- カテゴリー
聴覚障害とは?原因・種類・補聴器や人工内耳による改善方法を徹底解説【2025年最新版】

はじめに
聴覚障害は単に「耳が聞こえにくい」という状態にとどまらず、日常生活や仕事、人間関係に大きな影響を与えるものです。会話が聞き取りづらいことでコミュニケーションにストレスを感じたり、職場でのやり取りに支障が出ることもあります。また、火災報知器や救急車のサイレンなど、命に関わる音を聞き逃してしまうリスクも存在します。
日本では、身体障害者手帳の「聴覚障害」区分を持つ人だけで30万人以上います。しかし、実際には軽度から中等度の難聴を抱えながら生活している人を含めると、その数は数百万人規模にのぼると推計されています。加齢や生活環境が原因で「聞こえにくさ」を感じる人は今後も増えていくと予測されており、誰にとっても身近なテーマと言えるでしょう。
本記事では、聴覚障害の基礎知識から原因、補助機器(補聴器・人工内耳)、治療法、さらには支援制度までをわかりやすく解説します。正しい理解を深めることで、ご自身やご家族、あるいは職場の仲間が安心して暮らせる環境づくりに役立てていただければ幸いです。
聴覚障害とは?基本的な定義と特徴

聴覚障害とは、音を聞き取る能力が恒常的に低下し、日常生活に支障をきたしている状態を指します。ここで重要なのが「難聴」との違いです。
- 難聴:一時的または軽度の「聞こえにくさ」を指す場合も多く、加齢や耳の炎症などで一時的に発生するケースもあります。
- 聴覚障害:医学的・社会的に「障害」と認定されるレベルの聞こえにくさで、長期的に生活や社会活動に影響を及ぼす状態を指します。
障害者手帳の等級分類
日本では「身体障害者手帳」において、聴覚障害は1級から6級に区分されています。これは「両耳か片耳か」「聴力の低下レベル」によって決まります。例えば、両耳でほとんど聞き取れない場合は重度の等級に、片耳だけの場合は軽度に分類されます。
聞こえにくさが生活に与える影響
聴覚障害は、日々のあらゆる場面に影響を及ぼします。
- 会話の聞き取り:相手の言葉を正確に理解できず、誤解や孤立につながることがあります。
- 職場のコミュニケーション:会議や電話応対で困難が生じ、業務効率や評価にも影響を与える可能性があります。
- 緊急時のリスク:火災報知機、救急車やパトカーのサイレン、避難放送などを聞き逃す危険があり、安全面での課題となります。
このように「聞こえない」ことは単なる不便さにとどまらず、社会生活や安全に直結する重要な課題です。
聴覚障害の原因
先天性の要因
- 遺伝性の難聴(家族性)
聴覚に関わる遺伝子の異常により、生まれつき聞こえにくさを持つケースがあります。家族内で同様の症状を持つ人がいる場合、遺伝的要因が関与している可能性が高いとされています。 - 出生前・周産期のトラブル
妊娠中に母体が風疹に感染したり、低出生体重児や未熟児で生まれた場合に、聴覚障害が生じることがあります。新生児聴覚スクリーニング検査が推奨されているのは、このような早期発見のためです。
後天性の要因
- 加齢性難聴
高齢になると聴力は徐々に低下します。特に高音域が聞き取りづらくなり、会話の内容が聞き取りにくくなるケースが一般的です。 - 騒音性難聴
工場や建設現場など大きな音が日常的に発生する環境では、長期間の曝露によって内耳の細胞がダメージを受け、聴力が低下することがあります。 - 突発性難聴・メニエール病などの内耳疾患
ある日突然片耳が聞こえなくなる「突発性難聴」や、めまいを伴う「メニエール病」は代表的な耳の病気です。早期治療が予後を大きく左右します。 - 外傷や感染症
頭部の外傷や中耳炎・内耳炎などの感染症も、後天的に聴覚障害を引き起こす原因となります。
聴覚障害の種類

聴覚障害とひと口に言っても、その原因や症状にはさまざまなタイプがあります。主に「感音性難聴」「伝音性難聴」「混合性難聴」に分けられ、それぞれの特徴を理解することが治療方針を考えるうえで重要です。
感音性難聴
感音性難聴は、内耳(蝸牛)や聴神経に障害がある場合に起こります。代表的なものが加齢性難聴や突発性難聴です。特徴としては「音そのものは聞こえるけれど、言葉がはっきりしない」「会話が雑音の中で特に聞き取りにくい」といった状態です。治療が難しい場合も多く、補聴器や人工内耳の使用が検討されます。
