持つ社員も、適切な合理的配慮と自己管理戦略によって、能力を最大限に発揮し、長期的な安定就労を実現することは十分に可能です。
鍵となるのは、「痛みをゼロにすること」ではなく、「痛みの影響を最小限に抑える環境を整えること」です。
企業側が、高機能なオフィスチェアの導入や、フレックスタイム制などの柔軟な勤務形態を提供することで、社員は「自分の身体と相談しながら働く」ことができるようになり、結果として高い定着率と生産性につながります。
この記事で得られること:症状の正しい理解、障害者手帳の基準、職場で必須の配慮策
本コラムは、側弯症と共に働く当事者、および雇用する企業の人事・管理職の方々に対し、以下の具体的な知識と戦略を提供します。
- 症状の正しい理解: 側弯症がもたらす疼痛と疲労の医学的根拠。
- 障害者手帳の基準: 身体障害者手帳(体幹機能障害・呼吸器機能障害)の交付対象となる境界線。
- 職場で必須の配慮策: 長時間労働、座位の困難、通勤負担といった課題を解決するための具体的な合理的配慮(チェア、デスク、勤務形態の調整)。
- キャリア戦略: 側弯症を持つ社員が持つ「自己管理能力」を強みとして活かし、安定就労に繋げるキャリアパス。
この知識を通じて、側弯症を持つ人々が不安なく能力を発揮し、企業がその力を最大限に活用できる環境づくりを目指します。
1.側弯症の基礎知識:症状の重さと障害者手帳の境界線
側弯症と共に働く上での戦略を立てるには、まず疾患の医学的な定義、重症度の判断基準、そして公的な支援の枠組みである障害者手帳の交付基準を正確に理解しておく必要があります。
側弯症とは?背骨の曲がり(コブ角)で判断される重症度と進行度
側弯症は、脊柱(背骨)が左右に湾曲し、かつねじれを伴う疾患です。単に体が曲がっているだけでなく、この「ねじれ」が複雑な身体的な問題を引き起こします。
症状の定義:脊柱がS字やC字に曲がる病態と、その一般的な治療法
- 病態: 脊柱が正常な状態ではありえないS字状またはC字状に曲がる変形を指します。 原因は不明な「特発性側弯症」が約8割を占めます。
- 重症度: 脊柱の曲がり具合は、レントゲン写真で測定される「コブ角(Cobb angle)」という角度で判断されます。
- 軽度: コブ角10度未満は経過観察。
- 中度: コブ角20~40度程度で、装具(コルセット)による治療が中心。
- 重度: コブ角40~50度以上になると、進行リスクが高く、手術の適用が検討されます。
- 治療法: 成長期には装具療法や体操、進行が止まった後も、痛みの緩和を目的とした運動療法やストレッチなどが継続されます。
「疲労」の医学的根拠:バランス維持のための無意識な筋緊張がもたらす慢性疼痛
側弯症による就労上の最大の課題は、慢性的な痛みと疲労です。これは、単なる「肩こり」ではありません。
- 無意識の代償作用: 脊柱が曲がっていても、私たちは目線を水平に保とうとします。この「水平維持の指令」により、体は常に傾きを代償しようとします。その結果、曲がった側の反対側の筋肉や、腰回りの深層筋が無意識のうちに過度に緊張し続けます。
- 慢性疼痛の発生: この持続的な筋緊張が血流を悪化させ、腰や背中の特定の部位に慢性的な疼痛を引き起こします。
- 集中力への影響: 痛みを我慢し、姿勢を保とうとするエネルギー消費は膨大です。これが脳にも伝わり、業務への集中力や持続力が著しく低下する原因となります。
障害者手帳の交付基準:軽度・中度では対象外となる理由と、重度な交付条件
障がい者雇用枠での就職を考える際、側弯症が身体障害者手帳の交付対象となるか否かは非常に重要なポイントとなります。
交付条件:体幹機能障害または呼吸器機能障害として認められる具体的なコブ角や支障の程度
側弯症は、主に「体幹機能障害」または「呼吸器機能障害」として審査されますが、軽度から中度の側弯症は原則として交付対象外です。
- 体幹機能障害:
