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半数の中小企業が未達成――障害者雇用のリアルと今後の課題

この記事の内容
はじめに

日本では「障害者雇用促進法」により、企業には障害者を一定割合以上雇用する義務が課せられています。しかし現実には、中小企業の約半数が法定雇用率を満たせていない状況です。
「どうすれば採用できるのか分からない」「任せられる仕事がない」「教育やフォローをする余裕がない」――こうした声は多くの中小企業から聞かれます。
このまま対策を取らなければ、法定雇用率の引き上げや罰則強化により、経営リスクが増す可能性もあります。さらに、少子高齢化による人材不足が進む中で、障害者雇用を後回しにすることは、企業にとって大きな機会損失になりかねません。
本記事では、
- 中小企業が直面している障害者雇用の「リアル」
- 雇用が進まない背景と課題
- 具体的な採用・定着の工夫
- 今後の展望
を解説しながら、「義務だから仕方なく」ではなく「戦力確保のチャンス」としての障害者雇用を考えるきっかけを提供します。
障害者雇用の現状と未達成率の背景
法定雇用率と中小企業の実態
2024年現在、民間企業の法定雇用率は 2.5% に設定され、2026年には 2.7% へ引き上げ予定です。大企業では達成率が7割を超える一方で、中小企業では未達成企業が約半数にのぼります。特に従業員数が100名未満の企業で顕著です。
業種ごとの達成度の違い
- 製造業:軽作業や検品などの切り出しは進む一方、安全面の懸念で雇用が難航する事例も。
- サービス業:接客や体力面の負担があり、定着率が課題。
- IT業界:在宅勤務やPC業務で相性が良いが、採用ノウハウ不足が障壁に。
中小企業ならではの課題
- 慢性的な人手不足で教育・フォローに人員を割けない
- 配慮にかかるコストや時間の不安
- 障害者雇用に関する知識不足
中小企業が障害者採用で直面する課題

採用方法の不透明さ
求人票をハローワークに出しても応募が来ない、民間媒体を使ってもマッチングしない――こうした声は少なくありません。特に中小企業では、採用担当者が障害者雇用に特化したノウハウを持っていないため、どの求人媒体が有効なのか、どのように求人情報を書けば応募が集まるのかが分からないケースが多いのです。その結果、せっかく求人を出しても「応募ゼロ」のまま終わってしまうことも珍しくありません。
配慮事項への理解不足
障害者雇用を検討しても、「勤務時間の調整はどこまで必要か」「通院や体調変動にどう対応すべきか」が分からない企業は多いのが現実です。制度上は合理的配慮が求められていますが、「配慮=特別待遇」と誤解されるケースもあります。必要な配慮を把握していないと、面接時点で不安を抱かれ、応募や入社を辞退されることもあります。
業務の切り出しが難しい
「うちには任せられる仕事がない」と考える企業は少なくありません。しかし実際には、既存社員が抱えている雑務を切り出したり、作業工程を細分化したりすることで、十分に任せられる仕事は存在します。問題は、業務を可視化し整理する時間や余裕がないことです。そのため「適した仕事が見つからない」という思い込みが、採用の大きな壁になっています。
社内の受け入れ体制不足
採用できたとしても、社内に障害者を支援できる上司や同僚がいない場合、孤立感から早期離職につながってしまいます。特に中小企業では「専任の教育係」を配置する余裕がなく、結果的にフォロー不足になりがちです。また、職場全体に障害理解が浸透していないと、周囲の協力が得られず、働きやすい環境が整いません。
採用を進めるための手法
求人媒体・エージェント・支援機関の活用
民間の転職エージェント、障害者専門求人サイト、支援機関のサポートを併用することで、応募の幅が広がります。
合同面接会やインターンシップ
短期間でも職場体験の機会を設けることで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
ハローワーク・地域障害者職業センターとの連携
行政機関との連携はコストがかからず、中小企業にとって特に有効です。
採用前実習(トライアル雇用)の効果
実際に働いてもらい、適性を確認できるため、採用後の定着率が大幅に高まります。
業務の切り出しとマッチングの工夫
事務補助業務
データ入力、ファイリング、書類整理など、短時間でも戦力になる業務が多く存在します。
製造業での軽作業
検品・梱包・部品の組み立て補助は、障害の有無に関わらず取り組みやすい業務です。
IT・クリエイティブ分野
ソフトウェアテストや簡単なデザイン補助など、リモートワークとも相性が良い分野です。
社内業務の再分配で新しい仕事を創出
既存社員が抱えている雑務を切り出し、新しい役割を作り出すことも可能です。
実例:中小企業での成功事例
ある製造業の会社では、検品・梱包を切り出し、障害者を2名採用。結果、他の社員は専門業務に集中でき、生産性が向上しました。
中小企業が障害者雇用を成功させるための工夫
ジョブコーチ・外部支援者の活用
専門家が職場に入り、本人と企業の橋渡しを行うことで不安が大幅に軽減されます。
社内教育(障害理解研修)
上司や同僚に向けた研修を行えば、配慮が「特別扱い」ではなく「当然の取り組み」として浸透します。
働きやすい職場環境づくり
時差出勤・在宅勤務・フレックス勤務を導入することで、多様な働き方に対応できます。
小さな業務から始める
いきなりフルタイム雇用を目指す必要はありません。週数日・短時間から始め、徐々に範囲を広げていくのが現実的です。
今後の課題と展望

