2025/11/17
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【知る・広げる】ヘルプマーク徹底活用ガイド|対象者、メリット、見えない困難への適切な配慮

この記事の内容

はじめに:ヘルプマークが拓く、見えない困難への「支援の輪」

近年、赤い十字とハートのデザインが施されたヘルプマークを見かける機会が増えました。このマークは、外見からは健康に見えるために、周囲の理解が得られにくい困難を抱える人々の、「助けが必要なサイン」を社会に静かに伝える、重要なコミュニケーションツールです。

記事の導入:外見からは分かりにくい困難と「SOSを伝えられない」課題

障害や病気を持つ人が、日常生活や公共交通機関の移動時に直面する最大の壁は、「見えないこと」からくる無理解孤立です。

  • 見えない困難: 内部障害(心臓、呼吸器など)による疲労感や体調の急変、精神障害(パニック障害など)による突発的な不安、発達障害の特性による聴覚・視覚過敏、あるいは初期の妊婦といった方々は、外見からはその困難さが分からず、優先席に座ることも、支援を求めることもためらってしまいがちです。
  • 課題: 「声をかけたいけれど、どうすればいいか分からない」という周囲の戸惑いと、「助けを求めたいけれど、理解されないのではないか」という当事者の不安が重なり、「SOSを伝えられない」という深刻な情報バリアを生み出しています。

記事の結論:適切な配慮を引き出すための重要なツール

ヘルプマークは、このジレンマを解消します。ヘルプマークは、「助けが必要なサイン」を社会に明確に伝え、周囲の適切な配慮(席を譲る、声をかける、避難を促すなど)を能動的に引き出すための重要なツールです。マークを通じて、私たちは「見えない困難への想像力」「具体的な支援行動」を学ぶことができます。

1. ヘルプマークとは?|「見えない困難」を可視化する役割 

ヘルプマークは、「助けを求めること」をためらいがちな人々と、「助けたいけれど、どうすればいいか分からない」健常者の間をつなぐ、最もシンプルなコミュニケーションツールです。そのデザインと目的を正しく理解しましょう。


ヘルプマークの定義と目的

ヘルプマークは、2012年に東京都で考案され、現在では全国に普及が進んでいるマークです。

  • 定義: 赤地に白の十字とハートマークのデザインが特徴的なマークです。主にカバンや杖などに取り付けて使用されます。
  • 目的:
    1. 意思表示: 援助や配慮が必要な人が、周囲にその「SOSサイン」を静かに伝えるための意思表示に特化したツールです。
    2. 周囲への周知: 健常者に対し、「この人は手助けが必要な可能性がある」ということを瞬時に周知し、意識的な配慮を促す。

ヘルプマークは、障害者手帳のように公的なサービスを受けるための法的証明ではなく、あくまで「思いやり」を喚起する社会的サインであるという点が重要です。

ヘルプマークが対象とする「見えない困難」

ヘルプマークが真価を発揮するのは、外見からは健康に見えてしまうために、周囲の理解が得られにくい困難を抱える人々です。

  • 内部障害: 心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、人工透析など、身体内部の機能に障害があるため、疲れやすさ(易疲労性)や急な体調不良のリスクがあります。
  • 精神障害: パニック障害による突発的な発作、統合失調症による混乱、うつ病による強い倦怠感など、精神的な困難を抱えている状態。
  • 発達障害: 聴覚過敏や視覚過敏、あるいはコミュニケーションの困難さなど、外部の刺激に敏感である特性を持つ状態。
  • 義足・人工関節利用者: 杖や車いすを使用していない場合でも、長時間の立ち仕事や歩行が困難である状態。
  • 初期の妊婦: 外見からは妊娠が分かりにくい時期に、体調が急変しやすい状態。
  • その他: 難病や、一時的な外傷など、援助が必要なあらゆる人が対象となります。

