- 健康と生活の両立
- 働き方・職場での工夫
人工呼吸器を使いながら働くには?日常生活と就労のリアルを解説【2025年最新版】

この記事の内容
はじめに

人工呼吸器を使用している人は、かつては「寝たきりで生活を送る」というイメージを持たれることが多くありました。ところが近年は、在宅医療や医療機器の進歩によって、人工呼吸器を利用しながら社会で働くケースが増えています。
実際に オフィスに出社して就労する人 や、在宅勤務をしながら企業に貢献している人もいます。「人工呼吸器=働けない」という誤解は少しずつ払拭されつつあるのです。
本記事では、人工呼吸器を使用する方の日常生活や就労の現実、職場で必要となる配慮について、リアルな視点で解説していきます。
人工呼吸器と日常生活
人工呼吸器が必要になる病気
人工呼吸器を使用する背景には、呼吸機能が弱まる疾患があります。代表的なものとしては次のような病気が挙げられます。
- 筋ジストロフィー:進行性に筋力が低下し、呼吸筋も弱っていく病気。
- ALS(筋萎縮性側索硬化症):運動神経が徐々に侵され、呼吸筋の動きが制限される。
- 脊髄性筋萎縮症(SMA):遺伝性疾患で、呼吸や嚥下にも影響が出るケースがある。
これらの病気は進行とともに呼吸補助が必要になることが多く、人工呼吸器が日常生活の支えとなります。
生活の基本:電源確保と機器管理
人工呼吸器を使用して生活するうえで最も重要なのが 電源の確保 です。人工呼吸器は機械によって呼吸を補助しているため、原則として電源がなければ稼働しません。そのため、自宅では常に安定した電源供給が必要であり、停電に備えて非常用電源やポータブルバッテリーを準備することが推奨されます。
一方で、酸素療法(酸素ボンベや酸素濃縮器) を使用している場合は仕組みが異なります。酸素ボンベは電源が不要で利用できますが、酸素濃縮器は電源を必要とします。そのため、呼吸器と酸素療法のどちらを使っているかによって準備すべきものが変わります。
日常生活では次のような工夫が欠かせません。
- 機器の定期点検と清掃
- チューブやフィルターの交換
- 消耗品(回路、マスク、加湿器部品など)のストック確保
こうした管理を徹底することで、安心して生活を継続できます。
外出・通勤に必要な工夫
外出や通勤の際には ポータブル人工呼吸器 の利用が一般的です。ポータブル人工呼吸器とは、バッテリーで駆動できる持ち運び用の呼吸器で、電源が確保できない場所でも数時間稼働するように設計されています。
利用者は以下の点を意識して準備を行います。
- バッテリーを持参し、必要に応じて交換できるようにする
- 移動中でも充電できるモバイル電源を確保
- 通勤ルートはできるだけ短く、電車やバスよりもタクシーや車通勤を選ぶケースもある
- 職場や訪問先で電源が使えるか事前に確認する
こうした事前準備と環境整備が、就労の継続と安全につながります。
人工呼吸器利用者の就労の現実

