2026/01/11
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「配慮の伝え方」で合否が決まる? 企業が面接で本当にチェックしている「自己理解」と「言語化」の合格ライン

この記事の内容

はじめに:2026年の面接は「障害の有無」ではなく「プレゼン力」で決まる

2026年、障害者雇用の面接現場において、大きなパラダイムシフトが起きています。かつての面接は「どのような障害があり、何ができないか」を確認する、いわば「欠損の確認作業」でした。しかし現在、企業が求めているのは、自分の特性を客観的に把握し、それを仕事の成果に結びつけるための条件として提示できる「セルフプレゼン力」です。


求職者の誤解:「配慮をお願いすること」はマイナス評価ではない

多くの求職者が「配慮を詳しく伝えると、面倒な人だと思われて不採用になるのではないか」という恐怖を抱いています。しかし、現実はその逆です。

企業が最も不採用にしたいのは、「配慮は特にいりません」と言いながら、入社後にパニックを起こしたり、体調を崩して無断欠勤したりする人材です。2026年の採用担当者は、配慮の依頼を「コスト」ではなく、「安定して働くためのリスク管理」として捉えています。

企業の本音:知りたいのは障害名ではなく「どうすれば戦力になるか」の条件

「自閉スペクトラム症(ASD)です」「ADHDです」という診断名は、医師にとっては重要ですが、面接官にとっては情報不足です。

同じ診断名でも、人によって「聴覚が過敏な人」もいれば、「マルチタスクが苦手な人」もいます。企業が本当に知りたいのは、診断名に付随するステレオタイプな情報ではなく、「あなたの場合は、どのような環境を用意すれば、給与以上の価値を出してくれるのか」という具体的な条件なのです。

本記事の結論:内定の鍵は「自己理解」を「共通言語」に変換するスキルにある

面接の合格ラインを越えるために必要なのは、障害を隠すことでも、無理に健常者に合わせることでもありません。

  1. 自己理解: 自分の「強み」と「環境による制限」を正確に把握する。
  2. 言語化: それをビジネスの文脈(共通言語)で相手に伝える。

この2ステップをマスターすることで、面接は「選別される場」から、あなたと企業が対等に働き方を相談する「契約交渉の場」へと変わります。


1.企業が恐れているのは「障害」ではなく「予測不能な事態」

面接官の心理を理解することは、内定への近道です。彼らがあなたの障害について質問する時、その根底にあるのは「差別」ではなく、未知のものに対する「予見不可能性への不安」です。

採用担当者の不安を可視化:急な欠勤、コミュニケーション不全、業務の停滞

面接官の頭の中には、過去の失敗事例や懸念事項が渦巻いています。

  • 「突然、連絡なしで休んでしまったら、現場のラインが止まるのではないか?」
  • 「指示を理解したふりをして、間違ったまま進めてしまうのではないか?」
  • 「注意をしたら、メンタルを崩して復帰できなくなるのではないか?」

これらはすべて、本人の「障害そのもの」が嫌なのではなく、「いつ、何が起きるか予測できず、対策が立てられないこと」への恐怖です。

「見えない障害」を「見えるリスク」として開示する勇気

精神障害や発達障害などの「見えない障害」の場合、この不安はさらに増幅されます。だからこそ、面接では「リスクの先出し」が非常に有効な戦略となります。

「私にはこういう特性があります。疲労が蓄積すると、年に数回、朝起きられなくなる日があります。しかし、その前兆として前日に〇〇というサインが出るので、その時点で早めに連絡し、リモートワークに切り替えるなどの調整をさせていただければ、業務への穴は最小限に抑えられます」

このように、リスクを具体化し、セットで「対処法」を提示することで、企業側は「なるほど、それなら管理可能だ」と安心します。

「事前申告」が最大の信頼構築:トラブルが起きるパターンを先出しする

トラブルを「絶対に起こさない」と断言するのは嘘になります。それよりも、「こういう時にトラブルが起きやすいが、その時はこう動く」というプロトコル(手順)を共有できる人の方が、ビジネスパーソンとして信頼されます。

自分の弱点をさらけ出すことは、一見不利に見えますが、実は「自分を客観視できており、周囲に迷惑をかけないための段取りができる人」という、極めて高い評価に繋がるのです。

2.「できないこと」を「環境があればできること」に変える変換術

面接で合理的配慮について話す際、多くの人が「できないことの羅列」になってしまいがちです。しかし、採用担当者の視点に立つと、単なる「できないこと」の報告は、採用後の「コスト(負担)」としてカウントされてしまいます。

内定を引き寄せる伝え方の極意は、配慮を「パフォーマンスを最大化するためのブースター」として再定義することにあります。


NG例:一方的な「お願いリスト」は、企業に「コスト」を感じさせる

「私は〇〇が苦手なので、やらせないでください」「△△という配慮をしてください」という伝え方は、企業側に「この人を雇うと、あれもこれも制限がかかり、周囲の負担が増えるだけだ」という印象を与えてしまいます。

