- お役立ち情報
- 仕事探し・キャリア準備
人工透析患者の生活ガイド|食事・通院・就労・社会保障のすべて

この記事の内容
はじめに
人工透析を受けている患者さんは、日本全国で35万人以上にのぼります。週3回の透析治療を続けながら、食事制限・通院・仕事・社会生活を両立することは大きな課題です。
「透析を受けながらも安心して暮らしたい」「働き続けたいけれど不安がある」と感じる方は少なくありません。
本記事では、人工透析患者さんに必要な 食事管理・通院の工夫・就労支援・社会保障制度 までを総合的にガイドします。これから透析を始める方や、その家族、すでに透析を続けている方にとっても、生活の不安を軽減する手助けになる内容です。
人工透析とは?生活に与える影響
人工透析は、腎臓の機能が大きく低下したときに、体の中の老廃物や余分な水分を取り除くための治療です。腎不全の患者さんにとっては命を維持するために欠かせない治療ですが、日常生活への影響も少なくありません。
透析治療の種類
透析には大きく分けて2つの方法があります。
- 血液透析(HD)
週に3回、1回あたり約4〜5時間かけて病院で行う治療です。多くの患者さんが受けている一般的な方法ですが、通院時間や治療後の疲労感が生活に影響します。 - 腹膜透析(PD)
自宅で腹腔内に透析液を注入・排出する方法です。通院回数が少なく、仕事や家事との両立がしやすい一方、自己管理や感染症対策が必須となります。
日常生活に直結する負担
透析は命を守る治療である一方で、次のような負担が日常生活に直結します。
- 通院時間の確保:血液透析の場合、週3回、1回あたり半日近くを費やすこともあります。
- 体力の消耗:透析後は倦怠感や低血圧による疲れが出やすく、勤務時間や生活リズムに影響します。
- 日常の制約:水分や塩分の制限、旅行や外出時の制約など、自由度が下がるケースもあります。
こうした現実を理解したうえで、生活全体をどう整えるかが透析患者の大きなテーマとなります。
透析患者の食事管理

透析患者さんにとって食事管理は、体調を安定させるうえで最も重要なケアのひとつです。
塩分・水分・カリウムなどの摂取量は、腎臓の負担だけでなく 心臓病や高血圧など合併症のリスク にも直結します。食べすぎや飲みすぎは「翌日の透析がきつくなる」という即時的な影響もあるため、毎日の積み重ねが大切です。
たとえば水分制限では、飲み物だけでなく「果物・ゼリー・アイスクリーム」などの水分も含まれるため注意が必要です。その代わり、氷をゆっくり口に含む、キシリトールガムを噛む、レモンを使って口の中をさっぱりさせる など、喉の渇きを和らげる工夫を取り入れると無理なく続けられます。
基本原則
- 塩分制限(1日6g未満)
塩分の摂りすぎは血圧上昇や体内の水分貯留につながります。日本透析医学会の指針でも、1日6g未満が推奨されています。 - 水分制限(体重増加を抑える)
血液透析では、体重増加が多いと除水量が増え、透析後の低血圧や体調不良を招きやすくなります。喉の渇きを抑える工夫が大切です。 - タンパク質・カリウム・リンの調整
タンパク質は必要量を確保しつつ、カリウムやリンの過剰摂取は避ける必要があります。特にカリウムは心臓への影響が大きく、野菜や果物の摂取には注意が必要です。
食事の工夫例
- 加工食品を避ける
ハムやソーセージ、インスタント食品は塩分やリンが多く含まれています。なるべく新鮮な食材を選びましょう。 - 調味料は「かける」より「つける」
醤油やソースを直接かけると摂取量が増えます。小皿にとって少量を「つける」方法にするだけでも減塩につながります。 - カリウム除去の下処理
野菜は二度ゆで、ジャガイモは水にさらすなど、下処理を行うことでカリウムを減らせます。調理法を工夫することで、食の楽しみを失わずに済みます。
外食・コンビニ食を選ぶポイント
- 塩分表示をチェックする
コンビニ弁当や総菜には栄養成分表示があります。塩分が低めのものを選ぶことが重要です。 - 汁物は控える
ラーメンや味噌汁などのスープ類は塩分が多いため、汁は残す工夫が有効です。 - たんぱく質の確保
サラダチキンやゆで卵など、低塩で高たんぱくな食品を組み合わせると安心です。
通院・治療スケジュールの実際
透析治療は、生活リズムと切り離せないものです。治療の方法によってスケジュールが異なるため、自分の生活に合った形を選び、計画を立てることが大切です。
血液透析の一般的な通院スケジュール
- 週3回、1回4〜5時間
多くの患者さんは月・水・金、または火・木・土のいずれかで通院します。透析時間に加え、移動や準備を含めると半日近くかかることもあります。仕事との両立を考える場合、この時間の確保が大きな課題となります。
腹膜透析の在宅管理
- 自宅での実施が可能
腹膜透析は透析液を腹腔に注入し、一定時間後に排出する方法で、専用の機器を使って自宅で行うことができます。 - 通院頻度は月1〜2回程度
血液透析に比べ通院回数は少ないですが、自己管理の徹底と感染症予防が欠かせません。
通院と生活リズムの両立方法
- 通勤前後に透析を組み込む
朝に透析を受けてから勤務したり、仕事終わりに夕方から透析を行うなど、勤務時間に合わせたスケジューリングが可能です。 - 通院日を休日に調整する
土曜日に透析を入れることで平日の勤務を安定させるケースもあります。勤務先の制度や生活リズムに合わせて工夫することが重要です。
透析と就労の両立

