2025/08/18
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性同一性障害のある人が働きやすい職場とは?就職・転職・職場での工夫まとめ

はじめに

性同一性障害(性別違和)を抱える人にとって、「働く」という行為は生活の基盤であると同時に、多くの壁に直面する場面でもあります。
戸籍上の性と自認する性が異なることによって、日常生活ではさまざまな困難があり、職場ではさらに「性別に基づいた制度や慣習」が存在するため、強いストレスにつながることも少なくありません。

  • 書類や健康診断で戸籍上の性別を強制される
  • 制服やトイレの使用で選択肢がなく葛藤を抱える
  • 同僚や上司の理解不足により誤解や偏見を受ける

本記事では、性同一性障害のある人が働くうえで直面しやすい課題と、向いている仕事・職場環境、逆に避けたほうがよい環境について詳しく解説します。就職・転職活動や働き方を考える際の参考になれば幸いです。


職場での課題

戸籍上の性と職場での性別

多くの企業では、入社書類や給与・社会保険の手続きに戸籍上の性別を記載する必要があります。本人の性自認が戸籍と異なる場合、書類上の性別と職場での呼称や振る舞いに矛盾が生じることがあります。

  • 戸籍上は「男性」だが、本人は「女性」として生活している
  • 職場では「本名」しか認められず、日常的に望まない名前で呼ばれる
  • 健康診断で男女別の項目を強制され、強い苦痛を伴う

このような状況は心理的負担だけでなく、就業継続に影響を及ぼす要因となります。近年、一部の企業では「通称名の使用」や「性自認に基づいた性別表記」を認める動きもあり、ダイバーシティ施策として注目されています。


制服・トイレ・更衣室問題(具体的な企業の取り組み事例)

制服やトイレ・更衣室の利用は、性別違和を抱える人にとって特に大きな課題です。

  • 制服:男女で分かれた制服を強制され、自認する性に合った服装が認められない
  • トイレ:男女別しかなく、どちらを使っても不快感や周囲の視線が気になる
  • 更衣室:異性として見られることへの恐怖や羞恥心が強く、利用が困難

このような問題は日常的に繰り返されるため、積み重なると心身に大きなストレスをもたらします。


実際の企業での対策例

近年は、ダイバーシティ推進を重視する企業を中心に、以下のような取り組みが進められています。

  • 制服の選択制導入
    • 例:大手航空会社や百貨店では、従来男女で分かれていた制服を「スカート・パンツ自由選択制」に切り替え。性別ではなく「個人の希望」に基づいて選べるようになり、当事者が安心して勤務できる環境を整備しています。
  • ジェンダーレストイレの設置
    • 例:外資系IT企業(Google、Apple日本法人など)や国内大手企業の新本社ビルでは、男女区別をしない「オールジェンダートイレ」「誰でもトイレ」を設置。利用者全員が安心して使用できる環境をつくっています。
  • 更衣室の個室化・柔軟な運用
    • 例:アパレル・サービス業界の一部企業では、更衣室の「個室利用」や「本人の希望に応じたロッカー配置」を実施。性別で区切るのではなく、「プライバシー確保」を重視した設計に切り替えています。
  • 私服勤務の拡大
    • 例:ITベンチャーや外資系企業では、制服を廃止し、服装自由を基本とすることで性別による制約をなくしている。

現状の課題

こうした取り組みは確実に広がりつつありますが、まだ「大企業や一部業界に限られている」というのが現状です。中小企業や伝統的な業界では、制服や更衣室が性別で厳格に分けられているケースが依然として多く、当事者が配慮を求めにくい雰囲気が残っています。

そのため、**「誰にでも使いやすい仕組み=ユニバーサルデザイン」**として整えることが、企業全体の働きやすさにつながるという視点が重要です。


同僚・上司の理解不足(改善策・事例と効果)

性別違和についての社会的認知は広がりつつありますが、依然として「知識不足」や「偏見」が根強く残っています。

  • 「趣味でやっているだけ」と誤解される
  • 「仕事に支障が出るのでは」と能力と関係ない評価をされる
  • 故意ではなくても、誤った呼称や扱いを受ける

こうした理解不足は、当事者が「孤立している」と感じる要因となり、精神的な負担を増大させます。
逆に、上司や同僚が性自認を尊重し、日常的に配慮を示してくれるだけで、当事者が安心して成果に集中できる環境をつくることができます。


