- カテゴリー
精神障害のある人にかけてはいけない言葉・かけたい言葉|家族や職場での正しい接し方

この記事の内容
はじめに
精神障害は、外見からはわかりにくい「目に見えにくい障害」です。周囲からの声かけや接し方が、本人の安心感や回復意欲に大きな影響を与えます。
たとえば、何気なく言った「頑張れ」という言葉がプレッシャーとなり、相手を追い詰めてしまうことがあります。一方で、「無理しなくていいよ」という一言が、心を軽くし「ここにいていいんだ」と感じさせることもあります。
本記事では、精神障害のある人にかけてはいけない言葉・かけたい言葉の具体例を紹介しながら、家庭や職場でできる正しい接し方の工夫を解説します。家族や同僚、上司として「どう声をかければいいのか分からない」と悩んでいる方に、実践的なヒントをお届けします。
精神障害のある人にかけてはいけない言葉とは?

精神障害のある人に対しては、善意であっても無自覚に傷つけてしまう言葉があります。ここでは代表的なNGワードと、その理由を解説します。
典型的なNGワードと理由
「頑張れ」
一見すると前向きな応援の言葉ですが、すでに本人は「十分に頑張っている」ことが多いです。そのため「もっと努力しろ」と受け取られ、プレッシャーや自己否定感を強めてしまいます。特にうつ病や不安障害の人にとっては「これ以上どう頑張ればいいのか」と追い詰められる危険性があります。
「気の持ちようだよ」
この言葉は、病気の本質を「気のせい」に矮小化してしまいます。精神障害は脳や神経伝達物質の不調、ストレス要因などが複雑に絡んで起こる医学的な症状です。「気持ちの問題」と片付けることは、理解不足と受け取られ「分かってもらえない」という孤独感を強めます。
「怠けているだけでしょ」
意欲低下や強い疲労は、精神障害の症状そのものです。にもかかわらず「怠け」と決めつけることは、人格否定に近い衝撃を与えます。家族や職場の人にこう言われると「自分はだめな人間なんだ」と思い込み、回復が妨げられるケースも少なくありません。
「みんな同じように大変だよ」
苦しみの個別性を無視した発言です。精神障害のある人の辛さは「他の人と同じ大変さ」ではありません。比較して軽んじる言葉は「理解してもらえない」という諦めにつながります。
障害別|かけてはいけない言葉の具体例
うつ病の場合
- 「気分転換すれば治るよ」
うつ病は脳の神経伝達物質のバランスが崩れている状態で、気分転換だけで改善するものではありません。「努力すれば治る」と誤解されやすいため、この表現は避けるべきです。 - 「もっと前向きにならなきゃ」
本人が「前向きになれないこと」自体に苦しんでいます。これを指摘すると自己否定感を強めてしまいます。
不安障害(パニック障害・社交不安障害など)の場合
- 「気にしすぎだよ」
強い不安や恐怖は「気にしすぎ」ではなく症状そのものです。この言葉は「理解されない」という孤立感を深めます。 - 「考えすぎなんじゃない?」
過剰な不安や予期不安は、本人が意識してやめられるものではありません。無責任に言うことで「やめられない自分はダメだ」とさらに不安を悪化させる危険があります。
統合失調症の場合
- 「幻覚や妄想なんて気のせいだよ」
幻覚・妄想は病気の症状であり、本人にとっては「現実」として強烈に体験されています。気のせいと否定するのは強い不信感や孤立感を招きます。 - 「普通に考えてみてよ」
症状のあるときは「普通に考える」こと自体が難しいため、否定や叱責ではなく、安心できる環境を整えることが優先されます。
双極性障害の場合
- 「そんなに元気なら治ったんでしょ?」
躁状態では一見元気に見えますが、実際は症状の一部です。軽く扱うと病気理解が乏しいと受け取られます。 - 「どうせまた落ち込むんでしょ」
再発や波を予測する言葉は、本人の希望を奪い「どうせ治らない」と思わせるリスクがあります。
発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど)の場合
- 「努力が足りないんじゃない?」
特性による困難(忘れやすさ・感覚過敏・こだわりなど)を「努力不足」と結びつけると、自己肯定感を大きく傷つけます。 - 「空気を読んで行動してよ」
暗黙のルールや非言語的なやりとりが難しい特性があるため、曖昧な要求は混乱を生みます。具体的な指示が必要です。
PTSD・トラウマ関連障害の場合
- 「そのくらい忘れればいいじゃない」
トラウマ体験は意志で忘れられるものではありません。むしろ「忘れられない自分」を責めるきっかけになります。 - 「昔のことにこだわりすぎだよ」
過去の出来事へのこだわりではなく、フラッシュバックや過覚醒といった症状です。軽視する言葉は再体験を悪化させる場合があります。
無意識に出やすい言葉への注意
NGワードは明らかなものばかりではありません。善意や励ましのつもりで言った一言が、相手を傷つけることもあります。
- 「まだ若いんだから」
→ 年齢を理由に「回復すべき」「頑張れるはず」と決めつけてしまう危険性があります。 - 「そのくらい普通でしょ」
→ 個人差のある症状や困難を矮小化し、理解してもらえないと感じさせます。
こうした表現は、言った側に悪意がなくても受け手にとっては強い否定として響きます。日常会話の中で特に注意が必要です。
精神障害のある人にかけたい言葉とは?