人工透析を受けながら働くことは可能ですが、体力や通院の制約があるため、工夫が必要です。
透析患者が働けるのか?現実と課題
透析後は倦怠感や血圧の変動で疲れやすくなることがあります。また、週3回の通院時間を勤務にどう組み込むかが大きな課題です。そのため、無理なく継続できる働き方を見つけることが重要です。
向いている職種の特徴
- デスクワーク:体力的な負担が少なく、定時勤務で働けるケースが多い。
- 在宅勤務:通院との両立がしやすく、体調に合わせて仕事に取り組める。
- 短時間勤務:フルタイムが難しい場合でも、パートや時短勤務なら継続しやすい。
避けた方がよい職種
- 長時間労働や残業が常態化している仕事
- 重労働や立ち仕事中心の職種
- 夜勤や交代制勤務など、生活リズムが乱れる仕事
企業に伝えるべき配慮事項
- 通院日や治療後の体調変化を事前に説明する
- 勤務時間の調整方法(フレックス勤務・在宅勤務・時短など)を相談する
→ 「制約があるから働けない」ではなく、「制約があっても働き続けられる工夫」を伝えることが大切です。
人工透析患者が使える社会保障制度
透析患者は複数の公的制度を利用できます。生活と医療費の負担を軽減するために、積極的に活用しましょう。
身体障害者手帳(腎疾患による内部障害)
腎疾患は内部障害として認定され、透析患者は原則1級または2級に該当します。取得することで、税控除・交通機関割引・雇用枠での就労機会などを受けられます。
障害年金
透析開始から一定期間経過後、障害年金の対象となります。就労が難しい場合の生活費補助として利用可能です。
自立支援医療制度(透析医療の医療費軽減)
自己負担が原則1割となり、経済的負担を大きく軽減できます。
医療費控除・高額療養費制度
確定申告で医療費控除を受けたり、高額療養費制度で自己負担限度額を超えた分を払い戻せたりします。
交通費・公共料金の割引制度
鉄道・バスなどの運賃割引や、水道・電気料金の割引制度が適用される場合もあります。
日常生活でのセルフケアと工夫
医療や制度に加えて、日常生活の工夫が生活の質を大きく左右します。
- 疲労をためない生活リズム:睡眠・休養をしっかり確保する
- 水分・塩分コントロールの習慣化:食事の工夫で透析負担を減らす
- 家族・周囲との協力体制:通院や食生活のサポートを得る
- ピアサポート:患者会やSNSで同じ経験を持つ仲間とつながることで、不安を共有しやすくなります。
まとめ

人工透析患者の生活は、
「食事管理」「通院」「就労」「制度利用」 の4本柱で成り立っています。
透析は週3回の治療と生活習慣の制約があるため、確かに負担は小さくありません。しかし、食事や水分の工夫を取り入れ、仕事では勤務時間や働き方を調整し、さらに社会保障制度を活用することで、安定した生活と就労の両立は十分に可能です。
大切なのは「自分一人で抱え込まないこと」。
医療機関や支援制度、家族や職場、そして同じ経験を持つ仲間とのつながりを頼ることで、不安を軽減し、前向きに生活することができます。
求職者へのメッセージ
透析をしているからといって、人生やキャリアをあきらめる必要はありません。
就職・転職を考えている方も、まずは「どんな配慮があれば働けるのか」を整理し、支援制度や専門機関をうまく活用してみましょう。
社会は少しずつ変わりつつあります。フレックス勤務や在宅勤務など、透析患者が働きやすい制度を導入する企業も増えています。制度と理解を味方につければ、あなたらしい働き方を実現できるはずです。
「透析をしていても、安心して暮らし、働き続けられる」——この記事がその一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







