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脊髄小脳変性症とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説【2025年最新版】

はじめに
脊髄小脳変性症(SCD:Spinocerebellar Degeneration)は、国が指定する「指定難病」のひとつで、進行性に運動機能が低下していく神経疾患です。
「脊髄小脳変性症」という名前を耳にしたことはあっても、実際にどのような病気なのか、日常生活や仕事にどのような影響があるのかを正確に理解している方は多くありません。
企業にとっても、難病を抱える社員の理解や配慮は、ダイバーシティ推進や職場環境改善の観点から重要なテーマとなっています。社員一人ひとりが安心して働ける環境を整えることは、組織全体の生産性向上や企業価値の向上にも直結します。
本記事では、脊髄小脳変性症の定義、原因、症状、そして治療法の基礎を整理するとともに、生活や就労における配慮の視点も交えて解説します。
脊髄小脳変性症とは?

病気の定義
脊髄小脳変性症とは、小脳や脊髄に障害が生じることで、運動機能やバランス能力が徐々に低下していく進行性の神経難病です。歩行の不安定さ、発声や嚥下(飲み込み)の障害、手足の細かい動作が困難になるなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。
この病気の大きな特徴は、「進行性」である点です。つまり、症状はゆっくりと進行していくため、早期の理解と適切なサポートが欠かせません。
患者数と発症率
日本における脊髄小脳変性症の患者数は、推定で約3〜4万人といわれています。決して珍しい病気ではなく、全国で多くの方が日常生活や仕事に困難を抱えながら生活しています。発症年齢は幅広く、若年期から高齢期までさまざまですが、中高年期に発症するケースが多いとされています。
企業の採用や雇用現場でも、今後この病気を抱える方と接する機会が増える可能性があり、正しい知識を持つことが雇用の安定化や職場定着に直結します。
指定難病としての位置づけ
脊髄小脳変性症は、厚生労働省が定める「指定難病」に含まれています。これにより、患者は医療費助成の対象となり、経済的負担を軽減しながら治療やリハビリを継続することが可能です。
また、就労に関しても、障害者雇用促進法の枠組みや各種助成制度を活用することで、本人が働きやすい環境を整えることができます。企業にとっても、合理的配慮の導入や制度活用は、従業員の定着率向上・CSR(企業の社会的責任)の観点からプラスに働きます。
脊髄小脳変性症の原因
遺伝性と非遺伝性の違い
脊髄小脳変性症(SCD)は、大きく 遺伝性 と 非遺伝性(孤発性) に分けられます。
- 家族性SCD(遺伝性)
家族に同じ疾患を持つ人がいる場合、遺伝によって発症するケースがあります。代表的なものに「脊髄小脳失調症(SCA)」があり、遺伝子変異が原因とされています。 - 孤発性SCD(非遺伝性)
家族歴がなく、突然発症するケースです。原因は明確に解明されていませんが、加齢や環境要因が関与していると考えられています。
発症メカニズムの概要
共通する特徴は、神経細胞が徐々に変性・脱落していくことです。小脳や脊髄、脳幹など運動制御に関わる部分が障害され、体のバランスや動作の調整機能が失われていきます。
発症年齢の幅
脊髄小脳変性症は、若年から高齢まで幅広い年代で発症する可能性があります。特に40〜50代での発症例が多く、働き盛りの世代で進行することも少なくありません。
なぜ中年期での発症が目立つのかという点については、完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が考えられています。
- 遺伝性タイプ(家族性SCD)では、遺伝子変異の種類によって「発症年齢の傾向」があり、SCA1・SCA2・SCA3などは40〜50代での発症が多いとされています。
- 非遺伝性タイプ(孤発性SCD)では、加齢に伴う神経細胞の脆弱化や修復機能の低下が関与しており、中年期以降に症状が表面化しやすいと考えられています。
- さらに、40〜50代は仕事や家庭での負担が大きく、ストレスや生活習慣の乱れが神経変性疾患の顕在化に影響する可能性も指摘されています。
このため、就労支援や職場での配慮が特に重要となる世代でもあり、企業にとっても適切な理解と対応が求められます。
主な症状

