2025/09/06
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なぜAI・RPAで業務の切り出しがしやすくなるのか?|中小企業・障害者雇用にも役立つ活用法を解説

はじめに

近年、企業経営において「業務の切り出し」という言葉が注目されるようになっています。少子高齢化に伴う労働人口の減少、障害者雇用促進法による雇用率の引き上げ、そして働き方改革による多様な勤務形態の広がり。これらの変化は企業に「限られた人材でどう業務を効率化し、多様な人材を活かすか」という課題を突きつけています。

その解決策のひとつが、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用です。従来は人に依存していた作業をデジタル化・自動化することで、業務を小さな単位に分割しやすくなり、結果として切り出しやすくなるのです。

本記事では、「なぜAIやRPAを導入すると業務の切り出しが進むのか」という仕組みを解説し、具体例や成功事例、導入の注意点まで幅広く紹介します。


業務の切り出しとは?

定義:業務の細分化と役割分担

「業務の切り出し」とは、従来ひとりの社員が一括で担っていた業務を、細かい作業単位に分け、それぞれを適切な人や仕組みに分担することを指します。英語では「ジョブカービング(Job Carving)」とも呼ばれ、障害者雇用やダイバーシティ推進の文脈でも使われています。

中小企業で切り出しが難しい理由

中小企業では「特定の社員しかできない属人化」が進みやすく、業務マニュアルや可視化の不足が課題になります。結果として「切り出したいけれどどうして良いか分からない」という状況が生じがちです。

しかし、AIやRPAを導入する過程では、必然的に業務の流れを洗い出し、標準化する作業が必要になります。これがマニュアル化の第一歩となり、結果的に業務の切り出しやすさにつながるのです。

障害者雇用や多様な働き方との関係

例えば、障害者雇用では「フルタイムで全ての業務をこなす」ことは難しくても、「特定のタスクだけを担う」形であれば十分に戦力となり得ます。請求書データの入力や検品作業、問い合わせの一次分類といった切り出された業務であれば、本人の特性に合わせて無理なく担当できます。

同様に、子育て中の社員や高齢の社員、あるいは副業を希望する人材も、「限られた時間や環境の中でできる業務」が用意されていれば参画しやすくなります。つまり業務を適切に切り出せる企業ほど、フルタイム前提に縛られない柔軟な働き方を提供でき、多様な人材を受け入れる力が高まるのです。

さらにAIやRPAを導入することで、タスクが可視化・標準化され、誰でも取り組みやすい形に整理されます。これにより「人材の適材適所」が進み、障害者雇用や多様な働き方の実現がより現実的になります。


AI・RPAが切り出しを後押しする理由

業務プロセスの可視化と標準化が進む

AIやRPAを導入する際には、まず「どの業務を自動化できるのか」を見極めるために、業務フローを洗い出し、作業手順を明確化する必要があります。これにより、これまで担当者ごとの“経験則”や“暗黙知”に頼っていた業務が、文書化・標準化されます。
例えば「請求書処理」一つをとっても、紙からデータ化する人、内容を確認する人、承認する人など工程を整理することで、外部スタッフや新しい社員、さらにはAIやRPAに割り当てやすくなります。結果として「誰でもできる作業」と「専門性が必要な作業」の切り分けが進み、業務の切り出しが自然に行えるようになります。


人と機械の役割分担が明確になる

AIやRPAは、膨大なデータ処理や同じ手順を繰り返す「定型業務」を得意とします。一方で、人間は顧客との対話や状況に応じた判断など「非定型業務」に強みを持ちます。
このように「人がやるべきこと」と「機械に任せられること」が明確になることで、社員は付加価値の高い仕事に集中でき、AIやRPAは裏方として業務を支えます。結果的に「仕事を奪う」のではなく、「人の仕事を再定義する」ことにつながるのです。


