2025/12/29
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【業種別】無理なく切り出せる「障害者雇用向き」の業務リスト30選|現場の負担を減らす切り出しのコツ

この記事の内容

はじめに:なぜ「業務切り出し」が障害者雇用の成否を分けるのか

「障害者雇用を検討しているが、そもそも任せられる仕事がない」「うちは専門性が高いから難しい」。 多くの企業から聞かれる悩みですが、実は「仕事がない」のではなく、「仕事を切り出す視点」が不足しているケースがほとんどです。


「今ある仕事」をそのまま任せようとしていませんか?

既存の「営業職」や「一般事務職」といった職種枠に、そのまま障害のある方を当てはめようとすると、どうしても「マルチタスクの壁」や「高度な判断業務の難しさ」に突き当たります。

障害者雇用における成功の鍵は、既存の職種の中に埋もれている「断片的なタスク(作業)」を拾い集め、新しい役割として再構成することにあります。一人で10個のタスクをこなす「職種」で考えるのではなく、特定の得意分野に特化した「役割」として定義し直すのです。

業務切り出しは「既存社員の残業削減」への最短ルート

「業務切り出し」は決して、障害者のために無理やり仕事を作る「作業創出」ではありません。むしろ、既存社員が本来のコア業務を中断して行っている「ちょっとした雑務」や、「本当はやりたいが後回しにしている作業」を救い出す行為です。

  • : 営業担当者が商談の合間に行っている名刺入力や、経理担当者が行っている領収書の整理など。

これらを切り出すことで、既存社員は専門業務に集中できるようになり、組織全体の残業削減と生産性向上に直結します。障害者雇用は、現場を楽にするための「攻めの業務改善」なのです。

本記事の結論:業務を「手順」と「頻度」で分解すれば、適材適所が見えてくる

どんなに複雑に見えるプロジェクトも、細かく分解すれば「定型的な作業」の集合体です。特に「手順が決まっている」「定期的に発生する」業務は、集中力の高い障害のある方にとって、非常にパフォーマンスを発揮しやすい領域です。

本稿では、さまざまな業種で実際に導入されている「切り出し例」を30選としてまとめました。貴社の現場にある「埋もれた業務」を見つけ出すためのチェックリストとしてご活用ください。

1.【事務・オフィスワーク編】生産性を高める業務リスト10選

事務部門における業務切り出しのポイントは、「集中力を要するルーチンワーク」を既存社員の手から切り離すことです。これにより、既存社員は顧客対応や企画・判断業務に専念できるようになります。


データ入力・チェック業務(名刺、伝票、アンケート)

正確性が求められるデータ入力は、特性によっては非常に高いパフォーマンスを発揮する領域です。

  • 1. 名刺データの入力: 営業担当者が溜めがちな名刺を顧客管理システム(CRM)へ登録。
  • 2. 伝票・領収書の突合: 帳票とシステム上の数字が一致しているかの目視確認。
  • 3. アンケート集計: 紙のアンケート結果をExcel等の指定フォーマットへ転記。

書類管理(スキャニング、ファイリング、シュレッダー)

「ペーパーレス化を進めたいが、作業する時間がない」という課題を解決します。

  • 4. 紙書類の電子化: 過去の契約書や図面をスキャンし、所定のサーバーへ保存。
  • 5. ファイリングと仕分け: 散らかりがちな共有棚の整理、タグ付け。
  • 6. 個人情報破棄: 不要になった重要書類のシュレッダー処理。

備品・環境管理(在庫チェック、発注補助、共有スペース清掃)

オフィスの快適性を維持する「名もなき家事」のような業務を可視化・集約します。

  • 7. 備品在庫の棚卸し: コピー用紙、文具、お茶などの在庫数を確認し、不足分をリスト化。
  • 8. 共有スペースの美化: 会議室の机・椅子の整頓、ホワイトボードの清掃、観葉植物の水やり。

郵便・発送対応(封入・封緘、発送ラベル作成、仕分け)

突発的に発生して既存社員の手を止めてしまう発送業務をルーチン化します。

  • 9. 大量発送の準備: チラシの封入、宛名ラベル貼り、封緘(ふうかん)作業。
  • 10. 郵便物の仕分けと配布: 届いた郵便物を各部署のトレイへ仕分ける作業。

2.【製造・物流・軽作業編】現場を回す業務リスト10選

製造や物流の現場では、一つひとつの作業が工程として明確に分かれているため、業務切り出しが最もスムーズに進みやすい傾向にあります。「スピード」よりも「正確性」や「丁寧さ」を重視する工程を任せることで、ライン全体の品質が安定します。


検品・ピッキング(外観検査、仕分け、パッキング)