  • NGな伝え方の特徴:
    • 語尾が「〜してください」「〜は無理です」という要求のみ。
    • その配慮をすることで、企業にどんなメリットがあるのかが語られていない。
    • 「障害者なのだから配慮されるのは当然」というニュアンスが透けて見える。

これでは、スキルが高くても「扱いにくい人材」というレッテルを貼られてしまいます。

OK例:条件付きの「成果コミットメント」は、企業に「投資価値」を感じさせる

成功する人は、配慮を「成果(アウトプット)を出すための条件」として提示します。これを「条件付きのコミットメント」と呼びます。

  • OKな伝え方の特徴:
    • 「Aという環境をいただければ、Bという成果を出せます」という構文。
    • 配慮が「自分のため」ではなく「仕事の質を上げるため」であると強調されている。
    • 企業が支払うコスト(配慮の手間)を上回るリターン(働き)を予感させる。

例えば、「電話応対を免除してください」と言う代わりに、「私は聴覚情報の処理に特性があるため、電話ではなくチャットやメールで指示をいただければ、情報の聞き漏らしがなくなり、事務処理のスピードと正確性を最大化できます」と伝えます。これなら、企業は「配慮」を「効率化のための投資」と捉えてくれます。

具体的フレーズ集:ADHD、ASD、身体障害別の「前向きな配慮依頼」の作り方

それぞれの特性に合わせた、面接でそのまま使える「変換フレーズ」の例です。

【ADHD(注意欠如・多動症)の方】

  • 変換前: 「不注意でミスが多いので、細かくチェックしてください」
  • 変換後: 「複数のタスクを並行するとミスを招く恐れがありますが、優先順位を明確にして1つずつ完遂する形であれば、持ち前の集中力を活かして、高い生産性を維持できます」

【ASD(自閉スペクトラム症)の方】

  • 変換前: 「曖昧な指示はわかりません。はっきり言ってください」
  • 変換後: 「空気を読むような抽象的な指示では判断に迷うことがありますが、数値や期限などの具体的な基準で指示をいただければ、迷いなく最短ルートで成果物を仕上げることが可能です」

【身体障害(肢体不自由など)の方】

  • 変換前: 「重いものは持てませんし、階段も無理です」
  • 変換後: 「重量物の運搬や段差のある場所での作業には制限がありますが、フラットな環境とデスクワーク中心の業務であれば、体力を削られることなく、専門スキルを活かした実務に100%集中できます」

3.実践!「自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)」の作り方

2026年の障害者雇用において、内定者の多くが活用しているのが「ナビゲーションブック(自分の取扱説明書)」です。口頭だけで障害特性を説明しようとすると、緊張で伝え漏れが生じたり、相手の解釈ミスを招いたりします。書面やデータとして可視化された「自分の仕様書」を提示することは、あなたの自己理解の深さを証明する最強のプレゼン資料になります。


必須の3要素:①得意・苦手、②具体的な困りごと、③解決策(配慮案)

質の高いナビゲーションブックは、以下の3つのステップで構成されます。単なる「症状の説明」に終始しないことがポイントです。

  1. 得意・苦手(ストレングス&ウィークネス): 「データ入力の正確性には自信があるが、電話応対には強い不安がある」など、仕事に直結する能力を対比させます。
  2. 具体的な困りごと(トリガー): 「複数の指示が一度に来ると、優先順位がつけられずフリーズする」など、どのような場面で問題が起きるかを具体化します。
  3. 解決策・配慮案(ソリューション): 「指示はメモやチャットで一つずつ出していただければ解決します」など、企業が今日からでも実践できる具体的な行動を提示します。

テクノロジーの活用をアピール:AIツールや補助器具を使って「自力で解決する姿勢」を見せる

「会社にすべてを配慮してもらう」という依存的な姿勢ではなく、「自分でも努力や工夫をしている」という姿勢(セルフマネジメント)を見せることで、採用のハードルは一気に下がります。

  • AIの活用: 「文章作成が苦手ですが、生成AIを使って下書きを作り、自分で校正することで、健常者と同等以上のスピードで報告書を作成できます」
  • 補助ツールの利用: 「聴覚過敏がありますが、ノイズキャンセリングイヤホンの使用を許可いただければ、集中力を維持できます」 テクノロジーを使いこなしていることは、現代のビジネスシーンでは「障害を補うスキル」として高く評価されます。

「自己完結」と「周囲の助け」の黄金比:他者に頼ることもスキルのうち

ナビゲーションブックには、「自分で対処できること」と「周囲の手助けが必要なこと」を明確に分けて記載します。

  • 自己完結: 「体調管理のため、昼休憩は一人で静かに過ごし、リセットするようにしています」
  • 周囲の助け: 「作業が予定より遅れそうな時は、早めにアラートを出しますので、優先順位の再調整を相談させてください」

