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義足・義手が必要になる病気や事故とは?切断の理由とリハビリの実際

この記事の内容
はじめに

「もし突然、歩くことも、手を動かすこともできなくなったら──」
義足や義手は、交通事故や病気などで手足を失った方が再び生活を取り戻すための大切な補装具です。単なる器具ではなく、「人生を支えるもう一つの足・手」として、社会参加や仕事、趣味の継続に大きな役割を果たします。
しかし実際には、「なぜ切断に至るのか」「どんな病気や事故が関係しているのか」といった背景は一般的にあまり知られていません。四肢の切断は誰にでも起こり得る可能性があり、特に糖尿病や血管障害のように生活習慣に起因するものは、高齢化が進む日本で増え続けています。
義足や義手を使う方の多くは、「失ったから仕方なく使う」のではなく、「これからも自分らしく生きるために選ぶ」という前向きな選択をしています。その背景を知ることは、当事者への理解を深め、家族や職場、地域社会での適切な支援につながります。
本記事では、
- 義足・義手が必要になる主な病気や事故の原因
- 医師が切断を判断する基準
- その後のリハビリや生活再建の流れ
をわかりやすく解説します。医療や介護に携わる方はもちろん、企業の人事担当者や教育関係者にとっても「支援の第一歩」となる内容です。
義足・義手が必要になる主な病気や事故
交通事故や外傷
最も多い原因の一つが、交通事故や労災事故といった外傷です。
- 車やバイク事故では、衝撃によって骨や血管が大きく損傷し、回復が困難な場合に切断を余儀なくされることがあります。
- 工場や建設現場での労働災害も同様に、重機や機械による事故で四肢の損傷が激しい場合、切断が選択されるケースがあります。
- 外傷後に感染症を併発し、壊死が広がった結果、命を守るために切断に至る場合も少なくありません。
事故は突発的に起こるため、誰にでも起こりうるリスクといえます。
骨肉腫(悪性腫瘍)
骨肉腫や他の肉腫など、悪性腫瘍が手足に発生するケースもあります。
がんが進行すると、患部を温存するよりも切断によって転移や再発のリスクを抑える方が望ましいと判断される場合があります。
- 骨肉腫は若年層に多い病気であり、特に10代の患者さんが義足を使用して社会復帰する事例もあります。
- 医療技術の進歩により、手術後の義足・義手装着率は高く、適切なリハビリを行うことで学業や仕事に復帰している方も少なくありません。
糖尿病による合併症(壊疽)
日本で近年増えているのが糖尿病性壊疽による切断です。
糖尿病によって血流が悪化し、足に潰瘍や壊疽(組織の腐敗)が起きると、感染が進行して切断が避けられなくなる場合があります。
- 特に高齢者の糖尿病患者では、足のしびれや感覚の低下から症状に気づかず、病状が悪化してしまうことが多いです。
- 世界的にも糖尿病性壊疽は切断理由の上位を占めており、日本でも社会的課題の一つとなっています。
血管障害(閉塞性動脈硬化症など)
糖尿病に限らず、動脈硬化が進行することで手足の血流が不足し、組織が壊死することがあります。代表的なものが閉塞性動脈硬化症です。
- 動脈が詰まって血液が流れなくなると、手足が冷える・色が変わるといった症状が現れます。
- 重症化すると潰瘍や壊死を引き起こし、最終的に切断に至ることもあります。
心臓病や喫煙習慣がある方はリスクが高く、早期の血管治療や生活習慣改善が予防につながります。
先天性の四肢欠損
事故や病気ではなく、生まれつき手や足の一部が欠損している場合もあります。
この場合、成長に合わせて義手・義足を装着することが検討されます。
- 幼少期から使用することで、歩行や動作の習得がスムーズになり、社会参加の幅が広がります。
- 義手・義足は「失った機能を補うもの」というイメージがありますが、先天性の場合は「生まれながらの機能を補うもの」として重要な役割を果たしています。
切断に至る判断基準とは?

