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薬物依存症からの回復と社会復帰|治療・再発防止・働き方の工夫

この記事の内容
はじめに
薬物依存症は「治らない病気」というイメージが根強くありますが、近年は治療と支援の仕組みが整備され、社会復帰を実現する人も増えています。
ただし、回復後の生活や仕事の継続には課題が多く、家族や職場、社会の理解が欠かせません。
- 現実:治療を受けても再発率は一定程度存在する
- 希望:治療と環境調整を組み合わせれば、安定した生活や就労を実現できる
この記事では、薬物依存症からの回復の流れと、社会復帰・働き方の工夫について解説します。
回復のステップ

治療開始(入院・外来)
- 入院治療:離脱症状を安全に乗り越えるために医療機関で解毒(デトックス)を行う。
- 外来治療:通院しながら心理療法・薬物療法を受け、長期的なサポートを受け続ける。
➡ 「まず薬をやめる」こと以上に、生活習慣の立て直しや再発予防の仕組み作りが重要です。
断薬継続とサポートグループ
- 自助グループ(NA=ナルコティクス・アノニマスなど)に参加し、同じ経験を持つ仲間と支え合う。
- 家族会や地域支援を利用し、「孤立しない環境」をつくることが回復を支えます。
再発防止の工夫
- トリガー(再使用のきっかけ)を把握:人間関係、ストレス、孤独、金銭管理など。
- 代替行動を用意:ストレス時には運動・相談・趣味で対処する。
- 定期的な通院・面談:専門家に状態を見てもらうことで、再発を早期に防ぐ。
仕事への影響
欠勤・トラブル・失職の事例
薬物依存症は、以下のように仕事に直接的な影響を及ぼします。
- 遅刻・欠勤の増加
- 職場でのトラブル(業務のミス、金銭問題)
- 結果としての懲戒処分や失職
➡ 一度キャリアが途切れると、再就職には大きなハードルが生じます。
偏見・スティグマとの戦い
- 「薬物依存=犯罪者」というイメージが根強く、就労の場で偏見を受けることが多い。
- カミングアウトすべきか隠すべきかは本人にとって大きな葛藤となる。
- 実際には「病気として支援を受けながら働ける」事例も少なくなく、社会の理解拡大が急務です。
復職・就職に向けた工夫

リワークプログラムの利用
- 精神科や就労支援機関で提供される「リワークプログラム」では、模擬業務やグループワークを通じて職場復帰に必要なスキルを取り戻す。
- 段階的な復職を行うことで、再発を防ぎつつ働き続けやすくなります。
リワークプログラムの具体例
1. 生活リズムの回復
- 毎日決まった時間に通所し、規則正しい生活習慣を身につける
- 起床・就寝・食事・通勤練習など「働くための生活基盤」を整える
2. 模擬業務トレーニング
- パソコン入力・資料作成・書類整理などのオフィスワークを模した作業
- 立ち仕事や軽作業など、体力に応じた作業訓練
- 短時間→フルタイムに近いスケジュールへ段階的に拡大
3. グループワーク
- グループディスカッション、課題解決ワーク、ロールプレイなどで対人スキルを回復
- 「上司に報告する」「同僚に相談する」など、職場を想定した練習
4. 心理教育・再発防止の学び
- ストレスマネジメント、睡眠改善、依存症の再発防止に関する講義
- 薬物依存に特化した場合、「トリガー管理」や「代替行動プラン作り」に力を入れることもある
5. 就労準備プログラム
- 履歴書の書き方、面接練習
- 就労先とのマッチング、障害者雇用枠利用のサポート
6. 職場復帰シミュレーション
- 実際の勤務時間に近いスケジュールを試し、体調や再発リスクを自己チェック
- 職場の産業医や人事とも連携して「復職プラン」を作成
参加期間と流れのイメージ
- 期間:おおむね 3〜6か月
- 流れ:
① 生活リズムの安定 → ② 模擬業務 → ③ グループ活動 → ④ 復職シミュレーション → ⑤ 職場復帰
ポイントは、いきなり職場に戻るのではなく、段階を踏んで練習することです。
薬物依存症の回復期は「再発防止」と「働く体力・気力の回復」を同時に進める必要があるため、このようなリワークプログラムが大きな支えになります。
就職活動での伝え方
- 必ずしも病歴を全て開示する必要はないが、配慮が必要な場合は「治療を受けており安定している」と前向きに伝える。
- 障害者雇用枠を利用することで、理解のある職場を選びやすい。
職場での合理的配慮
- 通院のための勤務調整
- 過度な残業や夜勤を避ける
- 定期的な面談やサポート体制の整備
➡ 「無理なく働ける環境づくり」が、本人の回復と社会復帰を両立させるカギです。
回復後の就労は本当に可能か?
「実際、治療後に就労できるのは少ないのでは?」
- 厚労省の調査や依存症支援団体の報告によると、回復後に就労している人は少なくないのが実情です。
- 特に、自助グループや就労支援機関を活用している人の多くが、アルバイトから徐々に社会復帰を実現しています。
- ただし、再発率は高め(数年以内に4~6割程度が再使用するとされる報告もあり)、そのため「就労の成否=本人の努力」ではなく、支援体制と職場環境の有無が決定的に大きな要因です。
➡ 結論:割合として「少ない」というよりも、支援を受けず孤立している場合は難しいが、適切なサポートを得られれば十分に可能です。
向いている仕事・避けたい仕事