改善・対策の方向性と成果

  1. LGBTQ研修・ダイバーシティ研修
    • 多くの大手企業で導入されており、特に管理職が「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」を理解する効果が大きい。
    • 研修後に「誤った呼称や不適切な発言が減った」「社員が相談しやすくなった」という声が上がり、職場の心理的安全性が向上したと報告されています。
  2. 社内ガイドライン・マニュアル整備
    • 例:人事部が「性自認に関する対応マニュアル」を作成し、呼称・トイレ利用・相談窓口の運用を明確化。
    • これにより、現場での「どう対応すべきか分からない」という迷いがなくなり、現場の混乱やトラブルが激減
  3. 通称名・呼称の尊重
    • 社員証やメールアドレスに本人希望の名前を反映。
    • あるIT企業では導入後、当事者から「初めて職場で“自分”として扱われている実感が持てた」との声が寄せられ、離職率が低下したという報告もあります。
  4. 相談窓口やダイバーシティ担当設置
    • 相談しやすい環境を整えたことで、「困った時に一人で抱え込まずに済む」「人事に相談して制服や勤務環境を調整してもらえた」などの実例が出ています。
    • 結果的に、メンタル不調による休職や早期離職の防止につながっています。
  5. 小さな日常配慮の積み重ね
    • 「○○さん」と性別に依存しない呼び方を徹底する、雑談で不用意に性別ネタを振らないなど。
    • 当事者からは「普通に同僚として扱ってもらえるだけで、仕事に集中できる」という声が多く、パフォーマンスの向上につながっています。

実際の企業の取り組み例と効果

  • 日本IBM
    全社員研修にLGBTQプログラムを導入。社内の通称名使用を認めたことで、社員アンケートでは「安心して働ける」と回答した割合が大幅に増加。
  • 三井住友銀行
    相談窓口の設置や性自認に応じた服装を認める制度を整備。導入後、トランスジェンダー当事者から「職場に自分の居場所ができた」との声があり、人材定着率が向上
  • スターバックスジャパン
    制服をパンツ・スカート自由に選べるよう変更。従業員のアンケートでは「職場で自己表現できる安心感がある」との回答が増え、従業員満足度(ES)が向上

まとめると、「理解不足をなくす取り組み」=当事者の安心感の向上 → 離職率の低下・生産性の向上・従業員満足度の改善 という流れが見えてきます。
これは単なる「配慮」ではなく、企業全体の成果に直結する「投資」であるとも言えます。


向いている仕事・職場環境(補足:一般的な職種の場合)

性別に関わらず成果が評価されやすい職種や、個人の裁量で進められる仕事は、性別違和を抱える人にとって働きやすい傾向があります。

  • ITエンジニアやWebデザイナー:スキルベースで評価される仕事
  • 研究職やライター:性別より成果物が重視される職種
  • 在宅ワークやリモート業務が可能な職種:服装や外見の制約が少ない

こうした仕事は、職場での服装や人間関係に制約が少なく、安心して能力を発揮しやすい環境です。


では「一般的な事務職・営業職・製造職」はどうか?

実際には、性別違和を抱える人が就いている職種の多くは事務職や営業職、メーカーの製造関連業務です。これらが必ずしも「向いていない」わけではなく、以下のように企業の環境や理解度によって大きく変わります。

  • 事務職
    • 書類や会議などで「戸籍上の名前」を求められるケースはあるものの、服装が自由な会社や、通称名の使用を認める企業ではストレスなく働ける。
    • 大手企業ではすでに「通称名での社内利用」や「制服の選択制」を導入しているところが増えており、違和感のない就労が可能になってきています。
  • 営業職
    • 顧客対応で「外見」や「性別らしい振る舞い」を求められることがあるため、職場や業界の風土によっては負担が大きい場合も。
    • ただし、ダイバーシティ推進を掲げる企業(外資系・大手メーカー・IT関連など)では、営業職でも「性自認に合わせた服装や呼称」で活動する社員が増えており、成果に直結する評価制度によって働きやすさが確保されている。
  • 製造職(工場勤務など)
    • 作業服やユニフォームが多く、性別による差が少ないため、意外と就労しやすいケースもあります。
    • ただし、更衣室の使用や健康診断の場面では性別区分が障壁になることがあり、企業側の配慮(個室更衣室の用意など)が求められます。

