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社長、その仕事「外注」するより「内製」しませんか?|障害者雇用によるコスト削減と、社内ノウハウ蓄積の相乗効果

この記事の内容
はじめに:垂れ流しの「外注費」にメスを入れる

「人手が足りないから、この作業は外に投げよう」。 成長段階にある中小企業の現場では、ごく自然に行われている判断です。発送代行、名刺やデータの入力、チラシの封入、オフィスの定期清掃……。一つひとつは数万円単位の小さな支払いかもしれませんが、決算書を振り返ってみると、年間で数百万円単位の「外注費」が計上されていませんか?
意外と多い「小規模な外注」の積み重ねが利益を圧迫している
外注は便利な反面、一度頼み始めると「社内ではできないこと」として固定化され、コストカットの対象から外れがちです。しかし、人手不足による外注単価の上昇が続く今、この「外部へ流出している資金」をいかに食い止め、社内に還流させるかが、利益率改善の急所となります。
特に、従業員数が40名を超え、法定雇用率の達成が義務づけられる企業にとって、外注費と「障害者雇用未達成によるリスク」を別々に抱えるのは、経営上の大きなロスと言わざるを得ません。
障害者雇用は「福祉」ではなく、戦略的な「コスト構造の改革」
ここで検討していただきたいのが、障害者雇用を活用した「業務の内製化(インソーシング)」です。 多くの経営者様が「障害者に何ができるのか?」という不安を抱かれます。しかし、実は外注に出しているような「手順が決まった定型作業」や「コツコツとした繰り返し作業」こそ、特定の障害特性(高い集中力、視覚情報の正確な処理、ルーチンワークへの適応力)が最も輝く領域です。
本記事の結論:外注費を「人件費」に変えることで、会社に資産が残る
外注費を支払っても、手元に残るのは「作業完了」という一過性の結果だけです。しかし、その予算を障害者社員の「給与」に充て、社内で仕事を完結させる体制を作れば、そこには「自社専用の戦力」と「最適化された業務手順」という一生モノの資産が残ります。
本稿では、外注費を削減しながら組織を筋肉質に変える、攻めの中小企業経営戦略を解説します。
1.「外注」から「内製」へ切り替えるべき業務の条件
「外注している仕事をすべて内製化するのは難しい」と感じるかもしれません。しかし、業務を細かく分解してみると、実は「社内でやったほうが早いし安い」仕事が埋もれています。ポイントは、その業務が「定型的か」という点にあります。
発送代行、データ入力、清掃、ノベルティ作成…「自社でできるはず」の仕事
内製化への切り替えに最も適しているのは、以下のような「手順が明確な付随業務」です。
- EC・物流: 商品のパッキング、ラベル貼り、段ボールの組み立て、発送代行。
- 事務: 名刺のデータ入力、領収書の整理、スキャン保管、リスト作成。
- 環境整備: オフィスの定期清掃、シュレッダー処理、備品の在庫管理と発注。
- 販促: ノベルティのセット組み、チラシの折り込み、サンプル送付。
これらは、かつては「片手間にやるには負担だが、専任を雇うほどでもない」として外注されがちでした。しかし、法定雇用率の達成が義務化された今、これらを集約して「障害者社員のメインミッション」に据えることで、雇用の大義名分とコスト削減が同時に成立します。
外部に頼むことで発生する「指示出し」と「検品」の隠れたコスト
外注の落とし穴は、見積書に載らない「見えないコスト」です。 外注先に意図を伝えるための仕様書作成、納期管理、そして戻ってきた成果物の検品。これらの作業には、意外と多くの「高単価な正社員の時間」が割かれています。
内製化すれば、すぐ隣で進捗が確認でき、細かな修正もその場で指示できます。「外注先を管理する手間」を「自社社員を育成する時間」に転換する。このシフトが、中長期的なマネジメントコストの低減につながります。
障害特性(丁寧さ、集中力)が、外注クオリティを超える瞬間
「障害があるから品質が落ちるのではないか」という懸念は、多くの場合、杞憂に終わります。 例えば、ASD(自閉スペクトラム症)傾向のある方は、ルール化された作業を寸分違わず遂行することに長けています。
- 事例: ノベルティのシール貼りを外注していた企業が内製化したところ、「外注先よりもシールの位置が正確で、シワ一つない」というクオリティを実現。
このように、「飽きずに、正確に、丁寧に繰り返す」という障害特性が、結果として外注先の大量生産品を上回る品質を生み出すことが多々あるのです。
2.数字で見る内製化のメリット:助成金が初期コストをカバーする
経営者として最も気になるのは、「外注費を削っても、人件費が増えたら意味がないのではないか」という点でしょう。しかし、障害者雇用においては、国からの手厚いバックアップがあるため、一般的な採用よりも「損益分岐点」が大幅に低く設定されています。
外注費(変動費)を給与(固定費)にする際の損益分岐点
