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精神障害に伴う二次障害とは?原因・症状・予防法を徹底解説

この記事の内容
はじめに

「二次障害」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。精神障害や発達障害に関連して使われることが多い用語ですが、その意味を誤解している人も少なくありません。二次障害とは、本来の障害そのもの(一次障害)とは別に、そこから派生して現れる症状や問題を指します。
たとえば、うつ病や統合失調症などの精神障害、あるいは発達障害を持つ人が、長期的なストレスや周囲の理解不足から新たに不安障害や適応障害を発症することがあります。これが二次障害にあたります。
精神障害そのものの症状も大きな影響を与えますが、実際にはこの「二次的に現れる問題」のほうが日常生活や仕事に深刻な支障をきたすケースも多いのです。特に日本社会では「精神障害は本人の努力不足」という偏見が根強く、本人の自己肯定感が下がりやすい環境にあります。その結果、障害自体よりも二次障害が悪化してしまうという悪循環に陥ることもあります。
本記事では、精神障害に伴う二次障害について、
- その定義と特徴
- なぜ発生しやすいのかという原因
- 実際に現れる症状の具体例
- そして予防・対策のポイント
を整理して解説していきます。当事者の方はもちろん、家族や支援者、職場の同僚や管理職にとっても理解しておくべき重要な知識です。二次障害を知り、適切な対応や環境調整を行うことで、より安定した生活と就労を実現できるでしょう。
二次障害とは?
一次障害と二次障害の違い
まず整理しておきたいのが「一次障害」と「二次障害」の違いです。
- 一次障害
一次障害とは、生まれつきまたは後天的に発症する「根本的な障害」を指します。代表的な例として、発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)、統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害などがあります。これらは診断基準に基づいて医師が診断し、医学的に「障害」と認められるものです。 - 二次障害
一方で二次障害は、一次障害そのものが直接の原因ではなく、そこから派生する「付随的な症状や問題」を意味します。たとえば、発達障害のある人が周囲の理解不足や失敗体験の積み重ねから強い不安や抑うつを発症する場合、これが二次障害に該当します。
つまり二次障害は、一次障害に伴う「社会的な摩擦」「環境からの圧力」「心理的負担」などによって二次的に形成されるものであり、本人の努力不足や性格の問題ではありません。ここを誤解してしまうと、当事者はさらに追い詰められ、二次障害を深刻化させてしまう危険性があります。
なぜ二次障害が起きやすいのか
精神障害に伴う二次障害は、なぜこれほど多くの人に起きやすいのでしょうか。その背景にはいくつかの要因があります。
1. 周囲の理解不足
精神障害や発達障害は外見からは分かりにくいため、職場や学校で「怠けている」「努力が足りない」と誤解されやすい傾向にあります。この理解不足は、本人にとって大きなストレスとなり、結果として二次障害につながります。
2. 長期的なストレス・孤立
精神障害を持つ人は、生活の中で多くのストレスにさらされています。治療や服薬の継続、周囲との摩擦、経済的不安、就労の難しさなど、日常的に強いストレス要因を抱えやすいのです。これが長期化すると、心身が疲弊し、二次障害を発症しやすくなります。
3. 自己肯定感の低下
失敗体験が重なると「自分はダメだ」「社会に居場所がない」と感じやすくなります。この自己肯定感の低下が、不安障害やうつ症状の発症を招きます。自己評価が下がれば下がるほど、立ち直る力が弱まり、二次障害が慢性化するリスクが高まるのです。
精神障害に伴う二次障害の種類と症状

精神障害における二次障害は、その人の一次障害の種類や置かれている環境、支援体制によって現れ方が異なります。ここでは代表的な症状や併発しやすい障害を整理して紹介します。これらを理解することは、本人の早期対応や支援方針を立てる上で非常に重要です。
うつ病の併発
最も多く見られる二次障害のひとつが「うつ病の併発」です。
発達障害(ASD・ADHD・LDなど)や不安障害を持つ人は、日常生活で失敗体験を繰り返したり、周囲からの理解不足によって強いストレスを抱えやすくなります。その結果、「自分は役に立たない」「社会で生きづらい」と自己否定感を強め、うつ症状を発症するケースが少なくありません。
特に以下のような状況では注意が必要です。
- 学校や職場での継続的ないじめ・ハラスメント
- 過度のプレッシャーや失敗体験の積み重ね
- 支援者や理解者が身近にいない孤立した環境
うつ病が併発すると、意欲低下や集中力の低下、睡眠障害が起こり、一次障害の症状もさらに悪化しやすくなります。
不安障害・パニック障害
二次障害として「不安障害」や「パニック障害」が現れる人も多くいます。
社会的ストレスや対人関係の緊張が続くと、心が常に「警戒モード」になり、動悸や発汗、呼吸困難などの身体症状を伴うパニック発作につながることがあります。
