2025/09/08
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    発達障害と上司・同僚とのすれ違いあるある|配慮で解消できること

    はじめに

    発達障害のある人は、職場で「一生懸命やっているのに誤解される」「配慮がないために孤立してしまう」といった経験をしやすい傾向があります。
    特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の特性は、周囲から「怠けている」「空気が読めない」「指示を聞かない」といった誤解を招くことがあります。

    本記事では、発達障害がある人が職場で直面しやすい「すれ違いのあるある事例」と、その背景にある原因、さらに本人側でできる工夫について解説します。上司や同僚との理解のズレを減らすためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。


    職場でよくあるすれ違い「あるある」

    上司とのすれ違い

    発達障害のある人は、指示や業務の進め方を理解する段階でつまずくことが少なくありません。

    • 指示を受けたが細かい手順が分からず進められない
       → 曖昧な指示だと次の行動が分からず、手が止まってしまう。
    • 締切を守れない → 「責任感がない」と誤解される
       → 実際には集中の切り替えが苦手で、優先順位を誤ってしまうことが背景にある。
    • 優先順位をつけられず仕事を溜め込みパンク
       → 一度に複数の業務を任されると混乱し、結果的に処理が追いつかなくなる。

    これらは「能力不足」ではなく、認知の特性によるものです。しかし、周囲に理解がない場合は「やる気がない」と評価されてしまうことがあります。


    同僚とのすれ違い

    日々のコミュニケーションでも、誤解や孤立につながるケースがあります。

    • 雑談が苦手で「距離を取っている」と誤解される
       → 実際には話題選びやタイミングが分からず、会話に入れないだけ。
    • 報連相のタイミングがずれて迷惑がられる
       → 「すぐに伝えるべきこと」を後回しにしてしまうことがある。
    • 集団での業務が苦痛で孤立してしまう
       → 集団作業や会議の空気に合わせることが難しく、結果的に一人でいることが増える。

    本人に悪意はないにもかかわらず、誤解が積み重なることで「協調性がない」と見なされやすいのです。


    実際の声(例)

    実際に発達障害のある人からは、次のような声がよく聞かれます。

    • 「一生懸命やっているのに評価されない」
    • 「雑談や飲み会がしんどい」
    • 「同じミスを繰り返して叱られる」

    こうした“あるある”は、決して本人の努力不足ではなく、特性と周囲の理解のギャップから生まれています。


    なぜすれ違いが起きるのか?(背景理解)

    発達障害の特性による認知の違い

    • ASD(自閉スペクトラム症)
       暗黙のルールや非言語的なサイン(表情・声色など)を読み取るのが苦手。結果的に「空気が読めない」と誤解されやすい。
    • ADHD(注意欠如・多動症)
       不注意や衝動性から、忘れ物や遅刻、ミスが起こりやすく「不真面目」「雑」と思われやすい。

    つまり、表面的には「態度の問題」に見えても、実際には特性に由来する行動パターンなのです。


    企業側の理解不足

    • 「障害特性」を知らない → 個性や性格の問題と誤解する
    • 配慮をする仕組みがない職場では摩擦が増える

    日本の多くの企業では、発達障害に関する知識がまだ十分に広がっていません。そのため、特性に基づく行動が「本人の努力不足」と解釈され、結果的にトラブルや離職につながるケースがあります。


    すれ違いを減らすためにできる工夫(本人側)

    報連相のスタイルを工夫

    発達障害のある人は、「どのタイミングで」「どれくらい詳細に」報告すれば良いのか迷いやすい傾向があります。
    そのため、自分に合った報連相のスタイルを決めておくことが有効です。

    • メールやチャットで「要点だけ」をまとめて伝える
       口頭では抜けやすい情報も、文字で残すことで上司や同僚に正確に伝わります。特に「進捗・困っている点・次のアクション」の3点を意識すると伝わりやすくなります。
    • 「いつ報告すべきか」をあらかじめ決めておく
       「毎日17時に進捗を報告する」「トラブルが発生したらすぐに連絡する」など、ルールを決めておくと迷いが減り、伝え漏れやタイミングのズレを防ぎやすくなります。

    自分の特性を説明する

    誤解やトラブルを避けるためには、自分の特性をオープンに説明することも大切です。もちろん「どこまで話すか」は本人の判断で良いですが、必要なサポートを具体的に伝えることで周囲の理解が進みます。

    • 面談や配慮申請の場を活用する
       評価面談や採用時の面談など、正式な場を利用して伝えるとスムーズです。
    • 「こういうサポートがあると助かる」と具体的に伝える
       例:
       ・「一度に複数の指示は混乱するので、紙に書いてください」
       ・「タスクの優先順位を示してもらえると助かります」
       ・「雑談が苦手なので、仕事のやり取りはメール中心にしたいです」

    こうした伝え方をすることで、「できないこと」ではなく「働きやすくなる工夫」として周囲が受け止めやすくなり、余計な摩擦を減らせます。


    ストレスコントロール

    発達障害のある人にとって、雑談・集団行動・飲み会といった「暗黙の交流」は大きなストレスになることがあります。無理をしてすべてに合わせると、疲労が蓄積し仕事のパフォーマンスにも影響します。