伝音性難聴
伝音性難聴は、外耳や中耳の異常によって音の伝わりが妨げられるタイプです。耳垢が詰まる「耳垢栓塞」、中耳炎、耳小骨の異常などが原因となります。感音性難聴に比べると治療によって改善する可能性が高く、手術や薬物治療が有効なケースもあります。
混合性難聴
混合性難聴は、感音性難聴と伝音性難聴が同時に存在する状態です。例えば中耳炎を繰り返しているうちに内耳にもダメージが及ぶ場合などです。原因や程度に応じて、補聴器・手術・リハビリなど複合的な対応が必要となります。
片耳・両耳の違い
「片耳だけ聞こえにくいから大丈夫」と思われがちですが、片耳難聴も生活に大きな影響を与えます。例えば、音の方向感覚が失われる、騒がしい環境での会話が難しいといった不便さがあり、仕事や学習にも影響するケースがあります。両耳難聴よりも周囲に理解されにくい点も特徴です。
診断と検査方法
聴覚障害の有無や程度を正しく把握するには、専門的な検査が欠かせません。
聴力検査(オージオグラム)
最も一般的な検査で、周波数ごとにどの程度の音が聞こえるかをグラフ化します。日常会話に必要な「500Hz~4000Hz」の範囲を中心に測定し、難聴の有無や程度を判定します。
補聴器適合検査
補聴器を使用する場合は、実際に装着してどのくらい聞き取りが改善するかを確認する検査が行われます。補聴器の調整精度によって聞き取りやすさが大きく変わるため、とても重要なステップです。
その他の検査
耳鼻科や大学病院では、CTやMRIを用いた画像検査、平衡機能検査、語音明瞭度検査などの精密検査も行われます。特に突発性難聴や腫瘍の疑いがある場合は、こうした精密な診断が不可欠です。
治療・改善方法
聴覚障害は原因によってアプローチが異なります。
薬物治療
突発性難聴や炎症性の中耳炎などでは、ステロイド剤や抗生物質などの薬物治療が有効です。発症から時間が経つほど効果が下がるため、早期の受診が鍵となります。
手術療法
中耳や鼓膜に原因がある場合は、鼓膜形成術や耳小骨の手術、人工中耳の埋め込みといった外科的治療で改善が見込めるケースがあります。適応は限られますが、伝音性難聴の改善に有効です。
リハビリ・聴覚訓練
完全に聴力を取り戻すことが難しい場合でも、言語聴覚士(ST)によるリハビリや聴覚訓練によって聞き取り能力やコミュニケーション力を高めることができます。発達段階にある子どもや、補聴器・人工内耳を利用している人にとって重要なサポートです。
補聴器による改善
聴覚障害の改善方法として、最も身近で多くの人に利用されているのが補聴器です。単に音を大きくするだけでなく、環境に合わせて調整できる進化した機器が増えています。
補聴器の種類
補聴器には大きく分けて3つのタイプがあります。
- 耳かけ型
耳の後ろに掛けるタイプで、最も一般的です。比較的操作しやすく、多機能なモデルが多く発売されています。デメリットは目立ちやすい点です。 - 耳あな型
耳の穴にすっぽり収まる小型タイプで、外見上目立ちにくいのが特徴です。ただし小型な分、電池寿命や機能面で制限がある場合もあります。 - ポケット型
本体をポケットや首から下げて使うタイプで、操作が簡単で価格も比較的安価です。一方でコードが邪魔になったり、装着時に目立ちやすいというデメリットがあります。
デジタル補聴器の進化
近年はデジタル補聴器の普及が進み、従来の「音を大きくするだけ」の機能から大きく進化しています。
- 雑音抑制機能により、周囲の環境音を抑えて会話を聞き取りやすくする
- Bluetooth連携で、スマホの通話や音楽、テレビの音声を直接補聴器で聞ける
- アプリを通じて自分で音量や音質を調整できる
これにより、補聴器は「単なる補助具」から「生活を支えるパートナー」へと進化しています。
補助金制度
補聴器は数万円から数十万円と高額になることもありますが、自治体や障害者手帳を持つ方を対象に購入費用の助成制度が設けられています。地域によって条件や金額は異なるため、購入前に自治体の福祉窓口や耳鼻科で確認すると安心です。
人工内耳による改善

補聴器を使っても十分な効果が得られない重度の聴覚障害者に対しては、人工内耳という選択肢があります。
人工内耳とは?