マイクロタスク化しやすい

AIやRPAの導入により、業務は自然と細かいタスクに分解されます。例えば「経費精算」なら、領収書データの読み取り、仕訳の分類、承認依頼といったステップに切り分け可能です。
こうしたマイクロタスクは、短時間勤務者や在宅勤務者、障害のある社員などにも分担しやすくなり、「限られた環境や時間で働きたい人材の活躍機会」を広げます。業務の切り出しやすさは、多様な働き方の実現にも直結するのです。


ログ・データ活用で改善サイクルが回せる

AIやRPAは、すべての処理過程をログとして記録できます。これにより「どの工程で時間がかかっているか」「どこでエラーが多発しているか」を客観的に分析できるようになります。
改善点をデータで把握できるため、業務プロセスを継続的に見直すサイクルが回り、さらに切り出しやすい形に進化していきます。属人化していた業務が、データをもとに「誰でもできるタスク」へと変わっていく点が大きなメリットです。


AI・RPAで切り出しやすい具体的な業務例

バックオフィス業務

  • 請求書の処理
  • 経費精算のチェック
  • 人事データの入力

製造業

  • 検品や検査の自動化(AI画像認識)
  • 作業記録の自動入力
  • 在庫管理の自動更新

カスタマーサポート

  • 問い合わせ内容の自動分類
  • 回答文の自動生成(人が最終確認)
  • チャットボットによる一次対応

IT・Web業務

  • システムテストの自動化
  • データ整合性のチェック
  • 不正アクセス検知の一次分析

導入による効果

生産性向上

AIやRPAを導入することで、これまで属人化していた業務が標準化され、誰でも一定の品質で処理できるようになります。例えば、請求書処理や経費精算などは「特定の担当者しか分からない仕事」になりがちですが、AI-OCRやRPAを組み合わせれば自動化が進み、人の手を最小限に抑えられます。これにより、担当者はより付加価値の高い業務に集中でき、全体の生産性が向上します。

働き方の多様化

在宅勤務や時短勤務が広がる中、AI・RPAによる業務切り出しは柔軟な働き方を後押しします。業務を小さなタスク単位に分けて割り振れるため、「1日2時間だけ働きたい」「週3日だけ対応できる」といったニーズにも応えやすくなります。これは、子育て世代や副業人材、地方に住む人材の活用にもつながります。

障害者雇用や高齢者雇用の促進

業務の切り出しが進むと、障害者や高齢者に適したタスクを任せやすくなります。たとえば、データ入力や検品作業、問い合わせ分類など、特性に合わせた業務を提供できるようになります。企業にとっても「雇用率達成のための形式的な採用」ではなく、「実際に戦力になる採用」が可能となり、結果的に多様な人材の活躍が実現します。

定着率・エンゲージメント向上

属人化業務の削減や負担の分散は、社員一人ひとりの心理的・身体的負担を軽減します。無理なく働ける環境が整えば、離職率は低下し、社員が長く働き続けやすくなります。また「自分の役割が組織に貢献している」と感じやすくなるため、エンゲージメントも高まり、職場全体の活気につながります。


導入時の注意点と失敗しないポイント

  • 費用対効果を意識する:特に中小企業ではROI(投資対効果)が重要。
  • 現場の理解と教育:単なるシステム導入ではなく、社員が活用できる体制づくりが不可欠。
  • 小規模パイロットから始める:一気に全社導入せず、効果検証しながら広げる。
  • セキュリティ対策:個人情報や機密データを扱う場合は特に注意が必要。

成功事例(ケーススタディ)

A社(製造業):AI画像認識で検品を効率化

A社では、これまで人が目視で行っていた製品検品に多くの時間と人員を割いていました。特に熟練者でなければ不良品を見抜けないケースもあり、品質管理に課題を抱えていました。
そこでAI画像認識を導入し、製品の外観を自動で判定。人はAIが抽出した疑わしい部分だけを最終確認する仕組みに切り替えました。結果として検品工程の作業時間は3割削減され、検品精度も安定。熟練者の負担軽減と若手社員の早期戦力化につながりました。