どのような職種で働いているか
人工呼吸器を使用していても、さまざまな職種で活躍している人がいます。
- 事務職:データ入力、経理補助、バックオフィス業務など、PCを中心とした業務。
- コールセンター:ヘッドセットの工夫や呼吸器の音を考慮した配置で対応可能。
- 専門職:研究、設計、プログラミングなど、集中作業を伴う職種。
多くは パソコンを活用できる業務 が中心ですが、工夫次第で幅広い分野で働けることが分かります。
出社勤務のリアル
人工呼吸器を利用しながらオフィスに出社する場合、次のような環境整備が必要です。
- 専用スペースの確保
人工呼吸器を使用する場合は、電源が安定して利用できる席やバッテリーを充電できる環境が必要です。また、呼吸器の機器を置けるスペースや静かな環境を確保すると安心です。
一方で、酸素ボンベのみを使用している場合は電源を必要としないため、必ずしも大掛かりなスペース確保は不要です。 - 周囲への説明
人工呼吸器は作動時に一定の機械音(空気を送る音やアラーム音)がします。多くの場合は「気になるほど大きな音」ではなく、同じ部屋で仕事をしていても支障がない程度ですが、静かなオフィスでは気になる人もいるかもしれません。そのため、事前に「呼吸器から音が出ることがある」と伝えておくことで、周囲も安心し、本人も働きやすくなります。 - 災害・停電時のバックアッププラン
停電や災害時に備え、予備電源や避難時の対応をマニュアル化しておくことが重要です。
このように、機器の種類や職場の環境に合わせた工夫をすることで、利用者も安心して業務に専念できます。
人工呼吸器を使いながら働く人の声(事例紹介)
人工呼吸器を使いながら実際に就労している人の体験は、企業にとっても当事者にとっても参考になります。ここでは3つの事例を紹介します。
事例① 事務職での勤務(オフィスで予備電源を常設)
ある企業では、人工呼吸器を使用する社員が事務職として勤務しています。職場には 予備電源を常設 し、停電や災害時にも呼吸器が止まらないように配慮。周囲の社員も電源管理の重要性を理解しており、安心して日々の業務に取り組めています。
事例② 製造業の設計部門での勤務(出社・PC中心作業、周囲が協力)
製造業の設計部門で働く方は、CADや設計ソフトを用いたPC作業が中心です。呼吸器の音がわずかにするものの、同僚に事前に説明しておくことで大きな問題はなく、周囲も自然にサポート。機器の配置や配線を工夫 することで、他の社員と変わらずチームの一員として活躍しています。
事例③ 公共交通機関での通勤(バッテリー持参・駅員サポートを活用)
通勤時に電車を利用している人もいます。移動には ポータブル人工呼吸器と予備バッテリーを持参 し、電池切れに備えています。さらに、事前に鉄道会社へ連絡しておくことで、駅員が乗降をサポート。安心して出社できる環境を整えることができています。
企業に求められる姿勢

特別扱いではなく「安全に働ける環境整備」
人工呼吸器を利用している社員への配慮は、「特別扱い」ではなく 安全に働ける職場環境を整えること です。延長コードや予備電源の設置は、災害時に他の社員にとっても役立ちます。
採用時に確認すべきこと
採用面接や雇用開始時には、以下を確認しておくと安心です。
- 通勤方法(自家用車・タクシー・公共交通機関など)
- 緊急時の対応手順(誰に連絡するか、どのように避難するか)
- 勤務可能な時間帯や体調に応じたシフト調整の可否
こうした事前確認は、企業側のリスク管理にも直結します。
配慮が企業全体の安心感につながる
人工呼吸器を使用する社員への配慮は、BCP(事業継続計画) の一環としても有効です。電源確保や緊急時対応を整えておくことで、災害や停電が起きた際に全社員が安心して働ける環境になります。結果として、組織全体の安全性と信頼性が高まります。
まとめ
人工呼吸器を使っていても、工夫と適切な配慮があれば出社勤務や社会参加は十分に可能 です。
特に重要なのは次の3つのポイントです。
- 電源の確保
呼吸器が常に安全に稼働するよう、予備電源やバッテリーを準備し、停電や災害時にも対応できる環境を整える。 - 通勤の工夫
ポータブル呼吸器や予備バッテリーの携行、タクシーや車通勤の活用、公共交通機関のサポート依頼などで、無理なく移動できる手段を確保する。 - 緊急時対応
職場全体で「トラブルが起きたときに誰がどう動くか」を共有し、災害時や機器トラブル時の行動をマニュアル化しておく。
これらを整えることで、人工呼吸器を使用している社員は安心して働くことができ、企業にとっても 離職率の低下や人材の定着、BCP(事業継続計画)の強化 につながります。
大切なのは「特別扱い」ではなく、誰もが安全に働ける環境をつくること。人工呼吸器を利用する人への配慮は、同時に高齢社員や持病のある社員、さらには全社員にとっての働きやすさ向上にも結びつきます。人工呼吸器=働けない、という時代はもう過去のものです。
正しい理解と柔軟な職場環境づくりがあれば、人工呼吸器を使いながらでもキャリアを築き、社会で活躍し続けることは十分に可能 です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







