2025/08/30
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網膜色素変性症の雇用課題とは|企業が採用をためらう理由と就職率を高める方法

はじめに

網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)は、視野が徐々に狭くなり、進行すると失明に至る可能性がある進行性の視覚障害です。日本国内にも数万人の患者がいるとされており、希少疾患のひとつですが、就職においては高いハードルがあるのが現実です。

「採用しても長く働けないのではないか」「業務を切り出すのが難しそうだ」と考える企業も少なくありません。結果として、本人の能力や意欲があっても、採用の入り口で門戸が狭まってしまうケースが多いのです。

本記事では、網膜色素変性症を持つ方の雇用において企業が採用をためらう理由を整理し、その課題をどのように解決すれば就職率を高められるのかを考えていきます。


網膜色素変性症とは?雇用に影響する特徴

網膜色素変性症は、網膜にある「視細胞」が徐々に働かなくなる遺伝性の疾患です。進行スピードや症状の出方には個人差があり、早い人では10代から、遅い人では中年期以降に症状が現れる場合もあります。

代表的な症状には次のようなものがあります。

  • 夜盲(やもう):暗い場所や夜間に極端に見えにくくなる
  • 視野狭窄(しやきょうさく):トンネル視と呼ばれるように視界が狭まる
  • 視力低下:眼鏡をかけても細かい文字や遠くのものが見えにくい

これらの症状は通勤や職場での業務に直結します。たとえば、夜盲があると夜間の移動や暗い倉庫での作業は困難になりますし、視野狭窄により人混みでの移動や物の配置確認に支障が出ることもあります。

さらに「見えにくさ」には大きな個人差があるため、企業側からは「どこまで任せられるのか」がイメージしにくい点も課題になります。


企業が採用をためらう理由

進行性に対する不安

企業が最も懸念するのは「進行性」という特性です。

  • 今は働けていても、数年後には業務が難しくなるのではないか?
  • 長期的に戦力として見込めないのではないか?

このような不安から採用自体を見送るケースがあります。しかし実際には、進行スピードには個人差が大きく、短期的には十分に戦力になる方も少なくありません。

業務切り出しの難しさ

もう一つの壁は、業務の切り出しです。

  • 視覚に依存する業務が多く、どこを任せれば良いのか分からない
  • 具体的な職務設計をイメージできない

結果として「受け入れられない」と判断されてしまうことがあります。本来はPC業務やコールセンター、文書作成など対応可能な業務があるのに、理解不足によって機会が失われているのです。

職場理解とノウハウ不足

さらに、職場全体の理解不足も大きな課題です。

  • 視覚障害に対する認知度が低く、どんな配慮が必要か分からない
  • 「配慮=特別扱い」と誤解されやすい

実際には、照明環境の改善音声読み上げソフトの導入など、大きなコストをかけずにできる配慮は多く存在します。しかし、それを知らないことで企業側が「障害者雇用は難しい」と過剰に構えてしまうのです。

理解度を高めるためには、正しい情報を得る機会が欠かせません。

  • ハローワークの障害者雇用支援窓口
  • 地域の就労支援センター
  • 就労移行支援事業所
  • 職場に入ってサポートしてくれるジョブコーチ制度

これらの専門機関からアドバイスを受けることで、企業は「何をどう配慮すればよいのか」を具体的に学べます。

そして何より大切なのは、企業自らが動いて理解を深める姿勢です。社員研修や外部セミナーの活用など、学ぶ努力を続けることで、結果的に「雇用率を満たすための採用」から「戦力としての採用」へと意識が変わります。

視覚障害に対する正しい理解は、網膜色素変性症の人に限らず、他の障害者雇用やダイバーシティ推進にもつながります。

就職率を高めるための配慮と工夫

ICTツールの活用

網膜色素変性症の「見えにくさ」を補ううえで、ICTの活用は欠かせません。

  • 音声読み上げソフト:パソコンやスマートフォン上の文字を音声に変換し、目の負担を減らせる。
  • 画面拡大機能:文書や表を拡大表示することで細かい作業が可能になる。
  • スマホのアクセシビリティ機能:文字の拡大やカラー反転など標準機能を使えば、特別な機器を導入せずに環境を改善できる。

さらに、在宅勤務やクラウドツールの導入により、通勤時のリスクを減らしながら仕事を継続しやすくなります。

職務の明確化・切り出し

企業側が就職をためらう大きな理由の一つは「どんな業務を任せられるのか分からない」という点です。そこで重要になるのが職務の明確化です。

  • データ入力や資料作成
  • コールセンター業務(聴覚・会話力を活かす)
  • 文書作成やライティング業務

これらは具体的な業務例であり、さらに反復作業やルーチン業務を分担することで、即戦力として活躍してもらえるケースは多くあります。

柔軟な働き方の導入

勤務時間や働き方の柔軟性は、就職率を高める大きなカギです。

  • 時差出勤:混雑した通勤時間を避けられる
  • 在宅勤務:移動の負担を軽減しつつ生産性を維持できる
  • 短時間勤務:疲労が強いときも無理せず働き続けられる

