2025/11/17
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【就職難の壁】障害者雇用で内定が決まらない人の出口戦略|「スキル不足」を乗り越える3つの行動

この記事の内容

はじめに:「決まらない」現実と、長期化する就職活動の構造的課題

障害者手帳を取得し、意欲をもって就職活動を始めたにもかかわらず、「何度応募しても内定が出ない」「専門のエージェントに相談しても、紹介される求人が少ない」という現実に直面している方は少なくありません。この状況は、決してあなたの努力や能力が足りないからではありません。

記事の導入:エージェントを介しても決まらない切実な現実に共感する

障害者手帳を持ち、エージェントを介しても就職が決まらない人が多いという切実な現実に共感します。あなたは自己分析を繰り返し、面接対策も重ねているはずです。しかし、その努力が報われない背景には、求職者個人の問題を超えた、社会構造の変化が深く関わっています。この「就職氷河期」のような状況は、非常に深刻な課題です。

課題の核心:DX化による単純作業の消滅と、企業側の「即戦力・スキル重視」へのシフトが、未経験者の挑戦を困難にしている

就職難の最大の原因は、企業の業務構造が根本から変化している点にあります。

  • 単純作業の消滅: DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、かつて障害者雇用の主要な受け皿だった「データ入力のみ」といった単純な定型作業が、RPA(ロボット)やAIによって代替されています。
  • スキルの要求: 企業に残された業務は、「AIが処理した後の最終チェック」「データ分析」「マニュアル作成」といった、PCスキルや論理的思考力を要する業務ばかりです。これにより、企業は必然的に「即戦力・スキル重視」へとシフトし、未経験者の挑戦が困難になっています。

記事の結論:内定を掴むには、「本人・エージェント・企業の3者連携」と、「就職を前提としたスキル習得」の戦略が不可欠である

この構造的な壁を乗り越え、内定を掴むためには、「運」ではなく「戦略」が必要です。鍵となるのは、「就職に直結する専門スキル」の習得と、「本人・エージェント・企業」が共通の目標を持つ強固な連携体制の構築です。内定をゴールとするのではなく、安定就労を前提としたスキルアップを目指す能動的な行動が、突破口を開きます。

1. 就職難の構造的背景:DXが作り出した「スキルの壁」

就職活動が長期化する最大の原因は、企業の業務構造がデジタルトランスフォーメーション(DX)によって根本的に変化し、かつて障害者雇用の受け皿だった職務が消滅したことにあります。


単純業務の消滅と企業のニーズの変化

RPA(ロボットによる自動化)やAI技術の普及は、雇用市場に大きな変化をもたらしました。

  • RPA・AI化により、かつての「データ入力のみ」の単純作業が消滅し、企業が「PCスキル」や「論理的思考力」を求めるようになった現状:
    • 職務の代替: 以前は人の手で行われていたデータ入力、書類の仕分け、簡単なデータ照合といった定型業務は、今やRPAAI-OCR(文字認識AI)によって高速かつ正確に自動化されています。
    • スキルの要求: 企業に残された業務は、「AIが処理した後のデータの最終チェック(監査)」「複雑な例外処理の判断」「効率化のためのマニュアル作成」など、「人間固有の論理的思考力」「PCスキル」を要する業務ばかりです。
    • 結論: 企業は、「負荷の低い業務」ではなく、「ミスを防ぎ、付加価値を生み出すスキル」を持つ人材を求めるようになり、未経験者にとってのハードルが急上昇しました。

企業が「農園に委託」する理由:ジレンマの出口戦略

企業が自社内での雇用を避け、外部の福祉サービスに頼る背景には、「費用対効果」と「時間」という現実的な問題があります。

  • 自社内に切り出す業務がなく、スキル習得に時間とコストがかかるため、雇用率達成のために外部サービスに頼らざるを得ないジレンマ:
    • ジレンマの発生: DXの結果、自社オフィス内に「切り出すべき単純業務」がなくなったため、企業は法定雇用率の義務を果たすことが難しくなりました。
    • 外部委託の選択: スキルが不足している人材を自社内で教育するには、時間(育成期間)とコスト(研修費、現場社員の工数)がかかります。そのため、育成の負担が少なく、雇用率の算定にカウントできる外部の農園型事業や福祉事業に委託せざるを得ないのが現状です。
    • 本質の課題: この戦略は雇用率を達成できますが、社員の持つ潜在能力(緻密さ、集中力)を自社のコアビジネスに活かせないという、戦略的損失を企業にもたらしています。

