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企業が知っておくべき てんかんのある人の雇用ガイド|発作対応・業務選定・安全管理

この記事の内容
はじめに
てんかんは、脳の神経活動の一時的な異常によって発作が起こる神経疾患です。世界的には人口の約1%が罹患しており、日本でも約100万人以上の方がてんかんと共に生活しています。
しかし、企業においては「突然発作を起こすのではないか」「業務に支障が出るのではないか」という先入観や誤解から、雇用に踏み切れないケースも少なくありません。
実際には、服薬管理や職場環境の工夫によって多くの方が安定して働くことが可能です。特に近年では、障害者雇用促進法や合理的配慮の普及により、企業側の理解と受け入れ体制も整いつつあります。
本記事では、企業がてんかんのある人を雇用する際に必要な知識と実務ポイントを、発作対応・業務選定・安全管理の観点から詳しく解説します。
実際の雇用事例(事務職・製造業・IT)
- 事務職(総務・経理・データ入力):発作の予兆がある場合でも座席や作業内容を調整しやすく、在宅勤務も可能。
- 製造業(軽作業・検品):安全管理体制が整っていれば就業可能。発作リスクの高い作業は他のスタッフが補完する仕組みを導入。
- IT・クリエイティブ職:在宅やリモート勤務との相性が良く、集中力や専門スキルを活かせる。
日本と海外の受け入れ状況比較
- 日本:障害者雇用枠での採用が中心。制度や配慮は整備されつつあるが、偏見による採用見送りが依然として残る。
- 海外(欧米):ADA法(米国障害者法)などにより、発作に対する合理的配慮が法的に義務化。就労支援団体やNPOが職場教育を行う事例も多い。
企業が不安を抱く理由と解消法

発作リスクと安全確保
てんかん発作の種類(全般・部分発作)
- 全般発作:脳全体に異常な電気活動が広がり、意識消失や全身けいれんを伴う。発作時間は数十秒~数分程度。
- 部分発作(焦点発作):脳の一部に異常が生じ、体の一部のけいれんや感覚異常、意識の混濁などが起こる。
発作の前兆と兆候の見極め方
- 視覚や聴覚の異常(光がちらつく、耳鳴り)
- 急なめまい・吐き気・意識のぼやけ
- 「 déjà vu(デジャヴ)感」や不安感の高まり
→ 事前に本人から「どのような前兆があるか」を聞き取り、同僚と共有しておくことで、発作時の安全確保がスムーズになる。
服薬管理でリスク低減が可能
服薬中断が発作に与える影響
てんかんの治療では抗てんかん薬の継続服用が重要で、服薬中断は発作再発の最大要因です。体調不良やストレスよりも、薬の飲み忘れが再発リスクを高める場合があります。
服薬状況の職場での扱い方(プライバシー配慮)
- 服薬時間が業務中にかかる場合は、休憩時間にさりげなく確保できるよう調整。
- 上司や人事だけが知る形で情報管理し、必要以上に全員へ公開しない。
- 本人が希望すれば、信頼できる同僚数名にのみ共有して緊急時の対応を依頼。
発作対応マニュアルの作り方
職場内共有方法
簡易カードや掲示物での周知
- 社内で使える「発作時対応カード」を作成し、緊急連絡先・対応手順を明記。
- 個人ロッカーや作業机に貼っておくことで、いざという時に慌てず対応可能。
研修・訓練の実施例
- 年1回程度、全社員または担当部署向けに発作対応研修を実施。
- 実際の応急処置をロールプレイ形式で学び、救急要請の判断基準を周知。
救急要請の基準と手順
救急搬送が必要なケース
- 発作が5分以上続く(重積状態の可能性)
- 発作後に意識が戻らない/連続して発作が起きる
- 発作で頭部を強打するなど大きな怪我をした場合
応急処置の具体例(体位保持、周囲安全確保)
- 倒れた場合は横向きに寝かせる(回復体位)
- 口の中に物を入れない(窒息の危険)
- 周囲の危険物や家具を避け、頭部を保護
- 発作終了後は静かな環境で安静にし、回復を待つ
業務内容のマッチング

向いている業務(事務、研究、在宅ワーク)
なぜ安全性が高いのかの理由付け
事務職や研究職、在宅ワークは、発作時の事故リスクが低く、発作予兆があっても安全確保がしやすい業務形態です。
- 座位での作業が中心で、転倒・衝突などの物理的危険が少ない
- 納期やスケジュールが比較的柔軟で、体調に応じた調整が可能
- 在宅ワークでは自宅という安心環境で勤務でき、発作時も周囲への影響が最小限
導入しやすい配慮例(納期調整、休憩確保)
- 業務納期を数日単位で設定し、突発的な休養にも対応
- 休憩を1時間に1回程度、5〜10分確保し、体調確認の時間を設ける
- チャットやメールなど非対面コミュニケーションツールを活用し、在宅でも円滑に連携
避けるべき業務(危険作業、夜勤)
具体的なリスク事例
- 高所作業中に発作が起き、墜落や転落の危険
- 重機や刃物を扱う作業で意識消失し、重大事故につながる
- 発作時に製造ラインを停止できず、不良品や機械損傷の発生
代替業務への配置転換例
- 製造ラインの監視業務 → 品質検査や梱包作業に変更
- 現場作業 → 設計・図面作成、在庫管理などの間接業務へ移行
- 夜勤専従 → 昼勤へのシフト変更や交替勤務制の見直し
夜勤とてんかん

睡眠不足が発作を誘発する理由
医師による推奨基準
てんかんは睡眠不足により発作が誘発されやすく、医師は1日7〜8時間の規則正しい睡眠を推奨しています。交代制勤務や夜勤は、体内時計を乱し、発作リスクを高める要因となります。
製造業での夜勤リスク事例
事故防止策と勤務体制見直しの実例
- 夜勤中に発作が発生し、ライン作業が一時停止。以降、当事者は昼勤に限定配置
- 工場全体で夜勤体制を再編し、持病のある社員は定常勤務へシフト
- 深夜帯の人員配置を見直し、持病を持つ社員の健康維持を優先する社内ルールを策定
雇用継続のためのポイント
定期面談・症状共有
面談で話すべき内容例
- 最近の発作頻度や予兆の変化
- 服薬状況や副作用による業務への影響
- 配置や業務量の適正についての意見交換
→ 形式的ではなく、双方の信頼関係を築く場として活用することが重要です。
突発時のバックアップ体制
代替要員確保の仕組み
- 発作で一時離席しても業務が止まらないよう、担当業務を2名以上で共有
- シフト制やチーム制を導入し、急な欠勤にも対応できる体制を整備
業務引き継ぎマニュアルの活用
- 業務の進行状況、使用ツール、連絡先などを簡易マニュアルにまとめる
- デジタル共有(社内クラウド・チャットピン留め)で常時アクセス可能にする
まとめ
てんかんのある人も、正しい知識と安全管理の体制があれば、多くの業務で十分に活躍できます。
企業が必要なのは、特別な設備や大きな投資ではなく、以下の3つです。
- 発作時の対応方法と救急要請基準の周知
- 本人の特性に応じた業務配置・勤務形態の調整
- 制度活用と社内文化の醸成
合理的配慮を組み込み、偏見のない職場環境を作ることで、企業も多様な人材を活かし、組織の力を高めることが可能です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









