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パーソナリティ障害とは?種類・症状・原因・治療法・人間関係・仕事との付き合い方まで徹底解説

この記事の内容
はじめに
パーソナリティ障害は、日本ではうつ病や不安障害に比べるとまだ認知度が低く、誤解や偏見を持たれやすい精神疾患の一つです。
「性格の問題」と片づけられてしまうことも少なくありませんが、実際には脳や心理の働きに関わる医学的な背景が存在します。
正しい理解がないままでは、本人も周囲も不必要な苦しみを抱えることになり、社会生活や人間関係に深刻な影響を及ぼすことがあります。
本記事では、パーソナリティ障害の定義や種類、症状、原因、治療法に加えて、職場や家庭での向き合い方まで詳しく解説します。
医療機関や支援機関での説明だけでは分かりにくい部分も、できるだけ平易な言葉と具体例を交えてお伝えします。
パーソナリティ障害とは

定義と診断基準
パーソナリティ障害は、「その人の性格や行動の傾向が極端で、社会生活や人間関係に著しい支障をきたす状態」と定義されます。
アメリカ精神医学会が定めるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、以下の特徴が見られる場合に診断対象となります。
- 長期間(青年期または成人期早期から)続いている
- 柔軟性に欠け、環境や状況に適応できない
- 社会的・職業的機能に悪影響を及ぼしている
- 他の精神疾患や薬物の影響によるものではない
診断に必要なポイント
- 医師による詳細な問診と心理検査
- 家族や職場など第三者からの情報収集
- 長期的な行動パターンの確認
有病率と発症年齢
世界的な研究によると、パーソナリティ障害は成人の約10%前後にみられるとされます。
発症は思春期〜青年期にかけて明らかになることが多く、社会生活が本格化する20代前後で症状が表面化するケースが目立ちます。
例:
- 高校生の頃から人間関係が極端に不安定だったが、就職後に業務や対人トラブルで問題が顕在化
- 学生時代は個性として許容されていた行動が、社会人になると「協調性がない」と受け取られる
誤解されやすい点
- 「性格が悪い」ではない:生まれ持った気質や成長過程の影響が複雑に絡み合って起こるもので、意図的ではありません。
- 治らない病気ではない:適切な治療や支援で症状の安定化や社会適応は可能です。
- 本人も苦しんでいる:周囲との摩擦だけでなく、自分の感情や行動をコントロールできずに悩んでいます。
種類と特徴(DSM-5分類)

DSM-5では、パーソナリティ障害を大きくクラスターA・B・Cの3つに分類しています。これは、症状や行動傾向の特徴によるグループ分けです。
クラスターA(奇異型)
現実認識や思考に歪みがあり、他人との距離感が独特です。
妄想性パーソナリティ障害
- 他人の言動を過剰に疑い、悪意があると考えてしまう
- 例:「同僚が笑っている=自分の悪口を言っているに違いない」
統合失調型パーソナリティ障害
- 不思議な信念や言動、感情表現の乏しさが特徴
- 対人関係を避ける傾向が強い
クラスターB(劇場型)
感情表現や行動が極端で、衝動的な一面があります。
境界性パーソナリティ障害
- 対人関係が不安定で、見捨てられる不安から過剰反応
- 感情の起伏が激しく、自傷行為や依存行動がみられる場合も
自己愛性パーソナリティ障害
- 自分を特別視し、過剰な賞賛を求める
- 批判に極端に弱く、怒りや無視で反応することがある
反社会性パーソナリティ障害
- 他人の権利や社会的規範を無視
- 嘘や詐欺、衝動的行動を繰り返す傾向
演技性パーソナリティ障害
- 過度に注目を集めたがり、感情表現が芝居がかっている
- 人間関係での境界線が曖昧になりやすい
クラスターC(不安型)
強い不安や恐怖心が行動に影響します。
回避性パーソナリティ障害
- 批判や拒絶を極端に恐れ、対人関係を避ける
- 本当は関わりたいが傷つくことを避けるため孤立
依存性パーソナリティ障害
- 他人に過度に依存し、自分で決断することが難しい
- 「一人になること」への強い恐怖
強迫性パーソナリティ障害
- 完璧主義や秩序へのこだわりが強く、柔軟な対応が苦手
- 仕事やルールに固執し、対人関係がぎくしゃくしやすい
原因とメカニズム
パーソナリティ障害の原因は1つではなく、遺伝的要因・環境的要因・脳の機能的な要因などが複雑に関わり合っています。発症の背景を理解することは、本人や家族が責め合うことを防ぎ、適切な支援につなげるためにも重要です。
遺伝的要因
双子や家族を対象にした研究から、パーソナリティ障害の一部には遺伝的な素因が関与していることがわかっています。
例えば、境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害は、親や兄弟に同様の傾向が見られる割合が高いとされます。
- 遺伝の影響は「性格の土台」に関与しやすく、生まれつきの気質として現れます。
- ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではなく、環境要因との相互作用が大きなカギとなります。
幼少期の環境
成長過程での経験は、人格の形成に大きな影響を与えます。特に安全で安定した愛着関係が築けなかった場合、後の人間関係のパターンに影響が残ることがあります。
虐待・ネグレクト
- 身体的虐待や心理的虐待、性的虐待を受けた経験
- 無視や放置などのネグレクト
- 過保護・過干渉による自立心の阻害
こうした経験は、「人は信頼できない」「自分には価値がない」という深い信念(スキーマ)を形成し、成人後も人間関係や感情のコントロールに影響を及ぼします。
脳機能や神経伝達物質の関与
脳科学の研究では、パーソナリティ障害の一部において感情や衝動を制御する前頭前野や扁桃体の働きに異常が見られることが報告されています。
また、セロトニンやドーパミンなど神経伝達物質のバランスの乱れも感情の不安定さや衝動性と関係しています。
日常生活・人間関係への影響

