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ASDで人間関係に悩む人が事務職で活躍できる理由|発達障害と仕事の適性を考える

この記事の内容
はじめに
ASD(自閉スペクトラム症)のある人は、職場で「人間関係の悩み」を抱えることが少なくありません。
雑談が苦手、曖昧な指示が理解しにくい、チーム作業で孤立してしまうなど、特性が人間関係や業務の進め方に影響することが多いのです。
しかし、仕事の内容や環境によっては、ASDの特性がむしろ強みとして活かせるケースもあります。その一例が事務職です。正確さや集中力を求められる業務に適性を発揮し、安定して働ける人も増えています。
本記事では、ASDの特性と人間関係でつまずきやすい場面を整理しながら、仕事との適性について考えていきます。
ASDの特性と人間関係の難しさ

ASDの主な特性
ASDにはさまざまな特徴がありますが、職場で影響が出やすいのは次のような点です。
- コミュニケーションの難しさ:言葉の裏の意図や暗黙の了解を理解しにくい
- こだわりの強さ:自分のやり方やルールを変えるのが難しい
- 感覚過敏:音・光・匂いなどに敏感で疲れやすい
(例:オフィスのざわめきや電話の着信音に強いストレスを感じ、集中力が落ちてしまう)
職場での人間関係でつまずきやすい場面
雑談が苦手で「冷たい人」と誤解される
昼休みや休憩中の雑談に入れず、一人で過ごすことが多いと「愛想がない」「話しかけにくい」と思われてしまう。
結果として、同僚との関係がぎこちなくなり孤立につながることがある。
指示の曖昧さが理解できずトラブルになる
「いい感じにまとめておいて」「臨機応変に動いて」など、基準があいまいな指示を理解しにくく、成果物のイメージがずれてやり直しになることがある。
これが繰り返されると、上司や同僚との関係にストレスを感じやすい。
チームワーク中心の職場で孤立しやすい
協調性や臨機応変な対応を求められる現場では、自分のペースを守りたいASD特性が「協力的でない」と受け取られてしまうこともある。
その結果、業務に参加しづらくなり、職場での立ち位置を失うことにつながる。
ASDで人間関係に悩みやすい仕事の例
営業職や接客業での苦労
ASDの特性を持つ人にとって、営業職や接客業は人間関係のストレスが特に大きくなりやすい仕事です。
- 雑談や世間話が求められる場面でうまく対応できず、気疲れしてしまう
- 取引先や顧客への臨機応変な対応が難しく、トラブルや誤解が生じやすい
- 「人との関わりが多い仕事は向いていないのでは」と感じ、退職や休職につながるケースもある
こうした経験を経て、自分の特性を理解し直し、「自分に合った仕事を探そう」と考える人は少なくありません。
事務職で見つけやすい「働きやすさ」

事務職の業務内容
事務職は、主に次のような業務で構成されています。
- データ入力
- 資料や書類の作成
- 書類整理やファイリング
- ルーチン化された事務処理
ASDの特性とマッチする点
人間関係より業務内容重視の環境
人との会話や調整よりも「作業の正確さ」が求められるため、人間関係のストレスが比較的少ない。
一人で集中できる作業が多い
集中力を活かして黙々と取り組める業務が多く、成果を実感しやすい。
ルールや手順が決まっているため安心できる
マニュアルや手順通りに進める仕事が多いため、曖昧な指示に振り回されにくい。
実際に働いてみて感じられること
事務職は「安心して取り組める仕事」と感じる人が多い一方で、単調な業務が続くことによる飽きや、電話対応など避けられない対人業務に課題を感じる場合もあります。
それでも全体的には、ASD特性を持つ人にとって働きやすい環境となるケースが目立ちます。
ASDに向いている仕事の特徴とは?
ルーチンワーク・マニュアル化された仕事
決まった手順で進められる仕事は、安心感を持って継続できる。
一人で集中して進められる仕事
静かな環境でコツコツと作業するスタイルは、ASDの強みを発揮しやすい。
専門性を活かせる仕事
プログラミング、研究補助、データ分析など、特定のスキルを磨いて成果を出せる職種は適性が高い。
事務職以外の適職例
- データ入力・分析
- ライティング(記事作成)
- デザイン(グラフィックやWeb)
- IT関連の技術職
ASDが事務職で活躍するための工夫
配慮事項を事前に伝える
自分にとって働きやすい条件は、できるだけ面接や入社前に伝えておくことが大切です。
- 例:静かな席を希望する、曖昧ではなく明確な指示が欲しい
特にASDの特性を持つ人にとって、「的確な指示」は重要なサポートになります。
- 「この資料を〇日までに、A4で2ページにまとめてください」
- 「このデータをExcelで集計して、グラフにしてください」
このように、期限・形式・作業範囲を具体的に示すことで誤解が減り、安心して作業に取り組めます。
また、指示を出す人が複数いると混乱しやすいため、指示役を一人に決めておくことも効果的です。上司やリーダーを明確にしておくことで、「誰の指示を優先すべきか」が分かりやすくなり、余計なストレスを減らせます。
仕事を細分化してタスク管理する
大きな業務をそのまま進めるのは負担が大きいため、タスクを小さく分けて管理する方法が効果的です。
例えば「報告書を作成する」という業務は、①資料を集める、②要点をまとめる、③文章を書く、④体裁を整える、といった手順に分けられます。
さらに、それぞれのタスクに優先順位や締切をつけ、チェックリストやToDoアプリで「見える化」すると安心して進められます。
また、進捗を「午前中にここまで」「今日の終わりまでにこの作業」と段階ごとに区切って確認することで、達成感を得ながら進めやすくなります。
雑談や社交の負担を減らす工夫
無理に雑談に加わる必要はありません。ただし、障害者手帳を利用して職場内にASDの特性が周知されている場合と、そうでない場合(クローズ就労)とでは状況が異なります。
周知されている職場では、同僚も配慮してくれるため、簡単なあいさつや必要最低限の会話で十分です。
一方、特性を伝えていない職場では、周囲に誤解されやすいため、「おはようございます」「お疲れさまです」といった定型のあいさつだけでも習慣にすることが、安心して働くための工夫になります。
支援ツールの活用
- メモアプリやタスク管理アプリ
- 付箋やスケジュール帳
こうしたツールを活用することで、忘れやすさや指示の聞き漏らしを防ぐことができます。
企業に求められる配慮

