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発達障害あるある|「頑張りすぎて次の仕事がつらい」職場での悪循環

はじめに
発達障害(ASD・ADHD)を持つ人が職場で直面しやすい課題のひとつが、「頑張りすぎて続かない」という悪循環です。入社当初や新しい業務を任されたとき、周囲の期待に応えようと全力で頑張るものの、その負荷が積み重なり、次のタスクに取りかかる頃には体力・気力ともに消耗してしまうケースは少なくありません。
本人としては「迷惑をかけたくない」「もっと成果を出したい」と思って行動しているのに、結果的に休職や離職につながってしまうことも。これは単なる努力不足ではなく、発達障害の特性に由来する部分が大きいのです。
この記事では、発達障害のある人がなぜ「頑張りすぎ」てしまうのか、その背景や職場で起こりやすい悪循環を具体的に解説します。そのうえで、本人ができる工夫や企業側の配慮、実際の事例を交えながら、どうすれば持続的に働けるのかを考えていきます。
発達障害の人が「頑張りすぎ」てしまう理由

ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDの特性を持つ人は、強い完璧主義やこだわりを持っていることが多いです。
例えば報告書の作成ひとつを取っても、「誤字を一切なくす」「レイアウトの余白を均一に整える」など、細部に強いこだわりを見せる傾向があります。こうしたこだわり自体は仕事の正確性や品質の高さにつながる一方で、気づかないうちに時間をかけすぎてしまい、他の業務に影響が出ることも少なくありません。
また、周囲のペースやスピード感に合わせようと無理をするケースもあります。たとえば「みんな残業しているから自分も合わせなければ」と思い、体調を顧みずに長時間働き続けてしまうのです。その結果、過労や疲労が蓄積し、体調不良や休職につながるリスクが高まります。
さらに、ASD特有の「切り替えの苦手さ」も影響します。途中で業務を中断することに強いストレスを感じるため、休憩を取らずに作業を続けてしまい、気づけば限界を超えてしまうこともあります。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDの人は「興味ややる気のスイッチが入ると、爆発的な集中力を発揮する」という特性があります。新しい仕事や自分が関心を持てる課題では、周囲も驚くほどのスピードと熱量で成果を出すことができるのです。
しかし、この集中力は長時間持続するものではなく、短期間でエネルギーを使い切ってしまう傾向があります。急激に疲労が表れると次のタスクに取り組めず、「昨日までは頑張れたのに今日は動けない」といった極端な差が出やすくなります。
この「アクセルとブレーキの差の大きさ」が、本人にとっても職場にとっても大きな負担になります。本人は「やる気がないのではなく、本当に疲れて動けない」のですが、周囲には「ムラがある」「気分で仕事をしている」と誤解されやすいのです。
共通する背景
ASD・ADHDに共通しているのは、「周囲に迷惑をかけたくない」という強い思いです。
「自分だけペースを落としたらチームに迷惑をかけてしまうのではないか」「期待を裏切りたくない」と考えるあまり、限界を超えてでも頑張ろうとしてしまいます。
しかし、弱音を吐けずに抱え込むことで、結果的に体調を崩し、長期的に働けなくなるケースも少なくありません。本人にとっては「最初はできていたのに、続けられなくなってしまった」という挫折感につながり、職場にとっても「頼りになると思ったのに、だんだん仕事ができなくなった」という失望感を与えることになります。
つまり、発達障害を持つ人が頑張りすぎてしまう背景には、「特性による集中やこだわり」と「周囲への気遣い」が複雑に絡み合っているのです。
職場で起こる「悪循環」の具体例
短期的に成果 → 長期的にダウン
入社直後や新しい業務に配属されたときは、評価が高く「仕事ができる人」と見られます。しかし数か月後には体調不良や疲労で欠勤が増え、「続かない人」という評価に変わってしまうケースがあります。
このギャップが本人の自信を失わせ、職場からの期待も下がってしまいます。
無理がきかない → 自己評価が下がる
頑張りすぎた反動で次のタスクに取り組めなくなると、「やっぱり自分はダメだ」と落ち込むことがあります。これが積み重なると、うつ病や不安障害などの二次障害につながるリスクが高まります。
成果を出しても続かない、続けたいのに体が動かない――このギャップこそが大きなストレスです。
周囲の誤解
上司や同僚が「最初はできていたのに、今は怠けている」と誤解するケースも少なくありません。実際には本人が限界まで頑張ってきた結果であっても、周囲の理解が不足していると不当な評価につながり、さらに働きづらさを感じることになります。
本人ができる対策

