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【正社員登用実例】障害者雇用でパートからステップアップする戦略と企業の評価基準

この記事の内容
はじめに:パートから正社員へ!登用制度は「戦略」として存在する

障害者雇用で就職活動をする際、「まずは体調優先でパートからスタートしたい。でも、将来的に正社員になれる道はあるのだろうか?」という疑問や不安は尽きません。安定したキャリアを築く上で、この「パートからのステップアップ」というルートは、非常に現実的かつ有効な戦略となります。
記事の導入:障害者雇用でもパートから正社員登用を目指すルートは一般的か、という読者の疑問に答える
多くの求職者は、正社員登用制度が「形だけ」で、実際には障害を持つ社員には適用されないのではないか、と懸念しています。しかし、結論から言えば、パートから正社員への登用ルートを積極的に運用している企業は確実に存在します。特に身体障害や精神障害を持つ方は、この制度を利用することで、リスクを最小限に抑えたキャリアアップを実現できます。
記事の結論:登用制度を積極的に運用している企業は存在し、これは「安定性を証明した人材」を確保するための企業の合理的な戦略である
企業がこのルートを設けているのは、単なる善意ではありません。これは、「安定性を証明した人材」を正社員として確保するための、極めて合理的な戦略です。
- 企業側の合理性: パート期間を「初期リスクのないトライアル期間」として利用し、「体調管理ができ、業務に適性があり、長く定着してくれる」と確信できた人材だけを正社員に引き上げることができます。
この記事では、この登用制度を戦略的に活用し、正社員の座を勝ち取るための具体的な評価基準と行動計画を解説します。
1. 企業の登用制度の現状:パートからのステップアップは可能か?
「パートから正社員へ」の道は、障害者雇用において非常に現実的なキャリア戦略です。特に定着率の高さと採用コストの最適化を目指す企業にとって、パート期間は「試用期間」として機能し、登用制度は企業戦略の一環として積極的に運用されています。
登用制度が存在する企業の特徴
パートからの登用制度は、すべての企業にあるわけではありません。特に以下の特徴を持つ企業で、この制度が活用されています。
- 大手の特例子会社:親会社から安定した業務を受託しており、長期的な人材育成を前提としています。パート社員として数年間かけて研修や実務経験を積ませ、能力が一定基準に達した段階で正社員として登用する明確なキャリアパスを持つ企業が多いです。
- 安定した製造業やIT・金融系の事務職:これらの企業は、業務がルーティン化・マニュアル化されている部分が多く、個人の安定性と正確性が非常に重要です。パート期間でその安定性を確認できれば、長く働ける人材として正社員に引き上げられます。
- 長期定着を重視する企業:障害者雇用において、企業が最も避けたいのは「早期離職」です。登用制度は、企業が「長く働いてくれる確証」を得てから正社員採用に踏み切るための仕組みとして機能しています。
企業側のメリット
企業がパート登用を積極的に行う背景には、経済的・組織的なメリットがあります。
- 初期リスクの軽減: いきなり正社員として採用すると、ミスマッチによる早期離職や、想定外の重い合理的配慮が必要になった場合のリスクが高まります。パートであれば、雇用コスト(人件費、社会保険料など)が抑えられるため、企業は初期の雇用リスクを大幅に軽減できます。
- 能力と定着を実務で検証できる: 書類選考や面接だけでは、体調の安定性や配慮の適合性を正確に判断することは困難です。パート期間という実務を通じた長期間の検証により、企業の採用担当者は、「この社員は安定して戦力になってくれる」という確証を得てから正社員登用に踏み切ることができます。
- 採用コストの最適化: 求人広告費やエージェントフィーといった外部コストをかけて正社員を再募集するよりも、既に能力と安定性が証明された内部のパート社員を登用する方が、トータルでの採用コストが大幅に抑えられます。これは、企業にとって極めて合理的な選択です。
2. 【最重要】正社員登用で評価される3つの基準

パートから正社員への登用審査において、企業が最も厳しくチェックするのは、「能力」よりも「安定性」と「責任感」です。この3つの基準をパート期間中に確実にクリアすることが、登用を勝ち取るための絶対条件となります。
1. 基準1:安定した勤務実績(出勤率)
何よりも重視される「稼働率」は、企業が正社員という大きな投資をする上での最大の安心材料となります。
- 何よりも重視される「稼働率」:企業が正社員に登用するということは、その社員に長期的な責任とコアな業務を任せるということです。そのため、安定して出勤できることが、スキルや経験よりも重要視されます。
- 出勤率95%以上が目安となる理由:出勤率が95%以上(年間欠勤日数が10日前後以下)であることが、企業が「この人は体調管理ができ、安定した生産性を提供できる」と判断する一つの目安となります。面接で体調ログや通院実績を提示し、安定性を裏付けることが重要です。
