2025/09/04
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?原因・症状・治療法・日常生活と仕事への影響を徹底解説【2025年最新版】

はじめに

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、国が定める指定難病の一つで、脳や脊髄にある「運動ニューロン」が障害される進行性の疾患です。発症すると徐々に筋力が低下し、立つ・歩く・話す・飲み込む・呼吸するなど、日常生活に欠かせない動作が難しくなっていきます。
ALSは完治が難しい病気ですが、近年は治療薬やリハビリ、在宅医療や支援制度が整備されてきており、患者と家族の生活を支える取り組みが進んでいます。

本記事では、ALSの原因・症状・治療法、さらに生活や仕事への影響、利用できる支援制度まで幅広く解説します。患者本人だけでなく、ご家族や医療・福祉関係者、企業の人事担当者にも役立つ内容を目指しています。


ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

病気の定義

ALSは、脳や脊髄に存在する「運動ニューロン」が変性・消失していく病気です。運動ニューロンは筋肉に「動け」という信号を送る役割を担っており、これが障害されることで筋肉が徐々に萎縮し、力が入らなくなります。知覚や視覚・聴覚などは保たれることが多い一方で、意思はあっても身体が動かせない状態に近づいていくのが特徴です。

発症年齢・有病率

ALSは比較的稀な疾患ですが、40代から70代にかけての中高年層に多くみられます。日本国内の患者数は約1万人と推定されており、年間の新規発症者は人口10万人あたり1~2人程度とされています。男女差は大きくなく、世界的にもおおよそ同じ発症傾向が報告されています。


ALSの原因

遺伝的要因

ALSの大部分は「孤発性」と呼ばれ、遺伝とは直接関係しませんが、全体の5〜10%程度は「家族性ALS」とされます。これは特定の遺伝子(例:SOD1遺伝子など)に変異があり、家系内で発症が見られるタイプです。遺伝カウンセリングや遺伝子検査が行われる場合もあります。

環境要因

農薬への曝露、喫煙習慣、過度の運動習慣などがリスク要因として指摘されています。しかし、これらは研究段階にあり、直接的な因果関係はまだ確立されていません。複数の環境要因が重なって発症リスクを高める可能性も考えられています。

自己免疫・酸化ストレス仮説

ALSの原因として、神経を攻撃する自己免疫反応や細胞を傷つける酸化ストレスが関与しているのではないかとする仮説もあります。実際に、神経細胞内のタンパク質が異常に蓄積する現象も知られています。とはいえ、ALSの発症メカニズムは完全には解明されておらず、世界中で研究が続けられているのが現状です。


ALSの症状と進行

初期症状

ALSの初期症状は、手足の筋力低下や脱力感として現れることが多いです。

  • ペットボトルのふたが開けにくい
  • 箸を持ちにくい
  • よくつまずく
  • 物をよく落とす

といったささいな違和感から始まるケースもあります。進行は緩やかですが確実に広がっていくため、早期発見が重要です。

進行期の症状

病気が進行すると、嚥下障害(食べ物や飲み込みが困難になる)や、構音障害(発音が不明瞭になる)が見られるようになります。さらに呼吸に必要な筋肉が麻痺すると、呼吸不全に至るケースも少なくありません。そのため、多くの患者は人工呼吸器の使用を検討する段階を迎えます。

認知機能の変化

ALSは運動ニューロンの病気ですが、一部の患者では前頭側頭型認知症(FTD)を合併します。この場合、記憶障害や行動の変化、感情コントロールの難しさが現れ、患者本人だけでなく介護を担う家族にとっても大きな負担となります。

ALSの診断方法

神経学的検査

ALSは初期段階では他の神経疾患と区別がつきにくいため、まずは神経学的な検査が行われます。代表的なのは針筋電図神経伝導検査です。

  • 針筋電図:細い針を筋肉に刺し、活動電位を測定することで、神経からの信号が適切に伝わっているかを確認。ALSでは特徴的な異常波形が見られることがあります。
  • 神経伝導検査:末梢神経の伝わり方を調べる検査。ALSの場合、末梢神経自体は比較的保たれているため、他疾患との鑑別に有効です。

画像・血液検査

ALSを確定する直接的な検査はありません。そのため、MRIや血液検査を用いて、脳腫瘍・多発性硬化症・頸椎症性脊髄症など、類似の症状を呈する疾患を除外していきます。血液検査では炎症や代謝異常の有無を確認し、より正確な診断につなげます。

診断基準

ALSの診断には、国際的に用いられているEl Escorial基準などの診断基準が参照されます。これは「上位運動ニューロン障害」と「下位運動ニューロン障害」の両方の兆候があるかどうかを確認するもので、複数部位での所見をもとに「確実例」「可能性あり」などと分類されます。


ALSの治療法

薬物療法

現在のところALSを根本的に治す薬はありませんが、進行を遅らせる薬が承認されています。

  • リルゾール:グルタミン酸による神経毒性を抑え、病気の進行を緩やかにする効果があるとされています。
  • エダラボン(ラジカット):点滴で投与される抗酸化薬で、神経細胞を酸化ストレスから守る作用があります。

これらの薬は「進行を止める」のではなく「進行を遅らせる」ことが目的である点を理解しておく必要があります。

呼吸補助

ALSは呼吸筋も徐々に弱っていくため、呼吸補助が重要になります。

  • 非侵襲的換気(NPPV):マスクを装着して呼吸をサポートする方法。比較的早い段階から導入されます。
  • 人工呼吸器(気管切開):病気が進行すると、気管切開を行って人工呼吸器を使用するケースもあります。本人や家族の意思決定が欠かせない選択肢です。

