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障害者雇用率引き上げで変わる働き方|企業の対応と求職者への影響【2025年最新版】

はじめに
日本では、2024年4月に民間企業の法定障害者雇用率が 2.5% に引き上げられました。この改定は今すでに実施されており、多くの企業にとって「新たな常態」です 。
さらに、2026年7月には、さらなる引き上げとして 2.7% への上昇が予定されています。これにより、従業員の比率だけでなく、対象企業の規模基準も「常時雇用労働者37.5人以上」に引き下げられ、より多くの企業が対象となる見通しです。
このように、障害者雇用の法制度は段階的に整備されており、企業にとっては人材戦略の重要な一部となっています。また、求職者にとっても、在宅勤務や短時間勤務、ジョブカービングなど柔軟な働き方を通じて、多様な就業機会が拡大している現実があります。
本記事では、2024年時点の現状と2026年以降の見通しを踏まえて、企業が直面する課題・対策、求職者にとってのチャンスや準備すべきことを体系的に整理していきます。
障害者雇用率とは?基礎知識
法定雇用率の仕組み
「障害者雇用促進法」に基づき、企業には従業員の一定割合以上を障害者として雇用する義務があります。この割合を 「法定雇用率」 と呼び、毎年の従業員数を基準に必要な雇用人数が計算されます。
例えば、現在(2025年時点)の法定雇用率は 2.5% です。従業員40.0人以上の企業は雇用義務の対象となり、規模が大きくなるほど必要な障害者数も増えます。2026年7月には 2.7% に引き上げられ、対象企業も 37.5人以上 に拡大する予定です。
法定雇用率を満たしていない企業には、行政指導(計画の提出・改善指導)が行われるほか、常用労働者100人を超える企業には 障害者雇用納付金制度 が適用されます。これは、不足1人あたり月額5万円を納付する仕組みで、達成している企業には逆に調整金や報奨金が支給される場合もあります。
このように、法定雇用率は「達成しなければ罰則がある制度」であると同時に、「達成すれば支援を受けられるインセンティブ制度」として機能しています。
これまでの推移
2021年:2.3% → 2024年:2.5% → 2026年:2.7%(予定)と段階的に上昇します。2025年はその中間地点であり、企業にとって対応を急ぐ必要があります。
対象となる企業規模と義務内容
現在の法定雇用率は 2.5%(2024年4月~) に引き上げられており、従業員 40.0人以上 の企業に雇用義務が発生します。さらに、2026年7月には2.7%へ引き上げられ、37.5人以上の企業が対象となる予定です。企業規模が大きくなるほど必要な雇用人数も増えるため、大手企業ほど早期の対応が求められます。
雇用率引き上げで企業が直面する課題

採用枠拡大による求人増加
雇用率の引き上げに伴い、企業は新たに採用枠を設ける必要があります。これにより、障害者雇用の求人は全体的に増加し、採用市場が活性化すると見込まれます。しかし同時に、「どの職務を切り出して任せるのか」「既存社員との役割分担をどう調整するのか」 といった具体的な設計が企業に求められます。単なる人数合わせではなく、組織に必要な人材をどう配置するかが大きな課題です。
職場の受け入れ体制(バリアフリー・人材配置)
採用人数が増えても、職場環境が整っていなければ定着につながりません。オフィスや工場のバリアフリー化、ICTツールの導入、サポート担当者や相談窓口の配置など、物理的・制度的な受け入れ体制が不可欠です。特に中小企業では、ハード面の投資に加えて、社員全体の理解や協力体制を築くことが重要となります。
配慮と即戦力のバランス問題
企業が最も悩みやすいのは「配慮は必要だが即戦力も求めたい」というジレンマです。障害特性に応じた業務調整や勤務時間の配慮をしつつも、企業側は生産性を維持・向上させなければなりません。解決の鍵は、ジョブカービング(業務の切り出し)や在宅勤務の導入など、柔軟な働き方の仕組みを整えることにあります。
人事担当者が悩みやすい点(定着率・教育コスト)
採用しても長く続かず離職率が高い、教育コストがかさむ、といった声は少なくありません。特に「戦力化までに時間がかかる」点は大きな不安材料です。ここで重要なのが、ハローワーク・地域障害者職業センター・就労支援機関との連携です。外部リソースを活用することで教育負担を軽減し、定着率を高めることが可能になります。
さらに、障害者雇用に特化した転職エージェントを活用することで、採用段階から適性に合う人材を紹介してもらいやすくなります。これにより、入社後のミスマッチを防ぎ、教育コストや早期離職のリスクを抑えることにつながります。
求職者にとっての変化とチャンス

