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透析患者のリアルな1日|治療・通勤・仕事のスケジュール実例【2025年最新版】

この記事の内容
はじめに
人工透析を受けながら働いている人は、全国に数多くいます。透析は命を維持するために欠かせない治療ですが、1回の治療にかかる時間は長く、生活リズムや働き方に大きな影響を与えます。
特に血液透析を行う場合は、週3回、1回あたり4〜5時間を確保する必要があるため、フルタイム勤務や通勤との両立に悩む人も少なくありません。
本記事では、実際に透析治療を続けながら仕事をしている人の「1日のリアルなスケジュール」を紹介します。透析患者がどのように治療・通勤・仕事を組み合わせているのか、そして両立を実現するための工夫をわかりやすく解説していきます。
透析治療の基本スケジュール

血液透析(HD)の場合
血液透析は、日本で最も一般的な治療法です。
1回あたり4〜5時間、週に3回の通院が必要となり、透析施設に通うことが生活の軸になります。
- 治療は午前・午後・夜間など、病院によって複数の時間帯から選べる場合があります。
- フルタイム勤務をしている人の多くは「夜間透析」を利用し、仕事後に病院へ通うケースが多いです。
- ただし、残業が難しかったり、治療後に強い疲労を感じたりするため、職場の理解や勤務時間の調整が不可欠です。
腹膜透析(PD)の場合
腹膜透析は、自宅で行える治療法で、血液透析に比べて通院の負担が少ないのが特徴です。
- 毎日、自分で透析液の交換を行う必要があり、1回あたりの所要時間は30分〜1時間程度。
- 自動腹膜透析(APD)では、夜間睡眠中に機械を使って透析を行うことも可能です。
- 通院は月1〜2回程度で済むため、日中のスケジュールを柔軟に組みやすい点が大きなメリットです。
ただし、自己管理の徹底が求められるため、衛生面への配慮や手順の正確さが重要となります。
通院中心の生活リズムになりやすい現実
どの治療法を選んでも、「透析を優先にした生活リズム」になりやすいのが現実です。
特に血液透析の場合は週3回の通院が軸となるため、出勤時間や業務の調整が必要になります。
一方、腹膜透析では時間の自由度が高いものの、毎日の処置や感染症予防にかかる精神的・身体的負担があります。
つまり透析患者にとって、「治療と仕事をどう組み合わせるか」が生活の質やキャリアを左右するといっても過言ではありません。
透析患者のリアルな1日の流れ(ケーススタディ)
人工透析を受けながら働く人の生活は、勤務形態や透析方法によって大きく異なります。ここでは、実際に多く見られる3つのケースを紹介します。
ケース1:フルタイム勤務(血液透析/夕方通院型)
朝:出勤(通勤時間の工夫・体調管理)
朝は通勤前に体重測定や血圧チェックを行い、体調を確認してから出勤します。通勤ラッシュを避けるために時差通勤を選ぶ人も多く、体調に合わせた移動の工夫が欠かせません。
昼:通常業務(疲労や集中力低下に注意)
勤務中は他の社員と同じように業務を行いますが、透析患者は疲労感や集中力の低下が出やすいのが特徴です。こまめな休憩や水分制限の管理が、安定した仕事のパフォーマンスにつながります。
夕方:退勤後に透析(17〜22時頃)
仕事が終わると、そのまま透析施設へ直行します。夕方から夜にかけての透析は4〜5時間かかるため、帰宅時間が遅くなることもしばしばです。
夜:帰宅・食事・休息
透析後は強い疲労を感じやすいため、消化の良い夕食や十分な休養を取ることが大切です。翌日の勤務に備えて早めに就寝する人が多い傾向にあります。
ケース2:時短勤務(午前勤務+午後透析)
朝:出勤、午前中に集中して業務
時短勤務を選ぶ人は、午前中に仕事を集中させます。午前勤務にすることで、午後から透析に専念でき、生活リズムを整えやすくなります。
午後:病院で透析(13〜18時)
午後から透析施設へ向かい、1日の疲れが出る時間帯に治療を受けます。治療後は体力が落ちやすいため、その日の残業や追加業務は難しいのが現実です。
夜:帰宅後は疲労回復のため早めに休む
透析後は倦怠感やだるさを感じることが多いため、帰宅後は無理をせず、入浴や食事を簡潔に済ませ、早めの休養を心がける人が多いです。
ケース3:在宅勤務(腹膜透析/自宅管理型)
朝:在宅で業務開始(通勤負担ゼロ)
腹膜透析を選ぶ人の中には、在宅勤務を組み合わせるケースも増えています。通勤の負担がないため、朝から落ち着いて業務に取り組むことが可能です。
昼:短時間の腹膜透析管理
昼休みや業務の合間に、透析液の交換などを自宅で行います。30分〜1時間程度で終わるため、仕事に大きな支障をきたすことは少ないですが、感染症予防のための衛生管理が必須です。
午後:業務再開(休憩と業務を交互に調整)
体調に応じて休憩を挟みつつ、再び業務を進めます。集中力を持続させるために、業務と休養のバランスを取る工夫が重要です。
夜:在宅透析処理、比較的柔軟に生活
夜は就寝中に自動腹膜透析(APD)を行うことも可能で、比較的柔軟な生活スケジュールを組み立てられるのが特徴です。
透析と仕事を両立するための工夫