では反対に、どのような言葉が本人に安心感や希望を与えるのでしょうか。ここでは実際に家庭や職場で効果のあった「かけたい言葉」の例を紹介します。
安心感を与える言葉
「無理しなくていいよ」
本人が「頑張らなければ」と思い込んでいるときに、この言葉は心を軽くします。安心できる環境があることを実感できるため、過度な自己負担を減らせます。
「そばにいるからね」
孤独感や不安を抱える人にとって「一人じゃない」というメッセージは大きな支えになります。具体的に何かをする必要はなく、「一緒にいる」こと自体が力になります。
気持ちを受け止める言葉
「つらかったね」「大変だったね」
相手の感情を否定せず、そのまま受け止める言葉は非常に大切です。「理解してもらえた」という実感が得られるだけで、回復への一歩になります。
自己肯定感を支える言葉
「できていることもたくさんあるよ」
症状があると、本人は「自分には何もできない」と思い込みがちです。できている部分を具体的に指摘して伝えることで、自己肯定感を取り戻すきっかけになります。
「あなたの存在自体が大事だよ」
成果や行動に関係なく、存在そのものを認める言葉は、強い安心感を与えます。特に家庭でこの言葉を伝えることは、本人が「自分の居場所」を感じるために効果的です。
実際に職場や家庭で効果のあった声かけ事例
- 職場で、上司が「体調に合わせてペースを調整していいからね」と声をかけたことで、休職せずに働き続けられた例
- 家族が「今日は一緒にゆっくり過ごそう」と声をかけたことで、本人が安心して気持ちを打ち明けられた例
- 同僚が「できる部分を一緒に進めよう」と伝え、業務の一部をサポートしたことで、本人が孤立感から解放された例
こうした小さな声かけの積み重ねが、本人の安心感や社会参加の継続につながります。
言葉だけでなく「態度」も大切
精神障害のある人への接し方は、言葉選びだけではなく「態度」や「非言語的なコミュニケーション」も大きな意味を持ちます。どれほど適切な言葉を選んでも、表情や声のトーンが冷たければ、本人は「本当は分かってもらえていない」と感じてしまうものです。
非言語的コミュニケーションの重要性
表情・声のトーン・姿勢といった「非言語的要素」は、安心感を伝える大切な手段です。穏やかな声でゆっくり話す、優しくうなずくといった態度だけでも、相手は「受け入れられている」と感じられます。反対に、焦った口調や不機嫌そうな態度は、無意識のうちにプレッシャーを与えてしまうことがあります。
沈黙を尊重する
精神障害のある人は、気持ちをうまく言葉にできないことがあります。そのとき、無理に話させようとするとかえって追い詰めてしまいます。沈黙の時間も「大切なコミュニケーションの一部」と考え、静かに寄り添うことが大切です。
具体的なサポートの提案
「大丈夫?」と聞くだけではなく、「一緒に病院に行こうか?」「買い物に付き添おうか?」と具体的な行動を伴う提案が効果的です。本人は「頼っていいんだ」と感じられ、孤立感がやわらぎます。
家族ができる声かけと接し方
家庭はもっとも身近な支援の場です。日常的なやりとりの中で、小さな安心を積み重ねることが回復に大きく影響します。
家庭での実践例
- 食事の際に「ありがとう」と伝える
- 小さな行動にも「助かったよ」と感謝を示す
- 調子が悪いときは「無理しなくていいよ」と一言添える
これらは特別なことではなく、日常の中で誰でもできる声かけです。しかし、こうした小さな習慣が「自分は役に立っている」「存在を認められている」という実感を生み出します。
共倒れを防ぐための工夫
家族が一生懸命支えようとしても、支える側の心身が疲弊してしまうことがあります。これを「共倒れ」と呼びます。
共倒れを防ぐには、家族自身も支援機関や家族会を活用することが大切です。同じ立場の人と交流し、悩みを共有することで「一人で背負わなくていい」と感じられるようになります。
職場での声かけと配慮

