2025/08/24
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人工肛門(ストマ)とは?手術の種類・装具・生活への影響を徹底解説【2025年最新版】

この記事の内容

はじめに

人工肛門(ストマ)とは、大腸や小腸の一部を体の表面に出し、便を排泄するための出口をつくる医療的な処置です。
がんの手術や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、外傷などにより人工肛門を造設する人は年々増えています。医療の進歩によって装具の性能も高まり、生活や仕事を続けながら人工肛門と共に過ごす人も少なくありません。

本記事では、人工肛門の基本的な仕組みから手術の種類、装具の使い方、生活・仕事への影響までをわかりやすく解説します。患者本人やご家族だけでなく、企業の人事・労務担当者にとっても「どのような配慮が必要か」を理解する参考となる内容を目指しています。


人工肛門(ストマ)とは?

人工肛門の仕組みと目的

人工肛門は、大腸や小腸の一部を体表に開口させ、そこから排泄物を専用の装具(パウチ)に受ける仕組みです。排泄経路を変えることで、腸の病気や損傷部分を休ませたり、切除後に生命維持を可能にする役割があります。

かつては生活の質(QOL)が大きく損なわれると考えられていましたが、現在では装具や医療サポートが進歩し、仕事や社会生活を継続できるケースも増えています。

一時的ストマと永久的ストマの違い

人工肛門には「一時的」と「永久的」の2種類があります。

  • 一時的ストマ
     病変部位を休ませるために一時的に設けられる人工肛門。数か月〜1年程度で閉鎖手術を行い、本来の排便経路に戻すことが可能です。
  • 永久的ストマ
     がんなどで直腸や肛門を切除した場合に造設され、閉鎖はできません。生涯にわたってストマと共に生活することになります。

企業においても、従業員が「一時的なのか」「永久的なのか」によって復職や配慮の内容が変わってきます。たとえば一時的ストマなら短期間の勤務調整、永久的ストマなら長期的に働きやすい環境づくりを意識する必要があります。

手術を受ける代表的な疾患

人工肛門の造設が必要となる代表的な疾患は以下のとおりです。

  • 大腸がん・直腸がん:切除範囲が広い場合、排便経路を確保するためにストマが必要になることがあります。
  • 潰瘍性大腸炎・クローン病:重症化や合併症により腸切除が必要になった場合に造設されます。
  • 外傷(交通事故や外科的損傷):腸の損傷が大きい場合に一時的ストマが選択されることがあります。

疾患ごとに造設の理由や期間は異なりますが、いずれの場合も適切な医療管理と社会的な理解が欠かせません。企業としては、疾患や治療内容を深く知る必要はありませんが、「人工肛門のある社員が働ける環境を整える」ことが重要です。


人工肛門の手術の種類

人工肛門の手術にはいくつかの方法があります。部位や目的によって分類され、医師の判断で最適な方法が選ばれます。

結腸ストマ(コロストミー)

大腸の一部を体表に出す方法で、便の性状が比較的固形に近く、管理しやすいのが特徴です。

  • 横行結腸ストマ:横行結腸に造設。便はやや柔らかく、1日に数回排泄されます。
  • 下行結腸ストマ:下行結腸に造設。便は固形に近く、排泄コントロールが比較的しやすいです。
  • S状結腸ストマ:最も一般的。便は固形で、管理が容易なケースが多いです。

回腸ストマ(イレオストミー)

小腸(回腸)に造設されるストマで、便が液状または半固形で出るため、水分・電解質管理が重要です。脱水症状や皮膚トラブルが起こりやすいため、本人への指導と企業側の理解・配慮も欠かせません。

一時的ストマと恒久的ストマの判断基準

ストマを一時的にするか、恒久的にするかは以下の要素で決まります。

  • 疾患の種類や進行度
  • 腸や肛門の温存可否
  • 患者の体力や合併症の有無

この判断は医師が行いますが、本人や家族にとっては将来の生活設計に直結する大きな要素です。復職や再就職を考える際にも、企業が理解しているかどうかで安心感が大きく変わります。

手術前に知っておきたい説明と準備

手術前には、患者と家族に以下のような説明や準備が行われます。

  • ストマの位置(皮膚のどの部位に造設されるか)
  • 装具(パウチ)の使い方
  • 術後の生活や食事の注意点
  • 社会復帰や仕事への影響

企業にとっても「手術でどのような生活変化があるのか」を理解することは大切です。復職後の勤務調整や相談窓口を整えておくことで、本人の安心感と職場定着につながります。

人工肛門の装具とケア

ストマ装具の種類(パウチ、ワンピース/ツーピース)

人工肛門からの排泄物を受けるためには、専用のストマ装具(パウチ)を使用します。主に以下の2種類があります。

  • ワンピースタイプ:袋と面板が一体になっているタイプ。装着が簡単で初心者に向いています。
  • ツーピースタイプ:面板と袋が分離しており、袋だけ交換できるタイプ。皮膚への負担が少なく、慣れた人に好まれます。

本人に合った装具を選ぶことが快適な生活につながります。また企業側としては、「勤務時間中に交換が必要になることがある」ことを理解しておくと安心です。

交換の手順と頻度

装具の交換は、皮膚の状態や便の性状によって変わりますが、一般的に1〜3日に1回が目安です。
交換の際は以下の手順が基本です。

  1. 古い装具を外す
  2. 周囲の皮膚をやさしく洗浄・乾燥
  3. 新しい面板・袋を装着
  4. 漏れや浮きがないか確認

交換に要する時間は15〜30分程度で、職場復帰後も昼休みなどを活用すれば対応可能です。

皮膚トラブルの予防(かぶれ・漏れ対策)