少子高齢化と人材不足
日本は少子高齢化が急速に進んでおり、今後はさらに労働人口が減少していきます。中小企業にとって「人材の確保」は経営存続に直結する大きな課題です。その中で、障害者雇用は単なる法的義務ではなく、貴重な労働力を確保するための重要な戦略となります。特に、地元で長く働きたいと考える障害者人材は、中小企業の地域密着型経営とも親和性が高いといえるでしょう。
ICT・DX活用による新しい雇用機会
近年はテレワークやクラウドツールの普及により、場所や時間に縛られない働き方が可能になっています。通勤が難しい方でも在宅勤務で戦力化できるため、これまで雇用の機会が限られていた障害者に新しい選択肢が広がっています。さらに、AIやRPAなどのデジタルツールを活用することで、業務を切り出しやすくなり、障害の特性に合わせた仕事設計が可能になります。
定着率を上げる仕組みづくり
採用だけでなく、その後の定着が大きな課題です。離職率が高ければ、採用コストや教育コストが無駄になり、企業の負担が増えます。そのためには、定期的な面談や相談窓口の設置、ジョブコーチや外部支援機関の活用など、フォローアップ体制を整えることが欠かせません。また、障害理解研修を通じて社内の意識を高めることも、長期的な定着につながります。
法定雇用率引き上げへの対応
政府は今後も段階的に法定雇用率を引き上げる方針を示しています。対応を先送りすればするほど、採用が難しくなり、結果的に企業にとって大きなリスクとなります。逆に、早い段階で取り組んだ企業は、社内ノウハウの蓄積・採用チャネルの拡大・職場環境の改善といったメリットを享受できます。法改正を待つのではなく、積極的に準備を進めることが、中小企業にとって生き残り戦略となるのです。
まとめ
中小企業にとって障害者雇用は、単なる「義務」や「コスト」ではなく、人材確保と組織の成長につながる大きなチャンスです。
確かに、採用方法がわからない、業務の切り出しが難しい、社内の受け入れ体制が整っていない――といった課題は存在します。しかし、求人媒体や支援機関の活用、ジョブコーチの導入、社内研修や相談窓口の整備といった工夫を積み重ねることで、その壁は乗り越えられます。
さらに、AIやRPAといったデジタルツールを活用すれば、業務の可視化・標準化が進み、「人に任せられるタスク」と「システムで処理できるタスク」の線引きが明確になります。これにより、障害特性に合わせた業務設計が可能になり、短時間勤務や在宅勤務など柔軟な働き方の実現にもつながります。
今後は法定雇用率の引き上げや人材不足の加速が見込まれ、障害者雇用は避けて通れないテーマです。早期に取り組んだ企業ほど、社内ノウハウを蓄積し、働きやすい職場づくりを進めることで、採用競争においても優位に立てるでしょう。👉 「まずは小さな一歩から」――業務を見直し、切り出しやすい仕事から始めることが、障害者雇用成功への最短ルートです。未達成の壁を越えた先には、多様な人材が活躍し、組織がより強くなる未来が待っています。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。






