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大人のLD(学習障害)と向き合う|日常生活の工夫・職場での対応・支援活用法

この記事の内容
はじめに
近年、大人になってからLD(Learning Disabilities:学習障害)に気づく人が増えています。
学生時代は努力や周囲のサポートで学習上の困難をカバーできていた人でも、社会に出て多様な業務をこなす中で、自分の特性に改めて気づくケースがあります。
例えば、「文書を読むのが極端に遅い」「会議の議事録作成に時間がかかる」「数字の入力でミスが多い」など、業務に直結する課題が表面化することもあります。
こうした課題は本人の能力不足ではなく、脳の情報処理の特性によるものです。正しい理解と適切な工夫により、生活や仕事の質は大きく向上します。
大人のLDの特徴

学習より業務スキルへの影響
成人期のLDでは、学業よりも日常業務や職場でのパフォーマンスに影響が出やすくなります。
具体的には以下のようなケースがあります。
- 仕様書や契約書の読解に時間がかかる
- 数字やデータ入力でミスが頻発する
- 会議でのメモ取りや報告書作成が遅れる
これらは単なる「不得意分野」ではなく、脳の情報処理スピードや記憶の仕組みに関係しており、環境やツールの使い方次第で改善が可能です。
人間関係や自己評価の低下
業務でのミスや作業の遅れが続くと、上司や同僚からの誤解や評価低下につながり、自己肯定感を損なうことがあります。
また、「周囲と比べて自分は劣っているのでは」と感じ、人間関係を避けるようになるケースもあります。
こうした二次的な影響は、仕事だけでなく私生活にも広がるため、早期に対策を講じることが重要です。
対策例
- 特性や必要な配慮を職場と共有する
「事前に資料を受け取れると助かる」など、困りごとと解決策をセットで伝える。 - 定期的に上司と面談し、成果や改善点を明確にする
漠然とした評価ではなく、数値や具体的な行動でフィードバックをもらう。 - 得意分野での役割を増やす
苦手な業務ばかりでなく、強みを活かせる作業やプロジェクトに関わることで自信を回復できる。 - 社内外の相談窓口や支援機関を活用する
カウンセリングや就労支援を受けることで、客観的なアドバイスを得られる。
こうした工夫を組み合わせることで、職場での誤解や孤立を防ぎ、自己肯定感を保ちながら働き続けやすくなります。
日常生活での工夫

読み書き支援ツール
スマホやPCには、LDの特性に合った支援機能が数多く搭載されています。
- 音声読み上げ機能(画面上の文章を自動で読み上げ)
- 音声入力(文章を話すだけで自動変換)
- スペルチェック・予測変換(入力時の誤字を自動補正)
これらを活用すれば、読み書きの負担を大幅に減らすことができます。
予定・タスク管理のデジタル化
スケジュール帳や付箋だけでなく、Googleカレンダーやタスク管理アプリを使うことで、予定や作業の抜け漏れを防げます。
アラーム通知や色分け機能を組み合わせると、より視覚的に分かりやすくなります。
視覚化・色分けによる整理術
情報や作業を文字だけで管理するのではなく、色・形・アイコンで分類すると整理がしやすくなります。
- ファイルフォルダを色別に分ける
- 手順書に写真や図解を入れる
- カレンダーの予定を内容ごとに色分けする
こうした「見える化」は、作業効率を上げるだけでなく、ストレス軽減にもつながります。
職場での対応

