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障害者雇用と通勤距離・通勤手段

この記事の内容
はじめに(通勤負担が就労定着に与える影響)

障害者雇用において課題とされるのは「就職すること」だけではなく、「働き続けること」、つまり就労定着です。実際に就職しても、数か月から1年以内に退職してしまうケースは少なくありません。その理由として、仕事内容や人間関係、職場環境がよく挙げられますが、実はそれ以上に大きな壁となりやすいのが通勤の負担です。
「本当は通勤が大変だと分かっていたけれど、なかなか就職が決まらない状況で、ようやく得られた内定だから」と、通勤条件を妥協して入社を決めることもあります。しかし、その結果、想像以上の通勤ストレスや体力的負担で体調を崩し、早期離職につながってしまうケースも少なくありません。
朝の満員電車やバス、長距離移動、段差や坂道などの環境要因は、身体的にも精神的にも大きなストレスになります。特に障害のある方の場合、通勤が原因で体調を崩したり、遅刻・欠勤につながることもあります。その結果、「仕事自体はできるのに通勤が続けられない」というジレンマが起こり、就労継続に影響を与えてしまうのです。
本記事では、通勤距離・通勤手段が就労定着にどのように関わるのかを解説し、求職者自身が事前にできる工夫や、職場にお願いできる配慮について考えていきます。
通勤距離・時間が就労定着に与える影響
長距離通勤がもたらす体調への影響
疲労・睡眠不足による欠勤や遅刻
通勤時間が片道1時間を超えると、生活リズムが乱れやすくなり、十分な休息が取れなくなることがあります。その結果、疲労の蓄積や睡眠不足が原因で遅刻や欠勤が増える傾向があります。これは、体力や集中力を必要とする障害のある方にとって、より深刻な影響を及ぼします。
通勤ストレスが症状悪化につながるリスク
人混みや騒音に敏感な方、持病で体調が不安定になりやすい方にとって、毎日の通勤は大きなストレス要因です。精神障害や発達障害がある方の場合、ストレスが症状の悪化を招き、勤務継続が難しくなるケースもあります。
通勤20〜30分以内が望ましいとされるケース
(支援現場の知見をまとめた“実務上の推奨値)
精神障害の場合(短距離通勤で安定性UP)
精神障害がある方は、生活リズムや体調の安定が就労継続に直結します。通勤時間を短くすることで、出勤前後の負担が減り、安定した勤務につながる可能性が高まります。特に公共交通機関の混雑が少ないルートや、自転車・徒歩で通える範囲が理想的です。
身体障害の場合(移動負担軽減が継続勤務につながる)
車いす利用者や歩行が不自由な方にとって、移動距離は体力の消耗に直結します。30分を超える移動では、到着時点ですでに疲労してしまい、業務パフォーマンスに影響が出ることもあります。無理なく通勤できる範囲を選ぶことで、長期的な就労の安定性が高まります。
障害特性による「耐えられる距離」の違い
「通勤にどのくらい耐えられるか」は、障害の種類や個人の体力・特性によって異なります。たとえば、
- 発達障害のある方 → 通勤ラッシュの刺激に弱いため、短距離や時差出勤が有効
- 内臓疾患を抱える方 → 長時間の移動が体調悪化の引き金になるため、自宅近くが望ましい
- 聴覚障害のある方 → 移動自体の負担は少なくても、情報取得が難しい経路ではストレス要因になる
このように、一律に「何分以内が適切」とは言えず、個別の特性に応じた配慮が不可欠です。
障害別に見る適した通勤距離・手段(事例つき)

精神障害(うつ病・不安障害など)
満員電車のストレスと発作リスク
精神障害のある方にとって、朝の満員電車は強いストレス要因となります。人混みや騒音によってパニック発作や不安症状が誘発され、出勤が困難になるケースも少なくありません。長時間の通勤は体調悪化に直結しやすく、就労定着を妨げる要因となります。