自分のペースを知る
まず大切なのは、自分の集中力や体力の限界を知ることです。
「一日どれくらい作業を続けられるのか」「何時間おきに休憩を挟むと効率が落ちないか」といった目安を把握することで、無理のないスケジュールを組むことができます。
ただし、発達障害を持つ人はこの「限界を客観的に把握すること」が難しいケースも多いです。夢中になると時間や疲労を忘れて没頭し、気づいたときにはエネルギーを使い果たして動けなくなってしまうことがあります。
そのため、タイマーやスケジュールアプリを活用し、「時間になったら強制的に休憩する仕組み」を作ることが効果的です。また、自分一人では限界を見極めにくい場合は、家族や同僚、ジョブコーチなど第三者に「声をかけてもらう仕組み」を取り入れると安心です。
適切に力を抜く習慣
「常に全力」で取り組もうとすると、どうしても長続きしません。むしろ「70%くらいの力で取り組む」くらいが、安定したパフォーマンスにつながります。
例えば、資料作成をするときに「誤字ゼロ・デザイン完璧」を目指すのではなく、「伝わる文章であればOK」と基準を設定することで、自分へのプレッシャーを減らせます。チェックリストを「必須」と「できれば」に分けることも有効です。
力を抜くことは「手を抜くこと」ではなく、「エネルギーを温存して長く働き続けるための工夫」だと考えると良いでしょう。
体調管理を優先
睡眠・食事・休憩を削ってまで働くと、必ず反動が訪れます。特に発達障害を持つ人は一度体調を崩すと回復までに時間がかかる傾向があり、結果的に長期間の欠勤や離職につながることもあります。
「疲れを感じる前に休む」「体調が落ちるサインを記録する」ことを習慣化することで、早めに対処できるようになります。たとえば「頭痛がしたら無理をせず帰宅」「集中が途切れたら5分休む」といった具体的なルールを決めておくと、自分でも管理しやすくなります。
職場・企業ができる配慮

タスクの見える化
発達障害のある社員は「全体像がつかみにくい」「優先順位を判断しにくい」といった特性を持つ場合があります。そのため、作業を細かく分け、進捗や期限を明示することが大切です。
例えば、漠然と「資料を作って」と伝えるのではなく、
- 「午前中にリサーチ」
- 「午後3時までに骨子を提出」
- 「明日中に完成版を確認」
といったように、段階的に区切ることで本人も安心して取り組めます。
また、ゴールを曖昧にせず「ここまでできればOK」と具体的に目安を示すことも重要です。チェックリストやタスク管理ツールを活用すれば、本人だけでなく上司も進捗を確認しやすくなり、認識のズレを防げます。
無理をしすぎない雰囲気づくり
「頑張りすぎてしまう」傾向を持つ発達障害の社員にとって、職場の雰囲気は非常に大きな影響を与えます。
- 「困ったら相談していい」
- 「全部一人で抱え込まなくていい」
といったメッセージを上司が日常的に伝えることで、安心して働ける文化が育ちます。
さらに、成果だけを評価するのではなく「安定して継続できていること」そのものを評価する仕組みも効果的です。例えば、短期的な売上や件数だけでなく「半年間無遅刻無欠勤で勤務継続」などを評価に加えることで、本人も安心して働けます。
ジョブコーチ・支援員の活用
外部のジョブコーチや支援員は、職場と本人の「橋渡し役」として重要な存在です。本人にとっては「自分の困りごとを代わりに伝えてくれる安心感」があり、企業にとっては「専門家から具体的な配慮方法を学べる」というメリットがあります。
例えば、
- 「タスクの分割の仕方」
- 「フィードバックの伝え方」
- 「疲れやすさへの配慮」
など、現場に即した改善策を提案してくれるため、誤解や摩擦を防ぎやすくなります。第三者が関わることで、本人も企業も「一人で抱え込まなくていい」と感じられ、就労が安定します。
また、ジョブコーチは定期的に職場を訪問するだけでなく、オンラインで相談できる場合もあり、負担の少ない形で活用することが可能です。
実際の事例紹介(エピソード形式)
事例① 入社直後に全力投球 → 3か月で体調を崩したケース
ある20代の男性は、新しい職場で「期待に応えたい」と毎日残業を続けました。入社直後は「仕事が早い」と高評価を受けていましたが、3か月後には体調を崩し、休職せざるを得なくなりました。本人は「頑張りすぎたのに評価が下がった」と大きなショックを受けました。
事例② 上司が業務を分割 → 安定して1年以上勤務継続
別のケースでは、上司が業務を小分けにし、タスクごとに進捗を確認できるようにしました。その結果、本人は「次にやることが明確で安心」と感じ、無理なく業務を続けることができました。結果的に1年以上安定して勤務を継続できています。
事例③ 「頑張りすぎる特性」を理解した本人がセルフケアを実践
30代女性の例では、「頑張りすぎて続かない」という自分の特性を理解したうえで、意識的に休憩を取り入れるようになりました。体調を崩す前にペースダウンする習慣を身につけたことで、職場でも安定した評価を得られるようになりました。
まとめ
発達障害のある人が「頑張りすぎて続かない」のは、決して怠けや努力不足ではなく、ASDやADHDといった特性によるものです。集中力やこだわりの強さが短期的には成果を生みますが、その一方で、体力や気力の限界を超えてしまい、次の仕事に取りかかれないという悪循環に陥りやすいのです。
この悪循環を防ぐためには、本人側のセルフケアと企業側の理解と配慮の両方が欠かせません。本人は「自分の限界を数値や仕組みで把握する」「完璧ではなく合格点を目指す」「体調管理を最優先にする」といった工夫が必要です。一方、企業は「タスクの見える化」「無理をしすぎない雰囲気づくり」「ジョブコーチなど第三者の活用」によって、長期的に安心して働ける環境を整えることが求められます。
「頑張りすぎない」ことは、手を抜くことではなく、長く力を発揮し続けるための戦略です。短期的な成果よりも「無理せず、安定して働き続けられること」が本人にとっても、職場にとっても最大の成果といえるでしょう。
発達障害を持つ方へ――あなたの強みは「続ける力」を育てることで、より輝きます。
企業や上司の方へ――理解と配慮は特別扱いではなく、すべての社員にとって働きやすい職場づくりにつながります。
「頑張りすぎない勇気」と「支える職場の仕組み」がそろえば、発達障害のある人も安心して活躍できる社会に近づいていきます。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







