2025/12/05
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【冬の安定就労術】寒さと乾燥が引き起こす症状の悪化を防ぐ合理的配慮と自己管理戦略

はじめに:冬の寒さと乾燥は「見えない壁」。症状悪化の回避戦略

障害者雇用で働く方々にとって、冬の季節は就労の安定性を脅かす大きな試練となります。寒さや乾燥といった環境の変化が、病状を悪化させるトリガー(引き金)となり得るからです。

記事の導入:冬の環境変化が障害特性に与える悪影響

冬の寒さ、乾燥、日照時間の短縮が、多くの障害特性に悪影響を及ぼす現状に触れます。

  • 寒さの悪影響: 低温による血管収縮は、関節痛、神経痛(身体障害、難病)を増悪させます。また、免疫力の低下は感染症リスクを高め、内部障害を持つ方にとっては特に危険です。
  • 乾燥の影響: オフィスでの暖房や外気の乾燥は、ドライアイ、ドライマウス(難病:シェーグレン症候群)といった症状を悪化させ、発声や集中力の低下につながります。
  • 日照時間の短縮: 日光に当たる時間の減少は、冬季うつ(精神障害)や倦怠感を増悪させる原因となります。

これらの要因は、「目に見えない壁」として、社員の安定稼働を脅かします。

記事の結論:冬は特に「予防的な合理的配慮」と「緻密な自己管理」が、安定就労の鍵となる

この季節特有のリスクを乗り越え、安定して働き続けるためには、「個人の努力」と「組織の仕組み」を組み合わせた予防的な戦略が不可欠です。

  • 予防的な合理的配慮: 企業は、足元ヒーターの設置、勤務時間の柔軟な調整、加湿器の導入といった物理的・制度的な対策を講じること。
  • 緻密な自己管理: 当事者は、体調ログの活用、温活十分な休息といった緻密な自己管理戦略を徹底すること。

この二つの戦略を実行することで、冬という季節を安定就労の確かな実績へと変えることができます。


1. 冬の寒さが悪化させる主な症状と医学的リスク

冬の寒さや環境変化は、特定の障害特性や難病の症状を直接的に悪化させる要因となります。企業や当事者が適切な予防策を講じるためには、この医学的リスクを理解することが不可欠です。


身体障害・難病のリスク

寒さは、血行や関節の動きに影響し、痛みやこわばりを増強させます。

  • 寒さによる血行不良、関節痛・神経痛の増強。筋ジストロフィー、SLE、内部障害などへの影響:
    • 身体障害: 寒さによる筋肉の緊張や関節のこわばりによって、麻痺や関節痛が増強されます。車いす利用者は血行不良を起こしやすく、体温調節も難しいです。
    • 難病: 筋ジストロフィーでは筋力が低下した部位が冷えやすく、全身性エリテマトーデス(SLE)のような膠原病では、レイノー現象(指先が白くなる現象)や関節の痛みが増すことがあります。
  • 症状悪化のメカニズム:
    低気温にさらされると、体は熱を逃がさないようにするために血管を収縮させます(血行不良)。これにより、筋肉や神経への血流・酸素供給が減少し、痛み物質が滞留することで、関節痛や神経痛といった症状が強く増幅されます。

精神障害・発達障害のリスク

冬の環境変化は、身体だけでなく、脳機能やメンタルヘルスにも直接影響します。

  • 日照時間の短縮によるうつ症状の増悪、乾燥による不快感や感覚過敏:
    • 精神障害: 日照時間が短くなる冬季は、うつ症状(抑うつ気分、倦怠感)が悪化しやすい時期です。
    • 発達障害: 乾燥した空気や静電気による皮膚の不快感、あるいはオフィスでの暖房による室温の急激な変化が、感覚過敏を持つ方にとって強いストレスとなります。
  • セロトニンと日照時間:
    冬季うつ(季節性感情障害)とセロトニン(幸せホルモン)の関係があります。セロトニンは気分を安定させる神経伝達物質ですが、日光を浴びる時間が減少すると、その生成が減少し、意欲の低下や抑うつ症状を引き起こすメカニズムです。

