2025/11/14
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【DX後の人事戦略】障害者雇用で「人事・総務」部門が選ばれる理由と任せるべき専門業務

この記事の内容

はじめに:大企業で人事部門が「配属先」となる理由。DX後の新しい役割

大企業の障害者雇用において、人事・総務部門は最も一般的な配属先の一つです。これは偶然ではなく、企業のコンプライアンス業務の特性に基づく戦略的な選択の結果です。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は、この人事部門の役割を根本から変えつつあります。


記事の導入:人事・総務部門に集中する現状と背景にある企業の戦略

障害者雇用の配属先が人事・総務部門に集中している主な背景には、以下の理由があります。

  1. コンプライアンスの核: 人事部門が障害者雇用促進法の遵守と合理的配慮の責任を直接担っているため、理解度と責任感が最も高い。
  2. 業務の切り出しやすさ: 従業員データ管理や書類処理など、定型的で対人接客が少ない業務が多く、業務を細分化し、障害特性に合わせて「切り出しやすい」特性がある。

この人事部門に、DXによって「単純作業の消滅」という新たな課題が持ち込まれています。

記事の結論:人事・総務部門は、単なる事務処理でなく、データ監査やサポート専門職として、社員の安定に貢献できる最適なフィールドである

DXにより、単純な勤怠データ入力などはRPAに代替されましたが、その代わり、「AIが処理した後の最終確認」「機密データの監査」「複雑な手続きの例外対応」といった、「人間の責任」と「緻密な集中力」が不可欠な高付加価値業務が人事部門に残されました。

人事・総務部門は、これらのデータ監査やサポート専門職として、障害を持つ社員の安定した能力を活かし、会社の基盤(人材管理)の安定に貢献できる、最適なキャリアフィールドなのです。

1. 人事・総務部門が「配属先」となる3つの本質的な理由

大企業が障害者雇用で人事・総務部門を主要な配属先とするのは、法的な要請業務の安定性、そして機密保持という3つの本質的な理由があるからです。この部門は、障害特性を持つ社員の能力が最大限に活かせる「安全地帯」となりやすい特性を持っています。


① 法定雇用率遵守とコンプライアンスの核

人事部門は、企業のコンプライアンス(法令遵守)において最も責任が重い部門です。

  • 合理的配慮への理解度、法律遵守への責任感が最も高い: 人事部門は、障害者雇用促進法に基づき、障害者の採用、配置、および合理的配慮の提供を直接担っています。このため、他の部署に比べて、障害に関する知識や制度への理解、そして法律を遵守する責任感が最も高いです。
  • 効果: 配属後も、配慮に関する知識が共有されやすいため、社員は安心して支援を求めることができます。

② 業務の安定性と切り出しやすさ

人事・総務業務の性質自体が、障害特性と非常に相性が良いです。

  • 対人接客が少なく、ルーティンが多く、業務が切り出しやすい特性: 人事・総務の業務(例:勤怠データ処理、福利厚生の管理、備品発注)は、対外的な接客が少なく、多くがマニュアル化可能なルーティン作業です。
  • 効果: 精神障害を持つ方が苦手とする突発的な対応人間関係の複雑なストレスが少ないため、業務を細分化・限定しやすく、安定した定着に繋がりやすいです。

③ 社員のデータ管理の重要性

人事部門が扱う情報は、企業にとって最も重要な機密情報です。

  • 個人情報・機密情報を扱うため、信頼性と正確性が最優先される: 人事部門は、社員の給与、評価、病歴、個人情報といった高度な機密情報を扱います。このため、業務には高い信頼性と、数字やデータにミスがない正確性が求められます。
  • 効果: この正確性・緻密さへの要求は、発達障害(ASD)など、高い集中力と几帳面さを持つ社員の特性が「強み」として活きる環境です。企業は、これらの特性を持つ社員を最終データチェックや監査といった重要なポジションに配置し、信頼を置いています。

この3つの要因により、人事・総務部門は、障害者雇用にとって「安定」と「貢献」を両立させる最適なキャリアの土台となっています。

2. DXで消滅した業務と、人事部門に残された「人間の役割」

DX(デジタルトランスフォーメーション)の波は人事部門にも及び、多くの「単純労働」はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって代替されました。これにより、障害者雇用で任せる業務の性質は、「入力作業」から「最終監査・判断」という、より高度な領域へとシフトしています。