B社(小売業):請求処理をAI-OCR+RPAで自動化

B社では、毎月数百件に及ぶ請求書処理を担当者数名で行っており、入力ミスや処理遅延が大きな課題でした。そこでAI-OCRを用いて請求書を自動読み取りし、RPAで会計システムへ自動転記するフローを構築。
導入後は月間約200時間の工数を削減できただけでなく、ヒューマンエラーが激減しました。空いた時間は仕入先との交渉や販促企画など、より戦略的な業務に充てられるようになり、業務効率と収益性の両立を実現しました。


C社(IT企業):AI要約でサポート対応をスピードアップ

C社では、日々寄せられる膨大な問い合わせメールの対応に追われ、返信の遅れが顧客満足度低下の要因となっていました。そこでAIによる自動要約機能を導入し、問い合わせ内容を短時間で整理。担当者はAIの要約を確認し、必要に応じて補足・修正したうえで返信する流れに変更しました。
その結果、1件あたりの対応時間が大幅に短縮され、迅速かつ丁寧な顧客対応が可能に。顧客満足度の向上だけでなく、サポート担当者の心理的負担も軽減され、離職率低下にもつながりました。


今後の展望

AI技術の進化により、これまで人が担っていた「判断」を含む業務もAIが支援できるようになっています。たとえば、過去のデータから不良品の発生確率を予測したり、顧客対応で最適な回答候補を提示したりといった「半自動的な意思決定支援」はすでに実用段階に入っています。さらにRPAと組み合わせることで、単なる業務の部分自動化にとどまらず、業務フローそのものを再設計する動きが加速しています。

加えて、業務の切り出しやすさは、障害者雇用や高齢者雇用といったダイバーシティ経営の推進に直結します。従来「フルタイム勤務が難しいから」と採用をためらっていた人材も、切り出されたタスク単位であれば十分に活躍できる可能性があります。これは企業にとって雇用の選択肢を広げるだけでなく、社会全体の労働参加率を高める効果も期待できます。

さらに、リモート環境とAI・RPAを組み合わせれば、地方在住者や育児・介護を担う人材が、自宅から都市部の企業の業務に参加することも容易になります。都市部に人材が集中していたこれまでの雇用構造を変革し、地域間格差の是正や地方創生にもつながる可能性があります。

AIとRPAは、単なる効率化ツールではなく、人材活用の新しい基盤を築く存在になりつつあります。今後は「どの業務を切り出せるか」という発想から、「どのように業務そのものを再設計して、多様な人材が参加できる形にするか」へと議論が進むでしょう。


まとめ

AIやRPAは「人の仕事を奪う存在」ではなく、「業務を切り出すための強力な道具」です。属人化していた業務を標準化・マイクロタスク化しやすくすることで、誰もが取り組める形に再設計できるようになります。これは生産性向上だけでなく、多様な人材が活躍できる土台づくりにつながります。

実際、製造業や小売業、IT企業の事例でも示したように、AI・RPAを導入した企業は「工数削減」「品質安定」「社員の負担軽減」といった具体的な成果を得ています。さらに、切り出されたタスクは障害者雇用や高齢者雇用、副業人材の活用にもつながり、働き方の多様化を後押しします。

今後はAIの進化により、判断を伴う業務や意思決定の支援まで領域が広がっていきます。企業は単なる効率化を超えて、「どのように業務を再設計すれば多様な人材が参画できるか」という視点で考えることが重要です。これは、労働人口減少が進む日本社会においても、極めて大きな意味を持ちます。

そして何より大切なのは、いきなり大規模導入に踏み切るのではなく、「まずは小さな業務から切り出しに挑戦すること」 です。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の理解が得られ、社内にAI・RPA活用の文化が根付きます。

AI・RPAをうまく活用できる企業は、人材不足時代においても多様な人材の力を引き出し、持続的な成長を実現できるでしょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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