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発達障害が原因で起こる“二次障害”とは?うつ・不安・自己否定を防ぐために大切なこと

この記事の内容
はじめに
「うつ病と診断されたが、実は発達障害が背景にあった」
「仕事や人間関係で失敗が続き、自信を失ってしまった」
こうした経験を抱える方の中には、発達障害の特性が影響して“心の不調”を引き起こしている場合があります。
それが「二次障害」と呼ばれるものです。
発達障害そのものは生まれつきの脳の特性であり、周囲の理解や適切な環境があれば、十分に社会で活躍することができます。しかし、支援を受けられずに無理を重ねてしまうと、「うつ病」や「不安障害」、「適応障害」などの二次的なメンタルヘルスの問題につながることも少なくありません。
この記事では、発達障害のある方が陥りやすい二次障害について、原因や背景、そして予防・対処のために知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
発達障害がある人が“生きづらさ”を感じやすい理由

発達障害をもつ方が社会の中で“生きづらさ”を感じやすいのには、いくつかの共通した背景があります。とくに、幼少期から大人になるまでの間に繰り返される「失敗体験」や「周囲とのズレ」は、心の負担として蓄積され、やがて二次障害を引き起こす引き金になることがあります。
1. 周囲と同じようにできないことが多い
発達障害のある方は、学校・職場・家庭などの場面で「他の人と同じように行動する」「求められた通りに動く」ことが難しい場合があります。
たとえば、
- 授業中にじっと座っていられない(ADHDの多動性・衝動性)
- 集団行動のルールを理解しづらい(ASDの社会性の特性)
- 指示を聞き漏らす、順番を間違える(ワーキングメモリの弱さ)
といった特性があると、どれだけ本人が努力しても、「できていない」と見なされてしまいます。
この「がんばっても報われない」体験が続くと、やがて自己肯定感が下がり、「自分はダメな人間だ」という思考に結びつきやすくなります。
2. ミスや指摘が多く、自己否定に陥る
発達障害の方は、ミスの原因が本人の努力不足ではなく“脳の特性”によるものであるにもかかわらず、周囲からは「もっと集中しろ」「やる気がない」と誤解されることが多いものです。
- ADHDの不注意特性による「ケアレスミス」
- ASDのこだわりからくる「優先順位のズレ」
- LD(学習障害)による「読み書きの困難」
などが重なり、小さな指摘や注意を日常的に受けることが続くと、本人は「自分は人より劣っている」と思い込むようになります。
このような自己否定が進行すると、やがて「何をやっても無駄だ」と感じて、意欲の低下や抑うつ的な状態に陥ってしまうことがあります。これも、二次障害の代表的なプロセスのひとつです。
3. 他者とのズレで孤立する
ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、相手の気持ちを汲み取ることや、場の空気を読むことが苦手な傾向があります。また、ADHDのある方も、思いついたことをすぐ口にしてしまうなど、「衝動性」が対人関係で問題になりやすい特性です。
結果として、
- 冗談が通じず「空気が読めない」と言われる
- 相手の話を遮ってしまい「自分勝手」と思われる
- 距離感がつかめず「人間関係が長続きしない」
といったトラブルが頻発します。これらは本人にとって「なぜうまくいかないのか分からない」まま関係が悪化していくため、大きなストレスとなります。
人間関係の失敗体験が重なることで、次第に他者との関わりを避けるようになり、孤独感や不安感、対人恐怖につながっていくケースも多く見られます。
発達障害から起こる“二次障害”とは?