RPAに代替された業務のリアル

RPAは、特にルールが明確で反復性の高い業務において、人間を遥かに凌ぐ効率と正確性を発揮します。

  • 勤怠データ入力、給与計算の単純照合など、自動化された業務:
    • 以前は、各部署から集められた紙やExcelの勤怠データをシステムに入力したり、給与計算結果と前月のデータを一対一で照合したりする作業は、多くの人手と時間を要しました。
    • 現在、これらの業務はRPAが担い、システム間のデータ連携や単純な数字の突き合わせは瞬時に完了します。
    • その結果、「大量のデータをひたすら入力する」という従来の障害者雇用のイメージは崩れ、こうした付加価値の低いルーティン業務は消滅しました。

人事部門に残された「人間の役割」

テクノロジーがルーティンを担うようになったからこそ、「人間だからこそできる業務」の価値が明確になりました。人事部門に残されたのは、判断力、細やかな配慮、そして最終的な責任を伴う業務です。

  • ① 最終データ監査(QA):
    • RPAが処理をしても、システム側のエラーや入力されたデータの異常値(例外)は発生します。障害者社員は、AIが自動処理したデータ群の「最終的な整合性チェック」という、極めて重要な品質保証(QA)の役割を担います。
    • 緻密な集中力を持つ特性は、この「見落としが許されない」監査業務で最大限に活かされます。
  • ② 例外的な手続きの対応:
    • 出産、長期療養、休職など、社員の状況はマニュアル通りに進まない「例外」が必ず発生します。RPAはイレギュラーな事態には対応できません。
    • 人事の社員は、こうした複雑で個別具体的な手続きに関する情報収集、書類準備、社員への連絡といった、柔軟な判断と細やかな気配りが求められる業務を担当します。
  • ③ 面接準備の調整と環境整備:
    • 採用活動における面接日程の調整や、新入社員のためのPCや備品の準備といった業務は、複数の関係者との連携と、期限厳守の正確な手配が必要です。
    • これは、企業の採用活動の「顔」となる部分であり、細部へのこだわりが求められる裏方作業として重要性が高まっています。

人事部門における障害者雇用は、単純な事務補助から、「企業データの番人」、「複雑な手続きを円滑に進めるサポート専門職」へと、その職務価値を明確に高めています。


3. 【職務別】人事・総務部門で任せるべき専門業務

DXの時代において、人事・総務部門が障害特性を持つ社員に任せるべき業務は、単なる「事務補助」ではなく、企業の根幹を支える「専門性の高いデータ処理およびサポート」へと進化しています。ここでは、特に重要な3つの職務領域を解説します。


① 採用サポート・データ監査(新卒・中途)

企業の未来を決める採用活動において、「ミスが許されない確実性」を担う役割です。

  • 業務内容: 応募者データのシステム入力後の最終チェック、面接日程の緻密な調整、合否や内定通知の確実な送付管理など。
  • 専門性の価値: 採用データの取り扱いは、個人情報保護の観点からも極めて機密性が高く、日程調整のミスは企業イメージを損ないます。発達障害(ASD)の特性である細部へのこだわりや几帳面さは、この「ミスゼロ」が求められる監査業務や調整業務で最高のパフォーマンスを発揮します。
  • 効果: 既存の採用担当者は、候補者との面談や戦略立案といったコア業務に集中できるようになります。

② 労務管理・勤怠データ処理

社員の給与や保険に関わる「労務管理」は、会社の信頼を直接左右する最も重要な定型業務です。

  • 業務内容: RPAが処理した後の勤怠データの最終整合性チェック、社員の入退社に伴う社会保険手続きの書類準備社員マスターデータの正確な管理と更新。
  • 専門性の価値: 給与計算の元となる勤怠データや、社員マスターデータに誤りがあってはなりません。障害特性を持つ社員が高い集中力をもってRPAの処理結果を「人間として最終確認(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」することで、システムエラーや不正を防止する品質保証の役割を果たします。
  • キャリア: ここでの経験は、将来的に労務スペシャリストとしてのキャリアパスへと繋がります。

③ 研修・教育サポート

社員の成長を支える教育活動を、円滑かつ効率的に実行するための裏方業務です。

  • 業務内容: 研修資料の作成補助(データ整理)、eラーニング受講履歴のデータ管理、多岐にわたる資料の分類・ファイリング、備品管理。
  • 専門性の価値: 研修資料の整理やファイリングは、一見単純に見えますが、全社員がアクセスする際の利便性検索性に直結します。知的障害精神障害を持つ方が持つ手順への忠実さ整理能力は、この「情報の標準化」「環境整備」に大きな力を発揮します。
  • 効果: 教育担当者がコンテンツの中身の企画に集中できるよう、運営の安定性を担保します。

