2025/10/02
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社員の健康が未来の利益を創る|企業が実践すべき透析予防と支援プログラム

はじめに|社員の健康は「未来のコスト」である

あなたの会社では、社員の健康診断の結果を「法定雇用率のチェック」だけで終わらせていませんか?

多くの社員が糖尿病予備軍である現状は、企業にとって「透析リスク」という隠れたコストになっています。社員一人が透析に至った場合、その医療費と生産性の低下は、企業の利益を大きく圧迫します。

この記事の結論は、透析予防は単なる福利厚生ではなく、医療費・休職費を削減し、生産性を維持するための重要な経営戦略であるということです。予防に早期に投資することが、将来の巨大なコストを防ぐ最も有効な手段です。企業が実施すべき具体的な予防支援策を解説し、健康経営への一歩を促します。


透析患者を抱えることのリアルコスト

社員が糖尿病の合併症により透析に至ることは、個人だけでなく、企業にとって無視できない深刻な「リアルコスト」となります。

企業の生産性低下と休職リスク

社員が透析治療を必要とすることは、チームと企業の生産性に直接的な打撃を与えます。

  • 生産性の低下

透析治療は、通常週に複数回、1回あたり4〜5時間に及びます。社員は治療のために勤務時間の調整が必須となり、業務の継続的な集中力が低下します。特に重要なポジションの社員の場合、業務の引き継ぎや遅延が発生し、チーム全体の生産性が大きく損なわれるだけでなく、他の社員への負担も増大します。

  • 休職・離職リスク

治療が原因で長期の休職や、最悪の場合、優秀な人材の離職に至るケースが増加します。これにより、企業は新たな人材の採用・教育コストを再び負担することになり、計り知れない損失を被ります。

膨れ上がる医療費と企業負担

社員の健康問題は、企業の財政に直接的な影響を及ぼします。

  • 医療費の現実

透析患者一人あたりの年間医療費は高額であり、その多くを企業が加入する健康保険組合が負担しています。この高額な医療費は、企業の保険料負担増に直結し、財政を圧迫する要因となります。

  • 予防投資の必要性

この問題を解決する鍵は「予防」です。糖尿病予備軍の段階で生活習慣改善をサポートする「予防」に少額を投資することが、将来の数千万円に上る透析治療費という巨大なコストを防ぐ、最も合理的かつ効果的な経営戦略なのです。

企業が実践すべき「透析予防」の具体的支援策

透析予防を成功させるには、社員個人の努力だけでなく、企業による「仕組み」のサポートが不可欠です。

データに基づいた「ハイリスク者」の早期フォロー

社員の透析リスクを回避するための鍵は、「症状が出る前の早期介入」です。健康診断のデータを活用し、リスクの高い社員(ハイリスク者)への集中的なフォローが不可欠です。

  • 健康診断後のフォローアップ

単に結果を渡すだけでなく、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の数値が高い社員(糖尿病予備軍)に対し、産業医や保健師が個別面談を徹底することが重要です。面談では、「まだ症状がないから大丈夫」という社員の油断に対し、将来の透析リスクを具体的に伝え、危機意識を持たせる早期介入が不可欠です。これにより、本人の行動変容を促します。

  • 保険者との連携

企業は、自社が加入する健康保険組合(保険者)と密に連携するべきです。健康保険組合は、過去のレセプト(診療報酬明細書)データなど、社員の健康に関する詳細な情報を保有しています。これらのデータを共有し、ハイリスク社員を特定した集中的な指導プログラムを共同で実施することで、予防効果を最大化できます。この連携は、医療費の適正化にも直結します。


行動変容を促す「習慣化プログラム」

単なる注意喚起ではなく、社員の行動変容を促す具体的な「仕組み」を導入することが、予防成功の鍵です。

  • 食生活改善

昼食の食べる順番指導(ベジファースト)を全社員に推奨し、意識づけを行います。さらに、低カロリー・低糖質メニューを社員食堂のメインに据えたり、健康的な置き換え商品を安価で提供したりするなど、社員が「健康的な食事」を選びやすい環境を物理的に整備します。これにより、個人の意志に頼らず、習慣を変える手助けをします。

  • 運動支援

運動を「特別なこと」から「日常の一部」に変える仕組みを導入します。デスクワーク中にできる簡単な運動(ストレッチ、かかと上げ)をチャットボットで定期的に推奨したり、部署対抗のウォーキングイベントを実施(インセンティブ付き)したりするなど、ゲーム感覚で運動を習慣化させます。重要なのは、「楽しく」「無理なく」続けられる仕組みづくりです。

柔軟な働き方が健康を守る

社員が「健康管理」と「仕事」を両立できる環境こそが、長期的な生産性を支えます。

  • 勤務形態の柔軟化

通院や運動の時間を確保しやすいフレックスタイム制度を活用します。また、在宅勤務制度を活用し、通勤の負担やストレスを軽減します。社員が体調の波に合わせて、「今日は自宅で集中して仕事をする」といった選択をできるようにすることで、欠勤リスクを減らし、安定した生産性を維持できます。


まとめ|「予防」こそ最強の経営戦略

社員の健康管理は、もはや個人の問題ではありません。「透析リスク」を放置することは、将来の企業財政に深刻なダメージを与える隠れたコストです。

予防こそ、最強の経営戦略です。

  • 戦略的な早期介入

健康診断の結果を単なる紙切れで終わらせず、産業医と連携し、ハイリスク社員への個別面談(早期フォロー)を徹底することが、将来の数千万円の医療費を防ぎます。

  • 「仕組み」で習慣化を促す

「ベジファースト」の推奨や、オフィスでの「かかと上げ運動」の仕組みづくりなど、社員の意志に頼るのではなく、無意識のうちに健康的な行動を選べる環境を整えることが重要です。

  • 柔軟な働き方が生産性を守る:

フレックスタイムや在宅勤務といった柔軟な働き方は、社員が治療や運動の時間を確保するための土台となり、結果的に長期的な生産性を支えます「透析予防」はコストではなく、未来の利益への投資です。 データに基づいた早期の介入こそが、社員の生産性を守り、企業を強くすることにつながります。この知識を力に変え、今日から具体的な予防戦略を実行してください。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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