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障害者のトライアル雇用とは?企業と求職者双方にメリットがある採用の新しい形

この記事の内容
はじめに ― 障害者雇用の現状と課題
法定雇用率の引き上げと企業の負担
日本では障害者雇用促進法に基づき、一定以上の従業員を抱える企業には「障害者雇用率」が義務付けられています。
2024年4月には 2.3%から2.5% に、さらに2026年7月には 2.7% に引き上げられる予定です。
しかし、中小企業を中心に未達成の企業も多く、「採用したいが適性が分からない」「定着するか不安」といった課題を抱えています。
求職者が抱える「適性」への不安
一方で、障害のある求職者も「自分に合う仕事なのか」「体調や特性に合わせて働けるのか」と不安を抱えています。履歴書や面接だけでは、自分の力を十分に伝えることが難しいのも現実です。
その解決策として注目される「トライアル雇用」
こうした双方の不安を解消する仕組みとして注目されているのが「トライアル雇用」です。一定期間お試しで働くことで、企業は適性を見極め、求職者は安心して業務にチャレンジできます。
トライアル雇用とは?

制度の基本概要
試行的に雇用する仕組み(原則3か月)
トライアル雇用は、原則3か月間、求職者を試行的に雇用し、適性を確認する制度です。
適性や職場環境への適応を見極める役割
企業は実際の業務を通じて本人の働きぶりや職場適応を確認でき、求職者は自分に合った職場かを判断できます。
厚生労働省が推進する制度
トライアル雇用は厚生労働省が推進しており、ハローワークを通じて利用できます。特に「障害者トライアル雇用」は障害者雇用の定着を目的に設けられています。
また、人材紹介会社(エージェント)を通じた紹介でも制度を活用できるため、企業・求職者ともに安心して利用しやすい仕組みとなっています。
助成金制度(トライアル雇用助成金)の活用
企業が制度を活用すると、1人あたり月額最大4万円(最大3か月)の助成金が支給されます。採用コストを抑えつつ、安心して雇用にチャレンジできます。
障害者雇用における有効性
障害者雇用においては「ミスマッチによる短期離職」が大きな課題です。トライアル雇用は、そのリスクを減らし、双方にとって納得感のある雇用につながります。
企業側のメリット

採用判断の精度向上(ミスマッチ防止)
実際の業務を通じて能力・適性を確認できるため、採用後のミスマッチを防げます。
即戦力でなくても「育成可能性」を確認できる
短期間で成果を出せなくても「将来的に成長できるか」を判断でき、ポテンシャル重視の採用が可能です。
助成金活用によるコスト負担軽減
採用に伴う人件費を助成金で一部カバーでき、企業の金銭的リスクを軽減します。
雇用率達成+定着率改善につながる
義務付けられた障害者雇用率の達成に寄与するだけでなく、本人に合った職場で働くことで定着率も高まります。
求職者側のメリット
実際の業務を体験して適性を確認できる
「できる・できない」を事前に確認できるため、安心して就職活動を進められます。
書類・面接では伝わりにくい強みを発揮できる
コミュニケーション力や真面目さなど、実際の働き方を通して企業に伝えられます。
トライアル雇用から正規雇用へつながる可能性
期間終了後に正社員や契約社員として採用されるケースも多く、キャリア形成のきっかけとなります。
トライアル雇用が浸透していない理由