課題:感染症と疲労の連鎖

冬場は感染症が流行しやすく、これが易疲労性を持つ社員の症状を悪化させる最大の要因です。

  • 感染症リスクの高まりが、体力の消耗(易疲労性)と症状悪化の悪循環を招くこと:
    • リスク: 免疫抑制剤を服用している難病患者や、易疲労性を持つ社員は、感染症(インフルエンザ、コロナなど)にかかると重症化しやすく、回復に時間がかかります
    • 悪循環: 感染→体力の極度な消耗→症状の悪化(うつ症状の増悪、関節痛の再燃)→長期欠勤となり、心身の回復業務の安定を妨げる悪循環に陥ります。

2. 企業が導入すべき「ウォームビズ」と環境配慮

冬場の安定就労を実現するためには、従業員個人の努力だけでなく、企業側が「寒さ」や「乾燥」といった目に見えないリスクを軽減する物理的・制度的な合理的配慮を講じることが重要です。

環境面の物理的対策

特定の部位の冷えや、乾燥による不快感を解消する、具体的な「ウォームビズ」対策が必要です。

  • 足元ヒーター、ひざ掛けの支給: 身体障害や難病により血行不良を起こしやすい社員や、車いすユーザーは、特に足元が冷えやすいです。一律の暖房温度では対応できないため、個人専用の足元ヒーターや電気ひざ掛けを支給することは、最も基本となる合理的配慮です。
  • 窓際を避けたデスク配置: 窓際は外気の影響を受けやすく、室温が不安定になりがちです。体調の波が激しい社員や、寒さに弱い社員を、窓際から離れた、温度が安定しやすいオフィスの中心部に配置換えすることが有効です。
  • 加湿器の設置と適切な湿度管理: 乾燥は、呼吸器系や皮膚、眼の症状を悪化させます。オフィス全体、または個別のデスク周りに加湿器を設置し、40〜60%程度の適切な湿度を維持することは、感染症予防と症状悪化防止の両面で重要です。

騒音対策の応用

乾燥による咳払い(音声チック)の増加を避けるための環境づくりも、間接的な配慮となります。

  • メカニズム: 乾燥や風邪により喉の不快感が増すと、チック症状の一種である咳払いや音声チックが増加することがあります。
  • 配慮: 適切な加湿管理に加え、周囲への影響を懸念する精神障害や発達障害の社員には、席を端に配置したり、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンの使用を許可したりするなど、心理的な安心感を与える配慮が有効です。

制度面の柔軟な配慮

寒さによる身体的な負担を軽減するため、時間と場所の柔軟性を確保します。

  • 時差出勤(通勤ラッシュ回避): 寒さの中、満員電車に揺られることは、身体的な疼痛や精神的なストレスを増幅させます。時差出勤制度を適用し、通勤ラッシュを避けた比較的負担の少ない時間帯に出勤・退勤を許可することが、安定稼働を支えます。
  • 休憩時間の柔軟な確保(体を温める時間): 体調の波や、寒さによる一時的な痛みの増強に対応するため、定められた休憩時間以外にも、体を温めるため、または症状を落ち着かせるための休憩を柔軟に取得できる制度が必要です。
    • 具体例: 15分間の小休憩を数回取得する、休憩室で横になることを許可するなど。

産業医との連携

休憩・体温調整のための配慮が医師の指示に基づくものであることは、配慮の正当性と継続性を高めます。

  • 役割: 企業の人事や上司の独断ではなく、産業医や主治医の意見書に基づいて「この社員にとってこの配慮が必要である」と明確化することで、配慮の継続的な実行が保証されます。
  • 効果: 社員は安心して配慮を利用でき、企業は安全配慮義務を適切に果たすことにつながります。