発達障害そのものは脳の特性であり、個性のひとつです。しかし、その特性が原因で周囲とのズレや失敗を繰り返すと、精神的なダメージが蓄積され、「二次障害」と呼ばれる心の病気につながることがあります。
ここでは、発達障害が背景にあることで起こりやすい代表的な二次障害について、それぞれの症状や注意点を解説します。
うつ病・抑うつ状態
発達障害のある方が最も多く経験しやすい二次障害のひとつが「うつ状態」です。
- 物事に対する興味や関心がなくなる
- ずっと疲れている、朝起きられない
- 未来が見えず、生きる意味を感じられない
こうした状態に加え、「自分なんてどうせダメだ」「何をやっても失敗する」という強い自己否定感を抱くようになります。
発達障害の特性によって、
- 繰り返しミスをする
- 注意されることが多い
- 周囲から理解されにくい
といった経験が続くと、「努力しても報われない」という感覚が染みつき、やがて心が疲れ果ててしまいます。
その結果、抑うつ的な気分が慢性化し、日常生活に支障が出てしまうのです。
特に、責任感が強くまじめな人ほど「もっと頑張らなきゃ」と無理を重ねてしまい、深刻なうつ状態に陥るケースが多く見られます。
不安障害・対人恐怖・パニック障害
発達障害の特性が対人関係のトラブルや誤解を招き、それが「不安障害」や「対人恐怖」などにつながることもあります。
- 仕事中に注意されることが多く、「また怒られるかも」と常に不安になる
- 人の表情や言葉の裏を読み取るのが難しく、会話が怖くなる
- 電車や職場に行こうとするとパニック発作が起きる
このように、人と関わること自体が強いストレスになると、出社や外出が困難になったり、身体症状(動悸・めまい・吐き気など)が現れたりします。
とくにASD(自閉スペクトラム症)の方は、「相手の意図がわからない」という不安感を強く感じやすく、ADHDの方は「また失敗してしまうかも」という予期不安に襲われやすい傾向があります。
その結果、「人が怖い」「外に出るのがつらい」と感じてしまい、引きこもりがちになることも少なくありません。
強迫性障害・適応障害・PTSD的反応
見過ごされがちですが、発達障害のある方の中には、強迫性障害やPTSDのような症状を発症するケースもあります。
- 何度も確認しないと気がすまない(強迫観念・行動)
- 環境の変化に適応できず心身のバランスを崩す(適応障害)
- 過去に怒鳴られた記憶や、いじめ体験がフラッシュバックする(PTSD的反応)
こうした状態に共通しているのは、「常に緊張している」「完璧でいないと認められない」といったプレッシャーです。
ASDの特性による「こだわりの強さ」や「感覚過敏」が影響し、細部に過剰に反応してしまったり、トラウマ的な記憶から抜け出せなかったりする場合もあります。
さらに、「完璧にやらなければ怒られる」「失敗したら終わり」という極端な思考にとらわれてしまうと、精神的な負担が限界を超えやすくなります。
「まじめ」「がんばり屋」ほど注意が必要な理由
発達障害のある方の中には、自分の特性に気づかず、「努力すればできる」と信じてがんばり続けてしまう人が少なくありません。
一見ポジティブに思える姿勢ですが、実はこの「がんばりすぎ」が二次障害を引き起こす大きな要因になることがあります。
- 本当は苦手なことを無理に続けてしまう
- 周囲に助けを求められない
- 自分を責め続けて限界まで我慢してしまう
こうした傾向のある方ほど、突然メンタルが崩れてしまい、「もう何もできない」「働けない」と深刻な状態に陥ってしまうケースが見られます。
また、本人が特性に気づいていなかったり、周囲も「性格の問題」として受け止めていたりすることで、必要な支援にたどり着けず、孤立を深めてしまうこともあります。
自己理解と環境調整で防げることがある

発達障害の特性が原因で起こる“二次障害”は、早期に気づき、適切な対処や環境調整を行うことで防ぐことができます。
まずは、自分の特性に気づく「自己理解」が第一歩です。
特性に気づくことが“第一歩”
ある日、書店で手に取った発達障害の本を読んで、
「これ、自分のことかもしれない」と感じたことがある方は少なくありません。
- 忘れ物が多い
- 空気を読むのが苦手
- 同時に複数のことをこなすのがつらい
こうした特性は「性格のせい」や「努力不足」と誤解されがちですが、発達障害の可能性もあるのです。
ただし、「診断を受けるべきか迷っている」という気持ちは自然なこと。
「障害という言葉が重く感じる」「家族や職場に知られたくない」など、葛藤を抱える方も多いでしょう。
大切なのは、診断を受けるかどうかに関係なく、
自分の特性を正しく理解し、「自分に合ったやり方」を見つけることです。
診断を受けるメリット
迷いがある中でも、診断を受けることで得られるメリットは少なくありません。
- 自分の特性を客観的に把握できる
- 医師や支援者と連携して、適切な対処ができる
- 精神障害者保健福祉手帳などの制度を活用できる
診断によって、自分の「取り扱い説明書」ができるイメージです。
それにより、自分の苦手なこと・得意なこと・配慮が必要な点を言語化できるようになります。
また、早期に専門的なサポートを受けることで、
うつ病や不安障害などの二次障害に進行する前にブレーキをかけることが可能です。
「病名がつくのが怖い」と思う方もいるかもしれませんが、
診断は“ラベルを貼ること”ではなく、“生きづらさの理由を明らかにすること”なのです。
環境調整でぐっとラクになる
自己理解が深まると、自分に合った働き方や生活スタイルを整えることができるようになります。
これが「環境調整」です。
- 周囲の理解がある職場で働く
- 一人作業が中心の業務に就く
- 勤務時間や通勤方法に配慮を求める