リハビリテーション

ALSでは筋力を維持することが難しいため、理学療法や作業療法が生活の質を支える重要な役割を果たします。無理のないストレッチや関節可動域訓練、日常動作の工夫を学ぶことで、できる限り自立した生活を維持できます。

嚥下障害が進むと、十分に食事が取れなくなり栄養不良や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。その際に検討されるのがPEG(胃ろう)による栄養管理です。胃に直接チューブを設けて栄養を送る方法で、誤嚥を防ぎつつ体力を維持することができます。

栄養サポート


ALSと日常生活

生活の工夫

ALS患者の生活を支えるためには、補助機器の活用が欠かせません。

  • 音声・視線入力機器:話すことが難しくなった際に、目の動きやわずかな指の動きを使って文字入力が可能。
  • 電動車いすや介護ベッド:移動や姿勢保持を助けることで、生活の自由度を高められます。

こうしたテクノロジーはQOL(生活の質)を維持する強い味方です。

家族の負担とサポート

ALSは介護の負担が大きい病気です。長時間の介護、夜間の対応、意思疎通の困難さなどが家族に精神的・肉体的なストレスをもたらします。そのため、家族会やピアサポートの活用が推奨されています。同じ立場の人同士で悩みを共有できる場は、介護者の孤立を防ぐ効果があります。

在宅療養と施設療養の選択

ALS患者の療養スタイルは「在宅」か「施設」かの選択を迫られる場面があります。

  • 在宅療養:訪問看護・訪問リハビリ・在宅医療チームの支援により、自宅で生活を続けられるメリットがあります。
  • 施設療養:医療機器の管理や24時間体制のサポートを受けられるため、家族の負担を軽減できる場合があります。

どちらを選ぶかは、患者本人の希望や家族の状況を踏まえて検討することが大切です。

ALSと仕事・就労の課題

初期段階で可能な業務

ALSの初期段階では、手足に軽度の筋力低下がみられるものの、PCを使った事務作業やリモートワークなどは継続できるケースが多いです。音声入力や視線入力を組み合わせることで、入力作業の負担を減らすことも可能です。

進行に伴う働き方の変化

病気の進行により、通勤や長時間勤務が難しくなってきた場合は、在宅勤務や短時間勤務への移行が現実的な選択肢となります。オンライン会議やクラウドサービスの活用により、業務を継続しながら体力の消耗を抑えることができます。

企業に求められる配慮

ALS患者が働き続けるためには、企業側の理解と柔軟な対応が欠かせません。

  • 通勤負担を減らすための在宅勤務制度
  • コミュニケーション補助機器の導入(チャットツールや字幕サービス)
  • 業務内容の柔軟な調整(体力に合わせたタスク配分)

こうした配慮は、ALS患者だけでなく他の従業員にとっても働きやすい環境づくりにつながります。

実際の就労の現状

ただし、ALSは進行性の病気であるため、初期〜中期には就労が可能でも、重度に進行すると仕事を続けるのは難しくなる人が多いのが現実です。嚥下や呼吸機能が低下すると長時間の勤務や出社はほぼ不可能となり、多くの患者は就労を断念せざるを得ません。
一方で、近年は視線入力装置や意思伝達装置を活用して在宅ワークを続ける事例も一部で報告されており、企業と支援機関の理解と環境整備があれば「働き続ける可能性」はゼロではありません。


ALSで活用できる制度

特定医療費(指定難病)受給者証

ALSは国の「指定難病」に含まれており、特定医療費(指定難病)受給者証を取得すれば、医療費の自己負担が大幅に軽減されます。高額な治療や通院が続く中で、経済的な負担を抑える重要な制度です。

身体障害者手帳(肢体不自由)

ALSの進行により運動機能に障害が出た場合、**身体障害者手帳(肢体不自由)**を取得できることがあります。等級に応じて、税制優遇・公共交通機関の割引・雇用支援など、幅広いサポートを受けられます。

介護保険・障害福祉サービス

ALS患者は、介護保険や障害福祉サービスを活用することで、在宅生活の継続がしやすくなります。

  • 訪問介護:日常生活動作のサポート
  • デイケア:通所によるリハビリや交流
  • 福祉用具貸与:電動車いすやベッドなどのレンタル

これらを組み合わせることで、患者本人だけでなく家族の負担も軽減されます。

就労支援制度

就労を希望するALS患者には、就労移行支援事業所ジョブコーチ制度といったサポートも用意されています。就労移行支援では職業訓練や就職活動の支援が行われ、ジョブコーチは職場での定着を支える役割を担います。


まとめ

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、運動ニューロンが障害される進行性の指定難病であり、時間の経過とともに日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。現在の医療では完治は難しいものの、薬物療法・呼吸補助・栄養サポート・リハビリテーションなどを組み合わせることで、進行を遅らせ生活の質を維持することが可能です。

また、初期〜中期にかけては在宅勤務や補助機器の導入により仕事を継続できるケースもありますが、進行すると就労を断念せざるを得ない人が多いのが実情です。それでも、近年は視線入力装置や意思伝達支援機器の発展により、重度の状態でも在宅ワークを続ける方の事例が少しずつ増えています。

ALSと向き合ううえで大切なのは、「一人で抱え込まないこと」です。本人・家族・企業・医療機関・福祉サービスが連携し、制度やテクノロジーを活用することで、安心して暮らせる環境を整えることができます。

「自分らしい生き方」を選ぶために、医療や支援制度を積極的に活用し、家族や周囲と共に歩む姿勢が何よりも重要です。ALSという病気は大きな挑戦を伴いますが、支え合う仕組みと理解が広がれば、患者と家族にとって希望のある未来を築くことができます。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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