2025/08/27
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障害者雇用と透析治療|企業に理解してもらうための伝え方と配慮事項

はじめに

近年、透析治療を受けながら働く人は少しずつ増えています。医療の進歩や働き方の多様化により、透析患者であっても社会で活躍できる環境が広がってきました。
しかし、血液透析の場合は週3回、1回につき4〜5時間もの通院が必要です。さらに治療後の疲労や突発的な体調不良もあり、仕事と両立するうえで大きな課題が伴います。

本記事では、透析を受けながら働く方が企業にどのように状況を伝えればよいか、そして企業側が理解すべき配慮事項について解説します。透析患者が安心して働き続けるために、求職者・企業双方に役立つ情報を整理しました。


透析と仕事の両立の現状

透析治療の基本スケジュール

透析治療には大きく分けて「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。

  • 血液透析:多くの方が選択している方法で、週3回、1回4〜5時間の治療を病院で行います。治療には移動時間も含めると半日近くを要するケースもあり、勤務時間の調整が必要です。
  • 腹膜透析:自宅で透析を行う方法で、1回の負担は少ないものの、毎日決まった時間に処置を行う必要があります。病院通いの回数は減る一方で、在宅でのセルフケアや感染予防の徹底が求められます。

いずれの方法であっても、時間の制約と体調管理が就労に大きな影響を与えることに変わりはありません。

就労との両立が難しい理由

透析患者が仕事と治療を両立するうえで、次のような課題が挙げられます。

  • 通院時間の確保:血液透析では週3回の通院が必要で、治療日には業務を抜けざるを得ないケースがあります。
  • 治療後の疲労感:透析直後は倦怠感や集中力の低下が起こりやすく、フルパフォーマンスで働くのが難しい場合があります。
  • 突発的な体調不良:貧血や血圧の変動など、急に体調を崩すこともあり、勤務中の配慮が求められます。

これらの理由から「透析をしている=働けない」と誤解されることも少なくありません。しかし、適切な調整と理解があれば、透析患者も十分に力を発揮できるのです。


企業に理解してもらうために必要な「伝え方」

自己紹介・障害説明のポイント

透析を受けていることを伝える際は、ただ「透析患者です」と告げるのではなく、「透析をしていても働ける」ことを具体的に示すことが大切です。

  • できる業務内容
    例:デスクワークは問題なく対応可能、体調が安定していれば通常の業務をこなせる
  • 制限のある業務
    例:シャント部分に負担をかけないために、重量物を持つ業務や腕に強い圧力がかかる作業は避けたい
  • 必要な配慮点
    例:通院日の勤務調整、急な休養への理解

このように「できること・できないこと・必要な配慮」を整理して伝えることで、企業側も安心して受け入れることができます。

通院スケジュールの説明

血液透析の場合、週3回の通院が必須となります。企業に説明する際には、次の点を意識しましょう。

  • 通院曜日・時間帯を具体的に提示する
  • 業務に支障が出にくいスケジュールを事前に検討しておく
  • 面接時には「通院日は残業が難しい」などの条件を率直に伝える

事前に整理して伝えることで、採用後のトラブルを防ぎ、長く働ける環境につながります。

業務への影響を最小化する工夫も併せて伝える

企業にとって大切なのは「業務が継続できるかどうか」です。そのため、求職者側からも次のような工夫を伝えると、信頼を得やすくなります。

  • 通院日以外はフルタイム勤務が可能
  • フレックス制度がある場合は「透析日は17時に退社すれば18時までに病院に到着できるため、時短勤務は不要」といった具体的な調整例を提示できる
  • 在宅勤務を組み合わせて業務を継続できる
  • 業務をチームで分担し、急な休養時もカバーできる体制を検討している

「制限があるから働けない」ではなく、「制限があってもこうすれば働ける」という前向きな伝え方が効果的です。

企業に求められる配慮事項

勤務時間の柔軟性

透析治療を受けながら働くには、勤務時間の調整が不可欠です。たとえば、通院日には時短勤務に切り替えたり、シフトを柔軟に組んだりすることで、安心して通院と就労を両立できます。週3回の透析は避けられないため、勤務時間を固定するのではなく、「通院を前提とした働き方」を許容する姿勢が求められます。

