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【企業の守りの要】上司に言えない悩みを解決!外部EAPが社員の定着率を上げる仕組み

この記事の内容
- はじめに|なぜ「外部」の相談窓口が必要なのか?
- EAPの役割と「心理的安全性」の確保
- EAP導入が企業にもたらす戦略的メリット
- EAPを効果的に活用するための実践ステップ
- ステップ1:EAPの存在を「配慮」として明示する
- 企業が障がい者雇用を進める上で、EAP(従業員支援プログラム)の存在を単なる福利厚生の一環としてではなく、社員のメンタルヘルスを積極的に支援する仕組みとして丁寧に説明することが極めて重要です。特に、採用面接時や入社時のオリエンテーションにおいて、以下の点を明確に伝えるべきです。
- ステップ2:利用を促すための「匿名性の保証」
- EAPの利用率を向上させる上で、相談内容の匿名性が保証されていることを社員に強く意識させることは不可欠です。社員が「相談内容が人事や上司に伝わるのではないか」という不安を抱くと、EAPの利用は進みません。
- ステップ3:産業医との連携強化
- EAPが単独で機能するだけでなく、産業医や人事部門との連携を強化することで、より実効性の高いメンタルヘルス支援体制を構築できます。社員の同意に基づく情報共有を前提とした、シームレスな連携が重要です。
- まとめ|EAPは「見えないセーフティネット」
はじめに|なぜ「外部」の相談窓口が必要なのか?

精神障害や難病を持つ社員は、体調や人間関係の悩みを「評価に響く」「昇進に不利になる」という懸念から、上司や人事に相談しにくいという現実があります。この「言えない悩み」こそが、問題を深刻化させ、突然の休職や離職という最悪の事態を引き起こします。
この記事の結論は、外部EAP(従業員支援プログラム)は、この自己開示の壁を壊す「中立的な第三者」という強みを活かし、社員の心理的安全性を確保し、企業の離職リスクを下げる、現代の守りの要であるということです。
本稿では、EAPの具体的な活用方法と、企業が導入すべき戦略的な仕組みを解説します。
EAPの役割と「心理的安全性」の確保
EAPとは?:中立的な第三者のメリット
EAPは、社員やその家族が抱えるさまざまな問題(メンタルヘルス、人間関係、ハラスメントなど)に対し、守秘義務のある専門家(カウンセラー、産業医など)が相談に乗るサービスです。
- 内容: EAPの最大のメリットは、その「中立性」にあります。職場や家族とは別の外部機関であるため、社員は評価や人事異動を気にすることなく、本音で深刻な悩みを打ち明けることができます。
障害者社員がEAPに求める支援
EAPは、特に障害を持つ社員の長期就労に不可欠な役割を果たします。
- 内容: 職場では話せない体調の波、治療の不安、人間関係の摩擦などを匿名で相談できるため、早期のストレス解消につながります。これは、社員の「心の安全基地」となり、問題を深刻化させる前に解決するセーフティネットとなります。
EAP導入が企業にもたらす戦略的メリット

離職リスクの軽減とコスト削減
EAPは、企業が従業員の定着を促進し、貴重な採用・育成コストを保護するための重要なリスクヘッジ戦略です。従業員の健全な心身をサポートすることで、企業は予期せぬ離職や長期休職による経済的・組織的損失を最小限に抑えることができます。
- 具体的な内容:
- 早期介入による問題解決: 従業員が個人的な問題(ストレス、メンタルヘルス、家庭問題など)を深刻化させる前にEAPに相談できる環境を提供します。これにより、問題がエスカレートして休職や離職に至る事態を未然に防ぎます。早期のカウンセリングや専門家への橋渡しを通じて、従業員は問題を効果的に対処し、職場復帰やパフォーマンス維持が可能になります。
- 採用・育成コストの削減: 従業員の離職率が低下することで、新たな人材を採用し、育成するための膨大な時間とコストを削減できます。新規採用には広告費、選考プロセス、研修費用などが伴い、これらのコストは企業にとって大きな負担となります。EAPは、既存の従業員が安心して働き続けられる環境を整えることで、これらの間接的なコストも削減します。