こうした制度は障害のある社員だけでなく、全社員の働きやすさ向上につながります。

支援制度の積極的活用

企業が不安を感じるときこそ、公的支援を活用することが有効です。

ジョブコーチによる職場定着支援

ジョブコーチは、障害のある方の職場適応を支援する専門スタッフです。職場に入り、本人と企業の双方をつなぎながら、業務の進め方や環境改善を一緒に考えていきます。

「配慮の仕方が分からない」「特別な対応が必要では?」といった企業の不安を解消し、本人が安心して働き続けられるように支えるのが役割です。

ジョブコーチは全障害に対応できるのか?

ジョブコーチは身体障害・知的障害・精神障害など幅広い障害に対応できるよう専門研修を受けています。もちろん個別の症状すべてを深く知っているわけではありませんが、「障害特性をどう職場環境に落とし込むか」 という視点でサポートできるのが強みです。つまり、網膜色素変性症のような視覚障害でも、具体的な業務や環境を一緒に調整する力があります。

産業医との違い

  • 産業医:医学的な視点から社員の健康・労働環境をチェックする立場。
  • ジョブコーチ:実際の職場現場に入り、業務・人間関係・配慮の仕組みを整える立場。

両者は役割が異なり、むしろ補完関係にあります。医学的な診断だけでは分からない「現場でどう配慮するか」を具体的に示せるのがジョブコーチです。

今から積極的に使う意味

ジョブコーチ制度は、障害者雇用を始める企業にとって大きな支えになりますが、それだけではありません。

・将来的に社員が病気や障害を抱えたときの備えになる
・一般社員にとっても「働きやすい職場づくり」のノウハウが社内に蓄積される
・障害者雇用率の達成を超えて、企業の持続的な人材戦略につながる

だからこそ、「ジョブコーチを積極的に活用し、採用と体制作りを今から始めることが、企業の未来への投資」 だと強く伝えるべきだと思います。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般就労を目指す障害のある方をサポートする施設です。ここでは、パソコンスキルやビジネスマナー、コミュニケーションスキルなどを訓練できます。

例えば、網膜色素変性症の方であれば、音声読み上げソフトや拡大機器を実際に使いながらPC訓練を受けられるため、入社後もスムーズに業務に馴染めます。

企業側にとっても、就労移行支援事業所を経由することで「実務に近いスキルを持った人材」に出会いやすくなり、採用の安心感が増します。また、事業所スタッフが企業との橋渡し役になるため、採用後の不安を減らす効果もあります。


助成金・補助金制度

障害者雇用を進める企業には、国や自治体が用意している助成金・補助金制度があります。たとえば、

  • 職場環境の整備費用(照明改善・ソフトウェア導入など)
  • サポート人材の配置費用(ジョブコーチや支援員の活用)
  • 在宅勤務やテレワーク導入の支援

これらに助成金を活用できるため、企業はコスト面で無理なく雇用を実現できます。

「障害者雇用はコストがかかるのでは?」と不安に思う企業も少なくありませんが、助成制度を上手に使えば、採用から定着までの負担を大幅に軽減できるのです。


実際の事例紹介

すでに多くの方が工夫と支援を活用して働いています。

  • 在宅ライターとして活躍:音声入力ソフトを使い、記事やコンテンツを制作。
  • テレワーク事務職での採用:データ入力や文書整理を自宅で継続。
  • 視覚障害者雇用枠での事務補助:音声ソフトを組み合わせ、会議資料や経理データの入力を担当。

企業側からも「業務改善につながった」「多様性推進により職場の雰囲気が良くなった」といった前向きな声が挙がっています。


企業・社会にとってのメリット

網膜色素変性症の方を採用することは、単に雇用率の達成だけではありません。

  • 多様な人材を活かす機会:異なる視点を取り入れることで組織力が強化される。
  • ICT・在宅勤務の整備:結果的に全社員の生産性や満足度を高める。
  • CSR・SDGsの推進:社会的責任や持続可能性の観点から企業価値が高まる。

つまり、障害者雇用は「コスト」ではなく「投資」であり、企業の成長戦略の一部といえます。


まとめ

網膜色素変性症の就職は、確かに現実としてハードルがあります。進行性であること、視覚に依存する業務が多いことから、採用をためらう企業がいるのも事実です。

しかし、配慮と工夫次第で十分に活躍できる職場は存在します。ICTツールや柔軟な働き方、支援制度を積極的に導入すれば、就職率は確実に高まります。

企業には「できない理由」を探すのではなく、「どうすればできるか」を考える姿勢が求められます。👉 読者へのメッセージ:
「進行性の障害があっても働ける場所は必ずあります。就職率を高めるためには、本人・企業・支援機関が一体となり、前向きに取り組むことが不可欠です。」

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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