2. 基準2:合理的配慮の「自律的な活用」
配慮を「依存」ではなく「能力」に変えているか、という自律性が評価されます。
- 配慮を要求するだけでなく、体調をコントロールし、安定して業務を遂行しているか:
- 能動的な活用: 企業は、「困ったら助けを求める」だけでなく、「困らないように自分で管理・対処しているか」を見ています。
- 評価ポイント: フレックス制を利用して朝の遅れを調整する、疲労を感じる前に自ら休憩を取る、体調ログで症状の波を予見し、業務量を調整するなど、自律的な管理能力が評価されます。
- 企業の意図: これは、正社員として大きな責任を負った際に、組織に過度な負担をかけず、自力で問題を解決できる能力があるかを測るための重要な基準です。
3. 基準3:スキルと意欲
パート業務を通じて、正社員としての責任を負うための準備ができているかが問われます。
- パート業務だけでなく、Excelなど自己学習でスキルアップを図り、正社員としての責任を負う意欲:
- 業務の質: パート業務(データ入力、軽作業)をミスなく正確にこなす能力は必須です。
- 意欲の証明: それに加え、業務時間外でExcel VBA、ピボットテーブル、または簿記など、より専門的なスキルを自己学習で身につけていることは、「単なるパートではなく、正社員として会社のコア業務に貢献したい」という強い意欲を証明します。
- 責任感: 正社員として、より重い機密保持や業務の継続性といった責任を負う覚悟があるかを、面談での発言から評価されます。
3. 正社員登用を勝ち取った身体障害者の具体的な実例
「パートからの正社員登用」が、絵空事ではなく現実的な道であることを証明するために、ここでは実際にこの戦略でキャリアアップを実現した身体障害者の方の具体的な事例と、企業が何を評価したのかを紹介します。
当事者Aさんの戦略
当事者Aさんは下肢に障害があり、長時間の移動や立ち作業が困難でしたが、パート採用から正社員登用を成功させました。
- 座り作業の軽作業パートから、Excelスキルを磨き、正社員のデータ管理職へ登用された事例:
- スタート: Aさんは、まず通勤負担を考慮し、自宅から近い企業のデータ入力、書類整理といった座り作業中心の軽作業パートとして入社しました。
- 安定性の証明: パート期間の1年間、出勤率を98%と高く維持しました。体調が優れない日も、早めに上司に報告し、定時で退社するなど、自己管理能力を示しました。
- スキルと意欲の提示: パート業務をこなす傍ら、Excelの関数やピボットテーブルを自主的に学習。上司に対し、「集計作業をマクロで自動化したい」と提案し、業務改善を実現しました。
- 結果: 安定した勤務実績と、会社への貢献意欲(スキルアップ)が評価され、入社1年半後、正社員のデータ管理・分析職に登用されました。配慮も、昇降式デスクとフレックスタイム制へと進化しました。
企業が語る評価ポイント
企業側は、Aさんの事例を通じて、正社員採用に至るまでの「確証」を得られたことに大きなメリットを感じています。
- 企業側の視点:「パート期間でオフィスのバリアフリー適合性を確認できたのが大きかった」という安心感:
- 物理的安心: 企業は、Aさんが実際にパートとして勤務する中で、トイレ、通路、食堂などの物理的なバリアがないか、または配慮が機能しているかを実地検証できました。これにより、「正社員として採用した後で、環境面の大きな問題が発生するリスクは低い」という確証を得ました。
- 配慮の最適化: 「休憩を多めに取る」という抽象的な配慮ではなく、「昇降式デスクが最も効果的である」という具体的な配慮方法を把握できたため、登用後の環境整備コストが無駄にならないという点も評価されました。
- 能力の確信: 書類上のスキルよりも、「雨の日も雪の日も、安定して出勤し、与えられた業務を確実にこなす」という地道な安定性こそが、正社員として長く働いてもらう上での最も重要な評価ポイントとなったのです。
4. パート期間中にすべき「登用前提」の行動戦略
パート期間を「安定性の証明期間」として最大限に活用するためには、外部の専門家の支援を受け、自律的に能力を高める行動が必要です。これが、正社員登用への「加点」要素となります。
行動1:配慮の最適化と定着支援の活用
外部の専門家を巻き込み、あなたの「働きやすさ」を客観的に証明することが重要です。
- ジョブコーチなどの支援を受け、パート期間で最適な業務環境を作り上げる:
- 専門家の活用: 障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)やジョブコーチの支援を積極的に受けましょう。支援員は、あなたの業務中の困りごと(例:長時間同じ姿勢でいることの負担)を客観的に把握し、企業と代わって改善交渉をしてくれます。
