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人工肛門が必要になる病気とは?大腸がん・潰瘍性大腸炎・クローン病などを解説【2025年最新版】

この記事の内容
はじめに|人工肛門はどんなときに必要になるのか
人工肛門(ストマ)とは、大腸や小腸の一部をお腹に出して排便経路を作る医療的な処置です。主に命を守るため、あるいは生活の質(QOL)を保つために行われる手術であり、患者さんが安全に生活できるようにする重要な医療手段です。
人工肛門には大きく分けて「一時的」と「永久的」の2種類があります。
- 一時的な人工肛門は、腸の炎症や手術部位を一時的に休ませるために造設され、状態が落ち着けば閉鎖手術によって元の排便経路に戻せます。
- 永久的な人工肛門は、がんや重度の疾患により肛門を温存できない場合に作られ、一生付き合っていく必要があります。
本記事では、人工肛門が必要になる代表的な病気と、その背景にある医療的な理由をわかりやすく解説していきます。
人工肛門が必要になる主な病気

大腸がん・直腸がん
人工肛門が必要になる最も多い原因は大腸がん・直腸がんです。
腫瘍が肛門に近い場所にできた場合、腫瘍切除の際に肛門を温存できず、排便経路として人工肛門が必要になります。
- 一時的なケース:腫瘍切除後の腸の吻合部を保護する目的で一時的に人工肛門を造設し、腸が安定すれば閉鎖できる。
- 永久的なケース:肛門機能を残せない場合やがんの位置・進行度によっては、永久的な人工肛門が必要になる。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が広がる難治性の炎症性腸疾患(IBD)です。近年は薬物療法の進歩によって、多くの方が手術をせずに症状をコントロールできるようになっています。ただし、薬で抑えられない重症例では大腸全摘手術が必要となり、その際に人工肛門を造設するケースがあります。
患者の状態によっては「回腸嚢肛門吻合術(IACA)」を行うことで、後にストマを閉鎖できる可能性もあります。つまり、人工肛門は必ずしも一生必要というわけではなく、治療の過程で一時的に必要になるケースも多いのです。
また、人工肛門を造設した場合でも、処置用品の進歩や清潔な管理方法により、日常生活や仕事に復帰している人も少なくありません。適切な治療と周囲の理解があれば、社会生活や就労を続けることが十分可能です。
クローン病
クローン病は小腸から大腸まで消化管のどこにでも炎症が起こる慢性疾患です。狭窄、穿孔、瘻孔などの合併症が進行すると、腸の一部を休ませたり排便経路を確保するために人工肛門が必要になる場合があります。
クローン病は再発や再手術のリスクがある一方で、栄養療法や生物学的製剤などの新しい治療法により、以前に比べてコントロールしやすくなっています。人工肛門を造設した場合でも、ストマケア製品の発達により清潔を保ちながら働くことができる環境が整ってきています。
重要なのは、クローン病は長期的に付き合う必要がある疾患であり、通院や体調変動に対して柔軟な勤務体制があれば、安定して働き続けられる人も多いという点です。
腸閉塞・外傷・事故
交通事故や腹部損傷などで腸の一部を切除する場合や、手術後の癒着による腸閉塞で排便経路を確保できない場合、一時的に人工肛門を造設することがあります。
多くの場合は腸の状態が改善すれば閉鎖が可能ですが、腸のダメージが大きいと人工肛門が長期間必要になることもあります。
先天性疾患(ヒルシュスプルング病など)
新生児や小児にみられる代表的な先天性疾患に「ヒルシュスプルング病」があります。腸の神経細胞の発達異常により便が通過できず、重度の排便障害を起こす病気です。
この場合、一時的に人工肛門を作り、腸の機能を回復させてから再建手術を行い、最終的にストマを閉鎖できることがあります。
病気ごとの人工肛門の特徴