実例|不安障害の方が2駅圏内勤務で安定就労できたケース
ある不安障害のある方は、以前は片道1時間以上の通勤で体調を崩し、欠勤が続いてしまいました。しかし、自宅から2駅以内・徒歩でも通える職場に転職したことで、通勤ストレスが大幅に軽減。以後は安定して勤務を続けられるようになりました。
発達障害(ASD/ADHD)
感覚過敏で刺激が多い環境が負担になる
発達障害の特性として、感覚過敏を抱える方がいます。電車の騒音や人の会話、においなどの刺激が過剰負担となり、通勤だけで消耗してしまうこともあります。
実例|ラッシュ回避の時差出勤で勤務継続できたケース
あるASDの方は、通常の通勤時間帯では混雑に耐えられず出社が困難でした。そこで企業側が時差出勤を認め、1時間遅い時間に出勤できるように調整。その結果、通勤ストレスが減り、離職せずに勤務を継続できています。
身体障害(車いす・下肢障害)
バリアフリー環境の有無で就労可能性が大きく変わる
車いす利用者や下肢障害のある方にとって、駅やバス停のバリアフリー整備は通勤可能性を大きく左右します。エレベーターがない駅や、段差が多い経路では毎日の通勤が非常に困難となり、勤務継続が難しくなります。
実例|エレベーターのない駅で退職を余儀なくされたケース
ある下肢障害のある方は、駅にエレベーターがなく、毎日階段を介助してもらわなければならない状況でした。最初は家族や支援者の協力で通っていたものの、継続が難しくなり退職に至った例があります。交通インフラの環境は就労定着に直結する重要なポイントです。
内部障害(心臓・腎臓・呼吸器など)
長時間移動が体調に直結するリスク
心疾患や腎疾患、呼吸器疾患などの内部障害がある場合、長時間の移動は疲労や息切れ、体調不良につながりやすくなります。無理な通勤が続けば、体調悪化や入院のリスクも高まり、就労の継続が難しくなります。
実例|心疾患の方が片道30分超で体調悪化、在宅勤務に切り替えたケース
心疾患を持つある方は、片道40分の電車通勤で息切れや疲労が強く、業務に支障をきたしました。会社と相談し、在宅勤務へ切り替えたことで体調が安定し、仕事を継続できるようになった事例があります。
通勤手段の工夫と制度活用

電車通勤の工夫
時差出勤制度を活用する
混雑時間を避けて通勤できる「時差出勤」は、精神障害・発達障害の方にとって特に有効です。ラッシュを避けるだけでも体調の安定につながります。
グリーン車・指定席利用で混雑回避
関東圏などではグリーン車や指定席を利用することで、人混みを避けて落ち着いた環境で通勤できます。費用はかかりますが、企業によっては合理的配慮として交通費補助を行うケースもあります。
車通勤の許可と配慮
障害者専用駐車場の確保
身体障害や内部障害がある方にとって、車通勤は負担を減らす有効な手段です。企業が駐車場を確保してくれると安心して通勤できます。
企業が許可するための安全管理(保険・通勤経路届け出)
車通勤を認める場合、企業は労災や事故リスクに備え、通勤経路の届け出や保険加入を求めることがあります。安全確保を前提とすれば、車通勤は通勤負担を大幅に軽減できます。
自転車・徒歩という近距離勤務のメリット
自転車や徒歩で通える範囲の職場は、体力的負担が少なく、ストレス軽減につながります。天候や安全面に注意が必要ですが、可能であれば「家から近い勤務先」を選ぶのは定着の大きなポイントです。
在宅勤務・テレワークの可能性
新型コロナ以降の導入拡大
コロナ禍以降、テレワークを導入する企業は大幅に増えました。特に事務・IT系の職種では、在宅勤務が一般化しつつあります。
事務・IT系職種で実現可能
在宅勤務は通勤の負担がゼロになるため、体調に不安がある方には大きな選択肢です。求人検索時に「在宅勤務可」「テレワーク制度あり」といった条件をチェックするのもポイントです。
企業に求められる配慮(具体事例つき)
勤務時間の柔軟化
10時始業に変更するだけでストレス軽減