- チーム全体の生産性維持: 従業員の休職や離職は、残されたチームメンバーに過度な業務負担をかけ、全体の生産性低下を招きます。EAPは、従業員の安定したパフォーマンスを支援することで、チーム内の業務停滞リスクを軽減し、組織全体の効率性を維持します。
産業医・人事の負担軽減と連携
EAPは、企業内の産業医や人事部門が直面する業務負担を軽減し、より戦略的な人事施策に注力できる環境を創出します。
- 具体的な内容:
- 一次的な心のケアの提供: 従業員のメンタルヘルスに関する初期段階の相談や心のケアをEAPが専門的に担うことで、産業医や人事担当者は、より専門的な治療や複雑なケース、あるいは組織全体の健康課題の解決に集中できます。これにより、各部門の役割分担が明確になり、効率的なサポート体制が構築されます。
- 匿名フィードバックによる職場環境改善: EAPから企業には、「職場全体の傾向」に関する貴重な匿名情報がフィードバックされます。例えば、「特定の部署で業務負荷が高い傾向にある」「特定の種類のハラスメントに関する相談が増加している」「ワークライフバランスに関する不満が多い」といったデータは、具体的な個人を特定することなく、組織全体が抱える課題を浮き彫りにします。
- データに基づいた戦略的な人事施策: この匿名情報は、企業がデータに基づいて職場環境の改善策を立案し、実行するための強力なツールとなります。例えば、特定の部署の業務プロセス見直し、ハラスメント防止研修の強化、柔軟な働き方制度の導入など、具体的な施策に繋げることができます。EAPとの連携により、企業は予防的なアプローチで従業員のエンゲージメントと満足度を高め、より健康的で生産性の高い職場環境を実現できます。
EAPを効果的に活用するための実践ステップ
ステップ1:EAPの存在を「配慮」として明示する
企業が障がい者雇用を進める上で、EAP(従業員支援プログラム)の存在を単なる福利厚生の一環としてではなく、社員のメンタルヘルスを積極的に支援する仕組みとして丁寧に説明することが極めて重要です。特に、採用面接時や入社時のオリエンテーションにおいて、以下の点を明確に伝えるべきです。
- 説明の質とタイミング: 面接時にEAPの利用について触れる際は、「困ったときにいつでも相談できる専門窓口がある」という安心感を醸成するよう心がけましょう。入社時には、より具体的に、どのような相談ができるのか(ストレス、ハラスメント、キャリアの悩みなど)、誰がどのように対応するのかを説明します。
- 「配慮」としてのEAP: 障がい者にとって、新たな職場環境への適応は大きなストレスとなり得ます。EAPが、そうした適応プロセスにおける精神的な負担を軽減し、安定して長く働けるようサポートする「配慮」の一つであることを強調します。
- 信頼関係の構築: EAPが社員の心身の健康を真摯に考えている企業の姿勢を示すことで、「この会社なら安心して働ける」「困ったときに助けてくれる」という信頼感とエンゲージメントの向上に繋がります。これにより、社員は安心して業務に集中し、自身の能力を最大限に発揮できるようになります。
ステップ2:利用を促すための「匿名性の保証」
EAPの利用率を向上させる上で、相談内容の匿名性が保証されていることを社員に強く意識させることは不可欠です。社員が「相談内容が人事や上司に伝わるのではないか」という不安を抱くと、EAPの利用は進みません。
- トップダウンでの明確な保証: 経営層や部門長など、組織のトップがEAPの匿名性について全社員に向けて公式に保証する機会を設けるべきです。社内報、全体会議、イントラネットなどを活用し、繰り返しメッセージを発信することで、社員の不安を払拭し、EAPへの信頼を高めます。
- プライバシー保護の徹底: 相談内容が個人を特定できない形で集計され、会社全体の傾向分析にのみ利用されること、個別の相談内容が人事評価や処遇に影響を与えないことを具体的に説明します。EAP事業者との契約においても、厳格な情報管理体制を義務付けることが重要です。
