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「働くリハビリ」の第一歩|就労継続支援A型事業所の仕組み・給料・入所手続き完全ガイド

この記事の内容
1. はじめに|就労継続支援A型とは何か?

「障害者雇用で働きたいが、まだ一般就労は不安だ」「少しずつ仕事に慣れながら、安定した収入も得たい」。障害を持つ方がキャリアの再スタートを切る際に、このような悩みを抱えるのは自然なことです。
問題提起: 障害を持つ方が「働きたいが、一般就労はまだ不安」と感じたときの選択肢であるA型事業所の役割に触れます。この段階で、一般企業での就労とリハビリの中間地点となるのが就労継続支援A型事業所です。
A型の定義: A型は、国が定める福祉サービスの一つで、利用者と事業所が「雇用契約を結んで働く場所」であり、リハビリと収入を得ることを両立できる制度であることを提示します。この制度を正しく理解し、活用することで、あなたは次のステップへと着実に進むことができます。
本稿を通じて、A型事業所の基本、入所手続きの流れ、給料の現実、そして一般就労への移行戦略について、完全ガイドとして解説します。
2. 入所の基本情報:対象者と手続きの流れ
就労継続支援A型事業所は、「働きたい」という意欲を持つ障害者のために設けられた制度です。利用の可否は、主に年齢と働く意欲、そして一般就労の難しさによって判断されます。
入所できる対象者は?
A型事業所を利用できるのは、以下の要件を満たす方々です。
- 障害者手帳の有無: 原則として障害者手帳(身体、療育、精神)を持っている方が対象となります。しかし、手帳がなくても、医師の診断書や自立支援医療受給者証などにより、「障害者総合支援法の対象となる難病や心身の障害がある」と市区町村に認められた場合は、利用が可能です。
- 年齢要件: 18歳以上65歳未満(例外規定あり)で、雇用契約を結んで働く意欲があることが前提です。
- 就労の難しさ: 一般企業での就労が困難な方が対象となります。具体的には、「病気や障害の特性により、継続的なサポートが必要である」と市区町村に認められることが必要です。
- 具体的に求められる姿勢: A型事業所は雇用契約を結ぶため、「業務を遂行する意欲と、最低限の勤怠を守る責任感」があることが求められます。
入所までの具体的な手続きの流れ
A型事業所の利用は、福祉サービスの手続きを踏むため、以下のステップで進みます。
- 相談(市区町村の福祉窓口/支援機関): まずは、お住まいの市区町村の福祉担当窓口、または相談支援事業所に相談します。ここで、A型事業所の利用を希望する旨を伝えます。
- サービス利用申請: 福祉担当窓口で、正式に「就労継続支援A型」の利用申請を行います。この際、医師の診断書や障害者手帳、現在の生活状況に関する書類が必要になります。
- 支給決定: 市町村による審査(サービス等利用計画の作成を含む)を経て、利用が認められると「サービス受給者証」が交付されます。これが、サービスを利用できる証明となります。
- 事業所との面接・契約: 受給者証が交付されたら、希望する事業所と面接を行います。事業所側も、あなたの特性や希望と業務内容が合うかを確認します。双方の合意があれば、正式な「雇用契約」を結んで入所となります。
- 期間の目安: 申請から支給決定まで1〜2ヶ月程度かかるのが一般的です。ただし、希望する事業所に空きがない場合、入所待ちが発生し、入所までの期間は変動することがあります。
3. A型事業所の「お金」の現実:給料と生活水準