    • 「できる範囲で参加する」と割り切る
       例えば、飲み会は一次会だけ顔を出す、雑談は挨拶程度にとどめる、といったように「自分に無理のない関わり方」を選ぶことが大切です。
    • 自分なりのリフレッシュ方法を持つ
       散歩や音楽、静かな場所での休憩など、短時間でも心を切り替えられる方法を準備しておきましょう。
    • 「全てを無理に合わせなくてもいい」と考える
       仕事に支障が出ない範囲で関わり方を工夫すれば十分です。むしろ無理をしない方が、長期的に安定して働き続けやすくなります。

    ストレスを軽減するための小さな工夫は、長期的な就労の継続とメンタルの安定につながります。

    企業・上司・同僚にできる配慮(解消のカギ)

    上司にできること

    指示は具体的・明確に

    「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」などの抽象的表現は、発達障害のある社員にとって特に誤解のもとになります。
    曖昧さを排除し、行動ベースで伝えることがポイントです。

    例:

    • NG:「この資料をいい感じに仕上げて」
    • OK:「この資料に3ページ追加して、要点を箇条書きでまとめてください」

    具体的な手順や期待する成果物を伝えることで、相手が迷わず行動に移せるようになり、指示待ちや認識違いを減らせます。


    仕事の優先順位を示す

    発達障害のある人は、複数のタスクを同時に渡されると「どれから着手すべきか」を判断しにくいことがあります。その結果、優先度の低い業務に時間を使ってしまい、締め切りのある重要業務が遅れるケースも少なくありません。

    上司があらかじめ「優先度」を示してあげることで、本人は安心して取り組むことができます。
    例えば、

    • 「今日中に必要なのはA、明日で大丈夫なのはB」
    • 「重要度は高いけど急ぎではない業務は後回しで構わない」

    といったように緊急度と重要度をセットで示すと、タスク管理がぐっと楽になります。


    定期的に進捗を確認

    進捗確認は「信頼していないから」ではなく、「早めに課題を共有し、解決のサポートをする」ための仕組みです。
    特に発達障害のある人は、自分だけで問題を抱え込みやすく、気づいたときには期限直前になっていることもあります。

    上司が「終わった?」ではなく「どこまで進んだ?」と聞くだけで、以下の効果があります:

    • 課題を早期に発見できる
    • 修正の時間を確保できる
    • 本人も「困ったときに相談して良い」と安心できる

    定期的なチェックをルーティン化することで、双方にとって無理のない進行管理が実現します。


    同僚にできること

    • 雑談や飲み会への参加を強制しない
       本人が気を遣って無理に参加しなくてもよい雰囲気をつくることが大切です。
    • コミュニケーション方法の違いを受け入れる
       口頭が苦手ならチャットやメールでのやり取りを活用。スタイルの違いを尊重することで関係がスムーズになります。
    • フォロー体制を「当たり前」として組み込む
       誰かが困ったときに自然に助け合う職場文化は、発達障害に限らず全社員の安心感につながります。

    企業全体でできること

    • 障害理解研修の実施
       発達障害の基本的な特性や配慮ポイントを学ぶことで、職場全体の理解度が高まります。
    • ジョブコーチや社内相談窓口の設置
       外部の専門家や社内の相談体制を整えることで、上司や同僚だけでは対応しきれない課題を補えます。

    実際に配慮で解消された事例

    事例① 指示を紙で出すようにしたらミスが激減

    口頭での指示をメモに書いて渡すルールに変更したところ、受け手が内容を確認しやすくなり、ミスや認識違いが大幅に減少しました。


    事例② 雑談を無理に求めないことでストレス減少

    雑談や飲み会への参加を強制せず、必要なコミュニケーションを仕事中心にした結果、本人のストレスが減り、仕事のパフォーマンスが向上しました。


    事例③ 報告のルールを決めて業務がスムーズに

    「毎日夕方に進捗を報告する」などのルールを導入したところ、報連相のタイミングが安定し、上司・部下双方の安心感が増しました。


    まとめ

    発達障害のある人が職場で直面するトラブルやすれ違いは、決して「努力不足」や「やる気のなさ」から生じているのではありません。多くの場合、認知の特性の違い周囲の理解不足によって起こるものです。

    一方で、本人が自分の特性を理解し、報連相の工夫やストレスコントロールを行うこと。そして上司や同僚が、指示の出し方や優先順位の示し方、コミュニケーションの取り方に少し配慮を加えること。この両輪が揃えば、誤解や摩擦は大きく減り、本人の力を発揮できる環境が整います。

    さらに、こうした配慮は発達障害のある社員だけのためのものではありません。

    • 指示を明確にすることは、誰にとっても業務効率の向上につながります。
    • フォロー体制を「当たり前」にすることは、チーム全体の安心感を高めます。
    • 雑談や飲み会の強制をなくすことは、多様な働き方を尊重する文化の醸成につながります。

    つまり、配慮は特別扱いではなく、職場全体をより健全で働きやすくする仕組みなのです。

    この記事を読んだあなたの職場でも、「すれ違い」をなくす小さな工夫から始めてみませんか?それが結果的に、社員一人ひとりが安心して力を発揮できる、生産性の高い職場づくりへとつながります。

    投稿者プロフィール

    八木 洋美
    自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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