一時的か永久的か
人工肛門は「一時的」に必要な場合と「永久的」に必要な場合があります。病気や手術の内容によってその判断は異なります。
- 大腸がん・直腸がん:腫瘍の位置によっては肛門を温存できず、永久ストマになることがあります。一方で、吻合部を保護するために一時的に造設され、後に閉鎖できるケースもあります。
- 潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が広がる難治性の炎症性腸疾患(IBD)です。薬物療法で抑えられない場合には大腸全摘手術が必要となり、その際に人工肛門を造設することがあります。
手術後には「回腸嚢肛門吻合術(IACA、Jポーチ手術)」が選択されるケースも多く、この場合は原則として一時的な人工肛門が造設されます。吻合部が安定して傷が治るまで便を通さないようにするためで、数か月から半年程度で閉鎖できるのが一般的です。
ただし、炎症が強い場合や合併症のリスクが高い場合には、一時的の予定が長期化する、あるいは永久的に必要となるケースもあります。閉鎖ができるかどうかは、肛門括約筋の機能や全身状態によって判断されます。
いずれにしても、潰瘍性大腸炎に伴う人工肛門は「必ず一生続くもの」ではなく、治療の過程で一時的に必要になる場合が多いという点は安心材料のひとつです。また、処置用品やケア技術の進歩によって、人工肛門を持ちながら社会生活や就労を続ける方も増えています。
- クローン病:繰り返す炎症や合併症のため、長期的に人工肛門が必要となるケースもあります。
手術後の生活の違い

人工肛門を造設した後の生活は、適切な工夫をすれば大きく制限されるものではありません。
- 装具(パウチ)の使用と管理:人工肛門を造設した場合、排泄は専用のストマ装具(パウチ)を使って管理します。これはお腹に貼り付ける袋状の器具で、排泄物やガスを安全にためる仕組みになっています。
近年の製品はとても進化しており、肌にしっかり密着する面板と防臭加工された袋が一体化しているため、普段の生活でにおいが漏れる心配はほとんどありません。
排泄のたびに外すのではなく、袋にためて定期的に処理する方式なので、トイレに行く回数も大きく変わりません。
ガス抜き機能や消臭フィルターがついているタイプも多く、日常生活で周囲に気づかれることはほぼありません。
もちろん管理には慣れが必要ですが、医療スタッフやストーマケア専門看護師(ETナース)の指導を受ければ、装具の交換や処理は数分でできるようになります。
👉 つまり「パウチ=においがするもの」というイメージは誤解であり、現代の装具は目立たず・におわず・清潔に管理できるよう設計されています。
- 食事制限:ガスや臭いが出やすい食品、消化に負担がかかる食材には注意が必要ですが、工夫次第で食生活の幅は広げられます。
- 社会生活:仕事や学校、スポーツなども多くの人が再開しています。必要なのは体調に応じたペース配分と周囲の理解です。
- 精神的なサポート:人工肛門を持つ不安や羞恥心は自然なことです。同じ経験を持つ仲間の声(ピアサポート)や患者会の存在が、安心感につながります。
人工肛門の選択が必要になる判断基準
人工肛門を造設するかどうかは、医師が病状をもとに判断し、患者本人と家族が理解して決めていく大切なプロセスです。
- がん・炎症の範囲や重症度:腸のどこまで病変が広がっているかによって、手術方法が変わります。
- 肛門の温存可否:肛門括約筋の状態によって、自然排便が可能かどうかが決まります。
- 感染や合併症のリスク回避:縫合部のトラブルを避けるために、一時的に人工肛門を造設することがあります。
- 患者と家族の意思決定:医師の説明を受けたうえで、生活の質や将来設計を考慮しながら判断することが大切です。
まとめ|原因疾患を知ることで、不安を軽減できる
人工肛門は「終わり」ではなく、病気を治すため・命を守るための医療手段です。実際、多くの人が人工肛門の手術を経て、仕事や家庭生活を取り戻しています。
どの病気が原因で人工肛門が必要になったのかを知ることは、今後の生活設計や準備につながり、不安を減らす第一歩となります。
人工肛門で使用する装具(パウチ)は、単なる医療器具ではなく、生活を支える大切なパートナーです。におい漏れや不快感を防ぐよう進化しており、安心して使えるため、日常生活や仕事を続けるうえで心強い存在になります。当事者やご家族の方に伝えたいのは、
👉 「正しい知識と支援を活用すれば、人工肛門と共に安心して前向きな生活を送ることができる」
ということです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









