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見た目では分からない心臓機能障害|ペースメーカー利用者が安心して働くために

この記事の内容
はじめに
心臓機能障害のある方が安心して働けるように支えている代表的な医療機器が「ペースメーカー」です。ペースメーカーを装着している方の多くは外見上は健康に見えるため、企業や職場の同僚からは「普通に働けるだろう」と思われがちです。
しかし実際には、見た目だけでは分からない体調の変化や、職場環境によるリスクが存在します。特に電磁波や長時間労働といった要素は、本人の体調に直接影響を与える可能性があります。そのため「大丈夫だろう」という思い込みで対応してしまうと、本人に過度な負担をかけ、結果的に離職やトラブルにつながることもあります。
企業にとっても、適切な理解と配慮を行うことは「人材を守る」だけでなく、「安心して力を発揮できる職場づくり」につながります。働きやすい環境が整えば、本人の定着率が上がり、チーム全体の生産性向上にもつながるのです。
本記事では、ペースメーカー利用者が職場で直面しやすい課題や、企業が知っておくべき注意点・配慮のポイントを整理し、安心して働ける環境づくりのヒントをお伝えします。
ペースメーカーとは?就労と生活への影響
ペースメーカーの役割(心拍の安定化)
ペースメーカーとは、心臓のリズムが乱れたときに電気信号を送って拍動を整える小型医療機器です。主に鎖骨の下あたりに埋め込まれ、電線(リード)を通じて心臓に刺激を与えます。これにより、危険な徐脈(脈が遅すぎる状態)や心停止を防ぎ、日常生活や就労を継続できるように支えます。
対象となる病気(不整脈、心不全など)
ペースメーカーが必要となる主な病気は、徐脈性の不整脈や房室ブロックなどの伝導障害です。心臓が正常に拍動できないことで「動悸」「めまい」「失神」などの症状が起こり、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。ペースメーカーはこれらの症状を抑え、安定した生活を送るための重要な手段です。
ペースメーカーを装着した人の働き方の一般的な特徴
ペースメーカーを装着したからといって、必ずしも働けなくなるわけではありません。多くの方は事務職や接客業、専門職など幅広い分野で活躍しています。ただし、職場環境や仕事内容によっては注意が必要です。例えば、強い電磁波を発する機械を扱う業務や、長時間の肉体労働は体調に影響を及ぼす可能性があります。そのため、「働けるが無理をしてはいけない」というバランス感覚が大切になります。
ペースメーカー利用者が職場で直面しやすい課題

見た目に分からないため誤解される
ペースメーカーを装着している方は、外見からは障害や持病を抱えていることが分かりません。そのため、周囲からは「元気そうだから特に配慮は不要だろう」と誤解されやすいのが現状です。しかし実際には、体に負担をかける環境や働き方が続くと、急に体調を崩すリスクがあります。
環境による影響
強い電磁波を発する機械(製造現場、電気溶接機など)はリスク
ペースメーカーは強い電磁波の影響を受けると、誤作動を起こす可能性があります。特に製造業や建設現場で使われる溶接機、大型モーター、MRI装置などは注意が必要です。配属先を検討する際には、こうしたリスクの有無を十分に確認することが欠かせません。
長時間労働や過度なストレスは体に負担
心臓に負担をかける働き方は、ペースメーカーを装着していても症状を悪化させる要因になります。残業や夜勤が続いたり、精神的なストレスが大きすぎたりすると、急な体調不良につながるケースもあります。
体調変化の可能性
ペースメーカーは心拍を安定させますが、それでも急な動悸・息切れ・倦怠感が出ることがあります。こうした症状が仕事に影響する可能性があるため、職場には「いつも元気に見えても急に体調を崩すことがある」という認識を持ってもらう必要があります。
企業が知っておくべき注意点

