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【人事・マネージャー必見】シェーグレン症候群の合理的配慮ガイド|倦怠感・乾燥対策と定着戦略

この記事の内容
はじめに:シェーグレン症候群は「見えにくい障害」。理解が定着を生む戦略

企業のダイバーシティ推進が叫ばれる中、人事・マネージャーの皆様は、「見た目では分かりにくい障害」への適切な対応が、優秀な人材の定着に直結することを理解する必要があります。その一つが、シェーグレン症候群(Sjögren’s Syndrome, SS)という指定難病です。
記事の導入:職場で誤解されやすい「見えにくい障害」
シェーグレン症候群は、目や口の乾燥だけでなく全身症状を伴う自己免疫疾患。「見た目では分からない障害」のため、職場で誤解されやすいです。
- 課題: SSは外見からは健康に見えるにもかかわらず、主な症状は「慢性的な疲労・倦怠感」「ドライアイ・ドライマウス」「関節痛」です。
- 誤解のリスク: これらの症状が目に見えないため、職場内で「疲れやすい」「頻繁に席を立つ」「集中力がない」といった行動が、「怠けている」「やる気がない」という誤解を生み、社員の心理的安全性を大きく損なうリスクがあります。
記事の結論:採用・就労支援に必要な配慮を解説
本記事の目的は、企業が知っておくべき症状の特徴と、採用・就労支援に必要な配慮を解説することです。
- 戦略の転換: SSの社員の安定就労を確実にするには、「乾燥対策」「疲労管理」「感染予防」という3つの柱に基づいた具体的かつ柔軟な合理的配慮が不可欠です。
- 目標: このガイドを通じて、企業の皆様がSSという疾患への理解を深め、社員の健康維持と長期的な定着に繋がる、実践的な職場環境を構築するための指針を提供します。
1. シェーグレン症候群の基礎知識:症状と就労への具体的影響
シェーグレン症候群(SS)は、その症状が外見からは分かりにくいため、職場での誤解を生みやすい特性を持っています。企業が社員の能力を最大限に引き出すためには、この「見えない困難」が就労にどう影響するかを理解することが不可欠です。
主な症状(ドライアイ・ドライマウス・全身のだるさ)
SSの症状は、涙腺・唾液腺への攻撃から生じる乾燥症状と、全身的な炎症が中心です。
- 指定難病であることの解説: SSは自己免疫疾患(膠原病)の一種であり、日本では指定難病に定められています。これは、継続的な医療費助成や公的支援の対象となることを意味します。
- 発症傾向: 40〜60代女性に最も多く発症し、患者の約9割が女性です。
- 症状:
- ドライアイ:目の痛み、ゴロゴロ感、視力低下のリスク。
- ドライマウス:水分がないと食事がしにくい、虫歯・歯周病リスクの増大。
- 全身のだるさ:休息しても改善しない慢性的な疲労感(倦怠感)。
- 関節痛:手首や指などに痛みやこわばりが生じることがあります。
就労に影響する具体的な困難
これらの症状は、業務の持続性とコミュニケーションに直接的な支障をきたします。
- ① 慢性的な疲労感で集中力が落ちる:
- 影響: 常に体内で炎症が起きているため、**易疲労性(疲れやすさ)**が強く、長時間の残業やフルタイムの集中が困難となります。体調の波が激しく、業務の持続性が不安定になります。
- ② 長時間のPC作業で目の乾きが強い:
- 影響: ドライアイの症状がPC作業や乾燥したオフィス環境で悪化し、目の痛みや充血を引き起こします。これにより、PC作業の効率や集中力が著しく低下します。
- ③ 会話や電話業務で声がかすれる:
- 影響: ドライマウスにより口の中が乾燥し、会話中に声がかすれたり、言葉が詰まったりすることがあります。これにより、電話応対や会議での発言が大きな精神的・身体的負担となります。
職場で起こりやすい誤解
SSの「見えにくい」特性が、職場での評価に影響を与えることがあります。
- 体調不良が「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすい構造:
- 課題: 症状が見えないため、「頻繁な休憩」「残業拒否」「午前中の集中力の低さ」といった行動が、周囲に「怠慢」や「自己管理不足」と誤解されやすいです。