ヘルプマークは、これらの「見えない困難」を可視化し、社会全体の「思いやり」というバリアフリーを推進する役割を担っています。

2. ヘルプマークは誰でももらえる?対象者と入手方法

ヘルプマークの最大のメリットは、その取得のしやすさにあります。公的な福祉サービスとは異なり、「助けが必要な状態」であれば、誰もが利用できる仕組みになっています。


ヘルプマークを持てる人

ヘルプマークは、障害者手帳の有無に一切関係なく、援助や配慮を必要とするすべての人々が対象です。

  • 障害者手帳の有無に関わらず、援助や配慮を必要とする人すべてが対象であること:
    • 対象: 内部障害、精神障害、発達障害、初期の妊婦、難病、一時的な体調不良など、外見からは分かりにくい困難を抱え、周囲からの配慮を必要としている方すべてです。
    • 強調: 障害者手帳は、公的な福祉サービスを受けるための法的な証明ですが、ヘルプマークは「今、困っている」という意思表示のためのマークです。そのため、手帳の等級や有無とは無関係に利用できます。

どこでもらえるか、入手方法

ヘルプマークは、多くの自治体で無料で配布されています。

  • 主に自治体(都道府県・市区町村の障害福祉担当窓口)、都営地下鉄・都営バスの駅・営業所などで無料で配布されていることを解説:
    • 配布場所:
      1. 自治体: お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(障害者支援課など)が主な配布場所です。
      2. 交通機関: 東京都など、普及に力を入れている地域では、都営地下鉄・都営バスの駅・営業所などでも配布されています。
    • 費用: 原則として無料で提供されます。

入手の手続き

取得手続きは非常に簡単で、必要なのは「助けが必要である」という口頭での申告が基本です。

  • 手帳、診断書などの提示は不要の場合が多いが、口頭での申告が原則であることを伝える:
    • 不要な書類: 取得の際、障害者手帳、診断書、医師の意見書などの提示を求められない場合がほとんどです。
    • 手続き: 窓口で「ヘルプマークの利用を希望します」と口頭で申告し、「日常的な生活や移動時に援助や配慮が必要である」という事実を伝えることが原則です。
    • 目的: 煩雑な手続きをなくすことで、本当にマークを必要としている人が、心理的なハードルを低くして利用できるように配慮されています。

3. ヘルプマークを持つ「4つのメリット」と心理的効果

ヘルプマークを身につけることは、単に支援を求めるサインを出すだけでなく、当事者の生活の質(QOL)と安心感を大きく向上させる効果があります。


メリット1:必要な支援を求めやすくなる

ヘルプマークは、「助けが必要な状況」を周囲に察してもらうための共通言語として機能します。

  • 優先席の利用、体調不良時の声かけ、防災時のサポートなど、周囲からの配慮を引き出しやすくなる:
    • 公共の場での配慮: 電車やバスなどの優先席の利用や、駅・商業施設での多目的トイレの利用が周囲に理解されやすくなります。
    • 体調不良時の対応: 外出先で体調が急変した際に、マークを見た人がためらわずに声をかけるきっかけとなります。「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけられることで、必要な介助や病院への連絡といったサポートを受けやすくなります。
    • 防災時の優先: 災害発生時や避難時には、マークを持つ人が避難誘導や介助の優先対象となることがあります。

メリット2:心理的な安心感の向上

ヘルプマークは、精神的なセーフティネットとして機能し、当事者の外出への不安を軽減します。

  • 「困ったら助けを求められる」というセーフティネットがあることで、外出への不安が軽減する:
    • 不安の緩和: 内部障害や精神障害を持つ方は、「外出中に倒れたらどうしよう」「パニックになったらどうしよう」という不安から外出をためらいがちです。
    • セーフティネット: ヘルプマークを身につけているだけで、「最悪の場合でも、誰かが気づいてくれる」という心理的な安全弁となり、積極的に社会参加する勇気を持つことができます。

メリット3:カスタマイズできる情報

マークに付帯しているスペースを活用することで、個別の具体的なニーズを伝えることができます。

  • 付属のシールやカードに、具体的な配慮内容(例:急にパニックになる、薬の服用が必要など)を記載できる利便性:
    • 具体的な指示: マークに付属のシールやカードの裏面には、「私は人工関節のため長時間の起立が困難です」「パニック障害の持病があり、急に座り込むことがあります」「〇〇の薬を携帯しています」など、具体的な情報と緊急連絡先を記入できます。
    • 情報バリアの解消: これにより、マークを見た人が「何をすればいいか」を迷うことなく、具体的かつ適切な支援を実行できるようになり、情報バリアを解消します。

メリット4:社会への啓発

マークの普及は、社会全体の多様性への理解を深めます。

  • 「見えない困難」の存在を社会に知らせ、共生社会の実現を促す:
    • マークを見かける人が増えることで、「外見からは健康に見えても、助けが必要な人がいる」という意識が社会全体に広がり、共生社会のインフラとして機能します。