4. 障害特性を活かす:人事専門業務と相性の良い特性

人事部門に残された業務は、DXによって「正確性」と「機密保持」の重要性が極めて高まっています。これは、特定の障害特性が持つ「高い能力」を活かす、最適な環境と言えます。特性を弱みではなく、付加価値を生む武器として捉える戦略を解説します。


発達障害(ASD)の集中力を活かす職務

ASD(自閉スペクトラム症)の特性である「強いこだわり」「緻密な集中力」は、ミスが許されない監査業務で最高のパフォーマンスを発揮します。

  • データ監査、勤怠データの整合性チェックなど、緻密な集中力が求められる業務:
    • 職務の価値: RPAが処理した後の勤怠データ社員マスターデータに対し、論理的な矛盾やシステム上のエラーがないかを細部にわたりチェックします。これは、給与計算や社会保険手続きにおける企業の信頼性を担保する、不可欠な業務です。
    • 相性: ASDの特性である「マニュアルやルールへの徹底的な忠実さ」は、この反復的かつミスの許されない監査業務に極めて適しています。他の人が見落とすような些細なエラーを発見する能力は、ヒューマンエラーを防ぐ「最後の砦」として機能します。

精神障害者の安定性を活かす職務

精神障害(うつ病、双極性障害など)を持つ方が安定就労を実現するために必要な配慮は、人事部門の業務特性と相性が良いです。

  • 対人負荷の少ないルーティン化されたデータ管理:
    • 職務の価値: 人事データや研修管理データなど、機密性が高く、継続的な管理が求められるルーティン業務を担当します。対外的なコミュニケーションや突発的な対応が少ないため、精神的な負荷が最小限に抑えられます。
    • 相性: ルーティン化された作業に集中できる環境は、体調の波集中力の不安定さをコントロールしやすくします。
  • 体調を最優先したフレックス勤務の適用:
    • 配慮の活用: 人事部門は合理的配慮への理解が深いため、フレックスタイム制リモートワークが適用されやすいです。社員はこれらの配慮を活用し、疲労の蓄積を防ぎ、安定した出勤率(稼働率)を維持することで、「安定性」という最高の信頼を組織に提供します。

この戦略的配置により、障害特性は企業の人事・労務管理の品質と安定性を高めるための「戦力」となります。

5. 人事部門でキャリアを築くためのスキルアップ戦略

人事・総務部門は、単なる事務作業で終わる場所ではありません。ここでキャリアを築き、収入アップを目指すには、「労務管理」と「データ分析」という二つの軸で専門性を高める戦略が不可欠です。


必須スキル:DX時代に求められる「データ」と「コンプライアンス」

DXが進んだ人事部門で付加価値を生むためには、RPAやAIが代替できない「判断」と「管理」に役立つスキルが必要です。

  • Excel VBA/ピボットテーブル:
    • 重要性: RPAが実行したデータの処理結果を監査したり、社員の勤怠・評価データを集計・分析したりするために不可欠なスキルです。ピボットテーブルでデータを多角的に分析し、VBA(マクロ)でルーティン作業を自動化する能力は、部署全体の効率化に直結します。
  • 個人情報保護法の基礎知識:
    • 重要性: 人事部門は、社員の病歴、給与、家族構成といった高度な機密情報を扱います。個人情報保護法やマイナンバー制度など、関連法規の基礎知識を持つことは、コンプライアンス(法令遵守)を担う人事にとって必須であり、あなたの信頼性を高めます。

キャリアパス:専門職への移行

人事事務補助の経験を土台に、専門知識を上乗せすることで、より責任と給与の高いポジションへの移行を目指せます。

  • 人事事務補助から労務管理スペシャリスト、採用データ分析担当など、専門職への移行:
    • 労務管理スペシャリスト: 勤怠データ処理や社会保険手続きの経験を深め、労働基準法や社会保険の知識を習得することで、労務管理の分野のプロフェッショナルを目指します。これは、企業のコンプライアンス維持に不可欠な役割です。
    • 採用データ分析担当: 応募者データの管理経験に、Excelや統計の知識を加え、採用市場の分析や、自社の定着率データの分析を担います。これは、人事戦略の立案に貢献する、付加価値の高い専門職です。
    • 戦略: 資格取得支援制度などを活用し、社会保険労務士衛生管理者などの資格取得を目指すことも、専門性を高める確実なロードマップとなります。