- 睡眠や食事など、生活リズムを整える
これらの工夫によって、ストレスや失敗のリスクを大きく減らすことができます。
たとえば、ADHDの方であれば、静かな環境やタスク管理ツールの導入で集中しやすくなりますし、
ASDの方であれば、マニュアルが整備された仕事や明確なルールがある環境が安心感を生みます。
「がんばって適応する」のではなく、「合う環境に身を置く」ことで、二次障害を防ぎやすくなるのです。
実際にあった支援の活用例
ここでは、自己理解や環境調整、支援機関の活用によって、二次障害の予防や回復につながった実例を3つ紹介します。
就労移行支援で自己理解+職業訓練を受けたケース
20代男性・発達障害の診断を受けずに働いていたが、職場での人間関係に悩み、うつ状態に。
家族のすすめで就労移行支援事業所に通うことを決意。
プログラムでは、自己分析やストレス対処法、職業訓練などを実施。
「失敗しても怒られない環境で初めて“安心して働く”感覚を得られました。
自分に合った仕事を見つけられたことが、何より大きかったです」
就職後も支援員のフォローが続き、安定就労を実現。
診断をきっかけに障害者手帳を取得し、雇用枠で安定就労できたケース
30代女性・長年、職場での疲れやすさや対人ストレスを「自分の甘え」と思っていたが、
心療内科で発達障害の診断を受けたことで「そうだったのか」と納得。
精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠で転職。
業務の内容・量・勤務時間に配慮を受けることができるようになった。
「家族が支えてくれたおかげで診断にも向き合えました。
今では“自分の働き方”を取り戻せた気がします」
支援機関との出会いが二次障害の予防につながったケース
10代後半の頃に発達障害の診断を受けた高校生。
進学・就職への不安が大きく、引きこもり気味だったが、地域の発達障害者支援センターとつながることで生活が安定。
- 通所による生活リズムの安定
- カウンセリングで自己理解の促進
- 就労準備プログラムへの参加
「ずっと“このままじゃダメ”と思ってたけど、誰かが“そのままでいい”と言ってくれたことで救われました」
早期支援が二次障害の発症を未然に防いだ好例。
どこに相談すればいい?支援先まとめ
発達障害や二次障害に悩んでいるとき、
「どこに相談したらいいか分からない」と立ち止まってしまう方も多いでしょう。
しかし、支援につながることで、状態が大きく改善する可能性があります。
以下は、発達障害に関する悩みや不安を相談できる代表的な支援先です。
精神科・心療内科(発達障害外来)
「もしかして自分は発達障害かもしれない」と感じたら、まずは医療機関の受診を検討してみましょう。
- 精神科:うつ病・不安障害など、二次障害の診断・治療も可能
- 心療内科:ストレスや体調不良を含めて心身両面からサポート
- 発達障害専門外来:特性の診断やアセスメントに特化
特に、発達障害の診断は専門的な知識と経験が必要なため、「発達障害外来」「発達支援センターと連携のある病院」などの検索ワードで探すのがおすすめです。
診断を受けることはゴールではなく、自分を深く知るための“スタート地点”です。
地域障害者支援センター・ハローワーク・就労移行支援
医療以外にも、公的な支援機関が多数存在します。
地域障害者支援センター
各都道府県・市町村に設置されており、以下のような相談に対応しています:
- 診断前の不安や悩み
- 手帳や制度のこと
- 就労や生活のこと
福祉サービスのつなぎ役として、最初の相談窓口に最適です。
ハローワーク(障害者専門窓口)
「障害者職業相談窓口」では、以下のような支援が受けられます:
- 就職相談、求人紹介
- 面接対策、履歴書作成のアドバイス
- 雇用支援制度(職場実習、トライアル雇用など)の案内
診断書や手帳がある場合はもちろん、そうでなくても相談可能です。
就労移行支援事業所
18歳以上65歳未満の障害のある方を対象に、就職を目指す訓練や支援を行う福祉サービスです。
- ビジネスマナーやPCスキルの習得
- 模擬職場での訓練
- 企業とのマッチング、就職後の定着支援
「働くのが不安」「まず生活リズムを整えたい」という方にもおすすめです。
家族や信頼できる人に“話す”だけでも第一歩
支援機関への相談が難しいときは、家族や友人、信頼できる人に自分の気持ちを打ち明けるだけでも十分な「第一歩」です。
- 「最近、仕事がつらくて……」
- 「どうしても周りと合わなくて悩んでる」
- 「実は、発達障害かもしれないと思っている」
言葉にして誰かに伝えることは、それだけで気持ちを整理するきっかけになります。
また、家族や職場に特性を伝えることで、配慮やサポートが得られる場合もあります。
「支援は特別な人のためのもの」ではありません。
“今がつらい”と感じているあなたのためにこそ、必要なものなのです。
おわりに:知識と支援を味方に、自分らしい未来を
発達障害そのものが問題なのではなく、
「理解されないこと」や「無理な環境」が、心を追い詰めてしまうのです。
「自分が弱いからだ」「がんばりが足りないから」と責める前に、
「どうして自分はこう感じるのか?」と立ち止まって考えてみてください。
- 自己理解を深めること
- 無理のない環境を整えること
- 適切な支援につながること
この3つが揃えば、「つらい状態」から抜け出すことは必ずできます。
そして何より大切なのは、
あなたが“自分らしく”生きていける選択肢を持つこと。ひとりで抱え込まず、支援や制度、周囲の理解を味方にしながら、
自分自身を大切にする生き方を、今日から少しずつ始めてみましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