パーソナリティ障害は、本人の内面だけでなく家族・友人・恋愛・職場など、日常のあらゆる人間関係に影響します。
家族・友人関係
- 感情の起伏が激しく、些細なことで衝突が起こる
- 家族への依存や距離の取り方が極端になりやすい
- 信頼関係の構築が難しく、孤立しやすい
恋愛・結婚生活
- 見捨てられる不安から束縛や依存が強くなる
- 相手に理想や過剰な期待を抱き、失望すると急に関係を切る
- 感情的な言動が繰り返され、関係が不安定化しやすい
職場でのコミュニケーション
- 上司や同僚との信頼関係が築きにくい
- 批判や指摘を過剰に受け止めてしまう
- 衝動的な発言や感情表現でトラブルにつながることもある
例:境界性パーソナリティ障害の方が職場で上司の態度を「嫌われた」と感じ、過剰に不安になって欠勤するケースなど。
治療法
パーソナリティ障害は「性格の病気」と言われることもありますが、治療や支援で十分に安定した生活を送ることが可能です。治療は時間をかけて取り組む必要があり、複数の方法を組み合わせることが多いです。
心理療法
- 認知行動療法(CBT):歪んだ思考パターンを修正し、現実的な行動を学ぶ
- 弁証法的行動療法(DBT):感情のコントロールや対人スキルを習得する。特に境界性パーソナリティ障害に有効
治療のポイント
- 信頼できる治療者との安定した関係を築く
- 急な中断を避け、継続して通う
薬物療法
パーソナリティ障害そのものを治す薬はありませんが、併発するうつ症状や不安症状、衝動性を緩和するために以下が用いられることがあります。
- 抗うつ薬(SSRIなど)
- 抗不安薬
- 気分安定薬
注意:薬だけでは改善が難しく、心理療法や環境調整と組み合わせることが重要です。
グループ療法
同じ悩みを持つ人同士で体験や感情を共有することで、孤立感を軽減し、対人スキルを練習できます。
安全な場でのロールプレイやフィードバックは、日常生活での適応力向上に役立ちます。
仕事との付き合い方
パーソナリティ障害があっても、自分に合った職場環境や適切な配慮があれば、安定して働くことは可能です。無理のない働き方を選び、症状を悪化させないことが長期的な就労のポイントです。
向いている職場環境
- ルールや役割が明確な職場
業務内容や評価基準がはっきりしていると安心感が得られます。 - 人間関係の変動が少ない環境
頻繁な人事異動や部署異動がない方が、信頼関係を築きやすいです。 - 静かで集中しやすい作業空間
オープンスペースより、個別デスクや仕切りのある環境が望ましい場合もあります。 - 在宅勤務やフレックスタイムが可能
通勤や混雑などのストレス要因を減らせます。
例:ルーチンワーク中心の事務職、データ入力、図書館業務、バックオフィスなど。
避けたほうがよい働き方
- 突発的対応が多い仕事(例:クレーム対応中心の接客業)
急な変化がストレスとなり、感情コントロールが難しくなる場合があります。 - 長時間労働や不規則勤務
生活リズムの乱れは症状の悪化につながる可能性があります。 - 成果・売上重視の高プレッシャー環境
過剰な競争や数字ノルマは不安や自己否定感を強める恐れがあります。
職場での配慮例
- 明文化された業務マニュアルの提供
- 指示を口頭だけでなく文書やメールでも共有
- 進捗確認やフィードバックを定期的に行う
- 必要に応じて休憩を取りやすい環境を整える
- 感情が高ぶった時に一時的に離席できる「クールダウンスペース」の確保
ポイント:配慮は「特別扱い」ではなく、生産性や定着率を上げるための環境調整です。
支援制度
パーソナリティ障害のある方は、以下のような公的制度やサービスを活用することで、就労や生活を安定させやすくなります。
障害者雇用枠
- 精神障害者保健福祉手帳を取得することで応募可能
- 法定雇用率に基づき、配慮のある職場環境で働ける
- 採用後も職場定着支援や定期面談を受けられる場合が多い
就労支援事業所
- 就労移行支援事業所:職業訓練や就職活動のサポートを提供
- 就労継続支援事業所(A型・B型):体調やスキルに合わせた働き方を提供
- 求人紹介や職場実習、職場訪問によるフォローなども受けられる
自立支援医療制度
- 精神科通院や薬の自己負担額を軽減できる制度
- 所得や症状に応じて1割負担になる場合があり、長期治療の経済的負担を軽減
まとめ
パーソナリティ障害は、正しい理解と環境調整があれば安定した就労と生活が十分可能な疾患です。
- 自分の特性を理解し、合った職場環境を選ぶ
- 適切な配慮や支援制度を活用する
- 周囲と協力して長期的な安定を目指す
最後に
パーソナリティ障害を抱えることは、決して「働けない理由」ではありません。
むしろ、自分の特性を理解し、必要な支援を受けながら働くことは、自分らしい生き方を築くための大きな一歩です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









