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高次脳機能障害のセルフケア・リハビリ・職場での働きやすさの作り方

この記事の内容
はじめに
高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中、脳外傷などによって脳が損傷し、記憶・注意・判断力・感情コントロールなどの機能に影響が出る状態を指します。
一見、外見には障害がわからないことも多く、本人や周囲が「なぜできないのか」を理解しにくいことがあります。
しかし、高次脳機能障害は適切なリハビリや環境調整、セルフケアによって症状の改善や生活の安定が十分に可能です。
発症直後は日常生活や仕事への復帰が難しいと感じるかもしれませんが、医療・福祉のサポートと本人の工夫を組み合わせることで、少しずつ自分らしい生活を取り戻すことができます。
ここでは、日常生活・職場・リハビリの3つの視点から、具体的な工夫や方法を紹介します。
日常生活での工夫
記憶障害への対応(メモ・アラーム)

高次脳機能障害では、「約束を忘れる」「手順を思い出せない」といった記憶障害がよく見られます。
この場合、“覚える”より“記録する”習慣を徹底することが重要です。
- メモ帳・スマホアプリの活用
予定や買い物リストは必ずメモに残し、視覚的に確認できるようにします。 - アラーム機能の利用
薬の服用時間や外出予定など、時間が決まっていることはアラームで通知します。
写真や色分けによる情報整理
紙のメモや手帳だけでなく、スマホのカメラで「現場の状態」や「指示された書類」を撮影して記録すると、情報を正確に再現できます。
さらに、情報を色分けする(赤=急ぎ、青=通常など)ことで、優先度がひと目でわかり、見落としを防げます。
注意障害への対応(作業環境の整理)
注意障害は、複数の刺激や情報が入ると集中が途切れやすくなる症状です。
対策の基本は、環境から余計な刺激を減らすことです。
- 作業スペースを整理し、机の上には必要な物だけ置く
- 作業と関係ない音や画面(テレビ、スマホ通知)を遮断する
集中時間の設定とタイマー活用
長時間集中するのが難しい場合は、「25分作業+5分休憩」など短時間集中法(ポモドーロ・テクニック)を導入します。
スマホやキッチンタイマーを活用して、集中と休憩のリズムを可視化することで、効率的に作業を進められます。
感情コントロール
高次脳機能障害では、怒りや不安などの感情がコントロールしにくくなることがあります。
これを放置すると、人間関係や職場での評価に影響します。
- 深呼吸や水を飲むなど、感情をリセットする行動をとる
- 感情が高ぶったら、その場を一旦離れる
- 気分転換のために散歩や軽い運動を取り入れる
深呼吸・マインドフルネスの方法
深呼吸は、4秒吸って・4秒止めて・8秒吐く「4-4-8呼吸法」が効果的です。
また、マインドフルネス瞑想では、椅子に座って目を閉じ、呼吸や体の感覚に意識を集中させることで、気持ちを落ち着けられます。
職場での工夫
指示内容を紙や写真で残す

口頭だけの指示は記憶障害のある人にとって負担が大きく、ミスにつながります。
紙やデジタルで記録を残すことで、「確認できる安心感」が生まれます。
紙・デジタル指示の使い分け事例
- 定型業務:紙の業務マニュアル
- 突発的な依頼:チャットやメールで残す
- 複雑な作業:写真や動画で工程を記録
タスクを1つずつ進める
複数の作業を同時進行するより、1つのタスクを完了させてから次へ進むほうが効率的です。
周囲にも「同時に複数の指示を出さず、順番にお願いしてほしい」と伝えることが有効です。
タスク管理アプリの活用例
- Trello:カード形式で作業状況を視覚化
- Google ToDoリスト:スマホとPCで同期可能
- Microsoft To Do:期限やリマインダー設定が便利
チェックリストの活用
手順や確認ポイントをチェックリスト化すると、抜け漏れを防げます。
「完了済み」にチェックを入れることで達成感も得られます。
チェックリストを業務手順書化する方法
- 作業工程を細かく分けて順番に並べる
- 必要に応じて写真や図を添える
- 新しい業務が加わったら随時更新する
リハビリ方法
作業療法士による訓練
作業療法士は、日常生活や仕事で必要な動作・認知機能を回復する訓練をサポートします。
例:計算・書字・道具の使用練習、買い物のシミュレーションなど
作業療法士による訓練の流れと期間
- 初期評価(症状や生活環境の把握)
- 目標設定(「買い物に行けるようになる」など)
- 実践訓練(週2〜3回、1回1時間程度)
- 定期評価とプラン見直し
在宅でできる脳トレ