制度の認知不足(企業・人事担当者が知らない)
制度自体を知らない企業が多く、活用が進んでいません。
「時間や手間がかかる」という誤解
申請や管理に手間がかかると誤解されがちですが、ハローワークや支援機関のサポートで解決可能です。
業務の切り出しができていない現状
「障害者に任せられる業務がない」と考える企業もありますが、実際は事務補助・データ入力・軽作業など多様な業務があります。
ケースバイケースでの限定的活用
トライアル雇用はすべての職種で適用できるわけではなく、業務内容によって活用の幅が限られる点に注意が必要です。
例えば、事務補助(データ入力・書類整理)、軽作業(ピッキング・梱包)、デジタル業務(チェック作業や簡単な入力)といった 比較的短期間で適性を判断できる業務 には向いています。
一方で、営業職のように成果が出るまで時間がかかる仕事や、研究・開発などの 高度な専門性を求められる業務 では、数か月のトライアル期間だけで評価するのは難しい場合があります。
そのため、トライアル雇用は「すべての職種で使える制度」ではなく、職務内容に応じて選択的に活用される制度だと理解しておくことが重要です。
エージェント(人材紹介会社)にとっての意味
採用可否が微妙な候補者にチャンスを与えられる
「採用するか迷う」候補者にもチャンスを提供でき、可能性を広げられます。
成功事例が双方の満足度を高める
企業と求職者の双方にメリットがあるため、成功事例を積み重ねることで信頼性が高まります。
定着率向上と信頼獲得につながる
紹介した人材が長く働ければ、エージェントの評価や信頼も向上します。
企業がトライアル雇用を導入するステップ
ハローワークや支援機関への相談
まずは最寄りのハローワークに相談し、制度の流れや利用条件を確認しましょう。専門の職員が、求人票の作成や助成金申請までをサポートしてくれます。
人材紹介会社(エージェント)の活用
エージェントを通じて候補者を紹介してもらうケースもあります。エージェントはハローワークと連携して制度の利用をサポートすることが可能で、候補者とのマッチングや面談調整、定着フォローまで支援してくれるため、企業側の手間を減らすことができます。
業務の切り出し(軽作業・事務補助・デジタル業務など)
障害の特性に応じて、担当してもらう業務を分解・整理します。実務に合わせた切り出しを行うことで、トライアル雇用期間中の適性評価がスムーズになります。
社内体制の準備(担当者・サポート体制の整備)
受け入れ部署や担当者を決め、定期的な面談やフィードバックを行う体制を整えましょう。必要に応じてジョブコーチや外部支援機関とも連携します。
助成金の確認と申請
「トライアル雇用助成金」をはじめとした各種支援制度を確認し、申請に必要な書類を整備します。エージェントやハローワークがサポートしてくれるため、初めての企業でも安心して利用できます。
注意点・成功のポイント
トライアル期間中の支援・フィードバックを丁寧に行う
定期的な振り返りを行い、不安や課題を解消する姿勢が大切です。
「試す」ではなく「育てる」視点を持つ
「お試し採用」ではなく、将来を見据えた育成の場として活用することで効果が高まります。
無理のない業務設定と配慮
業務の難易度や時間配分を調整し、無理なく取り組めるよう配慮しましょう。
Win-Winの関係をつくることが成功のカギ
企業と求職者の双方が納得できる仕組みにすることで、継続的な活用が可能になります。
まとめ ― 採用の新しい形としてのトライアル雇用
企業・求職者双方にリスクを減らす制度
トライアル雇用は、障害者雇用における「採用後のミスマッチ」「定着への不安」といった課題を大幅に軽減できる仕組みです。企業は安心して採用判断ができ、求職者も実際の職場で自分の適性を確認できるため、双方のリスクを減らせます。
まだ普及度は低いが、今後大きな可能性を秘めている
現状では制度の認知不足や「手間がかかる」という誤解から活用が進んでいません。しかし、事務補助や軽作業をはじめ、短期間で適性を見極められる業務においては非常に有効です。今後、企業やエージェントの活用事例が増えることで、普及は加速していくと考えられます。
障害者雇用率引き上げに伴い注目度が高まる仕組み
2024年に2.5%、2026年には2.7%へと法定雇用率が引き上げられるなか、企業は障害者雇用を「義務」ではなく「成長戦略の一部」として捉える必要があります。トライアル雇用はその実現を後押しする重要な制度であり、ダイバーシティ推進や人材活用の新しい形として期待が高まっています。
最後に
採用に迷うよりも「まずは試してみる」ことで可能性が広がります。トライアル雇用は、企業にとっては安心材料となり、求職者にとっては新しい挑戦のきっかけとなる制度です。今後の障害者雇用を考えるうえで、積極的に取り入れる価値のある選択肢といえるでしょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