仕事内容の明確化・業務マニュアルの整備
曖昧な表現を避け、業務を明確に伝えることが重要です。特にASD特性を持つ人には、視覚的に分かりやすいマニュアルが有効です。
- イラストやフローチャートを使った手順書
- 実際の操作を見せる動画マニュアル
- チェックリスト形式の進行表
こうした工夫があるだけで、安心感や理解度が大きく変わります。
静かな環境・集中できる作業場所
電話の音や雑談が多い場所よりも、静かなスペースで業務に集中できる環境が効果的です。
実際に、大手企業や特例子会社では 「集中ブース」「サイレントエリア」 を設け、作業に集中しやすい環境を整えている例があります。オフィスの一角を仕切って「図書館のように静かな空間」をつくることで、ASD特性を持つ人が安心して業務に取り組める仕組みを導入しています。
専用の部屋が難しい場合でも、次のような工夫で疑似的に静けさをつくることが可能です。
- パーティションや簡易ブースを設置して周囲の雑音を減らす
- 空き会議室を一定時間だけ作業スペースとして利用する
- ノイズキャンセリングヘッドホンを認める
- 固定電話や人の出入りが少ない席へ配置を工夫する
さらに、近年はリモートワークを取り入れる企業も増えており、在宅勤務によって静かな作業環境を実現している事例もあります。
このように、「物理的に静かな空間を用意する」または「静けさを補う工夫を導入する」ことで、ASD特性を持つ人が安心して集中できる環境は実現可能です。
コミュニケーションの工夫(メール・チャットでのやり取り)
ASD特性を持つ人にとって、口頭でのやり取りは「情報を一度で正確に理解する」ことが難しい場合があります。そのため、メールやチャットなど“文字で残るコミュニケーション”が有効です。
- 指示内容を文章にしてもらうことで、後から確認でき、聞き漏らしや誤解を防げます。
- 依頼の際には「締切日・必要な形式・提出先」をセットで書いてもらうと、混乱が少なくなります。
実際の職場では、以下のようなチャットツールがよく使われています。
- Slack:チャンネルごとにやり取りを整理でき、検索も容易
- Microsoft Teams:OutlookやOfficeとの連携が強く、資料共有に便利
- Chatwork:国内中小企業でも導入が多く、シンプルな操作性
- LINE WORKS:LINEに近いUIで親しみやすく、導入ハードルが低い
こうしたツールを活用することで、口頭だけでは伝わりにくい情報も「見える化」でき、安心して業務を進められます。
本人の得意を活かした配置転換の柔軟性
ASD特性を持つ人は、苦手な業務では力を発揮しにくい一方で、得意な分野に集中すると高い成果を出すことがあります。そのため、企業には 「得意な業務を見極めて、配置を柔軟に変える工夫」 が求められます。
- 例1:電話対応が苦手でも、データ入力や資料作成に集中できる部署へ配置する
- 例2:人前での発表が難しくても、数字や情報を正確に扱うバックオフィス業務で力を発揮する
- 例3:細かい作業やルーチンワークが得意な場合は、品質チェックや検品の業務に配置する
実際に障害者雇用を積極的に行っている企業では、最初は幅広い業務を経験させ、得意・不得意を見極めた上で配置換えを行う仕組みを取り入れているケースもあります。
こうした柔軟な対応により、本人は安心して働きやすくなり、企業にとっても生産性の向上や定着率アップにつながります。
まとめ|ASDと仕事の「適性」を知ることが第一歩
- 人間関係で悩むことがあっても、自分の特性に合った職場であれば十分に活躍できる
- 事務職は、ASDの特性にマッチすることが多い職種のひとつ
- 大切なのは「無理をして周囲に合わせること」ではなく、自分に合った環境を選び取ること
💡 最後にお伝えしたいのは、「あなたの特性は弱点ではなく、働き方を見つけるためのヒント」になるということです。
もし今の職場で苦しさを感じているなら、それはあなたが能力を発揮できない環境にいるだけかもしれません。
「適性を活かせる場所」に出会えたとき、これまで抱えてきた悩みが大きく和らぎ、安心して力を発揮できるようになります。
どうか自分の特性を否定せず、新しい環境を探す勇気を持ってください。きっとあなたに合った仕事が見つかります。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。