たとえば、次のような場面で症状が誘発されやすいです。
- 満員電車や会議室など逃げ場のない空間
- 発表や面接など人前で強い緊張を伴う状況
- 過去のトラウマを思い出させる環境
不安障害が悪化すると外出や人付き合いを避けるようになり、社会生活からの孤立を招くこともあります。結果として、一次障害以上に生活の制限が強まりやすいのが特徴です。
依存症(アルコール・薬物・ネット)
ストレスや孤独感への「対処行動」として依存症を発症するケースもあります。代表的なのはアルコール依存症・薬物依存症ですが、近年ではインターネットやスマートフォン、ゲーム依存なども深刻化しています。
依存症が二次障害として現れるのは、以下のような背景が多いです。
- 強い不安や孤独感を一時的に紛らわせたい
- 現実から逃避する手段として利用する
- 周囲に相談できず、自分なりの「解決策」として依存に走る
依存行動は短期的にはストレス軽減の効果を持ちますが、長期的には健康・人間関係・経済状況をさらに悪化させ、二次障害を複雑化させてしまいます。
身体症状(心身症)
二次障害は心の問題だけでなく、身体症状として現れることもあります。これを「心身症」と呼びます。
よく見られる心身症の例としては:
- 不眠症:寝つきが悪い、中途覚醒が多い、熟睡感がない
- 摂食障害:過食・拒食など食行動の乱れ
- 頭痛・めまい:慢性的な緊張や不安が原因で起こる
- 胃腸不調:腹痛や下痢、便秘が続く
これらの身体症状は検査をしても原因が明確に特定できないことが多く、「気のせい」と片付けられてしまいがちです。しかし実際には精神的なストレスが身体に反映された結果であり、二次障害の重要なサインと捉えるべきです。
自傷行為・希死念慮
二次障害が最も深刻化した場合に見られるのが、自傷行為や希死念慮(死にたい気持ち)の出現です。
- 手首を切る、頭を打ちつけるなどの行為
- 「消えたい」「生きているのがつらい」といった発言
- 過剰な危険行動(無謀な運転や過量服薬)
こうした行動やサインは、長期にわたって適切な支援が得られなかった場合に強く表れます。本人の苦しみは「助けを求めるSOS」であり、決して「注意を引くため」ではありません。周囲は軽視せず、早急に医療や専門機関へつなげる必要があります。
二次障害が起こる原因
二次障害は「一次障害そのものの特性」だけでなく、環境・心理・社会的要因・支援不足といった複数の要因が重なり合って発生します。原因を理解することは、予防や早期対応につなげるために欠かせません。
環境要因
学校や職場など、日常生活を送る環境は二次障害の発症に大きく影響します。
- いじめ・パワハラ
発達障害や精神障害を持つ人は、特性ゆえに誤解されやすく、いじめや職場でのパワハラの対象になりやすい傾向があります。継続的な攻撃は大きな心理的ダメージを与え、うつ病や不安障害を誘発します。 - 家族関係のストレス
家庭は本来「安心の場」であるべきですが、家族の理解不足や過干渉、否定的な言葉が続くと本人の心を大きく傷つけます。結果として「自分は受け入れられない存在だ」という感覚が強まり、自己肯定感が低下します。
心理要因
一次障害を持つ人は、日常で繰り返す失敗や周囲との摩擦を通じて心理的に大きな負担を抱えます。
- 自己肯定感の低下
できないことを責められる経験が積み重なると「自分は無価値だ」という思い込みに陥りやすくなります。これは二次障害の温床となる代表的な心理要因です。 - 劣等感
「普通にできない自分」への強い劣等感を抱くと、人間関係を避けたり挑戦を諦めたりするようになります。閉じこもりや孤立はうつ症状や依存行動へとつながりやすいのです。
社会的要因
社会の中に存在する偏見や誤解も大きなリスク要因です。
- 差別的対応
「精神障害=怠け」「発達障害=わがまま」といったレッテルを貼られることがあります。こうした差別的な視線は本人を孤立させ、支援を求める意欲を奪ってしまいます。 - 制度利用へのハードル
障害者手帳や支援制度に対して「特別扱いだ」という誤解が根強いことも、支援につながる妨げになります。結果として必要なサービスが受けられず、症状を悪化させてしまいます。
治療・支援不足
二次障害の大きな原因として「適切な医療や支援に早くつながれないこと」が挙げられます。
- 診断の遅れ
精神障害は外見から分かりにくいため、診断までに時間がかかることが多いです。その間に症状が進行し、二次障害を併発するリスクが高まります。 - 支援体制の不足
地域によっては専門機関や支援者が少なく、相談しても適切なサポートにつながらないことがあります。この「支援の空白期間」が二次障害を深刻化させる大きな要因です。
二次障害を予防するためのポイント

二次障害を防ぐには、原因を理解するだけでなく、日常生活や環境の中での具体的な工夫と支援活用が必要です。
早期発見・早期対応
小さなサインを見逃さずに対応することが予防の第一歩です。
- 不眠が続く
- 食欲が極端に増減する
- これまで楽しめたことに興味を失う
こうした変化は「心の不調のサイン」であり、放置すると二次障害へ発展する可能性があります。家族や周囲も気づきを持ち、早めに医療機関へつなぐことが重要です。