3. 特性別:具体的な「合理的配慮」の活用事例

冬場に特有の環境リスク(寒さ、乾燥、日照不足)から社員を守り、安定稼働を実現するため、企業は障害特性に応じて予防的かつ柔軟な合理的配慮を講じる必要があります。


身体障害者への配慮:冷えと動作の負担軽減

寒さによる血行不良や関節痛の増悪を防ぐための物理的・制度的配慮が中心となります。

  • 座り作業の徹底: 長時間の立ち仕事を避け、座り作業がメインとなる業務(データ入力、事務管理など)に調整します。座席には、体圧分散クッション高機能チェアの導入も有効です。
  • 車通勤の許可: 寒さの中での公共交通機関の利用路面凍結時の移動リスクを避けるため、専用駐車場の確保車通勤の許可を検討します(特に移動に困難がある場合)。
  • ウォームビズの推進(服装の自由化): オフィス全体の温度を上げるのではなく、個人の体温調節を優先します。防寒具(厚手のフリース、ダウンベストなど)や、機能性下着の着用を服装規定に関わらず許可します。
  • 個別暖房器具: デスク下に足元ヒーター電気ひざ掛けの設置を許可し、特定の部位の冷えをピンポイントで解消します。

精神障害者への配慮:疲労とメンタルヘルス対策

日照不足による抑うつ症状や、冬の慣れない環境による疲労の蓄積を防ぐ配慮が重要です。

  • 在宅勤務の活用(日照不足・疲労対策):
    • 日照不足対策: 在宅勤務(リモートワーク)を許可し、通勤の負担を軽減します。また、自宅で高照度照明を設置するなど、日照不足を補う環境を整えることを促します。
    • 疲労管理: 寒さや気候の変化による強い倦怠感が出た際、無理なく自宅で業務を継続できるため、欠勤リスクを大幅に減らせます。
  • 業務量の段階的な調整(繁忙期の負荷軽減):
    • 戦略: 年末や年度末の繁忙期は、業務負荷によるストレスが症状悪化のトリガーとなるため、事前に上司と相談し、タスクの難易度や量を一時的に軽減します。
    • 休憩の柔軟化: 寒さや倦怠感を感じた際に、定時外でも休息を取れるよう、休憩時間の柔軟な運用を許可します。

発達障害者への配慮:感覚過敏と集中力維持

乾燥や冷気による不快感、または環境音の増加が集中力を妨げることを防ぎます。

  • 感覚過敏への対応:ノイズキャンセリングと、冷気・暖房の風が直接当たらない環境の確保:
    • 騒音対策: オフィスでの暖房機器の動作音や周囲の会話の増加に対し、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用を許可し、聴覚過敏に対応します。
    • 環境刺激: 暖房の風や冷気が直接体に当たる席を避け、座席配置を調整します。乾燥が原因で咳払い(音声チック)が増えるリスクがあるため、パーソナル加湿器の設置を許可することも有効です。
  • 定型業務の確保: 環境の変化が多い冬場でも、ルーティン化された定型業務を確保することで、不安と混乱を最小限に抑え、安定した集中力を維持させます。

4. 本人が実践すべき「冬の自己管理戦略」

企業側の合理的配慮に加え、当事者自身が冬のリスクを理解し、緻密な自己管理を実践することが、安定した就労に最も重要です。これは、企業に対し「自己管理能力」を証明することにも繋がります。

疲労とストレスの管理

体調の波を客観的に把握し、回復を促す習慣を日常生活に取り入れます。

  • 体調ログの活用: 毎日の体温、睡眠時間、疲労度、症状の変動(例:関節の痛み、倦怠感)を記録します。これにより、体調が悪化する「予兆(トリガー)」を早期に発見し、無理をする前に上司に相談するタイミングを見極められます。
  • 湯船に浸かるなど入浴による血行促進とリラックス: 冬は寒さで筋肉が緊張し、痛みが強くなりがちです。入浴は、体を温め、血行を促進し、リラックス効果(副交感神経優位)を高める最も有効な手段です。