- 条件: 脊柱の変形が重度であり、その変形によって坐位(座っている姿勢)の保持や起立に著しい支障がある場合に交付対象となります。具体的には、装具を用いても坐位や起立の保持が困難な状態などが該当します。コブ角の数値だけでなく、その変形が日常生活や機能にどれだけ支障を与えているかが評価されます。
- 呼吸器機能障害:
- 条件: 側弯が進行し、胸郭(肋骨)が著しく変形することで肺を圧迫し、呼吸機能に重篤な影響を与えている場合に交付対象となります。呼吸機能の検査結果(例:肺活量や一秒率)が、障害等級に定める基準に該当する必要があります。
側弯症と共に働く社員を雇用する企業は、手帳の有無にかかわらず、社員の訴える疼痛や疲労が、医学的根拠に基づくものであると理解し、合理的配慮を提供することが求められます。
2.就労で直面する3つの主要な課題と誤解

側弯症を持つ人々が就労環境で直面する困難は、単なる「体の不調」として片付けられるものではありません。それらは、業務遂行能力、キャリア継続、そして精神的な安定に深く関わる構造的な課題です。
課題1:慢性的な「疼痛(とうつう)」と集中力の低下
慢性的な痛みと疲労は、側弯症を持つ社員の業務パフォーマンスを最も大きく左右する要因です。
痛みのメカニズム:バランスの崩れが引き起こす腰痛・背中の痛みが、体力を奪う構造
側弯症による脊柱の湾曲は、身体の軸をずらします。体は無意識にこのズレを補正しようとするため、常に過度な筋肉の緊張状態にあります。
- 持続的な筋活動: 健常者がリラックスしている時でも、側弯症を持つ社員は姿勢を保つために特定の筋肉を酷使しています。この状態が長時間続くことで、腰椎や胸椎周辺に血流障害や炎症が生じ、慢性的な疼痛へと発展します。
- 体力の消耗: 痛みと戦うためのこの「代償作用」は、休息中も止まることがなく、一般の人が想像する以上に体力を消耗させます。これが、業務中に頻繁な疲労感や倦怠感として現れる構造です。
見えない疲労:痛みを抑えようとする精神的負荷が業務の集中力に与える影響
身体的な痛みだけでなく、痛みを我慢しようとする「精神的負荷」もまた、業務に深刻な影響を及ぼします。
- 認知資源の奪取: 脳は常に痛みの信号を受け取っているため、本来業務に集中すべき認知資源の一部が、「痛みの監視」や「姿勢の微調整」に割り当てられてしまいます。
- 集中力のムラ: この見えない疲労により、業務中に急激な集中力の低下や思考の鈍化が生じやすくなります。特に複雑な計算やクリエイティブな作業において、ミスの増加や作業効率のムラを引き起こします。
課題2:長時間の「座位」が引き起こす業務上の問題
現代のオフィスワークは長時間座っていることが前提ですが、これは側弯症の社員にとって最大の負担となります。
デスクワークの弊害:座り続けることによる痛みの悪化と、それに伴う離席の増加
長時間同じ姿勢で座り続けることは、側弯の症状を悪化させる主要因です。
- 坐骨への偏荷重: 脊柱の湾曲により、椅子に座った際に片方の坐骨や腰部に過度に体重がかかり、痛みが増強されます。特に、背もたれのない椅子や、調整機能のない一般的なオフィスチェアでは、痛みの悪化が顕著です。
- 頻繁な離席: 痛みに耐えきれず、立ち上がって体を伸ばしたり、姿勢を変えたりするための離席が増えます。これは、チームメンバーから見ると「集中力がない」「席を外すことが多い」と誤解される原因となり得ます。
解決の糸口:座り作業と軽い移動を組み合わせる業務設計の重要性
この課題を解決するためには、社員に「座り続けること」を求めない業務設計が必要です。
- 活動のローテーション: 連続した座位時間を制限し、座り作業(PC作業)と軽い移動(書類の整理、コピー取り、立ったままのブレストなど)を意図的に組み合わせる業務ローテーションを設計します。
- スタンディングデスクの活用: 昇降式デスクを導入することで、座る姿勢と立つ姿勢を頻繁に切り替えられるようにし、特定の部位への負担を分散させます。
課題3:周囲の「見えない苦悩」への無理解と誤解
側弯症の多くは外見からは症状が軽度に見えるため、周囲の無理解が精神的なストレスを増大させます。