ダイバーシティに取り組む企業での実例

  • 大手メーカー(製造業):工場勤務のトランスジェンダー社員に対し、個室更衣室を用意し、職場の同僚に事前研修を実施。結果、周囲の理解が進み、本人も「安心して業務に集中できる」と報告。
  • 大手金融機関・IT企業:事務職・営業職で「性自認に沿った制服・服装」を選択可能に。顧客にも社内にも通称名を使用できるため、違和感なく仕事に取り組める。

ポイントまとめ

  • 一般的な職種(事務・営業・製造)が「向いていない」のではなく、環境や企業の理解度によって働きやすさが大きく変わる
  • ダイバーシティ施策が進んでいる大手企業では、事務職や営業職でも違和感なく働ける実例が増えている
  • 製造業はユニフォーム制のため性差が出にくく、工夫次第で安心して働ける場合もある

ダイバーシティを重視する企業

ダイバーシティ推進を明確に掲げる企業は、性自認や性的指向への理解が比較的高い傾向があります。

  • LGBT研修を実施している
  • 人事制度で「通称名の使用」を認めている
  • ジェンダーレストイレやユニバーサルデザインの職場環境を整備している

例えば、外資系企業や大手IT企業ではこうした取り組みが進んでおり、採用時に「ダイバーシティ&インクルージョン方針」を確認できるケースも増えています。


在宅勤務・フリーランスの働き方

近年普及した在宅勤務やフリーランスという働き方は、性別に関する制約を大幅に減らす選択肢です。

  • 自宅で働くため、服装や外見を気にせずに済む
  • 契約ベースの仕事では、性別ではなくスキルや成果が重視される
  • 自分のペースで働けるため、精神的な負担が少ない

Webライティング、動画編集、プログラミング、デザインなど、オンラインで完結できる仕事は、性別違和を抱える人が安心して取り組める分野の一つです。


避けたほうがよい職場環境

性別役割が厳格な職種

警察官・自衛官・介護職など、一部の職種では性別ごとに役割が明確に分かれている場合があります。性別に基づいた勤務割り当てや体力試験が課されるため、自認する性と一致しない状況に強いストレスを抱える可能性があります。


外見や接客で性別が重視される職場

接客業や販売業では「外見」や「性別による振る舞い」が重視されることが多くあります。

  • アパレル販売で「男性スタッフらしい振る舞い」を求められる
  • 飲食店で「女性らしい接客」を強いられる
  • 美容業界で性別に基づいたイメージを押し付けられる

こうした職場は、本人の性自認が尊重されにくく、長期的には精神的な負担が大きくなりやすいため注意が必要です。

職場での工夫

自己開示のタイミング(クローズかオープンか)

性同一性障害(性別違和)のある人が就労する場合、

  • クローズ就労(性別違和を伝えず一般雇用で働く)
  • オープン就労(面接・入社時に自己開示する)

大きくこの2つに分かれます。どちらを選ぶかは本人の状況や希望する働き方、企業の受け入れ体制によって異なります。


障害者雇用枠で就労する場合

  • 面接時に必ず自己開示するため、企業も「配慮が必要な前提」で受け入れることになります。
  • 配慮事項(制服・トイレ・通称名など)を明確に伝えることで、入社後のトラブルを防ぎやすい。
  • ただし「性別違和そのもの」はICD-11では障害に含まれないため、対象になるのは二次的な精神疾患(うつ病や不安障害など)を併発している場合が多いのが現状です。

クローズで一般就労する場合

  • 面接時は通常の面接になるため、本人が伝えるかどうかを判断する必要があります。
  • 制服・更衣室・健康診断など、実際の勤務で支障が出ることが想定される場合は、面接時に伝えた方が安心。
  • 一方で、仕事内容に直接影響しない場合は、入社後に信頼できる上司や人事担当にのみ伝えるという方法もあります。

実際の声としては、

  • 「最初は伝えずに入社し、職場に慣れてから打ち明けた」
  • 「面接時に伝えて不採用になるリスクを避けたかった」
    というケースも多くあります。

ベストなタイミングは?