例えば、発送代行やデータ入力に月額15万円を支払っている場合、年間で180万円が外部へ流出しています。これを「時給1,100円の障害者社員を週20時間(ハーフタイム)雇用する」形に切り替えると、社会保険料を含めても人件費は月額10万円〜12万円程度に収まるケースが多々あります。
この時点で、「外注費 > 人件費」という逆転現象が起き、月々数万円の利益が生まれます。さらに、内製化によって発送までのリードタイムが短縮されれば、顧客満足度向上という目に見えない利益も加わります。
助成金を活用すれば、実質的なコスト負担を大幅に抑えてスタートできる
さらに、中小企業の「最初の一歩」を後押しする助成金が強力です。
- 特定求職者雇用開発助成金: 障害者を雇い入れることで、一定期間、賃金の一部が助成されます(対象や条件により数十万〜数百万円単位)。
- トライアル雇用助成金: 「まずは3ヶ月、適性を見極めたい」という期間の賃金を補助してくれます。
これらの助成金を活用すれば、入社から戦力化するまでの「教育期間」のコストを実質ゼロに近づけることも可能です。
「法定雇用率未達成の納付金」を払うなら、その予算を内製化の原資に
従業員100名を超える企業の場合、雇用義務を達成していないと1人あたり月額5万円(年間60万円)の「納付金」が発生します。40名〜100名規模の企業でも、今後は対象拡大や行政指導の強化が予想されます。
「ただ失われるだけの納付金」を年間60万円払うのと、「助成金を受け取りながら、自社の仕事を完璧にこなす社員」に給与を払うのとでは、数年後の経営基盤に天と地ほどの差が出ます。「外注費+納付金」を原資にして、最強の内製化チームを作る。これが賢い中小企業のキャッシュフロー管理です。
3.ノウハウが社内に貯まる「ナレッジ蓄積」の価値

外注化の最大のデメリットは、コスト以上に「自社にノウハウが残らないこと」です。障害者雇用を通じて業務を内製化することは、ブラックボックス化していた業務プロセスを解剖し、会社の知的資産として再構築することを意味します。
外注先にブラックボックス化されていた「手順」を可視化・資産化する
外注先に仕事を丸投げしていると、「なぜそのリードタイムが必要なのか」「なぜそのコストがかかるのか」といったプロセスが見えなくなります。 障害者雇用で内製化を始める際、最初に行うのは「業務の徹底的な棚卸し」です。
- 暗黙知の言語化: 障害特性に合わせて「誰が読んでも迷わないマニュアル」を作成する過程で、これまでベテランの勘に頼っていた作業や、外注先しか知らなかった「コツ」が可視化されます。
- マニュアルという資産: 整理された手順書は、万が一の欠員時や、さらなる事業拡大時の新人教育において、計り知れない価値を発揮します。
自社スタッフが直接指示を出すことで、改善のスピードが劇的に上がる
外注の場合、ちょっとした仕様変更や改善案を思いついても、契約変更や追加費用の交渉が必要になり、スピード感が削がれます。 内製化していれば、現場のリーダーが「明日からこの手順をこう変えてみよう」と直接指示を出すことができます。
- PDCAの高速化: 障害のある社員は、決まった手順を忠実に守るのが得意な一方で、非効率な手順を「やりづらさ」として敏感に察知することもあります。彼らのフィードバックを元に手順を磨き上げることで、現場主導の改善活動(カイゼン)が加速します。
現場の創意工夫が、新しい付加価値(商品・サービス)を生むことも
業務に習熟した障害者社員の中から、「もっとこうすれば綺麗に仕上がる」「この端材でこんなものが作れるのでは?」といった提案が出てくることがあります。 自社内で作業を完結させているからこそ、こうした「現場のひらめき」をすぐに商品開発やサービス改善に繋げられるのです。これは外注業者との事務的なやり取りからは決して生まれない、内製化ならではの「経営の副産物」です。
4.内製化を成功させる「スモールスタート」の3ステップ
「いきなり正社員を雇って、仕事が合わなかったらどうしよう」と不安に思う必要はありません。障害者雇用を内製化のエンジンにするためには、リスクを最小限に抑えながら段階的に進める「スモールスタート」が鉄則です。
ステップ1:現在の外注業務を「誰でもできる工程」に分解する
まずは、現在外注している業務を「一連の流れ」ではなく、「一つひとつの作業(タスク)」に分解することから始めます。
- 作業の「切り出し」と「単純化」: 例えば「発送代行」であれば、「注文データの抽出」「納品書の印刷」「商品のピッキング」「梱包」「ラベル貼り」といった具合です。
- 判断基準の明確化: 「綺麗に包む」ではなく「この線に合わせて折る」といった、主観に頼らない指示に落とし込みます。この「工程の分解」ができていれば、受け入れの準備は半分以上完了したと言っても過言ではありません。
ステップ2:ジョブコーチ等の外部支援を使い、受け入れ環境を整える
自社のスタッフだけで教育のすべてを背負うのは無理があります。ここで、公的な支援制度をフル活用しましょう。
- ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用: 専門家が貴社に赴き、障害のある社員に対して「仕事の教え方」をサポートしてくれます。また、既存社員に対しても「どう接すればいいか」をアドバイスしてくれるため、現場の心理的負担が劇的に軽減されます。
- 支援機関との連携: 就労移行支援事業所などの担当者に、業務内容を事前に見てもらうことで、「この仕事なら、当所の〇〇さんが適任です」という精度の高いマッチングが可能になります。
ステップ3:最初は週20時間(ハーフタイム)からの試験的導入
最初からフルタイム(週40時間)で雇用する必要はありません。まずは「週20時間以上」の短時間雇用からスタートするのが、最も現実的な選択です。
- メリット:
- 低コスト: 賃金総額を抑えつつ、法定雇用率のカウント(0.5人分)が得られます。
- 集中力の維持: 障害特性によっては、短時間のほうが高いパフォーマンスを維持しやすい場合があります。
- 柔軟なシフト: 発送業務が多い月水金だけ、といった具合に、外注が必要だったピークタイムに合わせてシフトを組むことができます。
まずは小さな仕事の切り出しから。このステップを踏むことで、経営上のリスクを抑えながら、着実に「外注費を利益に変える仕組み」を構築できます。
5.成功事例:外注費を年間300万円削減した企業の舞台裏

障害者雇用による内製化は、机上の空論ではありません。実際にコスト構造を劇的に改善し、同時に組織の質を高めた中小企業の事例を紹介します。
事例:ECサイトの梱包発送を内製化し、配送リードタイムを短縮した小売店
従業員45名の生活雑貨販売店では、月々の注文増に伴い、発送業務を外部の倉庫業者へ委託していました。
- 課題: 外注費が月25万円(年間300万円)に達していたほか、外注先とのデータ連携に時間がかかり、注文から発送まで最短でも3日を要していました。
- 解決策: 精神障害のある社員2名をハーフタイムで雇用。店舗のバックヤードに発送スペースを設け、マニュアルを整備して内製化。
- 成果: 外注費300万円を削減し、代わりに雇用した2名の人件費(約180万円)と助成金の活用により、実質150万円以上の利益改善を達成。さらに、社内で即日出荷が可能になったことで「配送が早い」というレビューが増え、売上自体も向上しました。
事例:オフィス清掃の外注をやめ、自社雇用に切り替えて「愛着」が生まれた事例
従業員70名のIT関連企業では、オフィスビルの清掃を外部の清掃業者に委託していました。
- 課題: 年間の清掃コストが嵩んでいただけでなく、作業員が毎日入れ替わるため、セキュリティ面や細かな箇所の清掃漏れが懸念されていました。
- 解決策: 知的障害のある社員1名を清掃・環境整備担当として雇用。「社内で最もオフィスを綺麗にする人」として役割を明確化しました。
- 成果: 外部委託費を全額カット。何より、自社の社員として毎日同じ顔ぶれが掃除をしてくれることで、他の社員から「いつもありがとう」という声掛けが増えました。社員自身も「自分の会社を綺麗にする」という高い意識を持って取り組むため、外注時よりも備品の補充や細かな汚れへの対応が迅速になり、職場全体の「居心地」が劇的に改善されました。
6.まとめ|障害者雇用は、経営を筋肉質にする最強の手段
「障害者を雇用する」という決断は、単なる法的義務への対応ではありません。それは、これまで外部に依存していたコストやプロセスを自社のコントロール下に取り戻し、組織をより「筋肉質」で「自律的」なものへと変革する経営判断です。
総括:外注への依存度を下げ、自社の「自走力」を高めよう
外注費を支払うことは、短期的な解決にはなりますが、中長期的にはコストの上昇リスクやノウハウの流出という課題を抱え続けることになります。
一方で、障害者雇用を通じて業務を内製化することは、以下の3つの価値を貴社にもたらします。
- 財務的価値: 垂れ流しの外注費を、助成金も活用しながら「未来の戦力」への投資(給与)へと転換できる。
- 組織的価値: 業務の可視化・標準化が進み、誰でも成果を出せる「仕組みの整った強い組織」へと進化できる。
- 社会的価値: 法的責任を果たすだけでなく、地域から信頼される「多様性を力に変える企業」としてのブランドを確立できる。
「自社の仕事は自社で守り、磨き上げる」。この自走力こそが、変化の激しい時代を生き抜く中小企業の底力となります。
最後に:貴社のコスト構造に合わせた「内製化シミュレーション」をお手伝いします
「どの外注業務なら切り出せるだろうか?」「実際に人件費と助成金のバランスはどうなるのか?」 そんな疑問をお持ちの経営者様、まずは貴社の現在の業務構造を私たちと一緒に整理してみませんか?
私たちは、単なる人材紹介にとどまらず、貴社のコスト削減と組織活性化を両立させる「内製化シミュレーション」からサポートいたします。障害者雇用をきっかけに、貴社の経営をより強く、より豊かにアップデートしていく。その第一歩を、私たちが全力でバックアップします。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