就労継続支援A型事業所を利用するにあたり、最も気になるのが収入面です。ここでは、A型事業所の給料の仕組みと、それがもたらす法的・経済的な安心感について解説します。
1ヶ月で稼げる給料はどのくらいか?
A型事業所の収入は、一般企業とは異なる計算の仕組みを理解しておく必要があります。
- 最低賃金以上の支払いが法律で義務付けられていることを強調します。A型事業所は、労働基準法に基づく雇用契約を結ぶため、利用者は働く地域の最低賃金を保障されます。
- 計算の仕組み: 実際の月収は、労働時間(例:1日4〜6時間)と勤務日数(例:週5日)に応じて計算されます。多くのA型事業所では、利用者の体調や特性に合わせて労働時間を短く設定しているため、平均月収は一般企業の正社員よりも低いのが現状です。
- 平均月収の目安: 事業所によって異なりますが、現在の平均月収は約8万円〜12万円程度となることが多いです。ただし、この収入はリハビリや訓練をしながら得られる収入であり、非常に価値のあるものです。
制度のメリット:雇用契約と安心感
A型事業所がB型事業所(雇用契約を結ばない)と決定的に違うのは、「雇用契約」を結ぶという点です。これは、単なる収入以上の大きな安心感をもたらします。
- 内容: 雇用契約を結ぶことで、雇用保険、労災保険の対象となります。
- 雇用保険・労災保険の適用:
- 雇用保険に加入できることで、万が一退職した場合でも、失業保険(基本手当)の受給資格を得る可能性があります。
- 労災保険に加入できることで、業務中の怪我や病気に対して給付が受けられます。
- 安心感: 法的な保護のもとで安定した収入が得られる安心感は、利用者が焦らずに次のステップ(一般就労)への準備を進めるための、精神的な土台となります。
4. 課題と誤解:A型事業所のメリットとデメリット
就労継続支援A型事業所は、一般就労への移行を目指す上で有効な場所ですが、その特性を理解せずに利用すると、メリットを活かしきれない可能性があります。
メリット:リハビリと収入の「最高のバランス」
A型事業所がもたらす最大のメリットは、安定した収入とリハビリを両立できる点です。
- 「働くリハビリ」の実現: 症状や体調に合わせて無理のないペースで働けること。多くの利用者は、週2~3日、1日4時間など、体調に合わせた短時間からスタートし、徐々に時間を増やしていきます。これは、一般企業では難しい柔軟な働き方であり、復職・就職に向けた体力回復に大きく貢献します。
- 専門的な安心感: 事業所の支援員が常駐しているため、業務中の体調変化や人間関係の悩みについて、すぐに専門的な相談が可能です。このバックアップ体制が、利用者にとって大きな心理的安全性となります。
デメリット:スキルアップの限界と昇給の難しさ
A型事業所は雇用契約を結びますが、その目的は「リハビリ」と「福祉的就労」であるため、キャリアアップの仕組みは一般企業と大きく異なります。
- スキルアップの限界: 業務内容が、事業所の収益に直結する定型的かつ反復的な作業に限定されがちです。そのため、WordやExcelの高度なスキル、企画立案能力など、一般企業が求める専門的なスキルが身につきにくいという現実があります。
- 昇給・昇進の難しさ: 多くのA型事業所では、給与が地域の最低賃金に近く、企業型DC(確定拠出年金)や明確な昇給・昇進の仕組みがないことが多いです。これは、事業所の収益構造が福祉サービス費に依存しているためです。利用者は、A型事業所を「キャリアの終着点」ではなく「通過点」として捉え、積極的に外部の学習や訓練を並行して行う必要があります。
5. 一般企業へのステップアップ戦略

就労継続支援A型事業所の期間を、単なる「訓練」や「作業」で終わらせず、一般企業へのキャリアアップに繋げるためには、明確な戦略が必要です。A型での実績を、一般企業が求める「即戦力」の証明に変えましょう。
A型事業所を「訓練」で終わらせない活用術
A型で培うべき最大の武器は、技術スキルよりも「安定した働き方」の証明です。
- 最大の武器1:安定した勤怠実績: A型事業所で得た「安定した勤怠実績」こそが、一般企業への転職活動で最大の武器となります。企業が最も重視するのは「長く安定して働けるか」という点であり、A型での出勤記録は、あなたの体調管理能力と就業意欲を証明する揺るぎないデータとなります。
- 最大の武器2:「報連相の徹底」というプロ意識: A型事業所で訓練した「報連相の徹底」を、単なるマナーではなく、「業務のリスク管理」として活かしましょう。業務の進捗や、体調の波を悪化する前に上司に伝える能力は、どの企業でも通用するプロ意識の証明となります。
- 自己理解の深化: A型での業務を通じて、「自分が最も集中力を発揮できる環境」や「疲労のトリガー(引き金)」を知り、次の企業への配慮事項を具体的に言語化できるようにすることが重要です。
一般就労へのキャリアパス
A型事業所は、一般企業へのスムーズな移行を可能にするための多様なルートを提供しています。
- 移行支援サービスの併用・連携: A型事業所によっては、就労移行支援サービスが併設・連携されている場合もあります。これは、A型で体調と勤怠を安定させた後、より専門的なPCスキルアップや面接対策、企業実習といった訓練にスムーズに移行できるメリットがあります。
- 「働いた実績」の活用: A型事業所での雇用契約に基づく業務経験は、履歴書に記載できる「職務経歴」となります。この実績を活かし、未経験の業務ではなく、A型で培ったデータ入力やマニュアル作成といった「正確性」が活かせる職種を狙うことが、成功への近道です。
6. まとめ|A型事業所は「自立」のための戦略的ステップ
記事の要約:安定とリハビリを両立する戦略的選択
就労継続支援A型事業所は、「一般就労にまだ不安がある」という障害を持つ方々にとって、非常に価値の高い制度です。
A型事業所は、最低賃金が保証され、雇用契約を結んで働くことができるため、経済的な安心感を得ながら、体調に合わせた無理のないペースで社会復帰のためのリハビリを両立できます。この期間は、決して「訓練」や「作業」で終わらせるべきではありません。
読者へのメッセージ:A型事業所を「未来への投資」に
A型事業所は「終着点」ではなく、「自立に向けた戦略的ステップ」です。この期間を最大限に活用し、次のキャリアへと繋げてください。
- 「安定した勤怠実績」を最強の武器にする。
- 業務を通じて「自己理解」を深め、自身の特性と限界を知る。
- スキルアップを継続し、一般就労で通用する専門性を身につける。
A型事業所は、あなたが自信と安定を手に入れ、より良い未来へと踏み出すための揺るぎない土台です。この機会を「未来への投資」と捉え、次のキャリアへと繋げる一歩を踏み出しましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