配置部署の見極め
ペースメーカー利用者が安全に働けるようにするためには、配属先の選定が重要です。電磁波リスクが少なく、心身への負担が少ない職場環境を整えることが望まれます。
長時間労働を避ける
勤務シフトの工夫や残業の削減は、心臓への負担を軽減するために欠かせません。「無理をさせない働き方」を前提にすることが、安定的な就労につながります。
医療面での緊急対応の確認
急な体調不良や発作が起きたときに備え、職場に緊急時の対応フローを整えておくことも重要です。救急搬送や連絡体制を明確にしておくことで、本人も安心して働ける環境が整います。
安心して働けるための配慮事例
定期的な体調確認の場を設ける
ペースメーカーを装着している方は、外見では健康に見えても、心臓への負担や体調の変化が突然起こることがあります。職場では定期的に体調を確認できる面談やヒアリングの機会を設けることで、早めに異変を察知し、必要な対応を取ることができます。
さらに「体調に関する簡易チェックシート」や「日々のコンディションを共有する仕組み」を取り入れることで、本人が不調を伝えやすくなり、安心感が高まります。こうした小さな仕組みが、継続的な就労を支える大きな力になります。
通院配慮(定期チェックが必須)
ペースメーカー利用者は、3か月〜半年ごとに病院での定期チェックが欠かせません。電池の残量確認や機器の作動確認を行うため、勤務調整が必要になります。企業側が「通院は当然のこと」として配慮する姿勢を持てば、本人も安心して働き続けられます。
特に、有給休暇ではなく「通院休暇」として扱う制度や、勤務時間を柔軟にずらせるフレックスタイム制度は大きな助けになります。これにより、治療と仕事の両立がより現実的に可能となります。
就労環境の工夫(在宅勤務や短時間勤務の活用)
体への負担を軽減するためには、在宅勤務や短時間勤務の柔軟な導入が有効です。特に体調が安定しにくい時期や治療後は、自宅での勤務や週数日の短時間勤務を取り入れることで、働きやすさが大きく向上します。
また、負担の大きい業務を他メンバーと分担する仕組みを取り入れることで、本人だけに負荷が集中しないようにすることも重要です。これらの工夫は「離職防止」に直結するだけでなく、結果的に企業にとっても人材の定着率向上というメリットをもたらします。
チーム内での理解共有(過度な詮索は避けつつ必要な情報は共有)
ペースメーカー利用者に過剰な配慮や詮索は不要ですが、最低限の情報はチーム内で共有しておく必要があります。例えば「電磁波が強い現場には近づけない」「体調不良時は早退することがある」といった情報を共有するだけでも、周囲が協力しやすくなります。
さらに、緊急時の連絡フローをチーム全体で理解しておくことが重要です。誰が救急車を呼ぶか、どこに連絡するかを明確にしておくことで、いざという時に慌てず対応できます。こうした体制づくりは本人にとって大きな安心材料になり、職場全体の信頼関係の向上にもつながります。
当事者の声・実際の就労事例
事務職で安定勤務できている例
ペースメーカーを装着した方の多くは、一般事務や総務、人事などの職種で安定した就労を実現しています。体に過度な負担をかけず、通院との両立が可能な職場環境であれば、長期的に働き続けられるケースが多いです。
製造業で配置転換により継続勤務できた例
製造現場で働いていた方が、電磁波リスクのある部署から別の部門に配置転換されることで、継続勤務が可能になった事例もあります。企業側が柔軟に対応したことで、人材を活かしながら安全な就労環境を確保できた好例です。
過度な負担があり離職した例(失敗事例から学ぶ)
一方で、長時間労働や電磁波リスクを軽視し、十分な配慮がされなかった結果、体調を崩して離職に至ったケースもあります。こうした失敗事例から学ぶことは、企業にとって非常に重要です。「無理をさせない働き方」を徹底することが、長期的な雇用の安定につながります。
就職・転職活動での伝え方

面接でどこまで伝えるべきか(疾患名より「必要な配慮」を中心に)
就職・転職活動では、「病名」そのものを伝えるよりも「どのような配慮があれば問題なく働けるか」を伝える方が効果的です。例えば「強い電磁波を発する機械の近くは避けたい」「残業が続かないような働き方を希望している」といった具体的な伝え方が、企業側にも理解されやすいポイントです。
医師の意見書や診断書を活用
必要に応じて、医師の意見書や診断書を提出することは、安心して働くための大きな支えになります。企業にとっては「本人の希望」ではなく「医学的に必要な配慮」として受け止められるため、理解や調整がスムーズに進みます。
また本人にとっても、医師の言葉を根拠にできることで「自分ばかりが特別なお願いをしているのではないか」という心理的な負担を減らすことができます。例えば、
- 電磁波のある作業を避ける必要性
- 残業や夜勤を制限した方がよい理由
- 定期通院が不可欠であること
といった点を医師の立場から明記してもらえることで、企業は安心して働ける環境を整えやすくなります。
結果として、無理のない就労が実現し、長く安定して働き続けられるという本人の大きなメリットにつながります。
エージェントを通して企業に調整してもらう方法
転職エージェントや障害者雇用専門の紹介会社を活用すると、直接は言いにくい配慮事項をプロが代わりに調整してくれるという大きなメリットがあります。
例えば「残業を避けたい」「通院日には勤務調整が必要」といったことを自分で伝えるのは勇気がいりますが、エージェントなら企業に事前に伝えてくれるため、安心して面接に臨めます。
さらに、エージェントは企業との関係性を活かして「この条件なら採用可能か?」といった具体的な交渉もしてくれるため、就職成功率も高まります。本人は面接で 自分のスキル・経験・強み に集中できるので、自信を持ってアピールしやすくなるのも大きなポイントです。
結果的に、「配慮してもらえる環境」と「自分の能力を活かせる職場」 の両立が実現しやすくなります。
まとめ
心臓機能障害やペースメーカー利用は外見からは分かりにくく、誤解されやすい特徴があります。しかし「元気そうだから問題ないだろう」と思い込んでしまうことが、誤った配置や過度な負担につながる大きなリスクです。
ペースメーカーを装着している方でも、正しい理解と適切な配慮があれば、多くの業務で十分に活躍できます。企業に求められるのは「問題ないかどうか」を判断することではなく、「どう配慮すれば活躍できるか」という視点です。
定期的な体調確認、通院への配慮、就労環境の工夫、そしてチーム全体での理解共有――こうした取り組みは、本人の安心感を高めるだけでなく、企業にとっても 人材の定着率向上や職場全体の生産性向上 というメリットにつながります。
読者である企業担当者の皆様には、ぜひ「見えない障害」に目を向けていただきたいと思います。“問題ないだろう”ではなく“どう配慮すれば力を発揮できるか” という視点こそが、これからの企業経営に求められる姿勢です。
安心して働ける環境づくりは、本人の人生を支えるだけでなく、組織全体を強くし、社会全体の多様性と持続可能性を高めることにつながります。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







