2025/09/05
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企業が知っておくべき呼吸器障害のある社員への配慮|安全管理と就労継続の工夫

はじめに

呼吸器障害とは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)喘息肺線維症、あるいは在宅酸素療法を必要とするケースなど、幅広い状態を含みます。症状の重さや種類によって日常生活や働き方に大きな影響が出るため、企業側の理解と適切な配慮が欠かせません。

企業が呼吸器障害を持つ社員への配慮を重視すべき理由は主に3つです。

  • 安全確保:酸素ボンベや薬剤使用など、災害時・緊急時に特別な対応が必要になる場合があります。
  • 就労定着率の向上:負担の少ない働き方を整えることで、安心して長く働き続けられる環境が生まれます。
  • 離職防止:職場環境の不備や理解不足が原因で優秀な人材が離職するリスクを回避できます。

本記事では、企業の人事担当者や管理職に向けて、呼吸器障害のある社員に対する配慮のポイントと、就労を継続するための工夫を整理して解説します。


呼吸器障害が職場に与える影響

主な症状(息切れ・疲労感・感染リスク)

呼吸器障害を抱える社員は、軽度でも息切れや慢性的な疲労感を感じやすく、風邪やインフルエンザといった感染症にかかりやすい傾向があります。これらの症状は日々の業務パフォーマンスに直結し、体調不良が続くと欠勤や休職の原因になることもあります。

業務上のリスク(体力低下、無理な長時間勤務で悪化)

体力の消耗が激しい業務や長時間の労働は、症状を悪化させる大きな要因です。無理を重ねることで発作や呼吸困難を引き起こす可能性もあるため、過労を防ぐ勤務設計が重要になります。

災害時・緊急時に注意すべきこと(避難・酸素ボンベ管理)

災害や火災、停電などの緊急時には、呼吸器障害のある社員が安全に避難できる体制を整える必要があります。特に在宅酸素療法を行っている社員には、携帯用酸素ボンベを常備しておくことや、酸素濃縮器を使用する場合の電源確保が重要です。これらを緊急時対応マニュアルに明記しておくことで、万一の際にも迅速な行動が可能になります。


企業が配慮すべき労働環境の整備

空気環境の管理

呼吸器障害にとって、空気の質は何より大切です。

  • 職場内の禁煙・分煙の徹底
  • 定期的な換気・空調管理
  • 空気清浄機の導入

これらの対策により、呼吸器への負担を軽減し、発作のリスクを減らすことができます。

勤務時間と通勤の配慮

呼吸器障害を持つ社員にとって、長時間労働や満員電車での通勤は大きなストレスです。

  • 時差出勤や短時間勤務制度を導入
  • 在宅勤務を選択肢として用意
  • 遠距離通勤者にはリモート会議やサテライトオフィス利用を推奨

これらの工夫が、体調維持と就労継続につながります。

作業内容の調整

呼吸器障害を持つ社員には、体力を大きく消耗する作業を避け、デスクワークや在宅勤務へのシフトが有効です。さらに、業務を小分けにして負担を分散することで、無理のない働き方を実現できます。


安全管理の具体策

在宅酸素療法をしている社員への対応

在宅酸素療法を行う社員には、職場のデスク周辺や休憩スペースなどに酸素機器を無理なく置ける環境を整えることが必要です。大掛かりな専用室を設ける必要はなく、社員本人が安心して機器を利用できるスペースを確保すれば十分です。また、火気や粉塵を伴う作業は避け、安全面に配慮した職場づくりが欠かせません。

感染症対策

呼吸器障害のある社員は、感染症にかかると重症化しやすいため、企業には積極的な対策が求められます。

  • 風邪やインフルエンザの流行期には在宅勤務を推奨
  • マスク・手指消毒・空気清浄機の常備
  • オフィス全体での感染予防意識の共有

これにより、職場全体の健康リスクを下げる効果も期待できます。

緊急時対応マニュアルの整備

呼吸器障害を持つ社員に発作や呼吸困難が起きた場合に備えて、社内で基本的な対応の流れを共有しておくことが大切です。

  • 救急搬送の基準を明確に
     「このような症状が出たら救急要請」という目安を事前にまとめておきます。本人のかかりつけ医や家族の意見を聞いておけば、より安心です。
  • 応急処置の共有
     職場の誰もが慌てずに対応できるよう、呼吸困難時の体位保持や救急要請までの流れを簡潔にマニュアル化します。
  • 搬送先の確認
     基本は救急隊の判断に任されますが、本人のかかりつけ病院や勤務先近くの医療機関も候補としてリストに載せておくとスムーズです。特別な契約や根回しまで必要なわけではありません。
  • 緊急連絡先リスト
     家族やかかりつけ医などの連絡先をまとめ、社内で共有しておきます。