- 安心感の醸成: 匿名性が保証されることで、社員はためらいなく悩みを打ち明け、早期に適切なサポートを受けることができます。これにより、問題が深刻化する前に対応できるため、社員のメンタルヘルス不調の予防にも繋がります。
ステップ3:産業医との連携強化
EAPが単独で機能するだけでなく、産業医や人事部門との連携を強化することで、より実効性の高いメンタルヘルス支援体制を構築できます。社員の同意に基づく情報共有を前提とした、シームレスな連携が重要です。
- 多職種連携体制の構築: EAPカウンセラー、産業医、人事担当者が定期的に情報交換を行い、個別のケースについて連携して対応できる体制を構築します。これにより、多角的な視点から社員をサポートすることが可能になります。
- 「治療」や「業務調整」へのスムーズな移行: EAPでの相談を通じて、専門的な治療が必要と判断された場合や、業務上の調整が必要な場合には、社員の同意を得た上で、産業医への紹介や人事部門との連携をスムーズに行える仕組みを構築します。
- 産業医の意見書の活用: 例えば、EAPで継続的なストレス相談を受けている社員に対して、産業医が面談を行い、その結果として「意見書」を提出することで、業務量の調整、配置転換、休職・復職支援など、具体的なアクションに繋げることが可能になります。この意見書は、企業が社員の健康状態に応じた適切な配慮を行う上で重要な根拠となります。
- 支援の具体化と定着: EAPと産業医、人事が連携することで、相談が具体的な「治療」や「業務調整」といった行動に結びつきやすくなり、単なる「相談」で終わらせず、社員の健康状態の改善と職場定着を強力に支援します。
これらのステップを通じて、企業は障がい者を含む全社員が安心して働ける環境を整備し、組織全体のウェルビーイング向上に貢献することができます。
まとめ|EAPは「見えないセーフティネット」

EAP(従業員支援プログラム)は、単なる福利厚生の一環ではありません。それは、現代企業にとって不可欠な「見えないセーフティネット」として、社員の心理的な安全性を確保し、企業の離職リスクを大幅に低減する戦略的なツールであることを再確認します。
今日のビジネス環境では、社員一人ひとりが抱えるストレスや精神的な課題が多様化・複雑化しており、それが個人のパフォーマンス低下だけでなく、組織全体の生産性やエンゲージメントにも深刻な影響を及ぼします。EAPは、このような社員の心身の健康を包括的にサポートすることで、個人のウェルビーイング向上に貢献し、結果として企業全体のレジリエンス(回復力)を高めます。
具体的には、EAPは専門家によるカウンセリング、メンタルヘルスに関する情報提供、法務・財務相談など、多岐にわたるサービスを提供します。これにより、社員は仕事だけでなく、プライベートで生じる様々な問題に対しても、安心して相談できる環境を得ることができます。早期の問題発見と介入は、問題が深刻化する前に解決へと導き、休職や離職といった事態を防ぐ上で極めて重要です。
また、障害者社員の活躍推進が社会的に求められる中で、EAPは彼らがその能力を最大限に発揮できるような環境を整える上でも重要な役割を担います。障害特性に起因する悩みやストレスに対し、個別の支援を提供することで、インクルーシブな職場文化の醸成に貢献します。読者へのメッセージ: EAPの導入・活用は、単なるコストではなく、企業の持続的な成長と発展のための「重要な投資」です。社員の心身の健康を第一に考える企業文化は、優秀な人材の定着を促し、採用競争力をも高めます。そして何よりも、障害者社員を含む全ての社員が、その能力を最大限に引き出し、やりがいを持って働くことができる環境を創造することは、企業の未来のコスト(離職による採用・教育コスト、生産性低下による機会損失など)を守るための、最も力強い戦略であることを、私たちは強く訴求します。今こそ、EAPを経営戦略の中核に据え、真に働きがいのある企業を目指しましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