- 対策: この誤解を防ぐため、企業は病気の特性を理解し、合理的配慮を組織的に周知することが不可欠となります。
2. 企業ができる配慮ポイント:柔軟な制度と環境の最適化

シェーグレン症候群の社員の能力を最大限に引き出し、長期的な定着を実現するためには、業務内容の「何をやるか」だけでなく、「いつ」「どこで」やるかという制度と環境の柔軟性が不可欠です。
① 勤務時間・勤務形態の柔軟性
慢性的な疲労感や通院の必要性があるため、従来の固定的な勤務体系を見直すことが重要です。
- フレックスタイム、在宅勤務、時短勤務の選択肢を提示し、通院や疲労の管理をサポート:
- フレックスタイム: 体調の波に合わせて出勤・退勤時間を調整できるようにすることで、午前中の倦怠感や急な体調不良に対応しやすくなります。
- 在宅勤務(テレワーク): 乾燥しにくい環境(加湿器など)を自分でコントロールできること、通勤による体力消耗を防げること、症状が重い日の業務継続を可能にすることなど、大きなメリットがあります。
- 通院への配慮: 定期的な通院(リウマチ科・膠原病科)が治療の継続に不可欠です。時間単位の有給休暇の活用や、通院日を優先した勤務調整を認めることが重要です。
② 職場環境の改善
ドライ症状の悪化を防ぎ、快適に業務を遂行できる物理的な環境を整備します。
- 加湿器や飲料の持ち込みを許可: ドライマウスやドライアイの症状緩和のため、パーソナル加湿器や、水筒・マグカップなどによる飲料の持ち込みと頻繁な水分補給を制限なく許可します。
- PC作業の休憩を取りやすくする: ドライアイの悪化を防ぐため、PC作業中は意識的に休憩(目を休ませる時間)を推奨し、休憩時間の頻度や長さについて柔軟に対応します。
- 窓際など乾燥した場所を避けた座席配置: エアコンの風が直接当たる席や、特に乾燥しやすい窓際から離れた、湿度を保ちやすい座席への配置を検討します。
③ 業務内容の調整
症状により困難となる業務から社員を解放し、能力を活かせる業務に集中させます。
- 電話応対からチャット・メール対応に切り替え:
- 配慮: ドライマウスによる発話困難や声のかすれを回避するため、電話応対や口頭での複雑な説明が必要な業務を他の社員と分担し、チャットやメール中心のテキストコミュニケーションに切り替えます。
- メリット: これは、業務指示の記録化にも繋がり、チーム全体の情報伝達の正確性を高める効果もあります。
- 過度な残業・夜勤を避けた無理のない業務配分:
- 配慮: 慢性的な倦怠感があるため、疲労が蓄積しやすい残業や夜勤を原則として免除します。業務のピークタイムを避け、体調に合わせた無理のない業務量と業務配分を心がけます。
3. 本人・人事・産業医の「三位一体」サポート体制
シェーグレン症候群(SS)の社員が長期的に安定して就労するには、社員本人、人事・マネージャー、産業医が連携し、病状と業務遂行能力を客観的に評価・管理する「三位一体」のサポート体制が不可欠です。
相談できる窓口・担当者の設置
社員が安心して病状や必要な配慮を相談できる、心理的に安全な環境を構築します。
- 人事・産業医・ジョブコーチの活用。心理的な安全性の確保:
- 担当者の明確化: 配慮事項を管理する人事担当者やマネージャーを明確にし、社員が誰に相談すればよいか迷わないようにします。
- 産業医の連携: 産業医は、社員の通院状況、服薬状況、慢性的な倦怠感の程度などを医学的な視点から把握し、「可能な業務量」「必要な休憩頻度」について、人事やマネージャーに具体的な助言を行います。
- ジョブコーチ: 外部のジョブコーチ(職場適応援助者)は、本人と職場の双方に寄り添い、配慮のすり合わせや定着支援を行う上で有効な専門家です。
- 心理的安全性: 「病気のことを話しても不利益にならない」という信頼関係を築くことが、体調悪化の早期発見に繋がります。
コミュニケーション面の工夫
病気に対する誤解を解消し、チーム全体の理解を深めることが、最も重要な配慮の一つです。
- チームに事前に説明し、理解を促す。本人の了承を得て、簡単に「病状に関する説明」を共有:
- インフォームド・コンセント: 本人のプライバシー保護を最優先し、必ず本人の許可を得た上で、業務に影響する範囲(例:なぜ頻繁に休憩が必要か、なぜ乾燥を避ける必要があるか)に限定して、チームメンバーに病状を共有します。