透析患者が無理なく仕事を続けるためには、日々の体調管理と職場環境の調整が欠かせません。
体調管理
- 水分・食事制限を徹底し、身体に余分な負担をかけない
- 睡眠や休養を優先する生活習慣を取り入れる
勤務調整
- 通院時間に合わせて勤務シフトを調整
- 在宅勤務や時短勤務制度を柔軟に活用する
周囲への配慮依頼
- 上司や同僚に透析スケジュールを共有しておく
- 急な体調不良に備え、代替業務やサポート体制を整えてもらう
こうした工夫を積み重ねることで、透析患者でも安定して働き続けることが可能になります。
透析患者が利用できる制度と支援
透析治療を受けながら働く人をサポートするために、国や自治体ではさまざまな制度が用意されています。これらを活用することで、医療費や生活面での負担を軽減でき、安定した就労を実現しやすくなります。
障害者手帳(腎臓機能障害)による支援
腎臓機能障害として障害者手帳を取得すると、以下のような支援が受けられます。
- 医療費の助成(高額療養費制度との併用も可能)
- 公共交通機関の割引(通勤コストの軽減につながる)
- 税制優遇(所得税・住民税の控除)
自立支援医療制度
透析患者がよく利用する制度のひとつが「自立支援医療制度」です。
- 医療費の自己負担が1割に軽減される
- 長期的な治療継続に伴う経済的負担を大幅に軽減できる
- 申請は市区町村の窓口で可能
就労支援制度
透析患者が安定して働くために、就労支援制度を利用することも有効です。
- 障害者雇用枠での応募により、透析に理解のある企業で働きやすくなる
- 職場での合理的配慮(勤務時間の調整・通院配慮・在宅勤務の導入など)が期待できる
- ハローワークや転職エージェントを通じて、透析患者向け求人を探すことも可能
企業に求められる理解と配慮

透析患者が安心して働くためには、企業側の理解と制度面での配慮が欠かせません。特に次のような取り組みが効果的です。
勤務時間の柔軟性
透析は週3回・1回4〜5時間という長時間の治療が必要であり、通院スケジュールに合わせた勤務調整は不可欠です。
多くの透析患者はフルタイム勤務を続けつつ、「通院日だけ残業をしない」「フレックス制度を活用して始業や終業をずらす」といった工夫で両立しています。
しかし、まだフレックス制度が導入されていない企業も少なくありません。もし企業側がフレックスタイム制や時差出勤を取り入れるだけでも、透析患者にとって働きやすさは大きく変わります。制度の柔軟性は「安心して働ける会社かどうか」を判断する大きな基準となるのです。
透析日の業務量軽減や調整
透析翌日は体調が不安定になりやすく、強い疲労感を覚える人も多いです。そのため、透析翌日は会議や重労働を避け、比較的軽めの業務を割り振るなどの調整が有効です。
こうした工夫は従業員本人のパフォーマンス維持につながるだけでなく、長期的に離職率を下げる効果も期待できます。
在宅勤務・休暇制度の導入
可能な範囲でテレワークを導入すれば、通勤の負担を減らすことができます。特に透析後の倦怠感が強い日は、在宅勤務を選べることで心身の負担が大きく軽減されます。
また、急な体調不良や通院に対応できる柔軟な休暇制度を整えておくことで、本人が安心して働き続けられる環境が生まれます。
企業がこうした取り組みを進めることは、透析患者だけのメリットにとどまりません。
フレックスタイム制や在宅勤務制度の整備は、育児・介護・病気治療と両立して働く他の社員にとってもプラスに働きます。結果として、多様な人材が定着しやすい「働きやすい会社」へと進化するのです。
まとめ
透析患者は、「治療と仕事の両立」という大きな課題を常に抱えています。
週3回の透析や日々の体調管理は、生活の多くを制約するように見えるかもしれません。しかし実際には、勤務形態の工夫・支援制度の活用・職場の理解を組み合わせることで、安定した生活と長期的な就労を実現している人も数多くいます。
大切なのは、「完璧に働き続けること」を目指すのではなく、自分に合った勤務スタイルを見つけることです。時短勤務・在宅勤務・夜間透析など、選択肢は一つではありません。自分の体調や生活環境に合わせて働き方を選ぶことが、無理なく長く仕事を続けるための最善策です。
さらに、企業や社会の側にも理解と配慮が広がれば、透析患者に限らず、誰もが安心して働ける職場環境が整っていきます。これは少子高齢化が進む日本にとっても、重要な社会課題の解決につながる視点です。「無理をせず、自分に合った働き方を選ぶこと」こそが、透析と共に生きながら前向きに働き続けるための第一歩。
本記事が、同じ悩みを抱える方の希望や行動のきっかけとなれば幸いです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