精神障害のある社員にとって、職場の理解と配慮は就労継続の鍵です。特に上司や同僚の言葉選びと態度が、本人の働きやすさを大きく左右します。
上司・同僚としての言葉選び
「大丈夫?」と聞くと、本人は「大丈夫です」と答えざるを得ない場合が少なくありません。それよりも「困っていることある?」と具体的に尋ねる方が、本音を引き出しやすく、サポートのきっかけにつながります。
また、定期的な声かけで「相談していい雰囲気」を作ることが重要です。一度きりの確認ではなく、「小さな困りごとも話していいんだ」と感じられる環境こそ、長期的な就労継続に直結します。
職場で避けるべき言動
- 噂話をする
- 「あの人は精神的に弱い」とレッテルを貼る
- 「配慮しすぎでは?」と否定的な態度を取る
こうした言動は無意識のうちに「いじめ」や「差別」につながり、最悪の場合、退職や再発の原因になります。実際に、精神障害のある人の離職理由には「職場での理解不足やいじめ」が大きな割合を占めています。
職場全体への周知と組織的な配慮
配慮が徹底されない背景には、個人の善意や気づきに頼ってしまうことが多い点があります。つまり「一人称=自分がどう思うか」だけで判断してしまい、「組織全体でどう取り組むか」という視点が欠けているのです。
- 上司だけが理解しても、同僚が無理解なら孤立は防げない
- 一部の部署で配慮しても、異動先で理解がなければ継続は難しい
- 表面上のマニュアルだけでは、現場の雰囲気や人間関係に反映されにくい
だからこそ、企業として「障害者雇用は組織全体で支えるべき課題」であると位置づけ、定期的な研修や周知を行うことが不可欠です。
合理的配慮の一環としてのコミュニケーション
精神障害のある人への「合理的配慮」は、業務調整や勤務時間の配慮にとどまりません。
- 分かりやすい説明
- 定期的な確認
- 安心感を与える声かけ
これらも立派な合理的配慮であり、職場全体で共有すべき「文化」として根づかせる必要があります。
支援機関や専門家の活用
家族や職場だけで抱え込まず、専門機関を活用することも大切です。第三者の支援が加わることで、本人も周囲も安心して対応できます。
相談先一覧
- 精神保健福祉センター:地域ごとに設置されており、相談や情報提供が受けられる
- 保健所・市区町村の相談窓口:生活支援や制度利用に関する相談
- 医療機関(精神科・心療内科):診断・治療・家族相談
- 就労支援機関(就労移行支援・ジョブコーチ制度):職場での適応をサポート
専門家による声かけアドバイスを受けるメリット
精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家は、当事者に合わせた声かけの方法をアドバイスしてくれます。家族や職場の人が「どう声をかけたらいいかわからない」と悩んでいるときに、専門家の助言は大きな支えとなります。
まとめ|メッセージ
精神障害を持つ人への声かけで大切なのは、「励ますこと」ではなく「寄り添うこと」です。
一人ひとりの小さな配慮が、誰もが安心して働き、生きられる社会をつくります。
- 家族は、日常の中で「ありがとう」「無理しなくていいよ」と伝えること
- 職場は、合理的配慮として言葉選びや態度を工夫し、いじめや孤立を絶対に生まないこと
- 社会全体は、支援機関や専門家を活用しながら「支え合う仕組み」を広げること
もし周囲が正しい理解を持てば、精神障害のある人は決して孤独ではなく、安心して生活や仕事を続けられます。
そして当事者の方へ。あなたは弱いのではなく、すでに十分に戦ってきています。
声を上げること、支援を求めることは「甘え」ではなく「勇気」です。最後に強く伝えたいのは――
「一人の理解と優しさが、社会全体を変える力になる」ということです。
小さな声かけや態度の積み重ねが、回復への大きな力となり、やがて誰もが安心して共に働ける未来へとつながっていきます。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。