すべて自力でやろうとして潰れる人よりも、「いつ、誰に、どう助けを求めれば仕事が回るか」を知っている人の方が、チームとしてはるかに扱いやすく、信頼できる存在です。

4.逆質問でチェックすべき、企業の「合理的配慮の成熟度」

面接は企業があなたを評価する場であると同時に、あなたが「この会社は自分を守り、活かしてくれる場所か」を見極める場でもあります。2026年現在、多くの企業が障害者雇用に取り組んでいますが、その「成熟度」には大きな開きがあります。

「配慮します」という言葉を鵜呑みにせず、逆質問を通じて実態を正確に把握しましょう。


良い配慮と悪い配慮:形だけの整備か、本質的な理解かを見抜く質問

「バリアフリーのトイレがあります」「スロープがあります」といったハード面の配慮は、最低限のラインに過ぎません。本当に重要なのは、目に見えないソフト面の運用能力です。

  • 形だけの配慮(要注意): 障害を一律に「できない人」と決めつけ、簡単な作業しか与えない。
  • 本質的な配慮(成熟度が高い): 個々の特性を理解し、パフォーマンスを最大化するために業務フローを柔軟に変更できる。

これを見抜くためには、「制度があるか」ではなく「どう運用されているか」を聞く必要があります。

魔法の質問:「私と同じような特性の方が、現在どのように活躍していますか?」

この質問は、企業の成熟度を一瞬であぶり出します。

  • 成熟度が低い企業の回答: 「皆さん、事務の補助として元気に頑張っていますよ(具体的職務や成果に触れない)」
  • 成熟度が高い企業の回答: 「同じASDの社員は、〇〇という分析業務でリーダーをサポートしています。彼は急な変更が苦手なので、あらかじめ1週間の予定を月曜に確定させるという運用をしています」

後者のように、「具体的な職務」と「それに対する個別の運用ルール」がスラスラと出てくる企業は、現場に配慮が浸透している証拠です。

面接官の反応を分析:配慮を「現場」が知っているかどうかが定着の分かれ道

人事がどんなに理解があっても、実際に一緒に働く現場のリーダーが配慮を知らなければ、入社後に苦労することになります。

  • チェックすべきポイント: 現場の社員が面接に出てきた際、「私の特性に対して、チームとしてどのような調整が可能だと思いますか?」とあえて踏み込んで聞いてみてください。
  • 理想的な反応: 「その特性なら、チャットでの指示をメインにしましょうか」「その時間は会議を入れないように調整できると思います」といった、具体的なシミュレーションがその場で始まるかどうかです。

5.事例紹介:伝え方を変えただけで、連敗続きから大手3社内定へ

最後に、伝え方の工夫で人生を変えたEさんの事例を紹介します。

状況:障害の苦労話ばかりしてしまい、お見送りが続いていた精神障害のEさん

Eさん(精神障害/うつ病)は、これまでの面接で「なぜ前職を辞めたのか」「どれほど体調が苦しかったか」という過去の経緯を説明することに必死でした。結果として、面接官には「まだ不安定な人」「配慮が大変そうな人」という印象を与え、不採用が続いていました。

改善:「私を使いこなすための3つのルール」を面接で提示

Eさんは戦略を変え、過去の話は最小限にし、ナビゲーションブックを手に「私を使いこなすための3つのルール」を提示しました。

  1. 体調の波: 「月に1回程度、低気圧の日に不調が出ますが、前日に申告するのでリモートに切り替えさせてください」
  2. 得意な貢献: 「高い集中力が必要なデータ照合作業は、一気に5時間完遂できます」
  3. ミスの防止: 「記憶に特性があるため、口頭指示ではなくメールでいただければ、ミスはゼロにできます」

結果:企業の不安を払拭し、エンジニアとして希望の条件で入社決定

この「取扱説明書」を見た面接官は、「リスクも対策も明確で、むしろ管理しやすい」と判断。Eさんは最終的に大手3社から内定を得て、現在は自分の特性を活かせるエンジニアとして、フルタイムで活躍しています。


6.まとめ|自分を正しく伝えることは、会社への最大の貢献

面接は、自分を「良く見せる場」ではありません。自分という人間を「正確に伝える場」です。


総括:面接は「選ばれる場」ではなく、最高のパフォーマンスを出すための「契約交渉」

「障害があるから選んでもらう」という卑屈な姿勢は捨ててください。あなたは自分のスキルと時間を会社に提供し、会社はその対価を払う。この対等な取引において、配慮の相談は「最高の成果を出すためのメンテナンス」です。自分を正しくプレゼンすることは、あなた自身の身を守るだけでなく、会社があなたという戦力を有効活用するための大きな助けになるのです。

結びに:2026年、あなたの「特性」は、伝え方一つで「希少価値」に変わる

2026年の労働市場は、個人の多様性を宝の山と捉え始めています。自分の特性を客観的に捉え、言語化できる能力は、それ自体が希少なビジネススキルです。 自信を持って、あなたの「取扱説明書」を広げてください。その先には、あなたがあなたらしく、プロとして輝ける場所が必ず待っています。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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