入浴・温活の習慣化

体を深部から温め、筋肉のこわばりや関節痛を緩和する効果を最大限に引き出します。

  • 実践: シャワーで済ませず、湯船に15〜20分浸かることを習慣化します。これにより、筋肉のこわばり神経痛を和らげ、睡眠の質も向上させることができます。ネックウォーマー腹巻といった防寒具を着用する「温活」も、血流維持に役立ちます。

感染症予防の徹底

免疫力が低下している方、特に難病などで免疫抑制剤を服用している方は、感染症予防がそのまま「就労の継続」に直結します。

  • 免疫抑制剤服用者や内部障害者のための、マスク・手洗いの徹底、人混みの回避:
    • 職場: 業務時間外でもマスク着用を徹底し、共有スペース利用後の手洗い・アルコール消毒をこまめに行います。
    • 通勤・生活: 可能な限り通勤ラッシュを避け人混み(イベント会場、混雑したスーパーなど)への外出を控えるなど、感染リスクの高い場所を意識的に避けます。
  • 予防接種と主治医との相談: インフルエンザ・コロナワクチンの接種計画を立てることは、重症化リスクを下げる重要な防御策です。
    • 計画: 毎年秋頃にインフルエンザワクチンの接種を検討し、主治医と相談の上、コロナワクチンの追加接種のタイミングを計画します。
    • 職場への報告: 接種後の発熱による急な休みが発生する可能性についても、事前に上司に共有しておくと安心です。

食事と栄養管理

体温の維持と免疫力の向上は、食事から支えることが重要です。

  • 体温維持のための温かい食事:
    • 実践: 冷たい食事を避け、温かい汁物や温野菜を意識的に摂取します。特に生姜や根菜類は、体を温める効果が高いため積極的に取り入れましょう。
  • 免疫力維持のための栄養士との連携:
    • 戦略: 免疫機能を維持するために、ビタミンD、ビタミンC、たんぱく質などをバランスよく摂取することが重要です。難病などで食事制限がある場合は、栄養士に相談し、冬場に必要な栄養素を補給するための具体的な献立やサプリメントについてアドバイスをもらいましょう。

5. まとめ:冬を乗り切る「安定性」こそが信頼の証

本記事で解説したように、冬場の就労は寒さ、乾燥、日照不足といった「見えない壁」との闘いです。この季節のリスクを乗り越え、安定して働くことこそが、あなたの「自己管理能力」と「プロ意識」を証明する最大の武器となります。


記事の要約:協力と予防が長期定着に繋がる

冬のリスクを事前に理解し、企業と本人が協力して対策することが、長期的な定着に繋がります。

  • リスクの核心: 低温による関節痛・神経痛の増強や、日照不足によるうつ症状の悪化感染症のリスクといった季節性の要因が、症状の波を大きくします。
  • 企業の役割: 企業は、足元ヒーターの支給休憩時間の柔軟な確保時差出勤の許可など、予防的な合理的配慮を講じる必要があります。
  • 本人の役割: 体調ログの活用や入浴・温活の習慣化、服薬の徹底といった緻密な自己管理が、安定稼働の土台となります。

読者へのメッセージ:冬の安定稼働は最大の武器

冬を安定して乗り切ることは、「自己管理能力」の証明となり、キャリア継続の大きな武器となります。

  • 企業が最も評価するのは、「困難な状況下でも、自分でリスクを管理し、成果を出し続ける能力」です。冬場に安定して稼働できることは、あなたの「自己管理能力」「プロ意識」の揺るぎない証明となり、昇給やキャリアアップの大きな武器となります。

次のステップ:具体的な行動を起こす

  1. 体調ログの徹底: 今すぐ睡眠時間や疲労度を記録する体調ログをつけ、自分の体調の波と限界点を客観的に把握しましょう。
  2. 温活の習慣化: 毎日湯船に浸かる足元ヒーターを使用するなど、体を深部から温める「温活」を実践し、血行不良による痛みを予防しましょう。

配慮の相談: 産業医上司に対し、「寒さ対策としての足元ヒーター支給」「感染症予防のための時差出勤」について相談し、予防的な合理的配慮を求めましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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