この「スキルの壁」を認識し、次に解説する「出口戦略」で克服することが、就職難を乗り越える鍵となります。

2. 内定を掴むための「3つの出口戦略」

就職活動が長期化している現状を打破し、内定を掴むためには、従来の「応募を繰り返す」方法から脱却し、「スキル不足」という構造的な課題を乗り越える戦略が必要です。ここでは、特に有効な3つの出口戦略を解説します。


戦略1:公的機関でのスキル習得(訓練校・就労移行支援)

DX時代に企業が求めるスキル(PC、論理的思考力)を入社前に身につけることが、選考突破の絶対条件となります。

  • 就職を前提としたPCスキル、ビジネスマナー、体調管理を習得する重要性:
    • スキル習得: 就労移行支援事業所ハローワークの職業訓練(訓練校)を活用し、Excel(VLOOKUP、ピボットテーブル)簿記ITパスポートなど、企業が求める実務直結のスキルを体系的に習得しましょう。
    • 体調管理の土台: 訓練校への規則的な通所実績は、企業に対し「安定して出勤できる」という自己管理能力の証明となります。
    • 活用の戦略: 訓練中に作成した課題や成果物をポートフォリオとして提示することで、未経験でも「スキルと意欲がある」ことを具体的に証明できます。

戦略2:企業のポテンシャル採用を狙う

自社の課題解決に繋がる「特性」を武器に、未経験者でも育成前提で採用する企業をターゲットにします。

  • OJTに積極的な企業や、特性が活かせるニッチな職種(QA、監査など)に挑戦する:
    • OJT重視の企業: 大手企業の特例子会社や、研修制度が充実したIT企業など、入社後のOJT(実務訓練)に積極的に投資する企業をターゲットにします。
    • ニッチな職種への挑戦: 企業が創出している高付加価値な職務(例:RPA後の最終データ監査業務マニュアル作成システムのQA(バグ探し))は、発達障害(ASD)の緻密な集中力や、知的障害の手順への忠実さといった特性が活かせます。
    • トライアルの活用: 職場実習(トライアル雇用)を積極的に活用し、スキルが不十分でも「安定性」と「定着への意欲」を企業に体験してもらいましょう。

戦略3:就労継続支援からのステップアップ

就職活動が長期化し、生活基盤の維持が難しい場合の、「安定」を確保しながらのステップアップ戦略です。

  • 現状の生活の安定を保ちつつ、能力向上と企業へのトライアルを目指す:
    • 就労継続支援B型・A型: すぐに一般企業での就職が難しい場合、就労継続支援B型(非雇用型)やA型(雇用型)を利用し、生活リズムの安定と軽作業を通じた能力維持を図ります。
    • ステップアップ: これらの施設は、一般企業への就職を目指すための「リハビリと訓練の場」としての機能も持っています。ここで体調とスキルを整えた後、企業へのトライアル(職場実習)を経て、一般就労を目指すという道筋です。
    • メリット: 経済的な不安を抱え込まず、無理なく自分のペースでスキルアップと就職活動を再開できます。

この3つの戦略を組み合わせることで、「内定が決まらない」という状況を打破し、「就職を前提とした具体的な行動」へと変えることができます。

3. 本人の努力:採用担当者に響く「コミットメント」の示し方 

内定を掴むためには、「スキル不足」を補って余りある「安定した貢献へのコミットメント(責任感)」を採用担当者に明確に伝える必要があります。本人の努力とは、自己理解の深さとエージェントとの連携を通じて、企業に「この人なら安心して任せられる」と確信させることです。