細かな差異に気づく能力や、ルール通りに分類する特性を活かせる領域です。

  • 11. 製品の外観検査: 傷、汚れ、印字のズレなどがないかをチェックシートに沿って確認。
  • 12. 部品・商品のピッキング: 指示書(リスト)通りに棚から必要な数だけ商品を取り出す。
  • 13. サイズ・種類別の仕分け: 混在している部品やアパレル商品を、タグや形を見て指定のコンテナに分類。
  • 14. 欠数チェック: 箱の中身が規定数通り揃っているか、出荷前の最終確認。

梱包・発送準備(ラベル貼り、箱組み立て、緩衝材作成)

熟練スタッフが片手間で行いがちな「準備作業」を切り出すことで、出荷効率が劇的に向上します。

  • 15. 段ボールの組み立て: 出荷に使う箱を事前に組み立て、指定場所にストック。
  • 16. 精密なラベル貼り: 指定の位置(枠内)にずれることなくシールを貼付。
  • 17. 緩衝材の作成・セット: 新聞紙のカットや、プチプチ(緩衝材)のサイズ合わせ・巻き付け。
  • 18. 販促物の同梱: カタログやサンプル品を商品と一緒に箱にセット。

清掃・メンテナンス(共有工具の清掃、床清掃、ゴミ回収)

安全第一の現場において、環境整備を「専任」に任せるメリットは計り知れません。

  • 19. 共有工具・治具の清掃: 使用後の工具を拭き、油を差し、元の位置(影絵のついたボードなど)へ戻す。
  • 20. 現場の「5S」巡回: 廊下に物が置かれていないかの確認、段ボールゴミの回収、床の掃き掃除。

3.【飲食・小売・サービス業編】顧客満足度を支える業務リスト10選

飲食・小売・サービス業は、接客という「正解のない対人業務」が主体ですが、その裏側には膨大な「定型作業」が存在します。接客スタッフがお客様に集中できるよう、バックヤードや開店準備を切り出すことで、サービス品質が向上します。


開店・閉店準備(テーブルセッティング、カトラリー準備)

ピークタイムに接客スタッフが慌てないための「事前の備え」を万全にします。

  • 21. テーブルセッティング: メニューの配置、調味料の補充、箸やナプキンのセット。
  • 22. カトラリーの磨き上げ: 洗浄後のフォークやナイフを布で拭き、水滴の跡を消す作業。
  • 23. おしぼりの準備: おしぼりを温める(または冷やす)機材への補充と、トレイへのセット。

バックヤード業務(仕込み補助、納品検品、品出し)

直接お客様の目に触れない部分で、店舗の回転率を支える重要なタスクです。

  • 24. 簡単な仕込み補助: 野菜の皮むき、計量、ソースの小分け(カップ詰め)。
  • 25. 納品商品の検品: 届いた荷物の個数が伝票と合っているか、箱に破損がないかの確認。
  • 26. 品出し・前出し: 棚の奥にある商品を前に出す作業、賞味期限チェック、値札貼り。
  • 27. 商品の整理整頓: アパレル等の畳み直し、ハンガーの向きを揃える作業。

清掃・衛生管理(トイレ清掃、店頭の掃き掃除、消毒作業)

お客様の満足度に直結する「清潔感」を、専任スタッフが高い基準で維持します。

  • 28. サニタリー清掃: トイレ、洗面所の清掃と、備品(トイレットペーパー等)の補充。
  • 29. 店頭・エントランス清掃: 窓拭き、床のモップ掛け、店頭の掃き掃除(落ち葉拾い等)。
  • 30. 共有部の消毒作業: 扉の取っ手、エレベーターのボタン、イートインスペースのテーブル消毒。

4.失敗しない「業務切り出し」4つのステップ

「何を任せるか」のリストを確認した後は、それをどうやって自社に導入するかという実務プロセスが重要です。場当たり的に仕事を振るのではなく、以下の4ステップで進めることで、既存社員の納得感と障害のある社員の定着を両立できます。


ステップ1:全社員の「付随業務」を洗い出す

まずは、既存社員の1日のスケジュールを棚卸しします。ポイントは「本来の職務(コア業務)」に付随して発生している「サブ業務」を見つけることです。

  • ヒアリングのコツ: 「もしこの作業がなくなったら、メインの仕事がもっとはかどるのに、と思う作業はありますか?」と問いかけます。
  • : 営業職にとっての「名刺入力」、人事職にとっての「求人媒体の応募者データ整理」など、専門性を必要としない周辺業務がターゲットです。

ステップ2:判断の伴わない「定型作業」を抽出する

洗い出した業務の中から、障害のある方が迷いなく取り組める「定型作業(ルーチンワーク)」を選別します。

  • 選別の基準: 「AならばBする」という明確なルールがあるか。
  • 避けるべき業務: 「状況を見て判断する」「相手の意図を汲み取る」といった、非定型なコミュニケーションが必要な業務は、初期段階では切り出しから外します。