体調面への理解(個人差あり)

透析後は疲労感や集中力の低下が起こることがあります。そのため、治療翌日や直後には業務量を軽減したり、重要な会議や作業を避ける配慮が効果的です。「一律に同じペースで働くのではなく、体調に合わせて調整する」という理解が、長期的な就労定着につながります。

勤務形態の選択肢

近年はテレワークや在宅勤務が普及しています。透析患者にとっても、自宅で働ける選択肢は大きな支えになります。特に腹膜透析を行う場合は、自宅での処置を優先しながら仕事を続けられるため、在宅勤務の導入は企業にとっても有効な支援策です。

通勤配慮

透析患者の中には、公共交通機関での移動が体力的に負担になる人もいます。その場合、車通勤を許可することや、通勤時間を短縮できる勤務地の調整が大きな助けになります。こうした柔軟な対応は、離職率を下げる効果も期待できます。


透析患者が使える制度と企業のメリット

障害者手帳(腎臓機能障害)と雇用枠

透析を受けている方は、腎臓機能障害として障害者手帳を取得できるケースがあります。手帳を持つことで障害者雇用枠での応募が可能になり、企業側は障害者雇用率のカウントにもつなげられます。これは求職者にとっても企業にとってもプラスに働きます。

助成金制度の活用

透析患者を雇用する企業は、国や自治体の助成金を活用できます。

  • 特定求職者雇用開発助成金:新たに透析患者を採用した場合に支給される
  • 雇用継続支援の助成金:長期的な雇用を続けるための取り組みに対して支給される

こうした制度を組み合わせることで、企業は経済的な負担を軽減しつつ、安定した雇用環境を整備できます。

企業にとってのメリット

透析患者を受け入れることは単なる社会貢献ではなく、企業の成長にもつながります。

  • CSR(社会的責任)の強化:多様な人材を受け入れることで企業価値が高まる
  • 定着率の向上:配慮が行き届いた職場は、障害の有無に関わらず働きやすい環境となり、結果的に離職率が低下する

実際の就労事例(ケーススタディ)

ケース1:フルタイム勤務+夕方透析(このケースが多い)

ある会社員は、日中フルタイムで勤務し、就業後に透析を受けています。勤務先が残業免除や勤務終了時間の調整に理解を示したことで、仕事と治療の両立が実現しました。

ケース2:午前勤務+午後透析

別のケースでは、午前中に勤務を行い、午後から透析を受けるスタイルを選択しています。業務量を午前に集中させる体制を整えた結果、企業側も効率的な労務管理ができています。

ケース3:在宅勤務+自宅透析(腹膜透析)

腹膜透析を行っている人は、自宅で透析処置を行いながら在宅勤務を実践しています。企業がリモート環境を整えたことで、体調に合わせた柔軟な働き方が可能になりました。


まとめ

透析と仕事の両立を実現するためには、「求職者がどう伝えるか」と「企業がどう理解するか」の両輪が欠かせません。

透析を受けていることを隠すのではなく、

  • 通院スケジュールや体調面の特徴を正直に伝えること
  • できる業務とできない業務を整理して示すこと
  • 業務への影響を最小化する工夫を併せて提示すること

これらによって、安心して働ける環境が整います。

一方、企業にとっても透析患者を受け入れることは「特別な配慮」ではなく、多様な人材が活躍できる柔軟な職場づくりにつながります。こうした職場は障害の有無を問わず全ての社員にとって働きやすい環境となり、結果的に人材定着率の向上や企業の信頼性アップにも結びつきます。最後に、透析を受けながら働く方へ。
「制限があるから無理」と思う必要はありません。正直に伝え、理解を得ながら工夫することで、あなたの力を十分に発揮できる場は必ずあります。
そして企業側にとっても、その姿勢は「配慮が行き届いた職場」の象徴となり、社会全体の働き方改革につながるのです。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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