ストマ周囲の皮膚は便や装具の粘着でトラブルが起きやすいため、次のような予防が重要です。

  • 保護フィルムや皮膚保護剤の使用
  • 装具を正しく密着させる
  • 便の漏れを早めに対応する

職場では「体調が悪い=業務に支障がある」と誤解されがちですが、実際には適切なケアと時間的配慮があれば問題なく勤務できます。

医療保険・高額療養費制度・ストマ用品給付制度の活用

ストマ装具は継続的に必要となるため、医療費がかさむ場合があります。以下の制度を利用することで負担を軽減できます。

  • 医療保険の適用
  • 高額療養費制度(自己負担額の上限を超えた分を払い戻し)
  • ストマ用品給付制度(障害者手帳取得者に対し、自治体が装具を支給)

企業の人事担当者がこれらを理解しておくと、従業員へのサポートや相談対応がスムーズになります。


人工肛門と日常生活

食事の工夫(消化しやすい食べ物・ガスや臭いを抑える食事)

食生活の工夫によって、日常の不快感や社会生活への影響を減らすことができます。

  • 避けたいもの:炭酸飲料、豆類、揚げ物(ガスや下痢の原因)
  • おすすめ:おかゆ、うどん、柔らかい肉や魚(消化が良い)
  • 臭い対策:ヨーグルトやパセリ、緑茶などを取り入れる

入浴・シャワーの注意点

ストマ装具をつけたままでも入浴は可能です。専用キャップを使用すれば、短時間であれば装具を外しての入浴もできます。
企業としては「清潔に保つことができる」という理解があると、面接や復職時の偏見を防げます。

外出・旅行の準備(予備パウチ・トイレの確認)

外出や旅行も可能ですが、予備装具の持参多目的トイレの場所確認が必須です。職場においても、近くに利用できるトイレを本人と確認しておくと安心です。

スポーツ・運動はできる?(ウォーキング・水泳など)

ウォーキング、軽い筋トレ、ヨガ、水泳など多くの運動は可能です。ただし、腹圧が強くかかる運動(重量挙げなど)は注意が必要です。
企業の健康増進活動やスポーツイベントでも、「参加できるもの・できないものがある」ことを理解しておくことが大切です。


人工肛門と仕事・社会生活

職場復帰のタイミングと注意点

退院後すぐに復職できるわけではなく、体力回復や装具管理に慣れるまで数週間〜数か月が必要です。
復職時には、短時間勤務や在宅勤務からスタートするなど柔軟な対応が望まれます。

仕事内容による向き不向き(肉体労働/デスクワーク)

  • 向いている仕事:デスクワーク、事務、IT、接客(トイレが近い環境)
  • 注意が必要な仕事:重量物を扱う肉体労働、炎天下や極端な寒冷地での作業

企業側が仕事内容の調整を行うことで、多くの社員が活躍できます。

職場での配慮(トイレ利用・体調管理の理解)

ストマ保有者にとって重要な職場配慮は以下です。

  • トイレの利用を柔軟に認める
  • 長時間の会議や移動には休憩を設ける
  • 「臭いが気になるのでは?」という誤解を防ぐ説明を行う

こうした小さな配慮が、本人の安心感と職場定着率の向上につながります。

障害者手帳や就労支援制度を利用できる場合もある

人工肛門の造設によって、障害者手帳(身体障害者手帳)を取得できる場合があります。
これにより、障害者雇用枠での就労や就労支援制度(ジョブコーチ、就労移行支援)の利用が可能です。企業としても、助成金の活用や雇用率達成の面でメリットがあります。

人工肛門と心理的サポート

手術後の不安・羞恥心との向き合い方

人工肛門の手術後、多くの方が「見た目への不安」「臭いが気になるのでは」という羞恥心を抱きます。
しかし、現代のストマ装具は機能が大幅に進化しており、外見から気づかれることはほとんどありません。
大切なのは「一人で抱え込まない」こと。医療スタッフやカウンセラーに気持ちを打ち明けるだけでも、心理的な負担は大きく軽減します。

ピアサポート(同じ経験を持つ人の声)

同じ手術を経験した人の体験談やアドバイスは、教科書的な情報以上に力になります。
「仕事に復帰できた」「旅行や趣味を再開できた」といった声は、これからの生活を思い描くうえで大きな励みとなります。
企業としても、ピアサポート団体を紹介するなど、復職支援の一環として活用できる場合があります。

家族や周囲の理解の大切さ

人工肛門は本人だけでなく、家族や職場の理解も欠かせません。

  • 家族が交換手順を知っていることで、緊急時のサポートが可能
  • 職場で「トイレの利用に少し時間がかかる」ことを理解してもらうだけでも、安心感が大きく変わる

周囲が「一緒に歩んでいく」という姿勢を持つことが、本人の心理的安定につながります。

相談できる医療機関・患者会・支援団体

心理的なサポートを受けられる窓口は数多くあります。

  • 医療機関のストーマ外来:皮膚・装具のトラブルや不安を専門看護師に相談できる
  • 患者会・ピアサポート団体:当事者同士の交流が可能
  • 就労支援機関:復職や再就職に向けたアドバイスを受けられる

企業の人事担当者がこうした支援先を把握しておくことは、従業員への適切な案内やメンタルサポートに役立ちます。


まとめ|人工肛門と共に生きるために

人工肛門は「失った機能を補うための医療手段」であり、決して人生を制限するものではありません。正しい知識と工夫を身につければ、安心して生活を続けることができます。

  • 医療的サポート(定期的な診察・装具管理)
  • 生活の工夫(食事・入浴・外出準備)
  • 就労支援(職場での配慮・障害者手帳や支援制度)
  • 心理的支援(家族・仲間・専門機関とのつながり)

これらを組み合わせることで、より豊かな暮らしを実現できます。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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