自己理解と「配慮リスト」の具体的提示

単に「配慮がほしい」と伝えるだけでは、企業は不安を感じます。「配慮があれば安定して貢献できる」という論理的な説明が必要です。

  • 自分の特性と「配慮があれば安定して貢献できること」を論理的に説明する:
    • 配慮の「交換条件」: 自分の障害特性(例:聴覚過敏、集中力の波、疲れやすいなど)を明確に伝えつつ、「それに対する具体的な解決策(配慮)」と、「配慮を受けることで得られる企業のメリット」をセットで提示します。
    • 例の提示: 「私は聴覚過敏がありますが、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用を許可いただければ、データ入力の正確性を健常者以上に維持できます」といったように、貢献を軸に話を進めましょう。
    • 文書化: 「合理的配慮リスト」として、求職者側から具体的な配慮事項を文書で提示することで、自己管理能力と論理的な思考力を採用担当者に示すことができます。

連絡途絶リスクの回避:信頼性の証明

就職活動における「連絡」の確実さは、入社後の「業務遂行能力」を推測させる重要な指標となります。

  • エージェントとの連絡を途絶させないことが、「自己管理能力」の証明に繋がる:
    • 企業側の懸念: 企業は、障害を持つ社員に対し「急な体調不良で連絡が途絶えるのではないか」「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が滞るのではないか」という懸念を抱いています。
    • エージェントとの連携: エージェントとの期日を守った確実な連絡(メール、電話、進捗報告)は、「入社後も安定した報連相ができる」という自己管理能力の強力な証明となります。
    • 戦略: 体調が悪く連絡が遅れる場合でも、「いつまでに連絡する」という期限を明確に伝えることで、無責任さではなく真摯さを示すことが可能です。

本人の能動的な努力と、エージェントとの確実な連携こそが、企業に「安定して長く働いてくれる」という信頼感を与える最大の武器となります。

4. エージェントの役割強化:連携を深め、本人の「強み」を引き出す

就職難の状況において、障害者雇用専門の転職エージェントは、単なる求人紹介者ではなく、応募者の潜在能力を発掘し、企業にプレゼンテーションする「キャリアコンサルタント」としての役割が求められます。特にスキル不足の応募者に対しては、本人の「強み」を言語化し、企業に安心感を与える戦略が不可欠です。


業務経験のない応募者への「強み」の引き出し方

DX時代に企業が求めるのは、特定の経験よりも、「再現可能な能力」です。エージェントは、過去の活動からこの能力を掘り起こします。

  • 過去の趣味、ボランティア、資格取得のプロセスから「地道な努力」や「集中力」を言語化する技術:
    • 発掘の視点: 業務経験がない場合でも、エージェントは以下の質問を通じて潜在能力を掘り出します。
      1. 「地道な努力」の可視化: 趣味(例:ゲーム、プラモデル)や独学(例:語学、Excel)を何年間継続したか、どこまで深掘りしたかを聞き出し、「粘り強さ」「継続力」を証明します。
      2. 「集中力」の言語化: 発達障害(ASD)の特性である過集中を、「長時間、エラーゼロで作業を続けられる緻密な集中力」としてポジティブに言い換えます。
    • 企業へのアピール: これらの特性を、「未経験でも、この集中力があれば、入社後の研修を確実に修了し、安定して業務を遂行できる」というコミットメントとして企業に伝えます。

企業への「トライアル」提案の強化

スキルが不足している応募者に対して、企業に「採用のリスク」を負わせる前に、「安定性」を体験してもらう戦略が有効です。

  • スキルが不十分でも、職場実習(トライアル)を通じて「安定性」を企業に体験してもらう戦略:
    • 目的: スキル不足が懸念される場合でも、「安定して出勤できる」「マニュアルを忠実に守れる」「指示されたタスクを最後までやり遂げられる」といった、最も重要な「定着のポテンシャル」を企業に確認してもらいます。
    • トライアルの設計: エージェントは、企業と協力し、応募者の特性が活きる、付加価値の高い業務(例:データチェック、マニュアル作成)を実習内容として設計します。
    • リスク低減: トライアル期間中、エージェントや就労支援事業所の支援員が現場に同行しサポートすることで、企業側の育成負荷を軽減し、「試してみる」ことへの心理的ハードルを下げます。

エージェントと本人の能動的な連携こそが、就職難の現状を打破する強力な推進力となります。

5.企業側の努力:教育投資を前提とした「職務再構築」の必要性

就職難の現状を打破し、障害者雇用を成功させるためには、求職者やエージェントの努力だけでは不十分です。企業側が「スキル不足は採用後の育成で補う」という覚悟を持ち、業務構造そのものを変える努力が不可欠となります。