無理解のリスク:「サボり」や「体力が足りない」と誤解されやすい心理的ストレス
目に見えない慢性疼痛と疲労は、職場での評価に影響を及ぼします。
- ネガティブな解釈: 頻繁な姿勢の変更、短時間の休憩、体調不良による欠勤・早退などが、「やる気がない」「協調性がない」といった根拠のないネガティブな解釈を生み出しやすくなります。
- 自己開示の困難: 社員自身も、「理解されないのではないか」「特別扱いを求めると評価に響くのではないか」という不安から、症状や必要な配慮について正直に伝えられないというジレンマに陥ります。
- 精神的負担の増大: 身体的な痛みだけでなく、この「誤解されることへの恐怖」が精神的なストレスとなり、さらなる体調悪化を引き起こす悪循環を生みます。企業側には、この「見えない苦悩」の存在を理解し、コミュニケーションの機会を設けることが求められます。
3.職場で必須の「合理的配慮」と環境調整の具体策
側弯症を持つ社員が長期にわたり安定して能力を発揮するためには、慢性的な疼痛と疲労に直接アプローチする「合理的配慮」が不可欠です。配慮は大きく分けて、「物理的な環境(ハード面)」と「制度・ルール(ソフト面)」の二つの側面から実行されます。
休憩と姿勢管理のための環境整備と機器導入
側弯症の社員にとって、「いかに特定の部位への負担を分散させるか」が最も重要な課題です。座り作業が中心となるオフィスワークにおいて、身体を支えるハード面の配慮は必須となります。
ハード面の配慮:高機能オフィスチェア、昇降式デスク、フットレストの導入基準
社員の体型と症状に合わせて、体の負担を最小限に抑えるための機器を導入します。
- 高機能オフィスチェア(最優先):
- 基準: ランバーサポート(背骨のS字カーブを支える機能)の位置と圧力が調整可能であること。座面の奥行きが調整でき、膝裏が圧迫されないこと。リクライニング機能があり、短時間のリラックス姿勢を取れること。
- 目的: 身体のズレを矯正するのではなく、楽な姿勢で体圧を均等に分散させることを目的とします。
- 昇降式デスク(スタンディングデスク):
- 基準: 電動またはガス圧で、スムーズかつ静かに高さを変えられるもの。
- 目的: 長時間同じ姿勢を続けることによる痛みの悪化を防ぐため、座る姿勢と立つ姿勢を頻繁に切り替えられる環境を提供します。
- フットレスト・エルゴノミクス機器:
- 基準: 座位時に足が床に届かない、または正しい姿勢を保ちにくい場合に導入します。キーボードやマウスも、身体に負担のかからない人間工学に基づいた製品を選定します。
ソフト面の配慮:業務中の短時間休憩(リクライニング休憩)を可能にする社内ルールの確立
高機能な機器を導入しても、それを活用できるルールがなければ意味がありません。「休憩=サボり」と誤解されないための文化的配慮が必要です。
- 短時間休憩の制度化: 業務中に、「席を離れて体を伸ばす」「リクライニングチェアで5分間休む」といった短時間の休憩を、周囲に遠慮なく取れるルールを確立します。
- 周知徹底: 管理職がチームメンバーに対し、「〇〇さんの休憩は、集中力を持続し、ミスの発生を防ぐための業務上不可欠な措置である」と説明し、理解を求めます。
- 休憩場所の確保: 休憩室や空いている会議室など、横になったり、完全に体を休ませたりできる静かなスペースを確保し、利用を許可します。
勤務形態の柔軟化による通勤・体調負担の軽減
側弯症の痛みの強さは日によって波があり、また、通勤ラッシュのストレスは症状を悪化させる大きな要因となります。制度面での柔軟性が、長期的な就労継続を支えます。
制度面の配慮:テレワークの活用、コアタイムの柔軟なフレックスタイム制度
体調の波や通勤の負担を吸収する柔軟な働き方を導入します。
- テレワーク(在宅勤務)の積極活用:
- 目的: 満員電車や長距離通勤による身体的負担を大幅に軽減します。また、自宅であれば、自身にとって最も快適な姿勢(例:床に横になる、特定のサポーターを使用する)で業務に臨むことができ、セルフケアを優先できます。