- 歩行障害・ふらつき
バランスが崩れやすく、階段や長時間の歩行に支障が出る。 - 発音障害(構音障害)
言葉が不明瞭になり、会話に時間がかかる場合がある。 - 手の震え・協調運動障害
細かい作業(書字・PC操作・道具使用)が困難になる。 - 飲み込みにくさ(嚥下障害)
食事中にむせやすく、誤嚥性肺炎のリスクがある。 - 進行のスピードと個人差
進行は人によって大きく異なり、数年で車椅子生活になる方もいれば、長期間ゆるやかに進行する方もいる。
👉 企業の視点からは、通勤・移動の負担軽減、会議でのコミュニケーション支援、作業環境の調整といった配慮が必要となります。
診断方法
- 神経学的診察
歩行や手の動き、発声のチェックで特徴的な症状を確認。 - 画像検査(MRI)
小脳の萎縮を画像で確認する。 - 遺伝子検査
遺伝性タイプが疑われる場合に実施。 - 除外診断
パーキンソン病や多系統萎縮症など、類似疾患を除外して診断。
治療法とリハビリ
根本的な治療法はまだ確立されていない
現時点(2025年)では、残念ながら 病気の進行を止める根本治療は確立されていません。そのため、症状緩和と生活の質(QOL)維持が治療の中心となります。
薬物療法
- ふらつきを軽減する薬
- 筋肉のこわばりを緩和する薬
- 抗不安薬や睡眠薬など、症状に応じた薬が使用されます。
リハビリテーション
- 歩行訓練・バランス訓練(理学療法)
- 日常動作の工夫(作業療法)
- 発音・嚥下訓練(言語療法)
リハビリは進行を止めるものではありませんが、生活の自立度を高め、就労継続にもつながる重要な手段です。
生活改善と予防的工夫
- 転倒を防ぐためのバリアフリー化
- 食事時の誤嚥予防(姿勢・食形態の工夫)
- 疲労を避けるための勤務時間調整
最新研究動向(2025年時点)
- iPS細胞研究:神経細胞再生の可能性
- 遺伝子治療:原因遺伝子を修正する臨床試験が進行中
これらの研究はまだ実用化段階ではありませんが、将来的に根治療法となる可能性が期待されています。
日常生活での工夫
歩行・移動の工夫(杖・歩行器・車いす)
脊髄小脳変性症ではバランスを崩しやすいため、杖や歩行器、必要に応じて車いすを活用することが重要です。転倒防止は命に関わるリスク回避につながり、日常生活の安心感も高めます。
食事・嚥下の工夫(とろみ食、専門外来の利用)
嚥下障害が進行すると誤嚥性肺炎のリスクが高まります。食事にとろみをつける・専門外来で嚥下指導を受けるなどの工夫により、安全に食事を続けることができます。
コミュニケーション補助(言語療法、IT機器活用)
発音障害がある場合は、言語療法士のリハビリやタブレット・音声入力ソフトなどのIT機器を使ったコミュニケーション支援が有効です。企業においても、会議や業務連絡でこうした補助ツールを導入することで、働きやすさを確保できます。
家族・介護者のサポート体制
病気の進行に合わせて、介護者の協力や外部サービスの利用が不可欠です。本人だけでなく家族の負担を軽減する仕組みを整えることで、長期的な生活維持が可能になります。
利用できる支援制度
障害者手帳(身体障害者手帳)
歩行や言語障害が一定以上になると、身体障害者手帳が取得できます。これにより、医療費控除や公共交通機関の割引、雇用支援などが受けられます。
医療費助成(指定難病医療費制度)
脊髄小脳変性症は「指定難病」に含まれているため、高額な医療費が助成対象となります。経済的な負担を軽減しながら治療やリハビリを継続できます。
就労支援制度(障害者雇用枠・ジョブコーチなど)
障害者雇用促進法に基づき、障害者雇用枠での安定した採用が可能です。また、職場適応援助者(ジョブコーチ)が配置されれば、就労初期の定着支援も期待できます。
介護保険・福祉サービス
進行に伴って介護が必要になった場合は、介護保険や地域の福祉サービスを利用することで、生活支援や訪問介護を受けられます。
企業が知っておくべき就労配慮

通勤配慮
- 車通勤の許可
- 在宅勤務やリモートワークの導入
通勤負担を軽減することは、就労継続に直結します。
職場環境の工夫
- バリアフリー化
- 広めの通路や段差解消
- 十分な休憩時間の確保
職場の物理的・時間的環境整備は、生産性維持のカギとなります。
業務内容の調整
- 体力を必要としない作業
- PCを活用した事務業務やデータ処理
適材適所の配置により、「できる業務」に集中できる職場作りが求められます。
周囲の理解促進
脊髄小脳変性症は発作的な病気ではなく、進行性の運動障害です。正しい知識を周囲に共有することで、誤解や偏見を防ぎ、チーム全体で支え合う職場環境を作ることができます。
まとめ
脊髄小脳変性症は進行性の神経難病ですが、治療・リハビリ・支援制度を適切に活用することで、生活や就労を続けることは十分に可能です。
重要なのは、
- 本人が無理せず取り組める生活の工夫
- 家族や介護者の支え
- 企業側の理解と合理的配慮
の3つが揃うことです。
雇用現場においては、「病気を抱えた人=戦力にならない」ではなく、適切な配慮によって力を発揮できる人材として受け入れる姿勢が求められます。
社会全体が正しい知識を持ち、支え合う環境を広げていくことで、脊髄小脳変性症のある方も安心して働き、生活できる未来が実現します。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