この専門性の追求こそが、人事部門でのあなたの市場価値貢献度を高めるための鍵となります。

6. 合理的配慮の具体例:人事部門ならではの柔軟性

人事部門は、他の部署に先駆け、合理的配慮の必要性効果を最も理解している部署です。そのため、社員の体調や特性に合わせた柔軟な勤務形態環境整備が、戦略的に提供されやすい傾向があります。


勤務時間・場所の調整

人事部門の業務には繁忙期(年末調整、新卒採用など)が存在しますが、この負荷を回避し、社員の安定性を守る配慮が可能です。

  • 繁忙期を避け、フレックスタイム制を最大限に活用する:
    • 戦略: 企業は、年間を通じて業務負荷の波を把握しています。障害を持つ社員に対しては、給与計算や年末調整といった繁忙期を避けた時期に、業務を割り振る配慮を行います。
    • 柔軟性: フレックスタイム制を適用し、体調が不安定な午前中の始業時間を遅らせることを許可します。この柔軟な時間調整は、精神障害を持つ社員の疲労の蓄積を防ぎ、安定的な稼働率を維持するために非常に有効です。
  • テレワークの適用:
    • 柔軟性: 労務データ処理や研修資料作成など、多くの業務がデジタルで完結するため、リモートワーク(テレワーク)が適用されやすいです。通勤ストレスを解消し、自宅という集中しやすい環境を確保できます。

環境の整備

人事部門が扱う情報の機密性と、業務の正確性の確保を両立させる環境整備が行われます。

  • 機密情報を扱うため、静かでセキュリティが保たれた壁際の席への配置:
    • 配慮: 人事データは機密性が高いため、情報漏洩のリスクを避ける必要があります。このニーズは、精神・発達障害を持つ社員が求める「静かで集中できる環境」と合致します。
    • 具体的な配置: 通路や来客の動線から離れた壁際の席、あるいはパーティションで区切られた席を提供します。
    • 効果: 外部刺激が最小限に抑えられることで、社員は機密保持が求められるデータ処理や書類作成に高い集中力と正確性を発揮できます。

人事部門での合理的配慮は、コンプライアンス社員の能力発揮という二つの目的のために、戦略的に活用されるのです。

7. まとめ:人事部門は安定と成長を両立させるキャリアの土台 

本記事は、大企業で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)によって単純な事務作業が消滅する中でも、人事・総務部門が障害者雇用にとって最も戦略的な配属先であり続ける理由を解説しました。


記事の要約:DX後も残る「人間の最終判断」の価値

人事・総務部門は、単なる業務の「切り出し先」ではありません。DX後も、社員の安定と企業の信頼を守るための「人間の最終判断」が必要な業務が必ず残ります。

  • 職務の進化: 単純なデータ入力ではなく、RPA後のデータ監査社会保険手続きの正確な書類準備採用日程の緻密な調整といった、高い正確性責任を伴う専門業務へと職務が進化しています。
  • 特性の活用: 発達障害の緻密な集中力や、精神障害の安定的な稼働といった特性が、データの品質保証機密保持に直結し、企業の基盤を支える戦力となります。
  • 合理的配慮: 人事部門は配慮への理解が深いため、フレックスタイム制静かな環境といった配慮が戦略的に提供され、安定と専門性の両立が可能です。

読者へのメッセージ:専門家として会社の基盤を支える

人事・総務業務を通じて、会社の基盤を支える専門家としてキャリアを築く挑戦を、ぜひ始めてください。

この部門での安定したキャリアは、給与水準キャリアパスにおいて、他の事務職と一線を画します。あなたの正確性コンプライアンス意識は、会社の「人」と「情報」という最も重要な資産を守る、不可欠な専門スキルとなるのです。


次のステップ:行動を起こし、専門性を磨く

  1. 必須スキルの習得: Excel VBA(マクロ)ピボットテーブル簿記3級といった、人事・労務のデータ処理に不可欠な専門スキルの習得をすぐに開始しましょう。
  2. 専門エージェントへの相談: 障害者雇用専門の転職エージェントに登録し、「人事・労務のデータ監査、または採用サポート」の求人を中心に紹介してもらいましょう。

情報収集: 企業の採用ページで、「人事部門の配慮事例」「ITツールの活用状況」を確認し、入社後のキャリアパスを具体的に描き始めましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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