- 運用: 業務内容に応じて、週数回の在宅勤務を基本とするハイブリッドワークを導入します。
- コアタイムの柔軟なフレックスタイム制度:
- 目的: 慢性疼痛や疲労が強い朝、無理に出社時間を合わせる必要がなくなり、症状が比較的落ち着いている時間帯に業務を開始できます。
- 運用: コアタイムを極力短く設定するか、体調によって当日の出社時間を調整できる「スライド勤務制度」などを取り入れます。
業務内容の調整:重い物の運搬や長時間立ちっぱなしの業務からの明確な免除
身体への負荷が集中する業務は、明確に合理的配慮の対象とします。
- 物理的負担の軽減: 重い書類や機材の運搬、長時間の立ち作業(例:展示会や受付業務)、前かがみになる作業など、脊柱に過度な負担をかける業務からは、明確に免除または代替措置を講じます。
- 業務の多様性確保: 座りっぱなしのデスクワークのみを割り当てるのではなく、立ち作業(スタンディングデスク)や軽い移動を伴う作業を意図的に組み込むことで、血流改善と負担分散を図ります。社員と上司が協力し、業務リストを作成して「体の負担度」を評価し、調整することが重要です。
4.側弯症を持つ社員の「強み」を活かしたキャリアパス戦略
側弯症を持つ社員のキャリアを考える際、単に「体を休ませる」という消極的な発想に留まるべきではありません。むしろ、彼らが日々「痛みと疲労をマネジメントする」ために培ってきた高度な自己管理能力こそ、企業にとって価値ある「強み」であり、それを活かしたキャリアパスを戦略的に設計することが重要です。
特性を活かした「マネジメント能力」と「専門性の獲得」
自身の体調と向き合い続けた経験は、ビジネスシーンで応用可能な強力なスキルとなります。
自己管理能力:自身の体調と痛みを細かくモニタリングする能力を業務に活かす
側弯症を持つ社員は、自身の体の変化を客観的に観察し、データを記録し、原因と対策を分析するというプロセスを日常的に行っています。これは、ビジネスにおけるPDCAサイクルや、プロジェクト管理に直結する能力です。
- リスクマネジメント: 自身の体調の波を把握しているため、業務の締め切りや負荷の高いタスクに対し、事前に「無理をしないための対策(例:前倒し作業、周囲への相談)」を講じるリスク予見能力に長けています。
- 高い計画性: 集中力が持続する時間帯と、休息が必要な時間帯を把握しているため、自己の作業時間を緻密に計画・実行する能力が高く、与えられたタスクを正確に完了させる信頼性があります。
集中力の持続:体調が安定している時の、緻密な作業における高い集中力と正確性
適切な環境調整(合理的配慮)がなされ、痛みや疲労がコントロールされている状態であれば、側弯症を持つ社員は極めて高い集中力を発揮できます。
- 業務への没入: 外部刺激や身体の不調といった大きなノイズが排除されている状態では、業務に深く没入し、データ入力、校正、分析、コードチェックといった緻密さが要求される作業で、高い正確性を維持できます。
- 品質の安定性: 自分の体調が安定している時のアウトプットの質を維持することに強く意識が向くため、成果物の品質が安定しています。
体への負担が少ないキャリアパスの選択
体の負担を最小限に抑えつつ、自身の専門性を高められる職種へ戦略的に転換することで、長期的なキャリアの継続性を担保します。
専門職への転換:医療・健康管理分野、データ分析、情報処理など
体への物理的な負荷が少ない、デスクワーク中心の専門職に強みを発揮します。
- データ分析・情報処理: 長時間の立ち仕事や運搬が不要で、緻密な集中力を活かせるデータ分析、プログラミング、システム開発、QA(品質保証)といった分野は、側弯症を持つ社員に適しています。
- 医療・健康管理分野: 自身の体調管理や治療経験を通じて得た医療や健康に関する深い知識を活かし、企業の産業保健スタッフのサポート業務や、健康管理システムに関わる職種で活躍できます。