4. ヘルプマークへの「配慮・優遇」の具体的な内容

ヘルプマークは、「見えない困難」を社会に伝えるためのシンボルであり、特定の「法的な優遇」を与えるものではありません。その真の目的は、周囲の「意識的な配慮」を引き出し、必要な支援を円滑に行うことにあります。


法的な優遇ではなく、「意識的な配慮」

ヘルプマークが持つのは、「思いやり」を喚起する社会的メッセージです。

  • マーク自体に割引や金銭的な優遇はないが、「合理的配慮」の実行を促すための社会的サインであること:
    • 優遇との違い: 障害者手帳のように、公共交通機関での割引税制上の優遇といった金銭的なメリットは、ヘルプマークにはありません
    • 役割: ヘルプマークの役割は、「この人は今、外見からは分からない困難を抱えており、助けや配慮を必要としている可能性がある」ということを周囲に知らせる社会的サインです。
    • 効果: このサインが、「合理的配慮」(障害のある人が健常者と同等に社会生活を送るための、過重な負担にならない範囲での配慮)の実行を、周囲の人々や事業者に促します。

具体的な配慮事例

ヘルプマークを身につけた人を見たとき、私たちが具体的に実践すべき行動は、「安全の確保」「移動・生活のサポート」です。

シーン必要な配慮の具体例理由(当事者の困難)
公共交通機関席の配慮(優先席):マークを見かけたら、「お席をどうぞ」と声をかける。内部障害や初期の妊婦など、長時間の起立が困難なため。
体調不良時体調不良時の声かけと介助:「何かお手伝いできることはありますか?」と尋ね、必要に応じて静かな場所への誘導や、薬の服用を手伝う。精神障害(パニック)や内部障害(疲労)による急な体調変化のリスク。
緊急時・防災災害時の避難誘導の優先:避難所や混雑する場所で、移動や情報取得に困難がある人への優先的な声かけや、避難ルートの誘導。障害により、危険察知や自力での迅速な移動が困難なため。
窓口・レジ列に並ぶ際の配慮:長時間の起立が困難な場合、座って待つことを許可したり、順番を優先したりする。筋力低下や疼痛、慢性的な疲労(易疲労性)のため。

鉄則: 支援する際は、必ず「何を手伝ってほしいですか?」と具体的に尋ね、本人の意思と指示を尊重しましょう。


5. 障害者手帳とヘルプマークの「役割の違い」

障害者手帳とヘルプマークは、どちらも障害や困難を抱える人をサポートするための制度ですが、その目的、機能、そして法的根拠は明確に異なります。この違いを理解し、両者を戦略的に活用することが重要です。


手帳の役割:公的サービスを受けるための「法的証明」

障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)は、国や自治体が定めた福祉サービス優遇措置を受けるための公的な身分証明書です。

  • 法的証明: 公的サービス(障害年金、税優遇、割引)を受けるための法的証明であること。
  • 主な機能:
    1. 経済的優遇: 障害年金の受給、所得税・住民税の控除、相続税の軽減など。
    2. 交通・公共サービス: 公共交通機関の割引(JR、バスなど)、有料道路の割引、公営住宅への入居優遇など。
    3. 福祉サービス: 障害福祉サービス(訪問介護、就労移行支援など)の利用申請。
  • 特徴: 手帳の交付には、医師の診断書や専門家の判定が必要であり、行政の認定を受けなければ利用できません。

マークの役割:「周囲へのSOS」という意思表示

ヘルプマークは、法的な証明ではなく、社会的なコミュニケーションに特化したツールです。

  • 「周囲へのSOS」という意思表示に特化したツールであること:
    • 目的: 外見からは分かりにくい困難(内部障害、初期の妊婦、パニック障害など)を抱えていることを、周囲の人々に簡潔に、静かに伝えることに特化しています。
    • 機能: 「今、助けが必要です」「配慮が必要です」という非言語的なSOSサインを出す役割を担います。
  • 両者は目的が異なるため併用が推奨される:
    • 戦略: 障害者手帳は「公的なサービスを受けるためのもの」として、普段は携帯しなくても構いませんが、ヘルプマークは「不測の事態に備えたSOSサイン」として、外出時には常に身につけることが推奨されます。
    • 両者の連携: 手帳は法的な土台を作り、マークは日々の心理的・物理的なバリアを解消する役割を果たします。