義足・義手が必要になる背景には、必ず「切断を行う」という医師の判断があります。その判断は非常に重く、患者の命と生活の質を左右するものです。
患部の壊死や感染
壊死や感染が進行すると、全身に細菌が広がるリスク(敗血症)が高まり、命に関わります。
そのため「命を守るための緊急判断」として、切断が選択されることがあります。
がんや腫瘍の進行
骨肉腫や軟部肉腫などの悪性腫瘍では、腫瘍の広がりを抑えるために切断が必要になることがあります。
医師は「患部を温存できるか」「切断によって再発リスクを減らせるか」という点を慎重に検討します。
生活の質(QOL)の向上を目的とした判断
必ずしも命の危険が迫っている場合だけではありません。
- 激しい痛みや感染を繰り返して生活が制限される場合
- 歩行や手の使用が困難で、社会参加が著しく制限される場合
このようなときには、「義足や義手を使用した方が活動の幅が広がり、生活の質が向上する」と判断されることもあります。
切断後のリハビリの実際

四肢を切断したあと、すぐに義足や義手が使えるわけではありません。手術直後から段階的にリハビリを進め、身体と心を整えていく必要があります。
急性期リハビリ(手術後)
切断直後は、まず傷の治癒と感染予防が最優先です。創部の清潔を保ちつつ、合併症を防ぐケアが行われます。
また、長期の安静で体力が落ちないように、ベッド上での運動や呼吸訓練など体力維持のリハビリも並行して行われます。
義足・義手装着の練習
傷が安定してくると、義足や義手を装着する練習が始まります。
- 義肢装具士によるフィッティングで、体に合ったサイズや形を調整
- 理学療法士の指導のもとで歩行訓練や、義手による物の把握訓練を実施
はじめはぎこちなくても、継続的に練習することで徐々に日常動作が可能になります。
心理的リハビリ
四肢の喪失は、身体だけでなく心にも大きな影響を与えます。
「失った」という喪失感や抑うつに対して、心理士や医療スタッフによるカウンセリングが行われることも多いです。
さらに効果的なのが、同じ経験を持つ仲間(ピアサポート)の存在です。実際に義足や義手で生活している先輩の体験談は、希望を与える大きな力になります。
義足・義手で広がる生活の可能性
最新の義肢技術
近年は義肢技術が進化し、より自然な動きや快適性が実現されています。
- カーボン製の義足は軽量かつ弾力性に優れ、陸上競技で活躍するスポーツ選手も利用しています。
- ロボット義手は指の動きを電気信号で制御でき、細かな動作や日常生活の利便性を高めています。
かつて「できなかったこと」が、最新技術で可能になる時代が来ています。
職業復帰の事例
義足や義手を装着した方は、さまざまな仕事で活躍しています。
- 事務職:パソコン操作や書類作成が中心で、義手の活用が効果的
- 営業職:外回りや接客も、義足を使って歩行が安定すれば可能
- 製造業:軽作業やライン作業に復帰する方も増えています
職場や周囲の理解があれば、以前と変わらずキャリアを築くことができます。
社会制度とサポート
身体障害者手帳の取得
義足や義手を装着する場合、多くの方が身体障害者手帳を取得できます。
取得等級によって、税制優遇や交通費の割引、福祉サービス利用など幅広い支援が受けられます。
補装具費の支給制度
義足や義手は高額ですが、補装具費支給制度により自己負担を軽減できます。
条件を満たせば公費での補助があり、実費負担を抑えて必要な義肢を利用できます。
就労支援・リハビリ施設の活用
地域には、義肢使用者向けのリハビリ施設や就労支援機関があります。専門スタッフが訓練や職場復帰をサポートするため、積極的に利用することで安心して社会に戻ることができます。
まとめ
義足や義手が必要になる背景には、交通事故や外傷、がんや糖尿病といった病気、そして先天性の障害など、さまざまな理由があります。切断という決断は、決して軽いものではありません。しかしそれは、命を守るため、あるいは生活の質(QOL)を維持・向上させるための前向きな選択でもあります。
切断はゴールではなく、新しいスタートラインです。手術直後のリハビリは大変ですが、義足・義手の装着訓練や心理的なケアを通じて、多くの方が再び自分らしい生活を取り戻しています。さらに近年は、ロボット義手やカーボン義足などの先進技術が進化し、スポーツや仕事に積極的に挑戦できる環境が整いつつあります。
また、身体障害者手帳の取得や補装具費の支給制度、就労支援サービスなど、社会制度を活用することで、経済的な負担を抑えながら安心して生活や職業に復帰できる道が開かれています。
大切なのは、「正しい知識」と「周囲の理解」です。
本人が前向きに挑戦できるためには、家族や職場、地域社会が支援を惜しまない姿勢を持つことが欠かせません。義足や義手は、失ったものを補う道具ではなく、新しい人生を切り開くためのパートナーです。正しい情報と支援があれば、誰もが自分らしく社会の中で力を発揮し続けることができます。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