病院や施設だけでなく、自宅でも脳機能を刺激する活動は可能です。
自宅での脳トレ(市販教材・アプリ)
- 計算ドリルやクロスワード
- 記憶力トレーニングアプリ(Lumosity、BrainHQなど)
- 読書や日記で文章表現を磨く
社会参加型リハビリ(ボランティア活動など)
外出や人との交流は、認知機能だけでなく社会性の維持にも効果的です。
社会参加型リハビリの実例(地域活動・軽作業)
- 地域清掃活動や町内会イベントの手伝い
- 福祉施設での軽作業(袋詰め、資料整理など)
- 図書館や公民館での案内ボランティア
向いている職場環境
反復作業が多い現場
高次脳機能障害のある方は、複雑で変化の多い業務よりも、一定の手順を繰り返す反復作業のほうが力を発揮しやすい傾向があります。
決まった動作を繰り返すことで、作業が習慣化し、ミスや不安感が減少します。
反復作業現場での習熟事例
- 製造ラインでの組立や検品作業
- 資料封入やラベル貼りなどの事務補助
- 施設内の清掃業務
ある事例では、最初は1時間で数回のミスがあった方が、作業内容を固定化し、手順書を活用することで、数週間後にはほぼノーミスで業務を遂行できるようになりました。
業務内容が固定されている部署
日々の業務が大きく変わらない部署は、業務記憶や段取りの負担が軽減され、安心して作業を継続できます。
固定業務部署での安定就労ケース
- 企業内の郵便仕分け室での勤務
- 図書館での書架整理・返却本の棚戻し
- データ入力業務(同一フォーマットでの入力作業)
こうした職場では、新しい作業習得の負担が少なく、反復と慣れによって作業スピードや正確性が向上します。
支援制度の活用
障害者手帳と就労支援
高次脳機能障害は、症状や生活への影響度に応じて精神障害者保健福祉手帳の対象となることがあります。
手帳を取得することで、障害者雇用枠での応募や税制優遇、交通機関の割引、就労支援サービスの利用が可能になります。
障害者手帳の等級と申請手順
- 等級:1級〜3級(症状の重さや生活制限の程度で決定)
- 申請手順:
- 医師の診断書を取得
- 市区町村の福祉課へ申請
- 審査・交付(おおむね1〜3か月)
取得後は有効期限ごとに更新が必要です。
- 医師の診断書を取得
ジョブコーチ制度
ジョブコーチは、職場に入り込んで仕事の進め方や職場環境の調整をサポートする専門員です。
高次脳機能障害の場合、手順の整理やコミュニケーション補助、職場との橋渡し役として大きな効果を発揮します。
ジョブコーチ制度の申込みから利用まで
- ハローワークや就労支援機関に相談
- 支援計画の作成(本人・企業・支援機関で協議)
- 一定期間、ジョブコーチが現場に入り支援
- 定着後は定期訪問や電話でフォロー
自立支援医療制度
この制度は、精神疾患や高次脳機能障害を含む一定の障害に対して、医療費の自己負担を原則1割に軽減するものです。
継続的な通院やリハビリが必要な方にとって、経済的負担を大きく減らせます。
自立支援医療制度の対象条件とメリット
- 対象条件:医師の診断で継続的な医療・リハビリが必要とされる場合
- メリット:薬代・通院・リハビリ費用の軽減、利用期間中も就労可能
- 申請先:市区町村の福祉課(医師の意見書が必要)
まとめ
高次脳機能障害があっても、環境調整・日常の工夫・制度活用を組み合わせることで、安定した就労は十分可能です。
- 向いているのは、反復作業や業務が固定されている職場
- チェックリストや視覚的サポートでミスを防ぐ
- 障害者手帳・ジョブコーチ・自立支援医療制度などの活用で、職場定着と生活の安定をサポート
小さな改善と支援の積み重ねが、自信と安定につながります。
無理をせず、自分に合った環境を選び、周囲と協力しながら、自分らしい働き方を築いていきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