環境調整
学校や職場では「合理的配慮」がキーワードになります。
- 職場での例:残業の軽減、静かな作業環境の確保、業務内容の明確化
- 学校での例:座席配置の工夫、テスト時間延長、相談できる先生の配置
また家庭内では、否定や叱責よりも「安心できる雰囲気」を意識することが大切です。
ストレスマネジメント
ストレスをうまく解消する工夫も予防につながります。
- 認知行動療法(CBT):考え方の癖を修正し、ネガティブ思考を緩和する
- マインドフルネス:呼吸や感覚に意識を集中し、心を落ち着ける
- 趣味・リフレッシュ:散歩・音楽・読書など、自分に合った方法を見つける
日常的に「気持ちを切り替える習慣」を持つことが効果的です。
セルフケア
心身の健康を保つためには、生活習慣の安定が欠かせません。
- 睡眠:毎日同じ時間に寝起きする
- 食事:栄養バランスを意識し、過度な偏食を避ける
- 運動:軽いウォーキングやストレッチでも効果あり
セルフケアは小さな積み重ねですが、二次障害の予防に直結します。
支援機関の利用
一人で抱え込まず、専門機関を積極的に利用することも重要です。
- ハローワークの障害者雇用窓口
- 就労移行支援事業所
- 相談支援事業所や地域生活支援センター
こうした公的・民間のサポートを活用することで、就労や生活面での安心感が増し、二次障害を防ぎやすくなります。
二次障害が仕事や生活に与える影響
二次障害は、単に「症状が増える」というだけではなく、学業・就労・人間関係・生活全般にまで広範な影響を及ぼします。ここでは代表的な影響を整理してみましょう。
学業・就労への影響
- 集中力の低下
不安や抑うつが強まると、授業や業務に集中できなくなり、学習効率や生産性が大きく落ちてしまいます。 - 欠席・欠勤の増加
体調不良や気分の波により、学校や職場を休む回数が増えがちです。結果として成績不振や評価低下につながり、さらに自己肯定感を下げる悪循環に陥ります。 - 職場不適応
上司や同僚に症状を理解してもらえない場合、職場で孤立し「働きづらさ」が増します。最悪の場合は離職に至り、再就職の困難さから生活不安へと直結します。
人間関係への影響
- 孤立
症状を理解してもらえないことで、友人や同僚との交流を避けがちになります。 - 誤解
不安や抑うつのサインを「気分屋」「怠け」と捉えられてしまうことがあります。誤解は信頼関係を損ない、対人関係の摩擦を深めます。 - トラブルの増加
感情コントロールが難しくなることで、衝突やトラブルに発展するケースも少なくありません。これも二次障害による生活のしづらさを増幅させます。
生活面のリスク
- 経済的困窮
休職・離職によって収入が減少し、生活費や医療費の負担が大きくなります。 - 依存症による借金
アルコール・薬物・ギャンブルなどに依存してしまうと、金銭問題を抱えるリスクが急増します。 - 家庭不和
経済的・精神的なストレスが家庭内に持ち込まれ、夫婦関係や親子関係に悪影響を与えることもあります。
支援制度と利用できるリソース
二次障害を軽減するためには、医療・福祉・就労・家族支援といった多方面のリソースを活用することが大切です。
医療支援
- 精神科・心療内科での診断と治療
専門医の診断を受けることで、二次障害がどのように発症しているのかを明確にし、薬物療法や心理療法による改善が可能です。
福祉サービス
- 障害者手帳
障害者手帳を取得することで、交通費割引や就労支援サービスを利用しやすくなります。 - 自立支援医療制度
医療費の自己負担を軽減し、継続的な治療を受けやすくする制度です。 - 障害年金
働くことが難しい場合の生活保障となります。特に長期の二次障害に苦しむ人にとって重要な支えです。
就労支援
- 障害者雇用枠
法定雇用率に基づき、障害を持つ人が働きやすい環境で就労できる枠組みです。合理的配慮を受けやすいメリットがあります。 - 就労移行支援事業所
訓練や実習を通じて、職場に適応する力を養うための支援機関です。働きたいけれど自信がない人に有効です。
家族向けサポート
- 家族会
同じ立場の家族同士が情報を共有し、支え合う場です。孤立感を軽減し、家族自身のメンタルを守る効果があります。 - ピアサポートグループ
当事者や家族同士が経験を分かち合うことで、孤独を和らげ、回復への希望を持ちやすくなります。
まとめ
精神障害に伴う二次障害は、本人の弱さや努力不足が原因ではなく、環境や支援不足によって起こりやすいものです。
しかし、
- 早期の対応
- 環境の調整
- 医療・福祉・就労支援の活用
といった取り組みによって、予防や改善は十分に可能です。
回復への近道は、当事者・家族・職場が連携し、それぞれが正しい理解とサポートを行うことです。孤立させず、共に支える姿勢が、本人の安定した生活や就労、そして社会全体の理解促進につながります。
二次障害は防ぐことも、乗り越えることもできます。大切なのは「ひとりで抱え込まない」ことです。周囲の支援と専門的なリソースを活用しながら、安心して生活できる環境を整えていきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