通勤ラッシュを避けるために、始業時間を1時間ずらすだけでも大きな効果があります。ある企業では、精神障害のある社員に対して「10時始業」を認めた結果、出勤時のストレスが軽減され、体調も安定。長期的に働き続けられるようになった事例があります。
車通勤の導入事例
地方企業での実例(公共交通機関が少ない地域)
地方では公共交通機関の本数が少なく、通勤自体が大きな負担になることがあります。ある地方企業では、身体障害のある社員に車通勤を許可し、専用駐車場を確保。その結果、通勤時間と負担が大幅に減り、就労定着につながりました。
在宅勤務を導入した企業の成功例
障害者雇用の定着率向上に寄与
コロナ禍以降、在宅勤務を導入する企業は増えています。あるIT企業では、内部障害を持つ社員に対し週数回の在宅勤務を認めたところ、疲労による欠勤が減少し、離職率も改善。「通勤しなくても働ける環境」を整えることが、結果的に企業の戦力確保につながった好例です。
就職活動で通勤条件をどう伝えるか(言い方の工夫)
面接で伝えるべきポイント
「制約」ではなく「安定して働ける条件」として前向きに伝える
面接では「通勤に制約があります」と伝えるよりも、「この条件なら安定して長く働けます」と前向きに言い換えることが大切です。例えば、「満員電車の時間帯を避ければ、安心して勤務を続けられます」といった伝え方にするだけで、印象は大きく変わります。
求人応募時に確認しておくべき点
勤務地のアクセス・バリアフリー・時差出勤制度の有無
求人票には書かれていない場合も多いため、応募前に確認しておきたい項目です。駅からの距離やバリアフリー対応、フレックスタイム制度の有無などを把握しておくと、入社後のミスマッチを防げます。
転職エージェントを活用するメリット
企業に通勤配慮を事前に交渉してもらえる
転職エージェントを利用すると、直接は言い出しにくい「通勤に関する条件」を、あらかじめ企業に伝えて調整してもらえる大きなメリットがあります。例えば「ラッシュ時間を避けたい」「車通勤を希望したい」「在宅勤務を取り入れたい」なども、本人が言いづらい場合にエージェントが代わりに交渉してくれます。
その結果、面接の場では「通勤に不安がある人」という印象を与えるのではなく、「通勤条件が整えば長く安定して働ける人材」として見てもらえるようになります。さらに、事前に条件が共有されているので、面接では自分の強みやスキル、意欲を存分にアピールできるのです。
また、エージェントは障害者雇用に理解のある企業や、在宅勤務制度を整えている企業を優先的に紹介してくれることもあります。結果として、入社後のミスマッチや早期離職を防ぎ、安心して長期的に働ける環境につながるのです。
まとめ(通勤は就労の大事な条件/焦らず自分に合った職場を)
仕事内容と同じくらい「通勤条件」は重要
就職活動では仕事内容や給与に目が行きがちですが、毎日続く通勤条件は就労定着に直結します。自分に合わない通勤環境では、どんなに仕事が合っていても長く働き続けるのは難しくなります。
無理な長距離通勤より、自分に合った距離・手段を選ぶべき
「会社に入れればとりあえずいい」という気持ちは理解できますが、無理な長距離通勤は早期離職につながる可能性が高いです。「通いやすさ」も大切な就職条件の一つとして考えましょう。
求職者へのメッセージ
焦らず自分の生活に合う職場を探そう
就職はゴールではなくスタートです。焦って決めるより、自分の生活に無理なく合う職場を選んだ方が、結果的に長く安定して働けます。
支援機関やエージェントを活用して「通勤しやすさ」も条件に含めていい
ハローワークや就労移行支援、転職エージェントは、通勤に関する条件も相談できる場です。あなたの働きやすさを優先することは決してわがままではなく、安定して働くために必要な前向きな選択です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