6. 読者に伝えるべきこと:誰もが「共感者」となるために

ヘルプマークは、「助けたい」という善意を、「適切な行動」に変えるための道しるべです。私たち健常者がマークの存在意義を理解し、一歩踏み出すことが、「生きづらさ」を解消する鍵となります。


実践すべき行動:戸惑いを乗り越え、声をかける勇気

「何をすればいいか分からない」という戸惑いを解消し、具体的な行動を起こすことが、支援の第一歩です。

  • ヘルプマークを見かけたら、「まずは声をかける勇気」を持つこと:
    • 行動の重要性: マークを見かけても、「余計なお世話ではないか」とためらってしまうことは、「心理的なバリア」を生みます。まずは「何かお手伝いできることはありますか?」と声をかける「意思表示」が、当事者にとって最も大きな安心感となります。
  • 「何かお手伝いできることはありますか?」と具体的に尋ねるマナー:
    • 鉄則: 支援の際は、「勝手に手を出さない」ことが基本マナーです。
    • 具体的な問いかけ: 「大丈夫ですか?」という抽象的な問いかけではなく、「何を手伝ってほしいですか?」「どこまでお手伝いしましょうか?」と、Yes/Noで答えやすい、具体的な内容を尋ね、本人の意思と指示を尊重しましょう。

「特別視」から「思いやり」への意識改革

真の共生社会とは、障害の有無に関わらず、互いが「お互いさま」の関係であることです。

  • マークを持つ人を特別視せず、一人の人間として、必要なサポートを提供するという意識改革:
    • 対等な関係: ヘルプマークを持つ人を「病人」や「特別に弱い立場の人」と見るのではなく、「今、一時的に配慮が必要な隣人」として、対等に接しましょう。
    • 意識の転換: 支援とは、「優遇」ではなく、「公平な社会参加を可能にするための調整(合理的配慮)」であると理解することです。誰もが人生のある瞬間には助けを必要とする可能性があるという「お互いさま」の精神を持つことが、この意識改革の核となります。

まとめ:ヘルプマークは「優しさ」を形にするインフラ

本記事を通じて、ヘルプマークが、外見からは分かりにくい困難を抱える人々の「SOS」を社会に静かに伝え、「見えない壁」を解消するための非常に重要なインフラであることを解説しました。


記事の要約:共感と行動が社会を変える

ヘルプマークがもたらす最大の価値は、情報格差の解消心理的な安心感の提供です。

  • マークの役割: ヘルプマークは、見えない困難(内部障害、精神障害、初期の妊婦など)を可視化し、公共の場での適切な配慮を引き出すための重要なツールであり、その普及には社会全体の理解が不可欠である。
  • 機能と利便性: 手帳とは異なり、「今、助けが必要」という意思表示に特化しています。付属のカードに具体的な配慮内容を記載することで、支援の正確性が高まります。
  • 戦略的意義: 取得が容易なため、「困ったら頼れる」というセーフティネットが、当事者の外出への不安を大きく軽減します。

読者へのメッセージ:戸惑いを乗り越え、最初の一歩を

ヘルプマークを見たときの「何をすればいいか分からない」という戸惑いは、決して悪い感情ではありません。その戸惑いを、「温かい行動」に変えることが、共生社会への第一歩です。

  • 行動の原則: マークを見かけたら、戸惑いを乗り越え、具体的で温かいサポートを提供することから、共生社会は始まります。
  • 適切な声かけ: 「何かお手伝いできることはありますか?」と、本人の意思を尊重する形で尋ねるマナーを実践しましょう。あなたの誠実な一言が、マークを持つ人の心を支える最大の力となります。

次のステップ:行動を始める

  1. 「声かけ」の実践: 今日、公共の場や職場で困っている人を見かけたら、「何かお手伝いできますか?」と具体的な声かけを実践してみましょう。
  2. 知識の共有: この記事で学んだ「ヘルプマークの意義」「適切なサポートの方法」を、ご家族や職場の同僚と共有し、理解の輪を広げましょう。

マークのカスタマイズ: 既にマークをお持ちの方は、裏面に具体的な配慮内容(例:急に座り込む、光に弱いなど)を記入し、万が一に備えましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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