人工内耳は、内耳に電極を埋め込み、音を電気信号に変換して聴神経に直接伝える医療機器です。補聴器が「音を大きくして耳に届ける」のに対し、人工内耳は「耳の機能を補う装置」として働きます。
手術対象者の条件
人工内耳は誰でも受けられるわけではなく、補聴器を装用しても効果が乏しい重度感音難聴者が対象です。幼児から高齢者まで幅広く適応がありますが、言語発達期の子どもに早期導入することで効果が高まるといわれています。
手術後のリハビリ
人工内耳は装着しただけで自然に聞こえるようになるわけではありません。手術後は「聞こえを学習するリハビリ」が必要で、音を認識し、言葉として理解するまでに時間と訓練を要します。言語聴覚士による継続的なサポートが不可欠です。
人工内耳の課題
人工内耳には多くのメリットがありますが、課題も存在します。
- 費用が高額(数百万円程度かかるが、日本では健康保険が適用され、自己負担を大きく減らせる)
- 完全に自然な音ではないため、環境音や音楽を楽しむ面では限界がある
それでも、多くの人にとって「会話ができるようになる」という大きな改善をもたらす可能性のある治療法です。
日常生活での工夫
聴覚障害があっても、生活の中でちょっとした工夫を取り入れることで不便さを軽減できます。
コミュニケーション方法
- 手話や筆談を活用することで、会話の内容を確実に共有できる
- UDトークなどの音声認識アプリを利用すれば、リアルタイムで会話を文字化できる
- コロナ禍で多くなったマスク越しの会話は表情や口の動きが見えず理解が難しくなるため、透明マスクや文字ツールの併用が有効です
生活の安全対策
- 光で知らせる火災報知器:音が聞こえにくい人でもフラッシュ光で危険を察知できる
- 振動目覚まし時計:強い振動で確実に目を覚ますことが可能
こうした支援機器や工夫を取り入れることで、安全かつ安心して暮らせる環境を整えることができます。
仕事との両立
聴覚障害があっても、多くの人が工夫をしながら職場で活躍しています。
職場での配慮例
- 会議では要約筆記や音声認識ツールを活用して情報を共有
- 電話業務を避け、チャットやメールでの対応を取り入れる
- 緊急時には振動や光での通知、チャット連絡など複数の手段を組み合わせる
向いている職種の傾向
- PC作業やデータ入力、製造補助、デザインなど、集中して取り組める業務
- チームワークよりも個別作業が中心の職場環境
職場の理解と工夫次第で、幅広い分野で働くことが可能です。
支援制度の活用
障害者手帳の取得とメリット
身体障害者手帳を取得すると、医療費の助成、税制上の優遇、補装具費の支給など多くの支援を受けられます。補聴器や人工内耳の費用補助にもつながるため、生活の質を向上させる大きな助けとなります。
情報保障制度
- 手話通訳者の派遣:行政手続きや医療機関でのコミュニケーションをサポート
- 要約筆記サービス:会議や説明会などで話の内容を文字にして伝える制度
就労支援
- ハローワークの障害者専門窓口では求人紹介や職場定着支援を実施
- 就労移行支援事業所では、PCスキルやビジネススキルを学びながら企業就職を目指せる
支援制度を積極的に活用することで、安心して社会参加を続けられる環境が整います。
まとめ
聴覚障害は、感音性・伝音性・混合性など種類や原因が多岐にわたり、症状や生活への影響も人によって異なります。
しかし、補聴器や人工内耳の進歩により「聞こえる世界」を広げられる人が増えているのも事実です。
大切なのは、「聞こえにくいことを隠さずに伝える勇気」と「支援や配慮を積極的に活用する姿勢」です。手話や筆談、補助機器、支援制度を組み合わせれば、生活も仕事も大きく前進できます。
さらに、社会全体の理解と配慮が進んでいる今は、以前に比べて働きやすく、暮らしやすい環境が整いつつあります。聴覚障害を抱えていても、正しい知識を得て工夫を重ね、支援を上手に利用すれば、学びやキャリア、趣味や人間関係を思いきり楽しむことが可能です。聴覚障害があるから諦めるのではなく、「自分らしく生きる」ための選択肢が増えている時代です。あなたや大切な人が前向きに一歩を踏み出せるよう、本記事がそのきっかけになれば幸いです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