- 最適な環境の構築: パート期間中に、「座り作業」だけでなく、「昇降式デスクの導入」「適切な入力補助機器の使用」といった最も能力を発揮できる環境を、支援機関の力を借りて具体的に特定し、企業に実行してもらいます。
- 効果: 企業は、「社員が自律的に問題解決を図っている」と評価し、入社後の育成コストが低いと判断できます。
行動2:スキルアップの可視化
安定稼働という土台の上に、「正社員として責任を負う能力」が備わっていることを明確に示しましょう。
- 資格取得や業務改善提案など、能力と意欲を上司に積極的にアピール:
- 資格取得: ExcelのMOS Expertや簿記3級など、業務に関連する資格を自主的に取得し、「自己学習を続ける意欲」を証明します。
- 業務改善の提案: 担当している定型業務の中で、「Excelのマクロを使えば、この集計作業を30分短縮できます」といった具体的な改善提案を上司に行いましょう。
- 効果: これは、「単なるパート業務で満足せず、正社員として会社の利益に貢献したい」という強いコミットメントとなり、登用審査で決定的な「加点」要素となります。
5. 登用後のキャリアパス:安定と責任の拡大

パート期間で安定性と貢献意欲が認められ、正社員登用を果たした後、あなたのキャリアは新たなフェーズに入ります。登用後のキャリアパスと合理的配慮は、「能力を最大化する」という目標に向けて進化していきます。
登用後のキャリアパス
正社員登用は、より高度な専門知識と責任が求められるポジションへの扉を開きます。
- 専門職(経理、生産管理)への移行と、責任の拡大: パート時代に証明したデータ処理の正確性や安定した出勤実績を土台に、企業はあなたを経理・財務のサポート、生産管理データの分析、営業部門のサポートといった、専門性の高い業務に配置します。 「責任の拡大」とは、単に業務量が増えることではなく、意思決定に関わる重要なデータや、社外秘の情報を扱うようになることを意味します。この責任の重さは、あなたの市場価値を高め、給与や昇進といった具体的な処遇改善に直結します。
合理的配慮の進化
正社員登用に伴い、配慮は「制約」から「自律」へと形を変え、あなたのパフォーマンスを最大限に引き出すためのツールとなります。
- 時短勤務からフレックス制へ、「自律的な働き方」へと配慮の形を変える:
- 初期の配慮: パート期間は、「時短勤務」「座り作業の確保」といった、体力の回復と維持に重点を置いた配慮が中心でした。
- 登用後の進化: 正社員登用後は、「自律的な働き方」へと進化します。具体的には、「時短勤務」から「コアタイムを短くしたフレックスタイム制」や「在宅勤務(リモートワーク)の併用」といった、自分で始業・終業時間を調整できる柔軟な制度が適用されやすくなります。
- 企業からの信頼: これは、企業があなたの自己管理能力と安定性を信頼している証拠です。体調の波に合わせて、出勤の遅れを調整したり、集中力の高い時間帯に業務を集中させたりと、最大限の成果を出せるように配慮を活用できます。
6. まとめ:登用制度はキャリア構築の最も賢明な選択
本記事を通じて、身体障害を持つ方にとっての「パートからの正社員登用」は、リスクヘッジと長期的な安定を両立させる、極めて合理的で賢明なキャリア戦略であることを解説しました。
記事の要約:リスクヘッジと安定性の証明が鍵
パートから正社員への道は、安定性を証明するための戦略的な期間です。
- 戦略的スタート: パート雇用は、長時間の立ち仕事や通勤といった身体的な負担を避け、座り作業・短時間から業務に慣れる最適な環境を提供します。
- 登用の鍵: 登用を確実にするには、高い出勤率による「安定性の証明」と、Excelスキルや業務改善提案といった「能動的な貢献」を示すことが不可欠です。
- 配慮の進化: 正社員登用後は、昇降式デスク、入力補助機器といった「能力最大化のための配慮」へと進化させ、責任の拡大を目指します。
読者へのメッセージ:能動的な行動が自信とキャリアを創る
パート期間を「安定性の証明期間」と捉え、能動的なスキルアップとコミュニケーションを通じて、自信を持って正社員登用を目指すよう促します。
あなたの真面目さと高い出勤率は、企業にとって「この人に投資する価値がある」と判断させる最大の根拠です。この期間を「リハビリ」と「スキルアップ」に費やし、能動的な行動を通じて、自信を持って正社員登用への道を切り開いてください。
次のステップ:行動を起こす
- 登用基準の確認: 勤務先の人事または上司に、正社員登用の具体的な評価基準(スキル、勤続年数、出勤率など)を改めて確認しましょう。
- スキルアップの継続: Excel(VLOOKUP、ピボットテーブル)など、登用後の専門業務に直結するスキルの学習を継続しましょう。
配慮の最適化: 必要な配慮(昇降式デスク、入力補助機器など)について、ジョブコーチなどの支援機関を通じて企業と相談し、正社員登用後の最適な環境を具体化しましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