このように「特別な体制をつくる」のではなく、他の社員の災害時・急病時対応マニュアルに少し追記する程度で十分です。準備をしておくことで、万一の際にも迅速で適切な対応が可能になり、社員の安全と安心を守ることにつながります。

就労継続のための工夫

定期面談で体調変化を把握

呼吸器障害を持つ社員の体調は、季節や感染症流行の影響を受けやすく、日によって波があります。人事担当者や直属の上司が定期的に面談を実施し、体調変化を把握する仕組みをつくることが大切です。本人も「体調の不調を伝えやすい環境」があることで、無理をして悪化させるリスクを減らせます。

ジョブコーチ・産業医との連携

就労継続の支えとなるのが、ジョブコーチや産業医との連携です。ジョブコーチは、本人と企業の間に立って業務調整や周囲への理解促進を行います。また、産業医は勤務内容と健康状態のバランスを医学的に評価し、必要な勤務時間や配慮事項を助言してくれます。外部専門家の視点を取り入れることで、企業側の負担も軽減されます。

柔軟な人事制度(在宅勤務、フレックスタイム、配置転換)

呼吸器障害のある社員にとって、柔軟な勤務制度は働き続けるための大きな支えとなります。

  • 在宅勤務:通勤負担や感染リスクを回避
  • フレックスタイム:通院や体調に合わせた働き方を実現
  • 配置転換:体力を要する現場作業から、デスクワークや企画業務へのシフト

こうした取り組みは「特別扱い」ではなく、社員のパフォーマンスを最大化するための合理的な工夫といえます。


企業にとってのメリット

配慮=特別扱いではなく、全社員にとって働きやすい環境改善

呼吸器障害のある社員への配慮は、実は「誰にとっても快適な職場づくり」につながります。
例えば、換気や空気清浄機の導入は、呼吸器障害のある社員だけでなく、花粉症やアレルギーを持つ社員、さらには感染症予防にも効果的です。
こうした取り組みは、社員全体の健康維持や生産性向上に寄与し、働きやすさ=企業の競争力強化につながります。

離職率低下と人材定着につながる

健康に不安を抱える社員が安心して働ける体制を整えることは、人材流出を防ぐ最も効果的な方法の一つです。柔軟な勤務制度やサポート体制があることで社員のエンゲージメントが高まり、結果として離職率が低下します。
その効果は数字にも表れ、採用・教育にかかるコスト削減やノウハウの社内蓄積という、企業にとって大きなリターンとなります。

障害者雇用率達成だけでなく「戦力化」にも直結

呼吸器障害のある社員を雇用することは、単なる法定雇用率の達成にとどまりません。適切な配慮を行うことで社員は能力を十分に発揮でき、「戦力」として活躍できる存在になります。
さらに、障害者雇用を積極的に推進している企業は、社会的評価や企業ブランドの向上という副次的な効果も得られます。CSR(企業の社会的責任)やSDGsへの取り組みとしてもアピールでき、取引先や求職者からの信頼にもつながります。


成功事例(企業・社員双方の声)

在宅勤務制度を活用して継続勤務できた事例

ある企業では、呼吸器障害のある社員に在宅勤務を導入しました。感染症流行期でも体調を崩すことなく業務を継続でき、成果を安定的に出し続けています。

製造現場から事務職へ配置転換して安定就労した例

製造現場で勤務していた社員が呼吸器障害を発症した際、会社は事務部門へ配置転換。体への負担を減らしながら専門知識を活かし、社内で重要な役割を担っています。

感染症対策を強化し、職場全体の健康管理にも効果

呼吸器障害のある社員への配慮から、企業全体で感染症対策を徹底。結果的に社員全体の欠勤率が下がり、組織全体の生産性向上につながった事例もあります。


まとめ

呼吸器障害があっても、企業の理解と工夫次第で安定した就労は十分に可能です。安全管理の徹底や柔軟な勤務制度の導入は、社員本人にとって大きな安心材料となるだけでなく、全社員にとっての職場環境改善や生産性向上にもつながります。

また、こうした取り組みは単なる「配慮」ではなく、人材の定着・戦力化・離職率低下という企業の経営課題を解決する手段ともなります。結果的に、採用コストの削減やノウハウの蓄積、さらにCSRやSDGsへの貢献といったプラスの効果を企業にもたらします。

重要なのは、企業が一人で全てを抱え込むことではありません。
👉 社員本人・かかりつけ医・産業医・ジョブコーチ・支援機関と連携しながら、無理のない働き方を共に考えることです。

呼吸器障害を持つ社員が安心して力を発揮できる職場は、企業にとっても信頼と成長の基盤となります。人事担当者の皆さまには、ぜひ「特別扱い」ではなく「未来への投資」として、この取り組みを進めていただきたいと思います。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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