単純作業の再構築:AIの限界領域に人間を配置

もはや「データ入力」のような単純な業務は社内に残っていません。企業はAIが代替できない「責任」と「判断」の領域を特定し、そこへ社員を配置する必要があります。

  • 業務を「切り出す」のではなく、「再構築」し、AIが苦手な「最終チェック・監査」といった付加価値の高い職務を創出:
    • 戦略: RPAが処理した後の勤怠データや経費精算データなど、AIが代替した後のプロセスに「人間による最終監査(Human-in-the-Loop)」の役割を創出します。
    • 価値: この最終チェック・監査は、AIの誤認識やシステムのバグから企業の財務データや信用を守るための高付加価値な職務です。
    • 特性の活用: 発達障害(ASD)の特性である緻密な集中力ルールへの強いこだわりは、この「見落としが許されない」監査業務で最高の生産性を発揮します。

企業内研修の強化:スキル不足を自社内で育成する投資

入社時点でスキルが不足している人材が多い現状を認識し、企業が主体となって「就職を前提としたスキル」を育成する投資が必要です。

  • 障害者雇用専門の研修(Excel、ビジネスマナー)を導入し、スキルがない人材を自社内で育成する投資:
    • 研修の目的: スキルがない人材を「採用しない」のではなく、「採用後に育成する」という視点に立つことです。
    • 具体的研修:
      1. PCスキル: Excel(VLOOKUP、ピボットテーブル)、Wordなど、DX後の業務に必須となるPCスキルを体系的に教える研修。
      2. ビジネススキル: 報連相の具体的な手法(口頭ではなく文書化するルール)、体調管理の方法ストレスマネジメントなど、安定就労に必要なスキルに特化した研修。
    • 経済効果: 企業が自ら社員を育成することで、自社の業務に完全にフィットした専門人材を確保でき、外部委託コストや再採用コストを削減するという、明確な経済的リターンが得られます。

企業側のこの積極的な「教育投資」こそが、就職難の現状を打開するための、最も重要な出口戦略となります。


6. まとめ:三者連携で「スキルの壁」を乗り越える

本記事で分析したように、障害者雇用で内定が長期化する課題は、個人の努力不足ではなく、「DXによる単純作業の消滅」という構造的な変化に原因があります。この「スキルの壁」を乗り越えるためには、従来のやり方を改め、戦略的な行動が必要です。


記事の要約:「スキル習得」と「三者連携」が不可欠

内定を掴むための出口戦略は、以下の要素を組み合わせることに集約されます。

  • 構造的な課題と認識: DX化により、企業は即戦力・スキル重視へとシフトしており、未経験者は「就職のためのスキル」を身につけることが絶対条件です。
  • 戦略的な行動: 公的訓練就労移行支援を活用してPCスキルや体調管理能力を習得し、「安定して働ける能力」を証明することが不可欠です。
  • 三者連携の力: 本人のコミットメント、エージェントの営業力と交渉力、企業の育成投資(トライアル・研修)という三者の協働体制が、就職難を打破する唯一の推進力となります。

読者へのメッセージ:諦めず、「就職のためのスキル」を身につける努力を

この課題は非常に切実ですが、決して諦めないでください。あなたの能力や意欲を信じ、今必要なのは、「就職を前提としたスキル」を身につけるための努力と、エージェントとの連携を続けることです。連絡を途絶えさせず、あなたの「安定性」「地道な努力」を武器に、必ず内定を掴み取りましょう。


次のステップ:行動を起こす

  1. スキル習得の再スタート: 就労移行支援事業所職業訓練校に相談し、Excel(VLOOKUP、ピボットテーブル)など、企業が求めるPCスキルの習得をすぐに開始してください。
  2. エージェントへの情報開示: 転職エージェントに対し、「今、〇〇のスキルを学習中である」という具体的な行動と、「連絡途絶はしない」というコミットメントを伝えてください。

トライアルへの積極参加: スキルが不十分でも、職場実習(トライアル雇用)を積極的に利用し、「安定性」「定着への意欲」を企業に体験してもらいましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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