配慮事項の共有
職場で安心して働くためには、自分の特性や必要な配慮を上司や同僚と共有することが大切です。
ただし、漠然と「苦手です」と伝えるよりも、状況・理由・改善案をセットで伝えると理解を得やすくなります。
具体例
- 「文章を読むのに時間がかかるため、会議の前日までに資料を共有いただけると助かります」
- 「口頭での指示は聞き漏れがあるため、簡単なメモやメールでも送っていただけると正確に対応できます」
- 「複数のタスクを並行すると混乱しやすいので、優先順位を明確にしていただけると助かります」
このように「困難の内容」と「改善方法」を一緒に提示することで、相手も配慮しやすくなります。
業務分担の工夫
苦手な業務をすべて避けるのではなく、得意分野を活かした分担でチーム全体の効率を上げられます。
LDのある人は、文章や数値処理は苦手でも、接客や現場作業、創造的なアイデア出しなどで力を発揮できるケースが多くあります。
具体例
- 資料作成や数字管理は同僚にお願いし、その代わりに顧客対応や現場チェックを担当する
- 長文の報告書は他のメンバーが作成し、LD当事者は図解やレイアウトを担当する
- 会議での議事録は他の人がまとめ、代わりに企画案やデザイン面で貢献する
得意分野で成果を出すことで、チーム内での信頼も高まり、苦手分野への理解も得やすくなります。
成果評価の基準明確化
曖昧な評価基準は、LDのある人にとって混乱のもとになります。
「どの状態が完成と見なされるのか」「何を優先すべきか」が分からないと、必要以上に時間をかけてしまうこともあります。
改善例
- 「資料は3ページ以内で、グラフを必ず入れる」など、形式や分量のルールを明確にする
- 「納期までに70%完成すれば合格。その後の修正は別日に行う」と段階ごとの目標を設定する
- 評価ポイント(正確性・スピード・見やすさなど)を事前に共有する
こうした基準の明確化は、業務の見通しを立てやすくするだけでなく、納期遅延や作業のやり直しを減らす効果もあります。
セルフケア
ストレスマネジメント
大人のLD(学習障害)を抱える人にとって、日常や職場でのストレスは、特性そのものよりも大きな負担になることがあります。
例えば、急なスケジュール変更やマルチタスク、長時間の集中作業は特にストレス要因になりやすいです。
ストレスを軽減するには、まず「ストレス源を特定」し、「対処できる部分から改善」することが重要です。
- 業務量の見直し
納期やタスクを一度に抱えすぎないよう、上司に優先順位を確認したり、作業を小分けにする。
例:週単位の納期を1日ごとの小目標に分ける。 - 休憩のリズム作り
集中が切れる前に短時間の休憩を取る。ポモドーロ・テクニック(25分作業+5分休憩)や、50分作業+10分休憩などが効果的。
例:午前中は50分ごとに席を立ち、ストレッチや水分補給を行う。 - リラクゼーション法
深呼吸・軽いストレッチ・散歩・好きな音楽やアロマなどで気分を切り替える。
例:会議の前に3回深呼吸して緊張を和らげる、昼休みに外を5分歩く。 - 作業の組み合わせ
苦手な作業は得意な作業と交互に行うことで、精神的な負担を減らせる。
例:経理データ入力(苦手)→商品の写真整理(得意)→レポート修正(苦手)という順番で作業する。
成功体験を積み重ねる方法
自己肯定感を保つためには、小さな成功体験を日常的に積み重ねることが効果的です。特にLDのある人は、努力しても結果が見えにくいと感じやすいため、「見える形の達成感」を意識的に作ることが大切です。
- 1日のタスクを細分化し、完了ごとにチェックする
大きな仕事を小さなステップに分け、完了ごとにチェックを入れる。
例:「報告書作成」ではなく、「資料集め」「構成作成」「文章化」「最終確認」の4段階に分ける。 - 得意分野での成果や評価を記録する
上司や同僚からの褒め言葉、売上アップ、納期短縮など、自分の成果を日記やアプリで保存する。
例:プロジェクトの提案が採用されたときの経緯や感想をメモ。 - 周囲からのポジティブなフィードバックを残す
「ありがとう」「助かったよ」という言葉をメモ帳やスマホに記録。落ち込んだときの心の支えになる。
例:Slackやメールで届いた感謝メッセージをスクショしてフォルダ保存。
こうした「達成感の可視化」は、モチベーション維持だけでなく、困難に直面したときの「自分はできる」という感覚を呼び戻すきっかけになります。
支援制度
自立支援医療制度
医療費の自己負担を原則1割に軽減できる制度で、通院治療やカウンセリングが継続しやすくなります。LD単独では対象外となる場合がありますが、ADHDやASDなどの併存症状がある場合は対象になることがあります。
就労移行支援
障害のある人が一般企業で働くために必要なスキルを学べるサービスです。
ビジネスマナー、パソコンスキル、職場実習などを通じて、就職準備から職場定着までをサポートしてくれます。LDに特化した学習方法を提案してくれる事業所もあります。
障害年金(重度の場合)
LD単独での受給は難しい場合がありますが、症状が重く日常生活や就労に著しい制限がある場合、障害年金が支給される可能性があります。
申請には医師の診断書や日常生活の状況を示す書類が必要で、専門家に相談することで手続きがスムーズになります。
まとめ 〜当事者へのメッセージ〜
大人になってからLDに気づくことは珍しくありません。
学生時代は何とかやり過ごせたことが、社会に出て業務の幅が広がる中で負担となり、自分を責めてしまう人もいます。
しかし、これは努力不足ではなく、情報処理の仕組みが周囲と異なるだけのことです。
工夫と支援を組み合わせれば、日常生活や仕事の質は確実に向上します。
あなたが苦手とする部分はツールや環境で補い、得意分野を武器にすれば、職場や社会で大きな力を発揮できます。無理をせず、少しずつで構いません。支援制度や周囲の理解を活用しながら、自分らしい働き方と生活スタイルを築いていきましょう。
そして、あなたの経験は、同じ悩みを持つ誰かの希望にもなります。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