- 説明のポイント: 「見た目では分かりにくいが、常に慢性的な炎症による疲労感がある」「ドライマウスのため、口頭での説明が難しい場合がある」といった具体的な影響を伝えます。
- 効果: これにより、社員の行動が「怠惰」ではなく「病気の特性」に基づくものであると理解され、誤解に基づくハラスメントや孤立を防げます。
復職・定着時の情報収集
配慮を具体的に計画するためには、入社時や復職時に、社員の状況を正確に把握することが必要です。
- 採用時の面接で通院頻度・服薬状況・必要な配慮を丁寧にヒアリング:
- 目的: 障害者雇用枠での採用や、休職からの復職、あるいは入社後の発症の場合も、必要な配慮の実現を目的として、以下の情報を丁寧にヒアリングします。
- 確認事項: 通院の頻度(時間単位の休暇が必要か)、服薬状況(服薬時間と業務時間の関係)、最も困難な業務(PC作業、電話、立ち仕事など)、環境面で必要な設備(加湿器など)といった、具体的かつ実践的な情報を把握します。
- 注意点: 病気の原因や私的な情報ではなく、「業務遂行に必要な合理的配慮」に焦点を当ててヒアリングすることが、法令遵守の観点からも重要です。
4. 働きやすい職場づくりの具体的な事例
シェーグレン症候群(SS)の社員が安定して働くためには、企業の柔軟な制度が不可欠です。ここでは、SSの特性である「慢性的な疲労」「乾燥」という課題に対し、企業がどのような合理的配慮を実践し、成功しているかという事例を紹介します。
事例1:PC作業中心の社員に休憩タイムを導入
ドライアイや全身の倦怠感が強いSS社員の集中力と生産性を維持するための時間的な配慮の事例です。
- 短時間集中と休憩の頻度を増やし、生産性を維持した事例:
- 社員の課題: ドライアイの悪化と、慢性的な疲労により、長時間のPC作業が困難でした。
- 企業が行った配慮: 「1時間に10分間の休憩」を公式に許可し、社員の席を窓際から離れた静かな場所に配置しました。休憩中は、目薬の使用や目を温めるなど、ドライアイのセルフケアに専念することを推奨。
- 結果: 休憩頻度が増えたことで、疲労の蓄積と目の乾燥が軽減され、業務時間内の集中力とPC作業の効率(生産性)が維持・向上しました。企業は、「休憩はコストではなく、集中力を維持するための投資である」という認識を共有しました。
事例2:電話業務からメール対応に変更して就労継続
ドライマウスによる発話の困難さという課題に対し、コミュニケーション手段を切り替えて対応した事例です。
- コミュニケーションの負担を軽減し、緻密な事務作業に集中させた事例:
- 社員の課題: ドライマウスにより、長時間の電話応対で声がかすれ、発話が困難になることが大きなストレスでした。
- 企業が行った配慮: 業務を調整し、電話応対(特に外線)を他の社員と分担。本人には、メールや社内チャットを使った文書での問い合わせ対応や、データ管理といった緻密な事務作業をメインに担当させました。
- 結果: 症状の悪化を防ぎ、社員の事務処理の正確性と集中力という強みが最大限に発揮され、長期的な安定就労に繋がりました。
事例3:在宅勤務制度を部分的に利用できるようにしたケース
感染リスクと通勤負担を避けるための、勤務形態の柔軟な配慮の事例です。
- 通勤負担と外部感染リスクを避け、体調安定を実現した事例:
- 社員の課題: 免疫抑制剤の服用により感染症リスクが高いこと、および通勤疲労が症状を悪化させていました。
- 企業が行った配慮: 週1~2回の在宅勤務(リモートワーク)を許可しました。社員は、人混みが多い通勤ラッシュを避け、自宅という清潔で湿度管理がしやすい環境で業務に取り組めるようになりました。
- 結果: 外部感染のリスクが減り、体力が温存されたことで欠勤が減り、安定した稼働率が維持されました。
これらの事例は、シェーグレン症候群への配慮が、個人の定着と組織の生産性という、二つの利益を生み出していることを証明しています。
5. 支援制度の活用:経済的・組織的サポート
シェーグレン症候群(SS)を持つ社員の安定就労は、企業と社員が公的な支援制度を戦略的に活用することで、経済的な負担を軽減しつつ、最適な職場環境を構築できます。
障害者雇用枠での活用
SSは難病ですが、その症状や後遺症によっては、障害者手帳の交付対象となり得ます。