  • 制服や勤務条件に直結する場合 → 面接時
  • 仕事内容に直結しない場合 → 入社後、信頼できる上司や人事に相談
  • 職場文化が未知数の場合 → 無理に早期開示せず、状況を見極める

本人にとっては「自分の希望を尊重してもらえる環境か」を見極めるのが何よりも大切です。


企業側の受け止め方

実際、大手でダイバーシティに取り組む企業では、総合職や事務職であっても「通称名の使用」「性自認に基づいた服装・トイレ利用」を認める事例が増えています。
そのため、「伝えたら不利になる」よりも「伝えたほうが働きやすい」環境が広がりつつあるのも事実です。


合理的配慮を求める方法

日本では、障害者差別解消法をベースに「合理的配慮」という考え方が浸透しています。性別違和は法律上「障害者雇用」に必ずしも該当しませんが、職場での配慮を求める際にはこの枠組みを参考にできます。

  • 制服の選択制を希望する
  • トイレや更衣室の利用について相談する
  • 通称名での呼称やメールアドレス表記を認めてもらう

求める際には、「自分が働きやすくなることで仕事の成果も上げられる」 という点を明確に伝えることが効果的です。単なるお願いではなく「職場にとってもメリットがある配慮」として説明すると、受け入れられやすくなります。


支援者・ジョブコーチの活用

「ジョブコーチ制度」は本来、障害者雇用で活用される制度ですが、実際には性別違和を抱える人が職場でスムーズに働くための伴走支援にも役立つケースがあります。

  • 職場内でのトラブルや誤解を第三者が調整
  • 当事者の希望を企業に伝えるサポート
  • ストレス軽減や働き方改善のアドバイス

ジョブコーチを利用することで、「本人が直接伝えにくい配慮事項」を橋渡ししてもらえるため、職場定着率の向上につながります。


支援制度と情報源

LGBTQ+対応の就労支援団体

日本でもLGBTQ+に特化した就労支援団体が増えています。

  • 虹色ダイバーシティ:企業向け研修やLGBTQ+の就労支援を実施
  • JobRainbow:LGBTフレンドリー企業の求人情報を提供
  • NPO法人や地域団体:交流会やカウンセリングを通じて孤立を防ぐサポート

こうした団体を活用することで、情報不足や孤独感を解消し、安心して就職活動を進められます。


ハローワークの活用

ハローワークは公的機関であり、性別違和を抱える人にも利用しやすい仕組みが整いつつあります。

  • 通称名を使って相談できる窓口がある
  • 就労支援プログラムにダイバーシティの視点を取り入れている
  • 求人票に「LGBTQフレンドリー」と記載する企業も増加

特に「ハローワーク障害者専門窓口」では、直接的に障害者雇用枠に該当しなくても、事情を理解した相談員に対応してもらえる場合があります。


障害者雇用との違い

性同一性障害(性別違和)はICD-11で「精神疾患」ではなく「性別不一致」と位置づけられ、必ずしも障害者雇用枠の対象には含まれません。

  • 障害者手帳が取得できない場合が多い
  • 障害者雇用制度を利用できないことが多い
  • ただし、性別違和に伴ってうつ病や不安障害を併発した場合は、精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠を活用できるケースもある

つまり「直接的に制度対象になるわけではないが、必要に応じて他の制度を組み合わせる」ことが現実的な対応です。


まとめ

性同一性障害(性別違和)のある人が安心して働くためには、職場の理解と具体的な配慮が欠かせません。制服やトイレの利用、呼称や書類の扱いといった日常的な要素が、仕事の成果に大きく影響するからです。

一方で、LGBTQ+対応の就労支援団体や公的制度、そしてダイバーシティを掲げる企業が増えている今、選べる選択肢は確実に広がりつつあります。


メッセージ

もし今、職場で違和感や働きづらさを感じているなら、それは「あなたの努力不足」ではありません。社会の仕組みや理解がまだ十分に整っていないことが原因です。

安心して働ける場所は必ず存在しますし、支援してくれる団体や仲間も全国にいます。就職・転職活動では「仕事内容」だけでなく「企業の文化やダイバーシティへの姿勢」にも注目してください。

あなたが自分らしく働ける環境でこそ、仕事の成果を最大限に発揮できるのです。焦らず、自分に合った環境を探していきましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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