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LD(学習障害)とは?種類・特徴・診断・支援方法・仕事との関わりまで徹底解説

この記事の内容
はじめに

近年、「LD(Learning Disabilities:学習障害)」という言葉はニュースや教育現場でも耳にする機会が増えてきました。しかし、その一方で「勉強が苦手なだけでは?」「知的障害やADHDと同じもの?」といった誤解も依然として多く残っています。
実際には、LDは知的能力に大きな問題がないにもかかわらず、特定の学習領域(読む・書く・計算するなど)に著しい困難を抱える状態を指します。こうした特性は、本人の努力不足や怠けによるものではなく、脳の情報処理の特性に起因するものです。
この記事では、LDの定義や種類、具体的な特徴から、診断・支援方法、そして就労や仕事との関わりまでを幅広く解説します。正しい理解は、本人や家族が必要な支援を受けられるだけでなく、学校や職場での配慮にもつながります。
LD(学習障害)とは
定義(文部科学省・DSM-5)
文部科学省は学習障害を「基本的には全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力のいずれかに特異的な困難を示す状態」と定義しています。
一方、米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では「特異的学習障害(Specific Learning Disorder)」として分類され、12か月以上持続する学習面での困難、かつ年齢や知能、教育の機会に照らして著しく低い学習成績が認められる場合に診断されます。
発症率と男女差
LDはおおよそ学齢期の5〜8%程度にみられるとされ、日本国内でもクラスに数名の割合で存在すると言われます。
また、発症率には男女差があり、特に読字障害(ディスレクシア)は男子の方がやや多い傾向が報告されています。ただし、女子は軽度の場合や努力でカバーしているケースも多く、見過ごされやすいという課題があります。
発達障害の一種としての位置付け
LDは自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)と同様に、発達障害の一つに分類されます。ただし、LDはあくまで「学習面の特定領域に限った困難」が特徴で、全般的な知的発達やコミュニケーション能力に大きな遅れはありません。
一方で、ADHDやASDと併存するケース(重複診断)も少なくなく、症状が複雑になる場合があります。
LDの種類と特徴
読字障害(ディスレクシア)
読字障害は、文字を正確かつ流暢に読むことに困難を抱える状態です。視力や聴力に問題がなく、知的発達も平均以上であるにもかかわらず、読みの速度や正確さに著しい遅れが見られます。
症状例
- 文字が歪んで見える、行がずれて読める
- 読み間違いが多く、文意を把握するのに時間がかかる
- 音読が極端に遅く、内容理解に支障が出る
ディスレクシアは日本語よりも英語の方が発症率が高いとされますが、日本語でも漢字や送り仮名、文章構造の理解に時間を要するケースがあります。
書字表出障害(ディスグラフィア)
書字表出障害は、文字を書くこと自体や、正しい綴り・文法で書くことに困難を抱える状態です。読む力は比較的保たれていても、書くことになると著しい遅れや誤りが生じます。
症状例
- 漢字を覚えられない、間違えて書く
- 字が極端に汚く、他人が判読できない
- 文章の構成が不自然で、助詞や語尾が抜けやすい
こうした特徴は作文や板書、テストの記述式問題で顕著に表れます。
算数障害(ディスカリキュリア)
算数障害は、数や計算に関する理解や処理に著しい困難を示す状態です。数の概念や数量感覚がつかみにくく、暗算や筆算、文章題の理解に時間がかかります。
症状例
- 数の大小や順序が理解しにくい
- 繰り上がり・繰り下がりの計算が苦手
- 時計の読み方や単位換算に時間がかかる
算数障害は数学的な学習だけでなく、日常生活での買い物、時間管理、金銭管理にも影響を与えることがあります。
原因とメカニズム