- シェーグレン症候群も障害者手帳交付の対象になり得る: SS自体は指定難病ですが、その症状が原因で臓器機能に重い障害が生じた場合(例:腎機能障害、呼吸器機能障害など)は、身体障害者手帳の交付対象となる可能性があります。
- 雇用率達成だけでなく、戦力として活躍できる: 手帳を取得し、障害者雇用枠を利用することで、企業には合理的配慮の提供が前提となります。これにより、柔軟な勤務形態や乾燥対策といった配慮を法的な根拠をもって要求でき、安心して長期的なキャリアを築くことができます。企業側は、優秀な人材を安定的に確保できます。
自立支援医療制度・障害年金
社員の経済的な不安を解消することは、治療の継続と定着に直結します。
- 医療費負担の軽減と、経済的なセーフティネットの構築:
- 自立支援医療制度: SSは指定難病であるため、医療費の自己負担額が軽減される難病医療費助成制度や、精神的な二次障害に対する自立支援医療制度(自己負担額の軽減)が適用されます。
- 障害年金: 症状による慢性的な疲労・倦怠感が原因で、日常生活や就労に著しい制限が生じている場合、障害年金を受給できる可能性があります。これは、給与とは別に経済的なセーフティネットとなり、社員が「無理をして働く」リスクを減らせます。
企業向け助成金
企業が配慮を実行する際に発生するコストを、公的な助成金でカバーすることが可能です。
- 職場環境改善・設備導入補助など、配慮にかかるコストを公的制度でカバーする:
- 両立支援等助成金: 治療と仕事の両立支援を目的とした制度で、社員が治療のために休暇や短時間勤務制度を利用する際に、企業が受給できる助成金があります。
- 職場環境改善助成金: 昇降式デスク、加湿器など、身体的な負担を軽減するための設備導入にかかる費用の一部について、助成を受けられる場合があります。
これらの制度を積極的に活用することで、企業は「配慮のコスト」を抑えつつ、社員の「定着率」という最大の利益を確保できます。
6. まとめ:配慮はコストではなく投資。多様な人材が活躍する職場へ

本記事を通じて、シェーグレン症候群(SS)という「見えにくい障害」への適切な対応が、単なる福祉的な措置ではなく、企業の生産性と定着率を高めるための戦略的な投資であることを解説しました。
記事の要約:柔軟な職場づくりが定着率アップに直結
シェーグレン症候群は「見えにくい障害」だが、理解と配慮で十分に働けます。企業にとっても「柔軟な職場づくり=人材定着率アップ」につながります。
- 症状の特性: SSの主な課題は、慢性的な疲労、ドライ症状、関節痛です。これらは外見から分かりにくいため、職場での誤解が最大のストレスとなります。
- 配慮の戦略: 企業は、フレックスタイム、リモートワーク、静かな座席、水分補給の自由といった柔軟な配慮を提供することで、社員の疲労蓄積を防ぎ、症状の悪化リスクを最小限に抑えることができます。
- リターン: この柔軟な職場づくりは、SS社員の長期的な安定就労を可能にするだけでなく、他の社員のメンタルヘルスや全社員のリモートワークの質も高め、組織全体の定着率と柔軟性を向上させます。
メッセージ:配慮はコストではなく投資。多様な人材が活躍する職場は企業の成長につながる
人事・マネージャーの皆様へ、配慮はコストではなく投資です。多様な人材が活躍する職場は企業の成長につながります。
- 意識の転換: 合理的配慮は、「特定の社員のためだけのコスト」ではなく、「優秀な人材を安定的に確保し、企業の成長を支えるための未来への投資」です。
- 目標: SSへの理解を深め、心理的安全性の高い職場文化を築くことで、社員の不安を解消し、その能力と忠誠心を企業の成長に繋げてください。
次のステップ:行動を始める
- 環境チェック: オフィス内の乾燥しやすい場所(エアコンの真下、窓際など)を特定し、加湿器の設置や座席配置の変更を検討しましょう。
- 制度の活用: 時間単位有給やフレックスタイム制の利用実績を調査し、社員が遠慮なく制度を利用できるための啓発を行いましょう。
専門家との連携: 産業医や外部支援機関を通じて、SSの症状や必要な配慮について、具体的な研修を企画しましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







