2025/08/14
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PTSDを悪化させないセルフケアと日常生活の工夫

はじめに

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、交通事故や災害、暴力、犯罪被害などの外傷的出来事を経験した後に、強い恐怖や不安が長く続く精神的な障害です。
治療は医療機関での心理療法や薬物療法が基本ですが、それだけでなく日常生活でのセルフケアも回復や再発予防に大きな役割を果たします。

セルフケアは「医療の代わり」ではなく、治療の効果を支え、日々の生活の安定を保つための補助的な柱です。
本記事では、PTSDを悪化させないための生活習慣や発作時の対処法、人間関係の工夫、支援制度までを網羅して解説します。


症状を和らげる生活習慣

規則正しい生活リズム

  • 毎日同じ時間に起床・就寝する
  • 食事や休憩の時間を一定にする
  • 睡眠不足や不規則な生活は過覚醒症状を悪化させやすい

具体例

平日は7時起床・23時就寝、食事は1日3回を固定時間で摂取し、就寝前のスマホやテレビは30分前にオフにする。


運動・食事・睡眠の安定

  • 軽い有酸素運動(ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど)を週3回以上
  • ビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含む食品(青魚、ナッツ類)を積極的に摂取
  • 就寝前は暗く静かな環境を作り、寝室は休息専用スペースに

アルコールやカフェイン制限

  • アルコールは一時的に気持ちを和らげるように感じても、睡眠の質を下げ、症状を悪化させるリスクあり
  • カフェインは過覚醒状態を強め、不安感や動悸を誘発する場合がある
  • コーヒーやエナジードリンクの量を減らし、ハーブティーやデカフェ飲料に置き換える

発作やフラッシュバックへの対処法

呼吸法・グラウンディング

PTSDの発作やフラッシュバック時は、自律神経が急激に交感神経優位になり、呼吸が浅く早くなることでパニック状態が悪化します。そのため、呼吸を意識的に整えることが発作軽減の第一歩です。

  • 腹式呼吸:鼻から4秒かけて息を吸い、口から6秒かけてゆっくり吐く。お腹が膨らむのを意識することで副交感神経が優位になり、心拍数や緊張が徐々に落ち着きます。
  • 5-4-3-2-1法(グラウンディング):視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚を順番に使い、現実の「今ここ」に意識を戻すテクニック。企業研修でメンタルヘルス教育として取り入れられる例もあります。

企業側の対応例

  • 社内研修でグラウンディング法や呼吸法を紹介し、従業員が互いにサポートできる環境を整える。
  • 安心して呼吸法を実践できる静かなスペースを用意する。

安全な場所への移動

発作の兆候を感じたら、混雑や騒音を避けて静かな場所へ移動することが重要です。視覚・聴覚への刺激が減ることで、脳の過覚醒状態が鎮まります。

  • 自宅では「安心スペース」を作っておく(薄暗い照明、静かな音楽)
  • 職場では「休憩室」「静養室」の利用ルールを事前に決め、上司や同僚に共有

企業側の対応例

  • 執務室とは別に「クールダウンスペース」を設置
  • 業務マニュアルに「発作時の行動フロー」を明記する

安心グッズの活用

感覚を安心感のある刺激に切り替えることで、発作時の意識を外へ向けられます。

  • 香り:ラベンダー、カモミールなどリラックス効果のあるアロマ
  • 触感:柔らかい布、ストレスボール、温熱パック
  • 音楽:好きな曲や自然音のプレイリスト

企業側の対応例

  • 個人が使えるアロマディフューザーやイヤホン利用の許可
  • 持ち込みグッズの使用ルールを明確化し、職場全体で容認

トリガーの管理

自己分析と記録

どのような状況や刺激が症状を引き起こすかを知ることは、予防と対応の基本です。

  • 発作発生時の日時、場所、状況、身体反応を記録
  • トリガーが予測できる場合、事前に回避または軽減策を準備

企業側の対応例

  • 本人が希望すれば、業務スケジュールや作業環境をトリガーに配慮して調整
  • 上司や人事担当者が機密を守りつつ共有・対応できる体制を作る

回避よりも段階的慣れ

完全回避は短期的には安心感を得られますが、長期的には社会参加や就労継続が難しくなることがあります。
医師やカウンセラーの指導のもと、少しずつ安全な環境で慣らしていく「段階的曝露」が有効です。

例:人混みが苦手 → 空いている時間帯にスーパーへ5分 → 徐々に滞在時間を延ばす

企業側の対応例

  • 本人が安心して段階的に業務範囲を広げられる計画を作る
  • 新しい業務や場所に慣れるための「試験的期間」を設定する

人間関係の工夫

信頼できる人との関係

  • 気持ちや体調を安心して共有できる人を1〜2人持つ
  • 発作時の対応や声かけ方法を事前に相談

企業側の対応例

  • 職場内での「サポート担当者」を任命
  • 1on1面談で定期的に状況をヒアリング

距離感を保つ

  • 苦手な相手とは適度な物理的・心理的距離を確保
  • 連絡手段や時間を自分で管理
  • 職場では必要な業務連絡に限定する

企業側の対応例

  • デスク配置や作業チームの組み合わせを配慮
  • 業務上の接触を必要最低限に調整

医療・支援の活用

専門医療機関

  • 精神科・心療内科・トラウマ専門外来での治療
  • 認知行動療法(CBT)やEMDRなどのエビデンスのある療法

企業側の対応例

  • 通院のための時差出勤・休暇制度を整備
  • 医師の意見書をもとに業務内容や時間を調整

心理カウンセリング

  • 公的機関や民間のカウンセラーによるサポート
  • オンライン相談は移動負担が少なく利用しやすい

企業側の対応例

  • EAP(従業員支援プログラム)を導入し、無料または低額で利用できる仕組みを提供

ピアサポートグループ

  • 同じ経験を持つ人同士が安心して話せる場
  • 孤立感を減らし、回復意欲を高める

企業側の対応例

  • 社外のピアサポート団体情報を社員に提供
  • メンタルヘルス関連イベントやセミナー参加を推奨

まとめ 〜当事者へのメッセージ〜

PTSDは、決して「弱さ」や「心の持ちよう」の問題ではありません。
過去の出来事が脳と心に刻まれた自然な反応であり、あなたの責任ではないのです。

治療やセルフケアは、一朝一夕で結果が出るものではありません。しかし、小さな一歩を積み重ねることで、確実に生活は安定に向かいます。
「今日は5分だけ外に出られた」「夜中に目が覚めても呼吸法で落ち着けた」──それらは立派な前進です。

もし、今つらさを抱えているなら、助けを求めることは勇気であり、回復への最初のステップです。医療や支援、信頼できる人を頼りながら、安心できる時間と場所を少しずつ広げていきましょう。

あなたの人生は、まだたくさんの可能性と喜びに満ちています。焦らず、自分のペースで歩んでいけますように。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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