向いている仕事
薬物依存症からの回復期にある人にとっては、安定・安心・サポートがキーワードになります。
- 安定した環境:就業時間や業務内容が大きく変動しない仕事(事務、工場の軽作業など)
- 単純作業やルーチン業務:同じ手順を繰り返す仕事は集中しやすく、負担が少ない
- チーム支援がある職場:一人で抱え込まず、同僚や上司と協力しながら進められる環境
➡ まずはアルバイトや短時間勤務から始め、徐々に働く時間を増やしていく方法が有効です。
回復者が就いている仕事の具体例
1. 事務・オフィスワーク
- データ入力、書類整理、電話対応など、決まったルーチンが中心の業務
- 規則正しい時間で働けるため、生活リズムの安定につながる
➡ 就労移行支援事業所を経て事務補助職に就いた例も多いです。
2. 工場・倉庫での軽作業
- 製品の仕分け、検品、梱包など、反復的でシンプルな作業
- チーム単位での仕事が多く、「一人で抱え込まない」という安心感がある
➡ 体力を使いながら規則正しい勤務ができるため、リハビリ的な側面も。
3. 清掃・ビルメンテナンス
- オフィスビルや施設の清掃、管理など
- 単純作業かつ時間が安定しており、コミュニケーションが必要以上に多くない点が好まれる
➡ 精神的に負荷が少なく、長く続けやすい傾向があります。
4. 福祉・支援関係(回復者が支援者へ)
- 自助グループやリハビリ施設でスタッフやサポーターとして活動するケースも多い
- 「自分の経験を活かせる仕事」としてやりがいにつながる
➡ ダルク(DARC:Drug Addiction Rehabilitation Center)のスタッフに回復者が加わる事例は有名です。
5. 飲食業(条件付き)
- 厨房補助や調理補助など、裏方作業中心の仕事
- ただし「酒類を扱う接客業務」は再発リスクが高いため避けるべき
➡ アルコールを扱わない職場なら、生活リズムを保ちながら働けることも。
6. IT・クリエイティブ分野(スキルがある場合)
- Web制作、ライティング、デザインなど、自宅や静かな環境で進められる仕事
- ストレスや人間関係の負担が少ないため、回復者に向くことがある
➡ 近年は在宅ワークを活用して就労を継続している事例も増えています。
ポイント
- 最初はアルバイトや短時間勤務から → 自信や生活リズムを取り戻す
- 支援機関を活用 → ハローワークの専門窓口や就労移行支援を経由して就職している人が多い
- 仕事の種類より「環境」 → 理解のある上司や同僚がいるか、勤務体制が安定しているかが決め手
避けたい仕事
一方で、再発リスクを高める仕事は避けることが望ましいです。
- 高ストレスな職種:営業、クレーム対応、過度なノルマのある仕事
- 不規則勤務:夜勤や長時間労働は生活リズムを崩しやすく、再発の引き金になる
- 飲酒や薬物が身近な業界:飲食・ナイトワーク・医薬品の取り扱いなど、使用を思い出す環境は危険因子となります
➡ 「避けるべき仕事」を理解しておくことは、再発予防=安定就労への第一歩になります。
支援制度の活用
障害者雇用枠
- 精神疾患としての薬物依存症は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる場合があります。
- 手帳を取得することで、障害者雇用枠での就労が可能になり、通院配慮や勤務調整を受けやすくなります。
自立支援医療
- 精神科通院や薬物依存症治療の医療費が3割から1割負担に軽減される制度。
- 長期的な治療を継続するための大きな助けとなります。
障害年金(重度の場合)
- 薬物依存症が長引き、日常生活や就労が著しく制限されている場合は、障害年金の対象になることがあります。
- 経済的な下支えを受けながら、治療と社会復帰を目指すことができます。
まとめ 〜回復を目指すあなたへ〜
薬物依存症は「治らない病気」ではありません。
治療を受け、支援制度を活用し、働き方を工夫すれば、安定した生活と就労を取り戻すことは十分に可能です。
大切なのは「一人で抱え込まないこと」。
- 支援してくれる医療者や仲間、家族は必ずいます。
- 小さな一歩を積み重ねれば、必ず未来は変わります。
あなたの価値は、過去の失敗や依存だけで決まるものではありません。
これからの人生をもう一度、自分らしく築いていける可能性があることを忘れないでください。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