ステップ3:マニュアル化(可視化)が可能か判断する

「背中を見て覚えろ」は通用しません。誰がやっても同じ結果になるよう、可視化できるかを検討します。

  • マニュアルの形式: 文章だけでなく、写真や動画を多用できるか。
  • 判断のポイント: 「きれいに並べる」ではなく「この線の内側に、写真と同じ向きで置く」と言語化・視覚化できる業務は、切り出しの成功率が非常に高くなります。

ステップ4:まずは「週10〜20時間分」のパッケージを作る

最初から週40時間のフルタイム業務を作り出す必要はありません。

  • タスクの寄せ集め: 部署を横断して、ステップ2・3で選んだ作業を集めます。「A部署の清掃2時間」+「B部署のスキャン3時間」+「C部署の封入2時間」といった具合に、パズルのように組み合わせて一つの「職務」をパッケージ化します。
  • スモールスタート: まずは「週10時間」から始め、慣れてきたら徐々にタスクを追加していくのが最も安全なステップアップの方法です。

5.業務切り出しを成功させるための「指示の出し方」

業務を切り出した後、現場で最も多いトラブルが「指示した通りに動いてくれない」という食い違いです。これは本人の能力不足ではなく、指示の「解像度」が低いことに原因があります。障害特性に配慮した指示は、実は全社員にとって分かりやすい「究極の指示」になります。


曖昧な表現(「適当に」「適宜」)を排除する

私たちが日常的に使っている言葉には、受け手に解釈を委ねる「曖昧さ」が溢れています。特に発達障害のある方などは、抽象的な言葉を具体的にイメージするのが難しい場合があります。

  • NG例: 「この資料、なるはや適当にコピーしておいて」
  • OK例: 「この資料を15時まで10部白黒の両面印刷でコピーしてください。終わったら私のデスクの右端に置いてください」 数値(いつ、いくつ)と場所、方法を具体的に指定することで、迷いや不安を解消します。

「完成見本」と「NG例」を写真で提示する

言葉による説明(聴覚情報)よりも、視覚的な情報(視覚情報)の方が理解しやすい方が多くいます。

  • ビジュアルマニュアル: 「備品を整理する」という指示なら、「正しい配置の状態」を写真で撮影して貼り出します。
  • NG例の提示: 実は完成見本と同じくらい重要なのが「やってはいけない例」です。「これは向きが逆なのでNG」「これは重なりすぎているのでNG」といった写真も併せて提示することで、自己チェックが可能になります。

成果を数値化し、フィードバックを行う

「頑張っているね」といった精神的な評価だけでなく、具体的な「事実」に基づいたフィードバックが、本人の自己肯定感と自信を育てます。

  • 進捗の見える化: 「今日は名刺入力を50件できましたね」「先週より10分早く終わりましたね」と、数値で成長を伝えます。
  • 小さな達成感の積み重ね: 切り出した業務は結果が目に見えやすいため、ポジティブなフィードバックを出しやすいのがメリットです。「自分の仕事が役に立っている」という実感が、さらなる意欲を引き出します。

6.まとめ|業務切り出しは、組織の「棚卸し」である

「障害者のために仕事を作る」という発想は、もう捨てましょう。業務切り出しの本質は、組織の中に淀んでいた「非効率」や「属人化」を解消し、会社全体をアップデートするプロセスに他なりません。


総括:切り出した分だけ、組織は筋肉質になる

業務を細分化し、誰にでもわかる形に整えることは、組織の「棚卸し」です。このプロセスを経ることで、会社は以下のような変化を遂げます。

  • 業務の標準化: 「あの人にしかわからない」仕事が消え、誰でも代替可能な仕組みが整います。
  • コア業務への集中: 高給な専門職やベテラン社員が雑務から解放され、本来のミッション(売上向上や改善活動)に100%の力を注げるようになります。
  • 変化への対応力: 業務がパッケージ化されているため、急な欠員や事業拡大時にも、新しいスタッフへの引き継ぎがスムーズになります。

障害者雇用をきっかけに業務を切り出した分だけ、組織の無駄な脂肪が落ち、生産性の高い「筋肉質な組織」へと生まれ変わるのです。

最後に:貴社に合わせた「オーダーメイド業務切り出し診断」のご案内

「リストを見ても、自社のどの業務が当てはまるか確信が持てない」 「現場の反発が怖くて、なかなかヒアリングに踏み出せない」

そんな悩みをお持ちの企業様のために、私たちはプロの視点で現場を分析する「オーダーメイド業務切り出し診断」を実施しています。

貴社の現場に伺い、実際のワークフローを見ながら「どの業務を」「どのくらいの時間分」「どうマニュアル化すべきか」を具体的にシミュレーションいたします。障害者雇用を、単なる義務の遂行ではなく、貴社の働き方を劇的に変える「チャンス」に変えてみませんか。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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