脳の情報処理の特性
LD(学習障害)は、脳の情報処理の方法や速度に特徴があることが大きな原因の一つとされています。
例えば、読字障害では文字を「視覚的に認識」→「音に変換」→「意味を理解」という流れのどこかに処理の遅れや正確性の低下が生じます。
MRIや脳波を用いた研究では、言語処理に関わる脳の領域(左側頭葉や後頭部付近)の活動パターンが、一般的な発達パターンと異なることが報告されています。
これは「能力不足」ではなく「処理方法の違い」であり、適切な学習方法や支援を組み合わせれば能力を発揮できるケースが多くあります。
遺伝的要因
LDは家族内での発症傾向が見られることから、遺伝的要因も関与していると考えられています。
双子研究や家系調査によると、親や兄弟にLDがある場合、本人も発症する確率が高くなるという結果があります。
ただし、遺伝はあくまで「なりやすさ」を決定するものであり、環境要因や教育方法によっても表れ方は変わります。
二次的要因(不安・自己肯定感の低下)
LDそのものが直接の原因ではないものの、学習の困難が長期にわたり続くことで、不安感や自己肯定感の低下といった二次的な問題が生じやすくなります。
特に周囲から「努力不足」と誤解されたり、叱責される経験が重なると、自分に自信を持てず、新しいことに挑戦する意欲も下がってしまいます。
これらの心理的要因は学習や仕事のパフォーマンスにも影響し、悪循環を引き起こすことがあります。
診断と評価
診断の流れ
LDの診断は、発達障害に理解のある医師(小児科・児童精神科・精神科)や臨床心理士が行います。
診断の流れは以下のようになります。
- 問診・行動観察
学習面での困難や日常生活での影響をヒアリング - 心理検査・学習検査
知能検査(IQ)と学習到達度検査を組み合わせ、知的発達と学習能力の差を確認 - 総合評価と診断
DSM-5やICD-10の基準に基づき診断
知能検査・学習到達度検査
代表的な検査として以下が挙げられます。
- WISC-IV / WISC-V(児童向け知能検査)
言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度などを測定 - WAIS-IV(成人向け知能検査)
成人期の知的機能と処理特性を分析 - KABC-IIやKABC-II NU
認知処理の特徴を詳細に評価 - 標準学力検査
読み・書き・計算の到達度を測定し、年齢や学年に対する遅れを確認
これらを組み合わせることで、「知的能力は平均以上だが、特定の分野のみ遅れがある」というLD特有のパターンを見つけ出します。
成人期の診断の難しさ
LDは学齢期に発見されることが多いですが、軽度の場合は努力や工夫で目立たず、そのまま成人期まで気づかれないケースもあります。
社会人になってから「文書作成に異常に時間がかかる」「数字を扱う業務でミスが多い」といった理由で気づき、診断を受ける人も少なくありません。
成人期の診断は、学習歴や仕事上の困難を詳細に振り返る必要があり、学生時代の成績や通知表が参考資料となることもあります。
LDと日常生活
学生時代の困難
LDを持つ子どもは、授業の内容は理解できても、板書のスピードや文章読解、計算問題などで周囲と差がつきやすくなります。
例えば、ディスレクシアの場合、教科書の音読やテストの読解に時間がかかり、内容理解以前に時間切れになることがあります。
こうした経験が積み重なると、学習意欲の低下や不登校につながる場合もあります。
社会人になってからの影響
事務処理の遅れ
書類作成やメール処理、データ入力などの業務で、読み間違いや書き間違い、計算ミスが生じやすく、処理速度が遅くなることがあります。
特に納期や時間制限が厳しい職場では、プレッシャーからパフォーマンスがさらに低下することもあります。
読み間違いによるミス
契約書や仕様書など、正確な読解が求められる場面で誤読が起こると、業務上のトラブルや損害につながることがあります。
このため、業務フローの中でダブルチェックを取り入れるなどの配慮が有効です。
LDと仕事
向いている職種
デザイン、工芸
LDの中には、視覚的な認識力や空間把握能力に優れている人も多くいます。そのため、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、写真、イラスト、工芸など、クリエイティブ分野で活躍するケースがあります。
文章や数字よりも、色彩・形状・質感といった視覚情報を扱う仕事では、特性がプラスに働くことがあります。
身体活動系(介護、農業など)
体を動かすことや、人と直接関わる職種も向いている場合があります。介護や保育、農業、園芸、清掃、接客業などは、作業工程が視覚的に分かりやすく、反復的な要素も多いため、適性に合いやすいとされます。
避けたほうがよい職種
大量の書類作成
読字障害や書字表出障害がある場合、膨大な量の資料作成・文書処理を伴う職種はストレスやミスの原因になりやすいです。
事務職の中でも、データ入力や文章作成を1日中行うような業務は適応が難しい場合があります。
計算を伴う仕事
算数障害がある場合、経理、会計、金融業務など、正確な計算や数値処理が日常的に求められる仕事は負担が大きくなります。
どうしても必要な場合は、計算ツールやダブルチェックの仕組みを活用することが重要です。
職場での配慮例
マニュアルの視覚化
文章だけでなく、図解や写真、フローチャートを活用したマニュアルは、理解や記憶の定着を助けます。
また、作業工程を色分けしたり、ステップごとに整理することで、迷わず業務に取り組めます。
デジタルツールの活用
音声読み上げソフト、スペルチェック機能、計算アプリ、予定管理アプリなど、ITツールを活用すれば作業効率が向上します。
特に読み書きの補助ツールは、LD当事者が負担を減らしつつ能力を発揮するための強い味方になります。
支援と制度
合理的配慮(障害者差別解消法)
障害者差別解消法では、障害のある人が職場や学校で不利益を受けないよう、「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。
例えば、試験時間の延長、マニュアルの図解化、タスク管理アプリの導入などがこれにあたります。
障害者雇用枠
LDがある場合、障害者手帳を取得すれば障害者雇用枠での応募が可能です。
この枠では、面接時に配慮事項を事前に共有しやすく、特性に合った職場環境を整えてもらえる可能性が高まります。
就労移行支援
一般企業への就職を目指す障害者を対象に、就労スキルやビジネスマナー、PCスキルなどを身につけられる支援サービスです。
LDに合わせた学習方法や職場実習を通して、自信を持って就労に臨むことができます。
まとめ 〜当事者へのメッセージ〜

LD(学習障害)は「できない」ではなく、「やり方が合っていない」だけのことが多くあります。
自分に合った方法を見つけ、環境を整えれば、学習や仕事の場で力を発揮することは十分可能です。
あなたが抱えてきた困難は、努力不足や怠けではなく、脳の特性によるものです。その特性は、見方を変えれば強みとなり、他の人にはない発想やアプローチをもたらします。もし今、周囲の理解が得られずに悩んでいるなら、専門家や支援制度を活用してほしいと思います。
そして、あなたが安心して働ける環境は必ず存在します。無理にすべてを一人で抱え込まず、少しずつ自分に合う方法を試しながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