- バックオフィス業務の専門化: 人事、経理などのバックオフィス業務でも、定型的なタスクを高い精度でこなす能力が活かされます。
長期安定就労の実現:デスクワーク中心で、自身の体調管理スキルが活かせる職種への配置
キャリアパス設計において、最も重視すべきは「継続性」です。
- 身体的負荷の排除: キャリアアップの過程で、現場監督や営業職など、長時間立位や重労働、不規則な生活を伴う業務への異動を避けるよう、配慮事項を明確に伝達します。
- 役割の定型化: 突発的な緊急対応や残業が少ない、業務内容が事前に予測可能な役割に配置することで、疲労の予測とマネジメントを容易にし、安定した生活リズムを維持できるようにします。
側弯症は、社員に「自己を律し、環境を調整する能力」を身につけさせています。この能力を正しく評価し、活かせる環境とキャリアパスを提供することこそが、企業にとって真の人的資源の活用となります。
5.まとめ:「痛み」を乗り越え、自分らしく働くための共創

側弯症と共にキャリアを築くことは、慢性的な疼痛と疲労という見えないハンデを抱えながら、毎日を生きるということです。本コラムで繰り返し強調してきたように、この挑戦を成功させるためには、個人の努力だけでなく、企業側が「側弯症の現実」を正しく理解し、それに基づいた「環境調整」を戦略的に行うことが不可欠です。
記事の要約:側弯症と働くには、症状の正しい理解と、職場の環境調整が不可欠
側弯症を持つ社員が長期にわたり安定して働くための要点を再確認します。
- 症状の本質を理解する: 側弯症の最大の課題は、外見の変形ではなく、姿勢維持のために費やされる無意識の筋緊張が引き起こす慢性的な疼痛と疲労です。この疲労が、集中力と業務の継続性を奪います。
- 物理的な配慮の徹底: 長時間座位の負担を軽減するため、高機能なオフィスチェア、昇降式デスク、および業務中の短時間休憩を認めるソフト面のルール化が必須です。
- 柔軟な働き方の導入: 痛みの波や通勤負担を軽減するため、テレワーク(在宅勤務)や柔軟なフレックスタイム制度などの制度的配慮が、体調マネジメントに直結します。
- 強みを活かす戦略: 側弯症を持つ社員が持つ緻密な自己管理能力や計画性を評価し、体への負荷が少ないデータ分析や情報処理といった専門職に配置することで、能力を最大限に引き出します。
読者へのメッセージ:企業側には「個別の環境調整」を、当事者には「体のSOSを正直に伝える勇気」を促す
側弯症を持つ人々が不安なく能力を発揮し、企業がその力を最大限に活用できる社会を目指して、企業と当事者の双方にメッセージを送ります。
【企業・人事の皆様へ:「個別の環境調整」を戦略的な投資と捉えてください】
一般的な障がい者雇用ガイドラインだけで、側弯症のニーズをカバーすることはできません。必要なのは、社員一人ひとりの痛みの部位、曲がり方、疲労のパターンに合わせたオーダーメイドの環境調整です。オフィスチェアや昇降式デスクへの投資は、単なるコストではなく、社員の生産性を向上させ、長期定着を保障する戦略的な投資です。この柔軟な姿勢こそが、企業に多様性と安定性をもたらします。
【当事者の皆様へ:「体のSOSを正直に伝える勇気」を持ってください】
「迷惑をかけたくない」「弱音を吐きたくない」という気持ちは痛いほど理解できますが、痛みを我慢し続けることは、キャリアを自ら閉ざすことにつながります。あなたの体は、最も信頼すべきパートナーです。体のSOSを客観的に観察し、「痛みの度合い」「それによる業務効率への影響」「必要な具体的措置」を明確に言語化し、上司や産業医に正直に伝えてください。その一歩の勇気が、あなた自身のキャリアを支え、後に続く側弯症を持つ人々の働きやすさをも切り拓きます。
側弯症と働くことは、制限ではなく、自分の身体とキャリアを深くマネジメントする「力」に変えることができるのです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