求人が増える職種・業界
事務、製造、IT、軽作業など、幅広い分野で求人が拡大します。特にITやリモート対応職は注目度が高まっています。
未経験でも応募できるチャンスの広がりと注意点
雇用率の引き上げにより、企業はこれまで以上に採用枠を設ける必要があるため、「未経験でも応募可能」とする求人が増える可能性があります。特に、事務補助やバックオフィス業務、製造現場での軽作業などは、ジョブカービングによって任せやすくなるケースがあります。
しかし一方で、近年は DX化や自動化の進展により単純作業が減少傾向にあります。そのため、「誰でもできる仕事」が増えるわけではなく、PCの基本操作や業務に関連する最低限のスキルは求められることが多いのが実情です。
つまり、雇用の門戸が広がるのは事実ですが、求職者自身もスキル習得や適性に応じた準備をしておくことが、チャンスを活かすうえで欠かせません。
フルタイム希望/時短希望それぞれの選択肢拡大
「フルタイムでしっかり働きたい」「短時間で無理なく働きたい」など、多様なニーズに応える求人が増えていくでしょう。
地方求人はどう変わる?
地方でも大企業の支店や自治体関連の雇用が拡大する見込みがあります。地域格差が縮小する期待も高まります。
実際の現場で想定される働き方の変化
在宅勤務やハイブリッド勤務の導入拡大
コロナ禍以降に広がったテレワークは、障害者雇用にも活用され、通勤負担の軽減に役立ちます。
短時間雇用からフルタイムへのステップアップ事例
まずは短時間勤務でスタートし、慣れてからフルタイムへ移行する「段階的雇用」が広がっています。
障害特性に合わせた「カスタマイズ雇用」導入例
企業が業務を切り出して個々に最適化する「ジョブカービング」の実践が進み、本人の強みを活かした働き方が可能になります。
企業に求められる対応

業務の切り出しとジョブカービング(個別最適化)
従来の業務を分解し、障害特性やスキルに応じて「できる部分」を任せる仕組みは、企業・本人双方にとって有効です。例えば、製造業では検品業務だけを切り出す、事務職ではデータ入力や郵送準備などを任せるなど、部分的な業務分担であっても組織全体の生産性向上につながります。
ジョブコーチや支援機関との連携
就労支援機関やジョブコーチを活用すれば、採用後の定着支援まで一貫してサポートを受けられます。面談や職場訪問を通じて企業側の疑問や不安を解消できるため、採用のハードルを下げる効果もあります。外部専門家を巻き込むことは、人事担当者の負担を減らすだけでなく、社員全体の理解促進にも有効です。
社内全体での理解促進と教育
配慮を必要とする社員が増えると、「特別扱いではないか」という誤解も生まれがちです。採用時に研修や説明を実施し、合理的配慮が全社員にとって働きやすい職場づくりにつながることを周知することが欠かせません。これにより離職率低下や人材定着にも直結します。
雇用率達成を「義務」から「成長戦略」へ
障害者雇用を「法令順守のため」だけに留めるのではなく、ダイバーシティ経営の一環として取り入れることが、企業価値の向上やブランドイメージの強化につながります。多様な人材が活躍できる職場は、イノベーションの創出や従業員エンゲージメントの向上にも寄与します。
求職者が意識すべきポイント
スキルアップ・PCスキルや資格取得の重要性
Word・Excelといった基本操作やMOS資格、簿記などは依然としてニーズが高い分野です。最近では、リモートワークを意識したオンライン会議ツール(Zoom、Teamsなど)の基本操作も習得しておくと強みになります。
通勤距離や勤務形態を明確にして希望を伝える
「通勤は週3日まで」「在宅勤務を組み合わせたい」など、自分の体調や生活に合わせた条件を整理しておくと、採用後のミスマッチを防げます。あらかじめ医師や支援機関と相談しておくと、より具体的な説明が可能になります。
転職エージェント・ハローワークの活用
障害者雇用に特化した転職エージェントや、ハローワークの専門窓口を利用することで、自分の特性に合った求人に出会いやすくなります。特にエージェントは、履歴書添削や面接対策まで支援してくれるため、初めての就職・転職活動を安心して進められます。
A型事業所や職業訓練との違いを理解
A型事業所や職業訓練は、一般就労に比べて支援が厚く、スキルを身につける「ステップ」として利用できます。一方で賃金やキャリアの広がりには限界もあるため、自分の将来像に合った働き方を選ぶことが重要です。
まとめ
2025年時点で障害者雇用率は 2.5%(従業員40人以上が対象) となり、さらに2026年7月には 2.7%(37.5人以上が対象) に引き上げられる予定です。これは、企業にとっては「義務強化」であると同時に、求職者にとっては「チャンス拡大」を意味します。
企業に求められるのは、単に雇用率を達成することではありません。業務の切り出しやジョブカービング、ジョブコーチや支援機関との連携、社内理解を促す教育体制などを整えることで、障害者雇用を「人材確保の戦略」へと進化させることができます。結果的に、職場全体の働きやすさや生産性向上にもつながるでしょう。
一方で求職者にとっては、求人枠の増加により新しい選択肢が広がります。ただし、誰でも採用されるわけではなく、DX化で単純作業が減少している現実もあります。Word・Excelなどの基本PCスキル、オンライン会議ツールの操作、資格取得など、必要最低限のスキルを備えることが、チャンスをつかむカギとなります。制度改正はゴールではなくスタートラインです。企業は多様性を活かす経営を、求職者は自分に合ったキャリア準備を進めることで、持続可能な雇用が実現します。雇用率引き上げを「負担」ではなく「社会全体の成長のきっかけ」と捉え、企業と障害者がともに未来を築いていくことが、これからの日本社会に求められています。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







